拙著『死学』や『瀕死の医療』でも
書きましたが、一部の医療者も含めた点滴信仰には
なかなか難しいものがあります。

終末期であるにも関わらず毎日
2000ml/日もの輸液がされていれば
どうなるでしょうか?

「むくみがひどい」
「たんがひっきりなしにごろごろする」
「発汗が著しい」
「腸閉塞で腸がパンパンである」

・・実は体の処理能力を超えた
点滴の多さで、より苦痛症状が増している
場合も少なくないのです。
健康人でも多飲すれば、多尿ともなるし、
発汗も増えます。終末期においては、
余剰の水分を適切に体外に放出することが
出来ず、むくみやたん等の気道分泌物を増や
したりする結果となるのです。
つまり、処理能力を超えた点滴を行えば、
余剰の水分によって患者さんの苦痛が増すと
いうことです。

「いかん、脱水になってしまう!」
・・とさらに点滴を増やす人がいます。
あるいはもっと点滴を増やしてほしいと
希望される方がいます。
医療者にも、患者さんにも家族にも
いらっしゃいます。
そしてますます苦痛症状が増えます・・。

思い込みにとらわれていると、
いつまでも真実に気が付きません。
終末期においては、あるいは超高齢の方、
体が弱った方の医療に携わっている方は
「むくみが出ない量に」
「気道分泌物が減る量に」
「著しい発汗がない量に」
点滴を減らして下さい。

毎日しっかりと観察すれば、何が
真実なのか、そしてどれくらいの量が適切
なのか、必ずわかるはずだと思います。
『適切な量に』点滴を減らしましょう。
(そしてほとんどの場合、終末期の患者さんに
対する点滴量は多すぎると思います)