皆さん、こんにちは。大津です。
今日も寒いですね。
『世界イチ簡単な緩和医療の本』を見て、
主治医にお願いしたら処方が出て、苦痛が
緩和されたという嬉しいメッセージが届き
ました。ゆらさん、ありがとうございました。
主治医の先生もゆらさんのお話を聞いてくれて
ありがとうございました。
ブログのリンク「本を読んで一言」のコメント
にも、拙著『死学』を主治医の先生にご覧に
なってもらって、変わったというエピソードが
あります。
一般の方と医療者のコミュニケーションを促進
する道具であることを願って、できるだけ平易
に記してありますので、これらのような使い方
をしてくださると本当に嬉しいです。
またきちんと患者さんやご家族の声に耳を傾けて、
方針を修正される主治医の先生方にも深く感謝します。
これまでの経験からは、それは一見常識と思われない
方針かもしれません。それにも関わらず患者さんやご家族
の声に耳を傾けようとされる姿は度量が広く柔軟で素晴らしい
と思います。
どうか拙著をうまく利用して、一人でも多くの方が
よい時間を過ごされることを願ってやみません。
さて、今日はベスト&ブライテスト、
という本を紹介します。
![$大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba](https://stat.ameba.jp/user_images/20101118/07/setakan/d8/63/j/t02200220_0500050010865898237.jpg?caw=800)
3冊ある、難解ではないけれども
読みやすくもないこの本。しかし、非常に
面白い本です。
世間では「人材がいない、人材がいない」と
お嘆きの管理職の方も少なくないと思います。
そんな方々から見れば垂涎の的であろう、
アメリカ大統領とその側近たち。
言うまでもなく、アメリカ大統領の周りは
アメリカの超一流大学出身者や超エリートで固められています。
時代は1960年代、ケネディやジョンソンが大統領の
時代です。ベスト&ブライテスト、は最高かつ聡明な
という意味です。当時のアメリカ大統領とその側近たちも
まさにそういう人材がきら星のように集っていたのです。
天才と秀才たちの集団・・普通に考えれば彼らが考え
行った政策は最善かつ最良のものとなるだろうと誰もが
予想することでしょう。
しかし・・・私たちは歴史を勉強すれば、彼らの行く末
が見えます。彼らは泥沼のベトナム戦争に引きずり込まれ、
敗戦を余儀なくされます。けれども、引きずり込まれた、
のではなく、「自ら破滅に向かっていった」、ということを
この本ははっきりと示しています。
なぜ最高の人材を揃えていたのにも関わらず、失敗したのか。
本を読むとわかりますが、政治に関わる人間も、それぞれ
主義主張が異なります。どんなデータをベースに考えるか
でもものの考え方は変わってきてしまいます。南ベトナム
のアメリカ軍人は誤った情勢を送り、それを鵜呑みにする
高官のせいで、政府はどんどん間違った方向へ進んでいって
しまいます。そして複雑な要因が絡み合うことで、現地の情勢
を見誤ったアメリカは、ベトナム戦争に突入してゆくことにな
るのです。
興味深いなあと思ったのは、ベトナム介入に対して懐疑的
だった高官もたくさんいたことです。けれども介入派は
あの手この手を使って、これらの高官を政府から追い出して
しまうのです。正しいことを言っていた人は追い出され、
あるいは無実の罪で烙印を押され、政府から姿を消して
いきます。残るのは誤った認識を持った人たちだけで、
彼らによってアメリカにもベトナムにも悲劇がもたらされる
のです。介入派は「現場への理解」が決定的に欠け、自らの
主義主張に凝り固まるあまり、柔軟な思考に欠けていたこと
も大きいでしょう。ベスト&ブライテストなのにも関わらず、
やっていることは反対派の追い出しなのです。
この本を読むとつくづく実感しますが、
ベスト&ブライテスト、でも当然人間は過ちを犯します。
賢く聡明だから間違いを犯さないわけではない。
いやむしろ、同じ考えのものを集め、それ以外を排斥し、
間違った方向へ一丸となって進んでしまうことで、
大きな破滅がもたらされてしまうのです。影響力が強く、
願ったことを実行に移す力も強いゆえに、ベスト&ブライテスト
の暴走はとても恐ろしいものなのです。
