皆さん、こんにちは。大津です。


9月の風が吹いていますね。

季節は巡ります。

少し過ごしやすくはなって
参りましたか。


さて、表題のとおりなのですが
アメリカ国営放送であるVOA (ボイス・オブ・アメリカ)
の中の、初級者向け放送である
LEARNING ENGLISHページの
Science & Technologyの部の中で
緩和ケアが紹介されています。
↓↓
Easing Pain in the Sick and Dying

”病と終末期の痛みを和らげる”
です。

音声でも聞けますので、特に
医学生や英語を勉強中の若手医療者、
あるいは一般の方で英語を勉強中の
方はトライしてみてはいかがでしょうか?

実際コンパクトにまとまっていて、
うまくまとめたなあ・・という感じでは
あります。


内容の中で
私として面白いなあ、と思ったのは
2点です。


1つはアフリカの一部地域では
毎日7000人の人々がAIDSで亡くなっている
ので、(ブログ筆者注:元々ホスピス・緩和ケア
の対象疾患はがんとAIDSであったなど主要な対象
であることもあって)
アメリカのホスピスはアフリカ諸国のホスピス
と連携して協力しているということです。

日本ではAIDSがアメリカやアフリカよりは少ない
こともあって、実質的なホスピス・緩和ケアの対象数
としては非常に少なく(稀です)、一方でこれらの国々では
主要な問題の一つとして対処されていることが
新鮮でありました。


2つめは医療用麻薬の紹介のところで、
依存の可能性について、また薬剤の持つ怖さに
ついて触れられているところです。

日本において、正当な医療用麻薬の使用では
精神依存になることは稀です。
特にがんで痛みがある場合は、ほとんど
精神依存や耐性は問題となりません。

けれども日本でも一部医療用麻薬ががん以外の
疾患にも使用可能となったり(ブログ筆者注:
それ自体は悪いことではないのですが、当然
適切なケースを選ばなければ副作用や依存が
出るばかりでしょう)、
「増やせばどんな痛みも改善する」と信じて
疑わない(間違った知識を持つ)医療者の増大
とともに、今後これらの依存の問題が顕在化
してくるかもしれません。

マイケルジャクソンの例が好例ですが、
アメリカは薬物を使用し過ぎです。
彼のような偉大な才能もアメリカ居住でなければ
あれほど薬剤を複数大量に使用することがなく
早世しなかったかもしれません。


調査によるとアメリカの
「治療を要する鎮痛薬の濫用者は75万人」
「鎮痛薬の不適切使用で救急を受診する患者は
30万6千人」
とされています。
(http://www.samhsa.gov/data/NSDUH/2k10NSDUH/2k10Results.htm)


私も以前アメリカ人を加療したことがあるのですが、
がんではない痛みだったのですが医療用
麻薬治療を強く希望されて大変でした。母国ではよく
使用していたようなのです。もちろんその方の痛みは
それらを使わなくとも十分コントロールできるはずと判断
しましたので、
しっかり非医療用麻薬で痛みをコントロールしま
した。そういうこともやればできるのですが、
それが適切ではない病気や痛みなのにも関わらず
安易に医療用麻薬に走ってしまう、しかもアメリカでは
医師からの処方でなくても買えてしまう、これが様々な
問題を引き起こすのです。


日本でも
使いすぎず、しかしかといって使わなすぎず、
バランス良く使用されることが重要です。

そのためには医療者もますますの知識獲得と
修練が必要でしょう。私も引き続き、そのメリットと
対象外にあるいは不適切に使用されたときの弊害を
伝えていきたいと思います。


それでは皆さん、また。
失礼します。