漫画  風鈴


退職後に不動産屋のアルバイトをしています。
部屋の掃除が主ですけど、たまに住人の方の苦情も解決していて。
年寄りにはかなりハーですけど、ちょっと辛いけど頑張ってます。
先日もアパートの階段を掃除していたときのことです。
「アパートの管理の方ですか」とアパートの入居者に声をかけられました。
「はい、管理している不動産屋さんから頼まれて掃除しています」


でしたら、二階の部屋の鍵、お待ちじゃ無いですか」
「空き部屋の掃除も頼まれてますから、持ってますけど、どうかしましたか」
「実は、二階に前に住んでた人が風鈴を、置いていったようなのです」
「風鈴ですか」
「ええ、夜になるとチリーン、チリーンってうるさいのですよ」
「夜だけですか」
「そうなんですよ、風も無いのにチリーンって気持ち悪いので、先日見てみたらベランダに風鈴があるみたいなのです。下から覗いたらありましたからあれがきっと何かの拍子に鳴っているのだと思うのです」
「そうですか」と言って軽い気持ちで二階の空き部屋に入ってみました。

ベランダに出て手すりにぶら下がっている風鈴を見つけて「これですか」と下から見ているアパートの住人に聞いてみました。
「ああ、それそれ」と笑っていました。

私は風鈴を見ながらどうしようかと考えていました。
ぶら下がっている風鈴には「舌」が無いのです。
「舌」とは短冊などを付けて風で揺れると外側にあるガラスや金属に当たって音を出す錘のことです。
その「舌」のない風鈴が音を立てるはずも無いのですが。