新国立競技場のデザインがA案、6.8万人・約1490億で決定しました。
遅ればせながら、私なりの考えをお伝えしたいと思います。

なお、お断りしておきますが、私は建築業界でも何でもありません。
ただのスポーツファンです。
結論から言うと、スタジアムのオシャレ度をマスコミはちゃんと
取材して報道してもらわないと、判らないと言うことです。
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まず国内的には、2002年のW杯に向けて作られたスタジアムや、野球場の例を示しつつ、スタジアム建設費について述べられています。
 
例えば、
Yahoo News
「スタジアムの建設費はどのくらい?――予算2520億円の新国立競技場はいかに高いか」 松谷創一郎氏 2015年7月10日
です。
 
そこには京セラドーム(3.6万人)が696億円、
日産スタジアム(7.2万人)で、603億円などの例が示されています。
 
この記事を見ると、ザハ氏の案を元にした2520億(3462億円:2015/08/20日テレ報道による)はあまりに高いと言う結論になるし、
今回決まった新しい案の1490億だって、
日産スタジアムの倍以上とバカ高い建設費であることになります。
 
 
ところで、NFLの頂上決戦:スーパーボールは今年50回を迎えます。
即ち50周年。
コンクリート構造物の耐久年数的に言って、各地のスタジアムは建て代え時を迎えています。
2000年以降開場のものを下に記載しますが、
NFLは32チームですので、この15年で、約半分建て代わるか、
建設中であることになります。
 
アメリカンフットボールのフィールドは、長手方向で約140m、
陸上競技場はトラックを伴うので約200m。
ちょっと小さ目ではありますが、建設コストを経年で列挙してみます。

                        着工    開場  座席   表面   屋根 建設費Million
Paul Brown Stadium(シンシナティ)  1998.04  2000.08  65,535  人工芝  無し  $455M
Sports Authority Field            1999.08  2001.09  76,125  天然芝  無し  $401M
   at Mile High(デンバー)
Heinz Field(ピッツバーグ)            1999.06  2001.08  68,400  天然芝  無し  $281M
Gillette Stadium(マサチューセッツ)    2000.03  2002.05  68,756  人工芝  無し  $325M
CenturyLink Field(シアトル)          1999.09  2002.07  69,000  人工芝  無し  $430M
Ford Field(デトロイト)                  1999.11  2002.08  65,000  人工芝  固定  $430M
NRG Stadium(ヒューストン)            2000.03  2002.08  71,795  人工芝  開閉  $352M
Lincoln Financial Field              2001.05  2003.08  69,176  天然芝  無し  $512M
   (フィラデルフィア)
University of Phoenix               2003.04  2006.08  63,400  天然芝  開閉  $455M
   Stadium  (アリゾナ)                                (芝育成は屋外・引き込み式)
Lucas Oil Stadium (インディアナ)    2005.09  2008.08  62,421  人工芝  開閉  $720M
AT&T Stadium(ダラス)                2005.09  2009.05  80,000  人工芝  開閉  $1,300M
MetLife Stadium(ニューヨーク)         2007.05  2010.04  82,566  人工芝  無し  $1,600M
Levi's Stadium(サンフランシスコ)       2012.04  2014.07  68,500  天然芝  無し  $1,300
U.S. Bank Stadium                   2013.12  2016.08  65,400  人工芝  固定  $1,061M
  (ミネアポリス)
Mercedes-Benz                       2014.05  2017.03  71,000  人工芝  開閉  $1,400M
 Stadium(アトランタ)
 
 
見ての通りLucas Oil Stadium(2008年開場)あたりから、
建設費が上がり始め、ざっくりで3倍に跳ね上がっています。
ちょっと物価や人件費の上昇だけでは、考えられないインフレ状態です。
 
ちなみに最大はニューヨークのMetLife Stadiumで$1600M(屋根無し)。
計画時の為替は¥80/$くらいでしたから、約1300億円、
今の為替なら約2000億です。
 
