終末期の嘘シリーズ2です。
こちらも何度かブログで述べてきました。
これも残念ながら、現場でまだまだ
しっかり行われているとは言い難いです。

まず余命が数ヶ月以内の患者さんのがんに
よる胸水に、ドレナージする管(胸に管を入れて
胸水を汲み出す管)を入れたりする必要は
ありません。胸膜癒着術も必要ありません。

なぜならば以下の2つを押さえるだけで、
がん性胸水がそれ以上貯留するのを防げるからです。
騙されたと思ってやってみてください。胸水の量が
画像上で減らなくても苦痛症状はかなり改善します。
結果として穿刺やドレナージが不要になります。

①輸液を1000mlに減らします。
輸液が多ければ胸水も減りません。輸液が多い
からいつまでも胸水がひどい可能性があります。
50%ブドウ糖を使用すれば、500mlの点滴
でも1000kcalを確保できます。胸水
からの排液が多いからと輸液を増やすのは原因と
結果を取り違えています。輸液を減らせば排液も
減るはずです。やってみてよく観察してください。
なおこの場合に輸液を減らして脱水やショック
状態になったことは僕は一度もありません。
なお、腸閉塞の時と同じように、輸液の量が様々
な分泌を増やしていることに注目ください。これ
は嘘シリーズでまた取り上げます。輸液を減らす
勇気を持ってください。輸液が多すぎるので苦痛
を増やし、もしかすると命を縮め、亡くなられた
方の体を水膨れにしているかもしれません。

②リンデロンかデカドロンを4~8mg/日使用します。
胸水の分泌を減らします。がん性胸膜炎を軽減させて
効いているものと思われます。リンデロンやデカドロンは
もちろん内服でも大丈夫です。

この治療についてはかなり自信があります。
ほぼ100%、この方法でドレナージすることなく
僕はがん性胸膜炎による胸水を治療してきました。

それではなぜドレナージや癒着術を勧めないか。

それは胸水が産生されている原因ががん性胸膜炎
だからです。がん性胸膜炎を制御しなければ、
胸水が減ることはありません。
侵襲を与えて管を入れるか、癒着術をしても、
産生を抑えることはできないのです。
僕は「蛇口を絞る治療」がステロイドだと思います。
癒着術をしてもうまくいかなかった方もいるのでは
ないでしょうか?
それは蛇口を絞らないまま、穴に木を当てている
ことと同じです。蛇口を絞れば良くなります。
蛇口を絞るのが、ステロイドですし、輸液の適正化です。

癒着術は、回数を重ねると隔壁ばかり増えて、
また薬剤が広がりにくくなります。何しろ蛇口が
全開ならば、木を接着していてもベリッと剥がれて
しまうのではないでしょうか。それと同じことです。

一度ぜひやってみてください。僕が言っていることが
嘘ではないとわかるはずです。

輸液の調節とステロイドの使用は全く痛くありません。
痛みを伴う治療をあえて選択するよりも、
負担が少ないことをやってダメなのを確認して
から次を考えてみるべきなのではないでしょうか。

詳細は僕の本、
『世界イチ簡単な緩和医療の本』をご覧ください。
やり方が書いてあります。
$大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba

こちらも常識に拘泥するのは怖いものです。
一人でも多くの人の苦痛が、負担なく
取り除かれることを祈ります。

それでは失礼します。