皆さん、こんにちは。大津です。


今日は腫瘍の皮膚浸潤・皮膚転移の
対策について記します。

医療者の皆さんはご覧になったこと
があるかも知れませんが、腫瘍の
皮膚浸潤・転移はなかなか厳しい
症状です。

見た目の問題もありますし、におい
のことや、散発する出血等々、
患者さんは本当にお辛いだろうな
とお察しいたします。

★においに関しては、
メトロニダゾール軟膏が有用です。

材料は以下の通りです。

◎フラジール腟錠(250mg)を12錠
◎キシロカインゼリー90ml(30mlを3本)
◎白色ワセリン300g

作り方と使用法は以下の通りです。

①ハルンカップにフラジール腟錠を4錠入れ、そこに
蒸留水を10ml程度入れ、舌圧子で溶かす。
②それにキシロカインゼリー30mlを1本加え、混ぜる。(a)
③白色ワセリン100gを別のカップ内で混ぜる。(b)
④(a)と(b)を混ぜて完成。
⑤尿取りパッドを穴あきのポリ袋で包んだ手製パッドに
舌圧子を使って軟膏をバターを塗るように塗り広げて患部に貼る。

ちなみにこれ、下田クリニックの院長の
下田先生に私が在宅医療医時代に教えてもらった
方法です。在宅でもやれることはたくさんあります。
↓↓↓
下田クリニックはこちら


★出血に関してはMohs(モーズ)ペーストが
有用です。

聖ヨハネホスピスの大井裕子先生が
日本緩和医療学会のオンラインジャーナルに
論文を出されていますので、そちらを参照
頂けると良いと思います(なお、実際の症例
の写真が掲載されているので、一般の方は
ご覧にならないほうが良いかもしれません。
無理にご覧にならないでください。
医療職の方には見ることを推奨します)。
↓↓↓
大井先生の論文はこちら

うまくいけば、難治性再発性出血を
マネジメントすることが可能です。

Mohsペーストは、主成分の塩化亜鉛が潰瘍面の
水分によってイオン化し, 亜鉛イオンのタンパク
凝集作用によって腫瘍細胞や腫瘍血管、および
二次感染した細菌の細胞膜が硬化して、止血、
殺菌効果が得られるというものです。

塩化亜鉛飽和水溶液と亜鉛華でんぷん局方品、
グリセリン局方品を混合しますが、施設によって
その組成はまちまちであり一定のコンセンサスが
まだないようです。

いくつか使用に注意が必要ですが、大井先生の
論文に詳しいので、ご覧になって頂けたらと
存じます(考察に詳しいです)。

以上です。

見た目の問題に関してはまだなかなか手が届いて
おりませんが、上記を踏まえればにおいや出血の
問題は何とかなり得るものだと思います。

蛇足ですが、出血がある場合は輸血をすると
再出血を招きやすくなりますので、輸血→出血→
輸血・・を繰り返すだけとなってしまう可能性が
あります。案外輸液を減らしたり、輸血をしな
いと、出血の頻度を抑えることができて、貧血
も下げ止まることが珍しくありません。
身体も貧血には慣れますので、むやみに輸血を
しないことも重要なケアだと思います。

緩和はすることも大事ですが、状態を悪化させ
得ることを「しないこと」がより重要です。

最近も終末期の難治性再発性消化管出血症例で
輸液の減量と輸血の回避をお願いしたところ、
最期まで出血が再発しなかった症例を経験しました。
おそらく輸液と輸血をそのまま積極的に使用
していたら、予後も悪化したかと思われます。
本当に良かったです。
他にも、皮膚浸潤・皮膚転移症例は、過剰に
強制栄養すると余計に増悪してしまうことも
少なくありません。むやみに「やらないこと」
に配慮すれば、増悪が防がれるものと考えられます。

困っている方がいれば、ぜひとも施行して
頂ければ幸いです。

それではまた。
失礼します。