皆さん、こんにちは。大津です。


今日は緩和医療の定義を
ウィキペディアから。
知ってるよ、という皆さんも
どうかご覧になってみてください。

余談ですが、ウィキペディアの
参考文献に拙著『死学』が
挙げられているのです。本当に
有り難いことですね。

さて世界保健機関の2002年
の定義では、

「緩和ケアは、生命を脅かす疾患による問題に直面する患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的、心理的、社会的な問題、さらにスピリチュアル(宗教的、哲学的なこころや精神、霊魂、魂)な問題を早期に発見し、的確な評価と処置を行うことによって、 苦痛を予防したり和らげることで、QOL(人生の質、生活の質)を改善する行為である」

となっています。

この定義には3点、重要なポイントが
あります。これは講演でいつも話して
おりますので、もしお知りになりたかっ
たらぜひ講演にお呼びください。
日本中どこでも参ります。

さて今日、何より強調したいのは、
「緩和医療」の目的です。
もちろん痛みや苦しみを「緩和」する
から「緩和医療」なのですが、
それが究極の目的ではありません。
むしろ痛みや苦しみを緩和して、究極の
目的を目指すのです。

それは・・定義にも示されていますが、

「QOL(人生の質、生活の質)を改善すること」

です。平たく言えば、
「限られた時間を一に患者さん、
次にご家族の皆さんが望むような
時間を送れるように様々な援助を
行うこと」

でしょう。

いい時間を過ごしてもらう、
ということに尽きます。

ですから緩和医療医に依頼すると、
身体の苦痛を取ってもらうアドバイスを
求めていたのに、やれ点滴を減らしたほうが
良いのではないか、やれ患者さんを縛る(身体
拘束)をやめたほうが良いのではないか、
やれ家に帰したほうが良いのではないかと
予想もしないアドバイスが来て驚くことに
なりますが、これは別におかしくも何とも
ありません。

「いい時間を過ごしてもらうこと」
が目標ですから、身体的苦痛の緩和に
留まらないのです。あらゆる観点から
こうしたほうがより良い時間が過ごせる
だろうという提案が飛んできます。

世界保健機関の「定義」の次には下記の文章が
続きます。これらは「みんな」緩和医療の仕事です。

◎痛みやその他の苦痛な症状から解放する。
◎生命(人生)を尊重し、死ぬことをごく自然な過程であると認める。
◎死を早めたり、引き延ばしたりしない。
◎患者のためにケアの心理的、霊的側面を統合する。
◎死を迎えるまで患者が人生をできる限り積極的に生きてゆけるように支える
◎患者の家族が、患者が病気のさなかや死別後に、生活に適応できるように支える
◎患者と家族のニーズを満たすためにチームアプローチを適用し、必要とあらば死別後の家族らのカウンセリングも行う。
◎QOL(人生の質、生活の質)を高めて、病気の過程に良い影響を与える。
◎病気の早い段階にも適用する。延命を目指すそのほかの治療(例えば化学療法、放射線療法など)を行っている段階でも、それに加えて行ってよいものである。臨床上の様々な困難をより深く理解し管理するために必要な調査を含んでいる。

苦痛を緩和するだけが緩和医療の仕事では
ありません。それは実に広範な仕事を含んでおり、
究極の目的は、繰り返しですが、
「限られた時間に良い人生を歩んでもらうこと」
なのです。

医療がその障害になっているときには、
私自身が医師なのにも関わらず、それを
取り除く努力をします。そう考えると、
緩和医療医は「半患半医」とも言える
面白い仕事です(ぜひとも若きお医者さん
がもっと志してくれることを祈ります)。

それでは皆さん、また。
失礼します。