先日介護業界活性化フォーラムで出演されていた
猪瀬直樹さんの「昭和16年夏の敗戦」でも、
ベスト&ブライテストでも、戦争前のシミュレーションで
戦争の敗北は既に予想されていたことでした。それでも
1940年代の日本、1960年代のアメリカは
戦争に突入してゆくのです。
卑近なことに目を向けてみると、
医療の現場でも、人の価値観はそれぞれ違うがゆえに、
主義主張がぶつかり合い、心からの同意なき多数決で
物事が決まることがあるでしょう。けれども、
①その方たちは何を望んでいるのか、を知る。
・・ベスト&ブライテストなら1960年代のベトナム人、
現在の医療現場だったら患者さんやご家族の望みは何か。
②それを知るためにはどうしたら良いのか、を考える。
・・現地に行って、曇りなき目で見なければいけません。
このときに、自分の主義主張はいったんふたをしなければ
ならないでしょう。きちんと色々な意見を傾聴すること。
③より良いと思われる方法を、誰かを排除することなしに
達成する・・すべての人間がわかりあうことは困難ですが、
心を尽くして、相手の立場も配慮しながら、しかししっかりと
より良いと思われる方法を述べ、理解してもらう。
ということが大切なのではないかと感じました。
また、ベトナム介入反対派も、この本を読むときちんと自らの
意見を述べ、それがゆえに煙たがられ、最後追い落としされて
しまう人がたくさんいたことがわかります。けれどもこのように、
自らの正しいと思う意見をしっかりと述べることができる(それが
自らの地位の保全に不利益であっても)人が少なからずいたこと、
そしてまたこのベスト&ブライテストのような本が出版される
ところに、アメリカの底力を感じました。そしてまた1960年
代の失敗を生かして、さらに進化もしているでしょう(・・と
言いながら、イラク戦争等は同じことを繰り返しているようにも
見えますが、まあこれが人間なのでしょう)。
違う考えを持つのが当たり前であるがゆえに、
それをどうやってより良いものに昇華させていくのは
大きな課題だと思います。僕も引き続き考えていきたいところです。
週も後半戦、頑張って参りましょう!
それではまた。
失礼します。
今日も寒いですね。
『世界イチ簡単な緩和医療の本』を見て、
主治医にお願いしたら処方が出て、苦痛が
緩和されたという嬉しいメッセージが届き
ました。ゆらさん、ありがとうございました。
主治医の先生もゆらさんのお話を聞いてくれて
ありがとうございました。
ブログのリンク「本を読んで一言」のコメント
にも、拙著『死学』を主治医の先生にご覧に
なってもらって、変わったというエピソードが
あります。
一般の方と医療者のコミュニケーションを促進
する道具であることを願って、できるだけ平易
に記してありますので、これらのような使い方
をしてくださると本当に嬉しいです。
またきちんと患者さんやご家族の声に耳を傾けて、
方針を修正される主治医の先生方にも深く感謝します。
これまでの経験からは、それは一見常識と思われない
方針かもしれません。それにも関わらず患者さんやご家族
の声に耳を傾けようとされる姿は度量が広く柔軟で素晴らしい
と思います。
どうか拙著をうまく利用して、一人でも多くの方が
よい時間を過ごされることを願ってやみません。
さて、今日はベスト&ブライテスト、
という本を紹介します。
![$大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba](https://stat.ameba.jp/user_images/20101118/07/setakan/d8/63/j/t02200220_0500050010865898237.jpg?caw=800)
3冊ある、難解ではないけれども
読みやすくもないこの本。しかし、非常に
面白い本です。
世間では「人材がいない、人材がいない」と
お嘆きの管理職の方も少なくないと思います。
そんな方々から見れば垂涎の的であろう、
アメリカ大統領とその側近たち。
言うまでもなく、アメリカ大統領の周りは
アメリカの超一流大学出身者や超エリートで固められています。
時代は1960年代、ケネディやジョンソンが大統領の
時代です。ベスト&ブライテスト、は最高かつ聡明な
という意味です。当時のアメリカ大統領とその側近たちも
