6月19日行われた試合。
 
う~ん。3月のSheBelieves Cupの敗戦は、メンバーが揃わなかった、
U-20を中心に選手を探していた、経験させることが優先事項だったなど、
言い訳の余地も有ったが、
このなでしこJAPANの敗戦はちょっと厳しすぎる。
 
攻撃陣は、褒めるところを探すのも難しい。
後半反撃出来たとは言え、あくまでイングランド代表が引いたから。
決定機もあったが、数・内容ともにイングランド代表に圧倒され、勝てる気がしなかった。
 
守備陣も、失点シーンがほぼ同じパターン。
まず2列目が抜かれ、4熊谷選手の周りが1対2の数的劣勢になりかける。
そこでスルーパスで裏を取られ、余っていた5市瀬選手が間に合わないままゴール。
連携不足を感じる。
 
また、ビルドアップも見ていて歯がゆい。イングランド代表の守備陣とはパス速度・距離共に2割・3割負けている。1本の横パスで、相手のプレッシャーから作れる時間が半分くらいしかない。
 
結局ファインセーブを連発したGK山下選手以外に、良いところが見当たらない試合だった。
 
 
アルゼンチンが分けてくれたから2位抜け。
グループE1位のオランダが決勝トーナメント1回戦の相手になった。勝てば、準々決勝はイタリア代表か中国代表。
第1ポッドの国が居ない山になったので、結果的には、幸いだったと言うことにしましょう。

得点:
 14分(13:48~) (45m左)4ウォルシュ(40m左)19スタンウェイ(~6杉田躱し・8m左)
  18ホワイト(シュート)
 84分(38:28~) (45m左)8スコット(30m左サイド)20カーニー(15m左)18ホワイト(シュート)

その他主なチャンス
  SB:Shoot Block SC:Shoot Cut S:Save FS:Fine Save B:Bar P:Post
  F:Free(GKと1対1など)
 
なでしこJAPAN
 04:31~,FK08:09~FS,CK08:43~,CK26:30~,FK30:43~S
 56:13~,64:52~,65:55~,CK72:05~,72:25~S,75:38~F,76:15~,77:20~,
  81:58~,85:38~,88:22~FS,CK89:15~,92:34+~F
 
イングランド代表
 01:44~,06:16~,11:57~SB,CK12:56~,CK13:13~,17:24~FS,
  CK18:04~FS,CK18:44~,19:39~,23:32~,31:45~S,33:15~FS,
  CK34:02~
 48:01~SB_SB,48:29~,58:12~FS,60:20~SC

では、いつもの通り、コーナーキックを分析していく。
 

(1)両チームのディフェンスシステム
 
なでしこJAPANは10人守備、マンツーマン中心で、3人のゾーン配置。
 
イングランド代表は1-3-3(+3)のゾーンディフェンス。
ボールに対するだけで無く、人に対応するゾーンディフェンス。
自分の分担エリアに入ってきた選手に対し、マンツーマン的に付いている。
特に、3列目の3人は、マンツーマンと考えて、ほとんど良い。
アメリカ代表が2011W杯後になでしこJAPAN相手に採用したゾーンディフェンスと同じコンセプトだが、こちらの方がより対人要素が強い。
 
ゾーン配置の選手を図にする。
イメージ 5
 

ちなみに、先発選手を背の順にならべる。
なでしこJAPAN      イングランド代表
   4 熊谷 173      8 スコット      Jill SCOTT              181
 19 遠藤 167      6 ブライト      Millie BRIGHT          178
   3 鮫島 163      5 ホートン      Steph HOUGHTON  174
   6 杉田 162      2 ブロンズ      Lucy BRONZE        171
   5 市瀬 160    18 ホワイト      Ellen WHITE            170
 11 小林 160    11 ダガン         Toni DUGGAN        168
 22 清水 160    17 デイリー       Rachel DALY         167
   7 中島 158     4 ウォルシュ    Keira WALSH         167
   8 岩渕 156    19 スタンウェイ Georgia STANWAY  162
 20 横山 155    12 ストークス    Demi STOKES         159
 
なでしこJAPANが守備の際は、4熊谷選手がゾーン配置になるので、各選手約10cm高い相手をマークすることになる。
5市瀬選手8スコット選手をマークしていたので特に厳しいが、
「ゴール前に入れない」ブロックアウト力で言うと、
このメンバーでは1番ということなのだろう。実際良くやっていた。
 
 
(2)統計

例によって、私が採っているSTATSを紹介します。

         なでしこJAPAN イングランド代表
コーナー本数        4       6
得点(1次攻撃)       0       0
 
センタリング→シュート  0/1     1/0
センタリング→パス     0      2/1
ルーズボール         0         0
クリアー            1/1     1/1
キーパーパンチ       0       0
キーパーキャッチ      0       0
オフェンスファール     1       0
ディフェンスファール    0       0
 * フリー/競り合い
 キックミス            0        0
ショートコーナー不発    0       0
時間つぶし          0       0
オウンゴール        0        0
 
フリーになった選手     0      1/1
    (ボール受け/ボール来ず)
ピックプレー:推定含む   0       0
     (成功/失敗)
 
 
(3)コーナーキックの内容と特記すべきプレー
 
イングランド代表は、ピックプレーは使っていないが、
「このプレーでどこを攻めるか」に関してはサインらしきものをやって、
チームとして意思統一が見られる。
さらに、なでしこJAPANの守備の特徴を調べて組み立てている様だった。
 
