皆さん、こんにちは。大津です。


今日は・・もう昨日になりましたね、
岡山の津山中央病院で緩和医療につ
いて講演させて頂きました。

それにしてもいつも思うのですが、
呼ばれていく緩和医療の講演会では
とにかく参加者さんが熱心で、
寝ている方など皆無(食事前の大変
な時間帯なのに)、皆さん真剣に
聞いてらっしゃって僕も気合いが
入ります。しかも、病院長の先生方
など偉い先生方がご参加になって
らっしゃる(むしろ緩和医療の研究
会の中心となっている)という所に
すごさを感じます。

病院ぐるみで医療の質をあげよう、
ひいては患者さんにとって良い医療
を提供しようとされている志と士気の
高さをつくづく感じます。

昨年は宮城県、兵庫県、今年は山梨県、
長野県、そして岡山県、と全員医療者
の医療者向け講演でも呼んでいただき
ましたが、どこもとても熱心かつ病院
ぐるみで取り組んでらっしゃって、日
本は津々浦々に優れた病院がたくさんあ
るなあと感嘆させられています。

今後日本は高齢化社会が進行し、
お亡くなりになる方も増え、ますます
医療界もいかに死を迎えようとする
方々とそのご家族を支えてゆくのかが
問われてくると思われます。死や終末期
を医療の敗北として捉えない、パラダイム
シフトも求められていると思います。


徳田先生、藤本先生はじめ、諸先生方、
看護師の皆さん、コメディカルの皆さん、
本当にありがとうございました。



さて余談です。

参考になるコメントを頂戴したので
転載します。Sho先生からです。


個人的にも薬剤は絞る方に賛成します。多いと何か効いているのかわかりにくくなる事も理由の一つです。若手医師の中にはこの場合どういう処方が良いですかと質問してくる割には、処方開始した後の患者さんの変化や感想をあまり探ろうとしない人がいます(患者さん自身も注意深く考えない人もいますが)。これだと薬剤の効果に対する勘も養えません。
あと薬剤が増える背景としては好転しない症状に対して「しばらく様子を見ましょう」と言いづらい状況で、時間稼ぎ、その場を取り繕うため、患者さんに希望を持たせるため次々に薬剤を処方し増えてしまう事もよく見かけます。


Sho先生のご指摘、これはかなり正鵠を
射ています。医者の心理的状況まで説明
してくださっていますね。

そう、「先生、何か方法はありませんか?」
と患者さんから言われたときに、僕たちは
何かをしたいと思うものなのです。

「様子を見ましょう」と言えば、
「先生、まだ何もしないんですか?」と
有言無言の不満や悲嘆が来ることを恐れ、
「じゃ、こういう薬があります」と言いたい。
効かないかもと思っても、もしかすると
効くかもしれない、そう願って何か処方をし
ます。問題は、そうやって薬剤がどんどん
増えてしまうことなんですね。

「なかなか難しいですね、この症状は」と
伝えるのが怖くて、心優しい医療者は
「何とかなるから」とつい言ってしまいます。
しかしここもバランス。難しいことを
難しいと伝えていかねばならないこともあると
思います。

そしてもう一つ、Sho先生がご指摘のとおり、
医者は「出して安心してしまう」という
ことがよくあります。医療用麻薬も量の
調整をしていかねばならないので、出して
おしまいではありません。副作用も継続的に
評価をしていかねばなりません。けれども
出すと満足してしまうという落とし穴がある
んですよね。

人の体は千差万別です。ひとつの薬が、
ある人の運命を良い方向にも「悪い方向にも」
変えることがあります。慣れるとつい簡単に
処方してしまいますが、心をまっさらにして、
できるだけ先入観を除いて、患者さんの声に
耳を傾け、投薬前と後にどう変わったのか
それをしっかり評価してゆく必要があります。

どうしても私たちは自分が処方した薬剤で
良くなったと思いがちです。できるだけそれ
を排してゆくことが重要です。

文章は、出版する前に、自分が一番嫌いな
人が書いたことを想定して、校正するべしと
どこかで読んだことがあります。薬剤も
自分が嫌いな医療者(?)が処方しても
効いたと言い切れるのか、それをじっくり
考えて継続・中止の別を決めるべきだと思います。

案外、医療も感情から逃れることは出来ません。
そんな”人間らしさ”が医療の「評価」にも関わっ
てきます。
その中でも、できるだけ「公平な評価」それが
必要だと思います。


それでは皆さん、また。
失礼します。


追伸 ゆらさんのメッセージもありましたが、
「薬剤を中止して良くなった」症例は実は少なく
ありません。『世界イチ簡単な緩和医療の本』で
もたった1枚の医療用麻薬がもたらした悲劇を
書きました。他人の善意の積み重ねが、ある人にとって
相加的にならないのと同じく、その人に合った方法
は人の数だけあるのだと思います。善意も薬剤も
押し付けをしない、あればあるほど幸せになると
いう幻想にとらわれない、それが重要だと思います。

なにもしないで見守ってあげること、これも立派な
愛情です。つくづく人の世界は難しいものですね。