皆さん、こんにちは。大津です。


DOCTORS2 ~最強の名医~

がとても高視聴率であると先日
ネットニュースで流れていました。


最近午後の時間帯に
DOCTORS ~最強の名医~
の再放送が流れていて、患者さん
の部屋を訪室すると、ご覧になって
いらっしゃる方が複数いました。


先日個室の患者さんを診察しに行く
と、

「この病院で患者殺されたら迷惑する
のは俺たちなんだよ!」

と大声で流れていて
ちょっとびっくりしました。


ネット上で指摘されている方もいましたが、

医療モノ(ドラマ等)はリアリティを追求
すると苦しく重くなりがちです。

つまり(医療の)現実に近い。

それに遠い医療モノのほうがうけやすい
印象があります。

最近で言うとドラマ
『ドクターX ~外科医・大門未知子~』などは
そうだったと思います。
私も拝見しましたが、面白いんですよね。

つまり胸がスカッとするような勧善懲悪、
手術で全てが解決するような展開、それが
ある種見ている方の心をつかむのでしょう。

わかります。

水戸黄門と一緒です(水戸黄門は私の故郷
のヒーローです)。


ただそこで大切なのは、

フィクションと現実を混同しないことです。


最近の、ベストセラーとして並んでいる
書籍の中のノンフィクションのように
ふるまっている”フィクション”のひとつは、

治療は金儲け目的で、医者は

実際は効きもしない治療を勧めている


というものです。

それらの書籍のネットレビューも
読んでいるとめまいがするくらい医者への
怨嗟の声に満ちています。

拝見すると、
皆さんが既存の医療に不満を抱いている
のはとてもよく感じます。

ただ、週末も某研修会に行きましたが、
多くの医者は、とても熱心です。
一生懸命勉強しています。

中には最近話題になっているような不祥事を
起こす人もいます。けれども多くの医者は
一生懸命に目の前の患者さんに良い医療を
しようとしているのです。

ただ何度も当ブログで触れているように、時に
その思いが患者さんやご家族とすれ違ったり
することで不信感となってしまっています。

しかし正直に言えば、私のように診療に時間を
かけてもすれ違いは少なくありません。はっきり
言って現状の大病院の忙しさの中で、意思
疎通を万全にするのはどれだけ医療者に
力量があっても私は難しいとみています。

だからこそ一般の方の力が必要なのです。
医療はこういうものだとできるだけ正確に
捉えて頂いて、協力して診療に参加してもらわねば
なりません。

だからこそ過激な本をエンターテイメントとして
見たり読んだりしても、けしてそれらのフィクションを
真実だと勘違いしないことです。

ノンフィクションにも”フィクション”は
たくさんあるのです。医療否定本や医療陰謀論、
100%治ると断言する本、これらはその
最たるものです。

センセーショナルならば内容が
間違っていても広まります。皆が手に取るから
正しいわけではけしてありません。

勘違いして医者を悪者にしてしまえば、
よい参加型の診療からさらに遠くなってしまい
かねません。


なかなかコミュニケーションが損なわれがちな
事例が増えているように思えることについて、
私が感じている原因の一つは、
多くの患者さんが患われる病気が
慢性病になったことだと思います。


慢性病は根治しないものも多く、
長年付き合ってゆく必要があります。

慢性病は

症状がなくても薬剤を飲んだほうが良い
場合があります。

また抗がん剤のように、まだ元気なうちは
副作用のほうが(気持ちとして)目立つ
治療が少なくありません。

そして根治しない病気もたくさんあります。


この理屈は、自分が重い病気になったり
ご家族の誰かがそのような病気になったりでも
しない限り、なかなか気がつかないことだと
思います。

なぜ医者の治療で治らないのだ(下手なせいだ)。

なぜ苦しいばかりの治療をするのか(金儲けだからだ)。

そう思いがちなのは、病の中心が慢性病になったこと
も無縁ではないと感じます。

今、必要なのは、患者さんやご家族にもきちんと
医療の効用と限界を知って頂いて、多忙極まる現場で
説明不足が慢性的に起っている状況をともに乗り越えて
ゆくことでしょう。

医者はダメだ。医者は金儲けばかりだ。
そんなことを言っていても、その方は救われません。

とてもとても厳しいことを言いますが、どんな医者にも
合わない、という方を見ていると、それ相応の理由が
あることも少なくありません。このコミュニケーション
では、どんな良医も逃げるだろうな・・と感じさせる
患者さんやご家族も、時代なのか、散見されるのは事実
であり、私からすると、どちらか一方の全員が悪い! 
とは到底言い切れない現状を感じます。


病院は、お金を払えば口数が少なくとも
スムースに物事が進む
コンビニエンスストアではありません。
(コンビニエンスストアの悪口ではありません)
すぐにお互いに誤解が生じる中を、
互いに理解的に不断のコミュニケーションを
重ねてゆく場
です。


医者嫌いも、一つの特性であると感じますが、
フィクションの医療陰謀論を真に受けて医者嫌いを
深めてしまっては、本当に必要な場合にそれを享受
できずに苦しむことがあるかもしれません。

はっきり言って、バランスが大切です。

いつもブログでお伝えしているように、極論・陰謀論
の類は、エンターテインメント性はあっても
事実ではないことも多いです。

どうか
どちらか一方が悪いわけではなく
互いに努力が必要なのだという
けしてスカッとしない現実の前を、
試行錯誤しながら歩んで頂きたいと切に願います。

そしてこのブログをご覧になってくださっている
ような皆さんは、きっとそれを実践してくださっている
はずだと思います。皆さんのやり方で、正解です。


それでは皆さん、また。
失礼します。