皆さん、こんにちは。大津です。


昨日、Sさんから再度メッセージを頂戴しました。

以下引用させて頂きます。




大津先生、

今朝、妻を自宅で看取ることができました。
早かったです。

実は、妻の最期を迎えるにあたっても、大津先生のこのブログにある、
「がん終末期予後判断指針(大津版)」を参考にさせていただきました。

うーうーとうなったり、のどがごろごろ言い出したり、
何も知らなければ、パニックになるところでした。

しかし、手元のiPadに指針を表示しながらの、対応だったので、
これは、しんどくないんだとか、これが来たから、もうあまり長くないなとか、
予測をしながら、看病をすることができました。

結果、一晩中、彼女とふたりっきりの最期の夜を過ごし、
朝に、息絶えました。
すごく満足しています。

何も知らなければ、訪問医の先生を早く呼んでしまい、
ふたりっきりの最期の時間が短くなったように思います。

本当にありがとうございました。

やっと、葬儀の段取りを終え、一段落したので、
彼女の横で、寝ようと思います。





メッセージありがとうございました。
そして本当にお疲れさまでした。

Sさんと直接お会いしたことはなく、著作とブログを通しての
関わりではありましたが、そのような限られた環境の中で
少しでもお役に立てたのならば、私としてはこれ以上の
ことはございません。

「一晩中、彼女とふたりっきりの最期の夜を過ごし、
朝に、息絶えました。
すごく満足しています。

何も知らなければ、訪問医の先生を早く呼んでしまい、
ふたりっきりの最期の時間が短くなったように思います」

というくだりにはとても心が動かされました。


そうですよね。

最後への過程をご理解くださっているからこそ、
そばにいれる。そばにいれるということは、それだけ
大切な方との時間をともに過ごせるということ。

そのような点で、在宅で最後まで過ごされたことは
私はもっとも奥様とSさんにとってふわさしく、そして
「らしい」ものであったのではないかと思います。

「らしい」と感じたのは、何も根拠がないわけではなく、
病気がわかった後もお二人で世界中の様々なところに
出かけていたということを聞き知ったからです。

別のメッセージでSさんは「バトン」というお言葉を
使ってらっしゃいました。
私も「バトン」という言葉は大好きです。
いつも講演スライドの背景に用いているくらいです。

生者は常に、先に逝きし方々から「バトン」を
託されていると感じています。そしてそれぞれの
一隅を照らすことを求められているのです。

Sさんに御心穏やかな時間が訪れますことを
心からお祈りしております。

本当に、お疲れさまでした。



またご報告しようと思いますが、私が現職に就いて
もう少しで3年が経過しようとしています。

現在、私の所属している緩和ケアチームの年間入院患者さんの
診療件数が約300件となっております。

日本緩和医療学会の緩和ケアチーム報告によれば
↓↓
http://www.jspm.ne.jp/pct/report_jspmpct2011.pdf

全国の緩和ケアチームの平均診療件数は約112件です。

私の勤務している病院と同じような拠点病院は
平均約120件です。

都道府県に1ヶ所しかない国指定の拠点病院でさえ
年間平均208件です。

私の所属する緩和ケアチームは
通常の病院の2.5倍。
がん診療の中核を担う病院群に対しても2.5倍。
都道府県のがん診療の最中心たる病院の1.5倍、
診療しているということになります。

調べてみると、私の病院の緩和ケアチーム診療数
は全体で「トップ5%」に入って
おりました。全国の並み居る病院の中で
その位置を占めているのです。

これは取りも直さず、産休中の看護師さんも含め
様々な優秀なスタッフの力でもあります。

綺羅星のごとくいる優秀なスタッフ、
2人の認定看護師、2人の専門看護師、認定薬剤師、
精神科医、臨床心理士、栄養士、麻酔科医、放射線科医、
リハビリ医、リンパドレナージなど各種技術の
担い手などの仲間たちにその功績は第一に帰せられる
べきものであり、私も深く感謝しております。

さらに依頼件数という量だけではなく、
緩和医療専門医が毎日全例診療録を精査して
コメントを書き、回診している病院もそうそう多くないと
思います。


ただそうやって私たちが活動しても
支えられる方はほんの少しです。

あらゆる方々に緩和ケアをお願いしなければ
これからも年々増え続けるであろう亡くなる方を
支えることは難しいのです。

ゆえに、緩和ケアは難行であっては意味がありません。

新しい本でも「易行」を意識して執筆しました。
緩和ケアチームが力を発揮できない環境においても、
医療者が緩和ケアの処方を行ってくれるだけで
随分と変わってくることと思います。


Sさんも他のメッセージで書いてらっしゃいましたが、
緩和ケアの普及は益々望まれています。

引き続き院内での実績に甘んずることなく
努力して参りたいと思います。


それでは皆さん、また。
失礼いたします。