皆さん、こんにちは。大津です。


皆さんに参加してほしい運動があります。


それは「OPCを減らそう!」運動です。


OPCとは何か。

私はOver Patient Conversationと定義します。
頭文字を取って、OPCです。


OPCとは、患者さんの上で、会話をすること、です。
でも普通に患者さんの脇に立って会話をすること
ではありません(もちろん座って会話をすれば
なお良いですが、今回私の言うOPCを
減らそう! はそういう意味ではありません)。

どういう状況か?

例えば弱った患者さんの両側に医療者が立って、

「レートがタキってる(脈拍が速い)んですよね」

「さっきワソラン™打ったんだけどなあ・・
おかしいなあ」

と、患者さんの上で、頭越し(あるいは身体越し)
に会話することです。患者さんを飛び越えて
医療者同士が患者さんのことを医学用語で会話
することです。

患者さんはその時、もちろん意識があります。
答える力がないので、じっと横たわっています。
しかしその目の奥には不安が浮かんでいます。

「ちょっと脈が速いようなので、少しそれを
落ち着かせるような治療をしたのですが、
まだ速いようなので、少し様子を見ますね」
と、患者さんにひと言あるかないかで大きく
違うと思います。

もしそういう説明が全くなしに、頭上で
術語が飛び交うと患者さんは不安になるのでは
ないでしょうか?

もちろん最小限はそのような会話が必要な時もあるでしょう。
けれども患者さんをよそに術語だらけで、それを
ベッドに横たわる患者さん(あるいは座る患者さん)
の身体の上でポンポンと会話をすれば、まるで
置き去りにされたかのように感じることもあるのでは
ないでしょうか。


実は私にも経験があって、医学生の時に大腸鏡を
やってもらったことがあるのですが、やって
くださった先生3人はずっと「夕方のカンファレンス」
の話を始め、雑談をされていました。午後の検査
だったので、この際に話し合っておきたかったのだ
とは思います。医学生なので、まあ聞かれても良い
だろう、というようなお気持ちもあったのでしょう。

しかし、私が横たわる頭上で、何やらわかるような話も
わからないような話もたくさんされる姿に
「うーん、医療現場って何か不思議・・」と
思ったものです。実は医学生の私ばかりではなくて、
他の患者さんの検査の際も結構雑談をしている姿も
散見してかなり驚きました。

他にもこんなことがあります。

私が専修医の時も、研修医の先生が処置をする
場面で手間取っていて、(私は怒っていなかった
のですが)研修医の先生は手技をしながら何べんも
私に「すみません、先生」「すみません!」と
言います。

処置が終わった後、「すみませんって言う相手が
違うと思うし、手技中に『すみません』とたくさん
言うと患者さんが不安になるからやめたほうが
良いと思うよ」と伝えると、あまりピンと来て
いないようでした。きっと今だったらわかって
くれるのではないかと思いますが、そういうことを
あまり教えてくれる人がいないのは確かで、若手
医師の今後を考えると心配と言えば心配です。そ
していつか良い習慣が身についてくれればよいのです
が、ベテランになってもそうであったとしたら患者
さんも不幸になってしまいます。

そもそもひと昔の「キョージュカイシン」が嫌で
大学に寄り付かなかった私は、患者さんの頭上で
検査データを教授と研修医がやり取りをして、
答えられないと指導医の先生から雷が落ちたり
などという光景がとても嫌いでした。
何か患者さんをほっておいているような気がした
ものです。OPCもそうですが、患者さんが
まるでのけものにされているかのように
感じてしまうような医療ではいけないと思うのです。
幸いにして、そういう回診も昨今は減っては来てい
るようですが、もっともっと患者さん参加型の、
儀式的ではない、もちろん医療者だけが患者さんを
よそに会話するのでもない、新しい回診スタイルが
根付いてほしいと願います。


さて、終末期になった患者さんも、耳は聴こえている
と言われています。
患者さんの意識が自然に低下し、あるいは薬剤で
うとうと眠ってもらって苦痛を取る状態になった時、
けれども耳は聴こえているかもしれないことに注意
しなければなりません。

しかし、残念なことですが・・一般病棟では、
患者さんの意識が既にないものとしてOPCが
配慮なくなされることがしばしば見かけられます。

「随分と血圧も落ちて、いよいよですかね・・?」

「おしっこ出てないので、家族呼んだほうが良いですかね?」

私が診察しようとすると、あるいは患者さんにお声を
かけようとすると、ちょっと無遠慮なOPCが飛んで
来ることがあります。

「痰が水のように出てくるんですよねえ・・。
詰まりそうで、詰まりそうで!」

・・ちょっと待った! レッド寄りのイエロー
カードです。もう一枚で退場ですよ。

制止する間もなく、患者さんには聴こえていないだろうと
話者は考え、聴こえたらどう思うだろうか??、というよ
うな内容のことをどんどん会話してしまいます。

そういうお話を止めましょう、と身ぶりと合図で示し、
ちょっと外に出ましょう、と促しても、「どうして???」
とあまりピンと来られていないこともあります。

常識と習慣は恐ろしいのです。何も違和感がないわけです。
けれども、私があるいはその彼・彼女が、患者さんの立場
であったらどう思うのでしょうか?

せめてお部屋を出てから、あるいは聴こえても
大丈夫な内容で会話するべきなのではないでしょうか?

「もうダメですかね」
等と、誰も言われたくないものと思います。

患者さんの上で、聴こえていないこと前提の
配慮の行き届かない会話をするOPC・・
あるいは意識がある患者さんでもそれをお構い
なしに医学用語でぽんぽん会話して配慮がない状況、
これをどんどん減らしてゆくべきと考えます。


弱った患者さん、意識がないと見える患者さんも
ちゃんとこちらの話をお聴きになっていることは
よくありますし、時には私たちの医学用語会話も
「どうなるんだろう・・?」と不安になりながら
聴いてらっしゃるかも知れません。

Over Patient Conversation・・。
できるだけ減らしていきたいものです。

現場からの医療改革は身近なところからなのでは
ないかと思います。


それでは皆さん、また。
台風が接近しているとのこと・・どうかお気をつけ
ください。
失礼します。