皆さん、こんにちは。大津です。

今日は間欠的鎮静の方法について
先日の記事の補足をします。

実は『世界イチ簡単な緩和医療の本』
(総合医学社)

大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba

にも鎮静の方法は記してありません。

これは『世界イチ簡単な緩和医療の本ー中級編ー』~さらなる
苦痛を救うmore10ステップ~に書くつもりです。
(ちなみにまだ予定は未定です)

鎮静に関しては日本緩和医療学会の鎮静ガイドライン
が教科書となるでしょう。
今回は間欠的鎮静について、ガイドラインを踏まえて、
僕なりの推奨薬剤を提案します。

基本はミダゾラムでしょう。
ミダゾラムを例えば生食100ml等に溶きます。
そして、小児用点滴セットを用い、患者さんがうとうと
されるまで比較的急速に「ベッドサイドに付きながら」
dripします。そしてうとうとされたらスピードを緩め、
例えば1分5~10滴(5~10ml/時)でdrip
します。もちろん加減が必要なので、起きてくるよう
ならばスピードを速め、眠りが深ければもっと遅くする
か、中止します。

朝まで睡眠を確保するという目的でしたら、朝まで、
途中で点滴がなくなったら同内容の新しい点滴を継続し、
朝になったら中止するという方法で良いと思います。
苦痛を取り除く目的でしたら、一度最後まで落としたら
そのまま経過をみて、苦痛がどうなってくるかを判断後
再度同内容で行うか、あるいはそのまま観るかを決めれば
良いかと存じます。

ここからは僕の経験的知見ですが、
ミダゾラムの欠点は2つあると存じます。
①半減期が比較的短いため、睡眠維持の効果は弱いこと
②せん妄を増悪させる可能性があること
です。

①に関しては、学会でも推奨されているフルニトラゼパム
を使用した間欠的鎮静を行うという方法があります。
フルニトラゼパム1~2mgを生食に溶いて1時間程度で
dripします。ミダゾラムをまず使用して入眠を図り、その後
フルニトラゼパムに切り替える等々の方法があります。

②に関しては、ハロペリドール等の抗精神病薬を前駆使用、
もしくは併用するのが良いかと思われます。不穏に伴う
不眠にミダゾラムで入眠を図ると、余計に不穏・興奮が
増悪することがあります。ハロペリドール等をしっかり
使用しておくことです。


以上です。
間欠的鎮静はあらゆる苦痛の軽減を図れますから、
覚えておくと良い手段であると思います。
もちろん他の方法での苦痛緩和を検討後に行うべき
ものではありましょう。けれども持続的なものとは
違って、ずっと眠らせるというようなものではないので、
コミュニケーションの機会が奪われる心配もありません。
重度の不眠に対する治療も、間欠的鎮静と同じです。

なお、ベッドサイドに医療者が付いて行う方法ならば、
ミダゾラムの呼吸抑制の心配もかなり少なくなります。
その人に合わないスピードで点滴するから呼吸抑制に
なるので、脇でしっかり観察しておけばまず大丈夫ですし、
またスピードを緩めた後の時間5~10mlあるいは
20ml程度では、呼吸抑制を起こすことはそれほど
ないと思いますが、とにかく観察は怠らないようにして
おいてください。どんな医療行為にも油断は禁物です。


道具は使い方で益にもなれば害にもなります。
習熟が望まれます。

それでは皆さん、また。
失礼します。