押尾学氏が合成麻薬の件で逮捕されましたね。

それにしても、
なぜ芸能人の一部はこうやってクスリに依存するのでしょうか。

過密なスケジュールや、いつまで売れるかわからない不安、
などなどからクスリに走ってしまう・・。
そういう話を聞いたこともあります。
またおそらくそういうクスリが手に入りやすい環境という
こともあるのでしょう。

確かに、世の中はhappyで満ちあふれているものではありません。
むしろ職業柄、人生は喜びよりも苦難の方が多いのではないかと
さえ思います。
しかし、では、僕がこれをペシミスティックにぶつぶつ
言っているかというと、そうではないのです。
基本、人生はなかなか辛いもの。しかしその合間合間には
ちゃんとした楽しみ、喜び、幸せがあると思うのです。
そういう幸せを、僕はかけがえがないと感じています。

ただそういう風に思えるのも、やはり患者さんやご家族の
姿を見て、そこから学ばせて頂いたゆえだという部分が
大きいのではないかと思っています。
この世の現実を、見て、聞いて、少し知ったおかげで
「悩み多き人生」とどうにか付き合えているような、
そんな気がするのです。

人間が完全に満足するというのは困難だと思います。
功名心から、あるいは財を築きたいという強い意志から、
例えそれを成し遂げたとしても、心のどこかの虚しさを
消すことは出来ないでしょう。心の渇きは物質で満たされる
ものではないからです。

すると、クスリで我を忘れ、違う世界にトリップしたく
なる、あるいは享楽の世界に身を委ねたくなる。
・・気持ちはわからなくもありません。
しかし・・、それは根本解決ではないのです。
そして悪いことに、クスリに頼れば、依存が形成され
クスリのために生きる人生へと次第に変貌していきます。
いつの間にか、クスリの奴隷になってしまうのです
(なお僕たちが医療で使っている麻薬は、正しく
使用しているので、このような精神依存を形成することは
ありません。僕も一例も経験はないです。もう数千回は
処方していると思われますが、一例も、です)。

人生は楽しいことがないから、と言って、
クスリで逃避するのではなく、それを受け入れることから
いかにして生きるべきか、そこに考えを巡らせてもらいたいと
思います。どの人の人生も、けして楽ではないことを知れば、
そしてそれが自然に思えるようになれば、苦しさはぐっと
和らぎます。

皆が、もたれかかることはあっても
依存することなく、人生を歩んでもらいたいなと
僕は願っています。

人の欲は際限がないものです。
押尾氏も、人がうらやむような奥さんを持ちながら
なお満足することが難しかったのでしょう。
しかしそれを他の人や物や、ましてやクスリで埋めようと
思っても、それは無理なのです。
「自分自身が足ることを知る」これに勝る処方はないと
思います。