唯一ニューヨークはJETSとGIANTSの2チーム有りますので、
単純に倍試合できるとは言え。
 
アメリカでも当然議論になります。
ちょっと検索してみると、以下のような記事が出てきます。
11 Most Expensive Stadiums In The World
  http://www.totalprosports.com/2011/10/27/11-most-expensive-stadiums-in-the-world/
How Stadium Construction Costs Reached the Billions
 
要約すると、確かに鋼材を中心に建設資材費も上がったのだが、
それまではゲームを見るだけで良かったものが、
そうはいかなくなってきていることと、
オーナーが要求する仕様がどんどん贅沢なものになってきているとのことです。
 
例えば、打ちっ放しのブロック壁という訳にはいかないし、巨大モニタや、
通信設備も必要で、レストランだって新しいスタジアムには設置される。
エコや身障者の配慮もより厚く必要になっているとのこと。
 
今回の新国立競技場が、アメリカのスタジアムと同じような理由で、
2000年代前半までのスタジアムとは違うものであるならば、
建設費用が1490億円とか(2520億円とか)いうのも、
あながち、変な数字ではないのかも知れません。
 
日産スタジアムの2.5倍なら、NFLのスタジアムの建設費の傾向と
あまり変わらないのですから。
 
マスコミは、建設費を論じるならば、大阪ドームや、横浜日産スタジアムと
単純に比較したのは浅かったのかも。
 
ひょっとしたら、新国立競技場を計画する文科省・JSCが、
当初1300億円と決めたのが、そもそも甘かったためで、
それを役人として認めるわけにはいかないので、
ひねり出した論調を、そのまま報道しているのではないでしょうか?
 
新国立競技場が、どのくらいオシャレで、
先端技術の取り入れられた優しいスタジアム計画になっているのか、
取材してみる必要がありそうです。
 
逆に殺風景なスタジアムなら建設費がいくらか、と言うのでも良いのですが。。。
どこか心ある報道機関は是非とも検証していただきたい。
 
 
なお、新国立競技場の大きな仕様としては、以下のように考えています。
そもそもは、今の場所に拘ったのが間違いだと思います。新しく土地を求めるべきだったと。
今の場所だとするなら、周囲の場所的な制約がある以上、外すべきものは、しっかり除外すべきです。
 
結論的には現状案で賛成です。
①オリンピック後は陸上競技用としての仕様を外すべき。
 陸上競技の世界大会は、規定の第2トラック(400m・8レーン)を
 持てない以上、仕様から外すべきで、将来トラック部分に客席を
 設置するというのは、大賛成です。
 
 申し訳ありませんが、横浜か、大阪長居でやればいいと思います。
 ボールゲーム専用で良い。
 
 ただ、客席全面改装ではなく、トラック部分に客席を増築するだけと言うのは
 スタンド傾斜が中途半端になるので、いただけないことではあります。
 
②コンサートは、基本考えない。
 10万人収容の屋根付きスタジアムが欲しいという音楽協会の
 意向があるそうですが、意向をだすなら、資金も出すべき。
 確実に儲かるのだから、自分で投資すべき。
 
③天井と空調は見送るべき。
 屋根付きとして実績のある神戸ノエビア、大分、豊田は、いずれも
 風通しの問題で芝の育成が悪かったり、天井の開閉機構の修繕費が嵩んだりして、
 うまくいっているとは言いにくい。
 
 札幌ドームや、University of Phoenix Stadiumのように
 屋外で育成した芝生の引き込み式が良い。
 引き込み式なら、コンサートで芝を傷めることもないので、
 その面でもベストと言える。
 
 今回の国立競技場でなく、次の大型スタジアムの計画があれば、
 是非とも引き込み式でお願いしたいものだと。
 ただ、引き込み式だと、トラックごと引き込み式にするなど、
 世界初の試みになるのだろうけれど。