まさにそういう人材がきら星のように集っていたのです。
天才と秀才たちの集団・・普通に考えれば彼らが考え
行った政策は最善かつ最良のものとなるだろうと誰もが
予想することでしょう。
しかし・・・私たちは歴史を勉強すれば、彼らの行く末
が見えます。彼らは泥沼のベトナム戦争に引きずり込まれ、
敗戦を余儀なくされます。けれども、引きずり込まれた、
のではなく、「自ら破滅に向かっていった」、ということを
この本ははっきりと示しています。
なぜ最高の人材を揃えていたのにも関わらず、失敗したのか。
本を読むとわかりますが、政治に関わる人間も、それぞれ
主義主張が異なります。どんなデータをベースに考えるか
でもものの考え方は変わってきてしまいます。南ベトナム
のアメリカ軍人は誤った情勢を送り、それを鵜呑みにする
高官のせいで、政府はどんどん間違った方向へ進んでいって
しまいます。そして複雑な要因が絡み合うことで、現地の情勢
を見誤ったアメリカは、ベトナム戦争に突入してゆくことにな
るのです。
興味深いなあと思ったのは、ベトナム介入に対して懐疑的
だった高官もたくさんいたことです。けれども介入派は
あの手この手を使って、これらの高官を政府から追い出して
しまうのです。正しいことを言っていた人は追い出され、
あるいは無実の罪で烙印を押され、政府から姿を消して
いきます。残るのは誤った認識を持った人たちだけで、
彼らによってアメリカにもベトナムにも悲劇がもたらされる
のです。介入派は「現場への理解」が決定的に欠け、自らの
主義主張に凝り固まるあまり、柔軟な思考に欠けていたこと
も大きいでしょう。ベスト&ブライテストなのにも関わらず、
やっていることは反対派の追い出しなのです。
この本を読むとつくづく実感しますが、
ベスト&ブライテスト、でも当然人間は過ちを犯します。
賢く聡明だから間違いを犯さないわけではない。
いやむしろ、同じ考えのものを集め、それ以外を排斥し、
間違った方向へ一丸となって進んでしまうことで、
大きな破滅がもたらされてしまうのです。影響力が強く、
願ったことを実行に移す力も強いゆえに、ベスト&ブライテスト
の暴走はとても恐ろしいものなのです。
先日介護業界活性化フォーラムで出演されていた
猪瀬直樹さんの「昭和16年夏の敗戦」でも、
ベスト&ブライテストでも、戦争前のシミュレーションで
戦争の敗北は既に予想されていたことでした。それでも
1940年代の日本、1960年代のアメリカは
戦争に突入してゆくのです。
卑近なことに目を向けてみると、
医療の現場でも、人の価値観はそれぞれ違うがゆえに、
主義主張がぶつかり合い、心からの同意なき多数決で
物事が決まることがあるでしょう。けれども、
①その方たちは何を望んでいるのか、を知る。
・・ベスト&ブライテストなら1960年代のベトナム人、
現在の医療現場だったら患者さんやご家族の望みは何か。
②それを知るためにはどうしたら良いのか、を考える。
・・現地に行って、曇りなき目で見なければいけません。
このときに、自分の主義主張はいったんふたをしなければ
ならないでしょう。きちんと色々な意見を傾聴すること。
③より良いと思われる方法を、誰かを排除することなしに
達成する・・すべての人間がわかりあうことは困難ですが、
心を尽くして、相手の立場も配慮しながら、しかししっかりと
より良いと思われる方法を述べ、理解してもらう。
ということが大切なのではないかと感じました。
また、ベトナム介入反対派も、この本を読むときちんと自らの
意見を述べ、それがゆえに煙たがられ、最後追い落としされて
しまう人がたくさんいたことがわかります。けれどもこのように、
自らの正しいと思う意見をしっかりと述べることができる(それが
自らの地位の保全に不利益であっても)人が少なからずいたこと、
そしてまたこのベスト&ブライテストのような本が出版される
ところに、アメリカの底力を感じました。そしてまた1960年
代の失敗を生かして、さらに進化もしているでしょう(・・と
言いながら、イラク戦争等は同じことを繰り返しているようにも
見えますが、まあこれが人間なのでしょう)。
違う考えを持つのが当たり前であるがゆえに、
それをどうやってより良いものに昇華させていくのは
大きな課題だと思います。僕も引き続き考えていきたいところです。
週も後半戦、頑張って参りましょう!
それではまた。
失礼します。