もう一つ時期があったので転載します。
こちらは産経新聞で、こちら




今何ができる(7)被災者の心のケア 東日本大震災
2011年3月24日(木)08:00
 無理に感情抑えない 頑張りすぎない

 東日本大震災で家屋を失うなどして、多くの人が避難所生活を余儀なくされている。慣れない避難所生活で体調を崩す人が相次いでいるが、大災害に遭った後は体と同じように心も大きく傷つく。「イライラする」「涙が止まらない」など“心の変化”は誰にでもあることで、ほとんどは時間とともに回復する。無理に感情を抑えたり、頑張りすぎたりしない。もし、症状が改善されないときは専門家に相談することも大切だ。(平沢裕子)

 気持ちをつづる

 「心のケア」の必要性は多くの人が認識している。しかし、「何をしたらいいのか分からない」という人は少なくない。

 近畿医療福祉大社会福祉学部の勝田吉彰教授(臨床福祉心理学)は「不安そうな人や黙り込んでしまっている人を見かけたら、そばにいてあげてほしい。このとき、何か話さないといけないと思っている人は多いが、黙ってそばにいてあげるだけでもケアになる。手を取り合ったり、肩に手を置いたりして体に触れることで、お互いの気持ちが和らぐことにもなる」と話す。

 被災者の中には、自分が助かったことに罪の意識を持つ人も多い。身近な人や多くの人の命を助けられなかったことを自分の責任と考え、「なぜ助けられなかったのか」「自分だけが生き残ってしまった」という罪悪感にとらわれてしまう。

 「事故や自然災害などで、助かった人が亡くなった人などへの罪悪感を覚えるのは自然な感情。でも、客観的に見れば悪くないことを知ってほしい。もし落ち込んでいる人がいたら、話を聞いてあげるなどサポートしてあげてほしい」と勝田教授。

 悲しみや怒りを表現することができれば、苦しみは少しずつ癒やされていくことが知られている。平気なように装い明るく見せることは、逆に心の回復を遅らせてしまう可能性もある。つらいときは気持ちを打ち明けることも大切だ。話ができる相手がいないときは、自分の気持ちを文章につづってみることも役に立つ。

 一緒にいる時間を

 乳幼児や小学生といった子供では、心の変化が大人と違った形で表れることがある。よく見られるストレス反応として、寝付きが悪くなる▽わがままを言う▽大人びた態度を取ったり他人の世話をやきたがる-などがある。ほとんどは時間とともに回復するため心配はいらないが、症状が長引いて気になるときは相談窓口や巡回の人に相談してみるといい。

 日常生活では家族が一緒にいる時間を増やしたり、子供が話すことをきちんと聞いたりする。食事や睡眠などの生活リズムも崩さないようにすることを心掛けたい。

 一方、高齢者はどうしても我慢しすぎる傾向にある。眠れない日が続くときは医師に相談し、睡眠薬を服用するのも体を休めるためには必要だ。

 勝田教授は「時間が経過することで多くの人の症状は落ち着いてくる。ただ、気になる症状が1カ月以上続くようなら専門家に相談してほしい」と話している。

 震災後の心と体の変化

 【被災した人なら誰もが感じること】

(1)地震が怖くてたまらない。

(2)大切なものを失った悲しみ、寂しさ。

(3)自分をとても無力なものに感じる。

(4)どうして自分がこういうひどい目に遭わなくてはならないのかという怒り。

(5)肉親や身近な人を助けられなかったことで、悔やんだり自分を責めたりする。

(6)将来に希望が持てず、不安になる。

(7)何事にも無関心、無感動になってしまうときがある。

 【体に起こりやすい変化】

(1)疲れがとれない。

(2)眠れない、悪夢を見る、朝早く目覚める。

(3)物覚えが悪くなったり、集中できない。イライラする。

(4)吐き気、食欲不振、胃痛。

(5)下痢、便秘。

(6)動悸(どうき)、発汗、手足の冷え。

(7)その他(関節痛、腰痛、頭痛、めまい、性格の変化など)

(宮城県精神保健福祉センターのHPから)
(赤文字強調:ブログ著者)



ポイントは二つあります。

支える側の人間は、気のきいたことを言わなくて良いと
いうことです。先の記事でも書いたように、聴くことが
全てです、答えられなくても良いのです。そのもどかし
さと付き合いながら、ひたすら聴き続けるのが立派なケアです。

もうひとつは、辛い経験をされた方も、それを支える側も、
「自らを赦す」ということです。人はスーパーマンではありません。
こういう時は、無力さをとことん味わいます。だから自らを
責めることはありません。こういう時は、他人に実害がない
範囲で、わがままになってもいいのです。言いたいことを言っても
いいのです。

人は時間薬で、多くが復活します。諏訪中央病院の名誉院長の
鎌田實先生の書名と同じく、「がんばらない」です。けれども
「あきらめない」です、いつか復活することを。

それにしても、普段緩和ケアで行っていることと、記事で
述べられていることは変わりがありません。人の話をよく聞いて、
もどかしさに耐え、自分を赦し、自然回復力を信じて時を過ごす
こと、これはどのケアにも共通するものなのでしょうね。