終末期の嘘シリーズ4です。

モルヒネで眠らせてやってほしい、
そんな言葉がご家族から聞かれることがあります。
また医療者が言うことがあります。
「モルヒネで鎮静(うとうと眠らせて苦痛を取り
除くこと)させます」

これ、間違いですよ。

まず余命が数日となった高度な苦痛(主として
全身倦怠感)にはモルヒネはあまり効きません。
その段階ですと、むしろ鎮静剤が苦痛を和らげる
ために使用されたほうが適切です。鎮静剤は
どういう薬かと言いますと、ドルミカム(ミダゾラム)
という睡眠薬などと同じような系統の薬剤です。
睡眠薬の代表格・レンドルミンなどと同じ種類の
薬剤の点滴薬です。

この鎮静を「モルヒネ」で行っている医療施設が
まだまだあるようです。確かに僕も研修医の時に
呼吸器内科の先生にそう教えられました。けれども、
ホスピスでそれは間違いだということがわかりました。
ホスピス・緩和ケアを専門とする施設では鎮静目的
ではモルヒネを使用しません。

なぜならば、
モルヒネは眠りにいざなう作用が弱く、また眠りに
いざなう濃度より上げると呼吸抑制が起きやすくなる
ことや、神経過敏性があるのでせん妄・混乱等の
精神神経症状を誘発しやすいなどの理由で、
鎮静に使う薬剤としては推奨されません。

日本緩和医療学会の鎮静のガイドラインでも、
推奨されない由が記されています。終末期の患者さん
に鎮静目的でモルヒネは使用しないと考えてください。

なお鎮静のガイドラインは下記です。
↓↓↓
$大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba

まだまだ勘違いされてらっしゃる医療者がいるので
お気をつけください。さらに言えば、適正な鎮静は
「命を縮めません」。命を縮めることが前提のような
説明を医療者がしていることがあります。要注意です。

ガイドラインに則って使用すれば、命を縮めること
はありません。ただし問題は、鎮静が必要なほど
苦痛が強い際は平均的余命が数日であることです。
本来鎮静は命の長短には関与しませんが、「いよいよ
鎮静します」と言われて数日でお亡くなりになることが
多いので、よく勘違いされます。そこらへんも十分
説明しなければいけません。

鎮静は続編が出たときにでも詳述しようかと思いますが、
モルヒネについては拙著をご参照ください。
モルヒネは誤解が多いです。少なくともモルヒネで
「命を縮めたり」「意識を変えたり」することはありません。
「意識を変えずに普通のままで、痛みを緩和する」のが
モルヒネです。

『世界イチ簡単な緩和医療の本』をご覧ください。

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周囲にこのモルヒネと鎮静の真実を伝えてください。
そして一人でも多くの方の苦痛が、負担なく
取り除かれることを祈ります。

それではまた。
失礼します