一方なでしこJAPANの第1ターゲットはニアサイドからの流し。
自分たちより遙かに高いゾーンディフェンスに対し、
少しは対策を取った様ではあった。
 
ただ、本来背の低いなでしこJAPANが外からのシュートなどを狙うべきなのに、
イングランド代表にそれをやられている。
はっきり言って準備に差がある。
 
なお、この試合も映像には不満。
コーナーキックを蹴るまで、キッカーの背中を大写しにしていることが多く、
受け手側の駆け引きがどうなっているのか判らない映像が多かった。
そのため、想像で補って書いています。
 
 
A.なでしこJAPANのコーナーキック
 
基本的に速い球でニア狙いと言うのは、なでしこJAPANのいつもの話。
この日は、19遠藤選手(交代後13宝田選手)をゾーン2列目・ニアポスト前をブロックすることによって、ニアサイドにスペースを作ろうとした。
ゾーンディフェンスに対し、高倉監督就任以来初めて見た「対策」であった。
ただ、イングランド代表のゾーンディフェンスの3列目がほぼマンツーマン対応だったため、ニアに走り込めばフリーと言う訳では無い。振り切らねばならない。
戦略的に上回れてしまった。
 
やはり、8、9、10人目を使って、外側から攻めてもらいたいと私は思う。
 

体制は以下の通り。
 
左右のCKを7中島選手が蹴った。右利き。
受け手としては、各選手の体制と主な狙い所。
・ニアに4熊谷選手(と9菅澤選手)が走り込み。
・正面からファーに8杉田選手5市瀬選手
・GK脇には8岩渕選手
19遠藤選手(交代後13宝田選手)がニアポスト前で、相手選手をブロック。

1本目(08:43) 左CK 7中島選手18ホワイト選手ヘディングクリア。
2本目(26:30) 右CK 7中島選手5市瀬選手が流す。
 だが19遠藤選手が押し合いでファール。
3本目(62:05) 左CK 7中島選手8スコット選手ヘディングクリア
4本目(89:15) 右CK 7中島選手9菅澤選手がヘディング。右へ外す。
イメージ 4
 
4本とも基本の構図は同じだが、9菅澤選手が先着した4本目を図にしておく。
イメージ 3
 
 
決勝トーナメント1回戦のオランダ代表も、おそらくゾーンだろう。
ただ、イングランド代表のように人に対応するマークでは無く、100%に近いボール中心の守備。
外側はより攻めやすいはず。是非とも正面からのミドルシュートや、ファーサイドの大外を使ったプレーなどを企画してもらいたいものである。
 

B.イングランド代表のコーナーキック
 
キッカーは左右CKともに11ダガン選手、右CK1本を19スタンウェイ選手が早めに始めてショートコーナー。共に右利き。
 
受け手の各選手の体制は定まっている。毎回同じだった。
・走り込んだのは5人で、ニアからファーへ以下の順
  5ホウトン選手,18ホワイト選手,8スコット選手,6ブライト選手,2ブロンズ選手
17デイリー選手はGK脇。ショートコーナーへ出る。
4ワォルシュ選手はPKアーク付近
12ストークス選手は、セーフティーだが、ショートコーナー受けも臭わす。
 
1本目(12:56) 左CK 11ダガン選手8スコット選手6杉田選手で再CK。
2本目(13:13) 左CK 11ダガン選手6杉田選手ヘディングクリア。
3本目(18:05) 左CK 11ダガン選手19スタンウェイ選手がミドルシュート。
  GK山下選手ファインセーブ。
4本目(18:44) 右CK 19スタンウェイ選手18ホワイト選手3鮫島選手クリア。
5本目(34:02) 左CK 11ダガン選手3鮫島選手ヘディングクリア。
6本目(48:29) 右CK ショートコーナー11ダガン選手19スタンウェイ選手でクロス。
  6ブライト選手のヘディンク折り返しをGK山下選手がキャッチ。
イメージ 2
 

2本目は全形が映っていないが、なでしこJAPANのスキを突いているようだ。
 ① 17デイリー選手がGKの脇からコーナーへ出て、ショートコーナーを装う。
 ② マークしていた22清水選手が追っていない。
  おそらく、ラッシュ&ピックA(2-2:リンク参照)
  ポスト脇の8岩渕選手にぶつけられそうになったので、チェンジしたのだろう。
 ③ 12ストークス選手4ワォルシュ選手両方を見ていた20横山選手だが、
  17デイリー選手の動きもあって、4ウォルシュ選手のケアが薄れる。
 ④ 4ウォルシュ選手がニアへ走り込んでフリー。ボールは惜しくも頭上を越える。
イメージ 1
 
3本目も同じように対応して、今度は19スタンウェイ選手に正面から強烈なミドルを食らうことになる。

スコットランド代表戦でも同じだったので、
イングランド代表がキッチリとスカウティングしたと推測する。
なでしこJAPANはこの対応で取り決めをしているようだが、危険だと思う。
守備側の正解は、②でチェンジでは無く、8岩渕選手22清水選手の2人でショートコーナーに備えること。
20横山選手は80%以上4ワォルシュ選手ケアだと思う。
早急に改善してもらいたい。
 

 以上です。
 
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