皆さん、こんにちは。大津です。
クリスマス前のお休み、皆さんはいかが
お過ごしでしたか?

さて、今日のお題は「誤りを認めること
ができない人びと」です。

先日、テレビドラマ『獣医ドリトル』を見ていたら
成宮寛貴さんが演じる花菱先生が、実は自らが
手術ができない獣医師であることをテレビで吐露し・・
というシーンがありました。花菱先生はテレビに出演する
有名獣医師だったにも関わらず、昔のトラウマから手術が
できず、小栗旬さん演じる鳥取先生に手術を頼むことも
しばしばあったのです。良心から、彼は批判を承知で真実
を伝え、そして大変な目にあいました。それでも嘘を騙る
ことを厭い、彼は過ちを認めたのです。

ドラマのこととは言え、清々しいなあと思いました。
(ハラハラもしましたが)
というのは、今年も例年と同じく、この逆事例をたくさん
見聞したからというのもあります。

『ベスト&ブライテスト』の記事で書いたように、
人は誤ります。そして容易にそれを認めることができません。
誤ったと思っても、目をそむけます。隠蔽しようともします。
巧妙なプロパガンダに簡単に騙され、本当の悪を見抜けないで
身代わりもしくは悪くない側を糾弾し、おかしいと思っても
周囲の顔色を見て口をつぐみます。

人はこのように、誤るものです。間違うものです。

けれども、以前上杉隆さんの本に触れましたが、
「人は間違ってはいけない」という無謬の建前を押し付けること
により、風通しの良い議論ができず、本質的な、思考停止のない
論議から遠く、結果的により高次の解決から離れてしまう愚、
それを我々は冒しているのではないでしょうか。

今年、僕は講演に出かけるためにいた空港で、ちょっと
驚く新聞記事を某朝刊の1面に認めました。
なぜこんな、おそらく問題にするような事象ではないことを、
1面で取り上げるのか? 素直な(?)僕はただただ驚くだけでしたが、
それにも色々な裏があるのではないかということを後に漏れ聞きました。

その後、これは本来問題ではないことを、医療界の専門家たちが
伝えようとしました。さらに僕が驚かされたのは、この専門家たちに
新聞社の代理人から「場合によっては法的措置を取る」という内容証明
郵便が送られてきているというのです。

意見の相違があるからといって、すぐ「訴訟」なのでしょうか。

記事を書かれた方にとっては大きな問題なのでしょうが、私から見れば
この問題は問題と呼べるような代物ではないと考えます。
ましてや、そのことを指摘されて、「法的措置」というプレッシャーを
与えるのは、不毛な争いであり、非建設的であり、得する人間は誰もい
ないのではないかとさえ思います。不毛な争いで、本気で人のために働
いている方々の労力を削がないでいただきたい、そう思うのです。

そしてまた、例えば上杉隆さんの著作等を見る限り、今の日本には一面
で報じるべき問題がもっとたくさんあります。なぜこんな問題を取り上
げるのか、現場の人間としては全く理解ができません。しかしそのこと
こそ、真の「問題」なのだと思いますし、普通に追加取材を行えば明ら
かに問題ではないとわかることを認めないのは、真実から目を背けてい
るのか、自己主張を強弁しているのか、そのいずれかでしかないと思い
ます。ましてや、反対意見を述べる相手に「法的措置」など、私は愕然
としました。あってはならないことだと思います。

世の中に「完全に」公平な人間などいません。
全ての事象は自らの脳を通って認識されます。
完全中立で、無謬の意見などありません。
その限界を皆が知ったうえで、言うべきことは言い、間違いは振り返って
素直に謝れる、そしてノーサイド、そういう世の中でありたいと思います。
今回の件は、既に問題ではないことを大仰に取り上げたこと、反対言論を
訴訟をちらつかせて封殺しようとしていること、という二つの過ちを犯し
ています。もう過ちを認め、終わりにすべきことと思います。

このような状況を見るたびに、残念な気持ちになります。
まだまだ社会全体の成熟が必要なのでしょう。

あまりに不毛な闘いが多かった一年と思い、あえて記しました。
新聞ばかりではなく、民主党の内輪もめも同じ、皆さんは何のための
プロフェッショナルなのか、それを自認し、行動して頂きたいと思います。
メディアは、問題の本質を、権力におもねることなくしっかりと報じる。
メディアは独立した力ではなくてはなりません。もっと報じるべきことを
掘り下げていくべきです。件のようなことを報じるのは結構ですが、
第一に問題ではないことですし、第二になぜもっと世の中にはびこってい
る悪を伝えないのか、と思います。
そして政治家は国の10年、20年先を考え、行動する。
人間の集まりなのでやむを得ませんが、今求められていることは権力闘争
でもなく、安易な付加価値税の増額でもなく、行政についた贅肉を削ぎ落
とすことでしょう。
私たち現場の医療界の人間も、1年を振り返り、患者の幸福に寄与するこ
とを第一に励んできたか、それを厳しく自問自答すべきでしょう。そして
その反省を来年に生かしたいところです。

社会の病はまだまだ多く、残念ながら悪も大きなところから
小さなところまで認められ、道はロングアンドワインディングロード
でしょう。けれどもやはり、人の可能性に期待したいと思います。
500年前、1000年前よりは多分ずっと良い世界になってきたの
ですから。

大きな話になってしまいました。

それではまた。
失礼します。