皆さん、こんにちは。大津です。



先日は自大学グループの
看護学会の演者として佐倉に行って参りました。


3病院の看護師が集まっての学会でしたが、
看護師の皆さんの熱心さに感動しました。


もともと看護はQOLを重視する分野であり、
QOLを大切にする緩和ケアとは親和性が
高いのです。

ゆえに、医師以上に熱心かつ、優れた
緩和ケアの実践家が多いのも、この分野です。


しかし医師にしかできないこともあれば、
看護師にしかできないこともあります。
両職が、手を携えて臨んでいかねばならない
のは言うまでもありません。


私の経験でも、医師と看護師の不毛な反目は
誰のためにもならないからです。
どちらの良い所も認め合ってやっていかねば
なりません。
自分たちが絶対で一番なのだと、そういう姿勢は
かつて多くの悲劇を招いて来ました。
両職は最大のパートナーであり、最大の敵と
ならないように折り合いを付けねばなりません。


さて、講演でご質問がありました。


現実には在宅療養は持ってゆこうとすると
「管」類や点滴などの医療処置が在宅では
できないということで、それが退院を妨げる
のではないか、と。


ここで断言させて頂きます。


ことがんの終末期等において、
医療処置が原因で
在宅療養に持ち込めない
ということは
「絶対にありません」


それはなぜか。

「管はいろいろな方法を駆使すれば抜けます」

例えば腸閉塞の場合は
ステロイドとオクトレオチドでイレウス管は
抜けます。

胸水の場合も、ステロイドで頻回穿刺どころか
穿刺自体が不要になることも少なくありません。

点滴はだいたい病院ではし過ぎです。

必要な時に点滴を行う「機会点滴」を在宅で
行うことで、十分脱水の予防が可能なことも
少なくありません。

私の経験では、ほぼ100%
調整可能です。


もちろん介護の問題や経済的問題など
が在宅療養を難しくすることはあります。
けれども医学的問題が原因となることは
ない、ということです。


とにかく
「これだけ医療行為があるから帰せない」
という医療者からの視点ではなく、
まずは希望に沿って「帰すことありき」とし、
それに合わせて調整すれば良いのです。

実はそこで医師ができることは数多くあります。


私も現在の病院に来て、緩和ケアを行う前、
また医療行為を調整する前に、「帰せないと
思うんですよね」と言われていた方を何人
見てきたかわかりません。

けれども、帰せます。
帰しています。
(ただ一般の方にお伝えしておきますが、
帰りたくない、という方を帰している、
ことではありません。あくまでご本人と
ご家族がそれを望まれた時、ということです)


そして最近の優秀な在宅医療医は病院と
変わらぬ医療を行ってくれます。
もちろん、しかし、濃厚な医療を在宅でも
継続するようにするのは、
実はそれらが苦痛を増すだけになって
しまっていることも少なくないため、
主治医もしくは緩和ケアの担当医師が適切に
治療を調整する必要があります。

私はこの作業に
国の施策で大きな病院に増えた
「緩和ケアチーム」が携わるべき、
特に身体症状担当医師が関わるべきと
考えます。あくまで病院の限られた
方の苦痛緩和のみに動いてもらう
のではなく、在宅療養のための医療行為
調整にもそれら医師が力を揮うべきです。


療養場所を患者の希望に沿うことが
QOLを向上し
苦痛をも緩和する可能性があるのだ

ということをそろそろ医療者も
一般のかたも重く受け止めねば
なりません。

終末期にも
「できることはたくさんある」

その中に当然
「在宅に向けた医療行為の調整」も入る
のです。


在宅で最後を送りたい。
どこで最後を過ごしたいですか、と
講演でご質問すると、そのように
お答えになる方の数が増えています。

時代はそうやって動いています。
それに沿うのが、誰にとってもハッピーと
なることでしょう。
もちろん在宅領域の医療者の数的問題など
まだまだ問題は山積みでありますが。
送り手側の病院も、しっかり配慮して
いかねばなりません。


それでは皆さん、また。
失礼します。