漫画1

「ごめん、ごめん。遅くなって」
「金魚、遅いからもう始めていたぞ」
今日は「姫」の誕生会である。
密かに「姫」を狙っている「鷹」と「鯨」とそして私の「金魚」が「姫を狙っての誕生会だった。
「鷹」「鯨」「金魚」は三人のあだ名で、「鷹」はスポーツ万能のイケメンだ。
目が鋭いので「鷹」と呼ばれている。
「鯨」は大きめの体でそう呼ばれているが、クラス一の頭の良さで委員長も務めている。
私「金魚」は私がケチャップをシャツにつけたとき、「姫」が「金魚の模様みたい」と言ったのが理由だ。
「俺たちは姫にプレゼントをあげたけど、金魚のプレゼントは何だよ」
「俺のはこれだ。見ていろ」
私は持ってきた小さなプラネタリウムの映写機のような装置をテーブルの上に置いた。
「なんだこれ」
「メテオリウムと言うのだ。論より証拠、見てろよ」
金魚はテーブルの上の映写機のような装置のスイッチを入れた。
軽いモーター音を立てて、機械が光り出すと、部屋の天井一面に星空が映し出された。

「おおお」と期せずして鷹と鯨そして姫から声が漏れた。
そのうち周りに夜桜が映し出されてきた。
この街の桜の名所、古城公園の桜だ。お堀の写る桜がライトアップで上下逆さまに写っている。
桜の匂いまで匂ってくるようだ。
「凄いな、これ」
次に桜が散って桜の花びらでお堀がピンク色になったかと思うと次にギラギラと光る日差しが襲ってきた。
熱いと思うまもなく、日陰になって大きなひまわりが部屋中に映し出された。
隣町の向日葵畑の向日葵だ。
「凄いな、これ」鷹がビックリした声で言った。
「そうだろう、スゲえだろ。俺の家の近くにいるあの変な物ばかり作っているおじさんの発明品だよ」
「素敵ね、金魚さんね見直しちゃった」姫の言葉に鷹と鯨が嫉妬の目を向ける。
「あのおじさんによると、この街の気象と気候の風物のデーターが入っているというのだ。だから、月日と時間をセットすればそのときの気象条件でその風景に行けるという物らしいんだ」
「へぇ、意外と凄いのかな、あのじいさん」
「日にちと時間をセットしたら、そのときに行けるかしら」
「そうみたいんだ。俺も詳しくは知らないけど時間をセットしたらそのときの気象が体験できるそうだ。リアルに風が吹いて、雨も降らせることができるみたいなんだ」
「家の中に雨も降らせることができるのか」
「できるみたいだけど、ここでは止めた方が良いよ」
まるで自分が発明したかのように、金魚は得意になっていた。
「私、もう一度見てみたい現象があるの。やってみていい」
「もちろんだよ、でもどんな現象なの」
「海の見える丘に上がったときなのだけど、青空なのに海の上に虹が架かっていたの。雨も降らなかったのに青空と青い海の中に虹だけが浮いて見えたの」
「青空と青い海に虹が架かるなんて、ちょっと信じられない気象だね」
「そうでしょう。できるのかしら」
「やってみるけど、日時と時間分かるの」
「覚えているわ。とても不思議な景色だったもの」
俺は姫の言う日時と時間そして場所の指定をして、機械のスイッチを入れた。
軽いモーター音を立てて、機械が動き出すと部屋一面に海の見える丘の草原の中が映し出された。西の方に青い海と青い空、そして虹が浮かんで見えた。

「本当だ、青空の中に虹が浮かんでいる」
「本当だったのだ、あの日以来二度と見られなかったから夢かと思っていたの」
「スゲえな」と四人が虹に見とれていると鷹がボソッと呟いた
「あの虹、近づいてきてないか」
「うん、近づいてきているように見える。あの方角って西の方だろう」

「ああ、西だよな」
「それがどうしたのだよ」
「天気は西から崩れるんだ。この街では」
「虹は雨上がりか、雨降る前に見えるんだよな」
「それがどうしたのだよ」
「雨だよ、雨が近づいてきているのだよ」
「金魚、部屋の中でも雨降らせられるんだろ、この機械」
「だと思うけど」
「どうすんだよ、部屋の中に雨なんか降らせて」
「ずぶ濡れになつて、この部屋の中水浸しになるぞ」
「どうすれば良いのだよ」
「機械を止めるんんだよ、緊急停止できる方法あるのだろ」
「しらないよ、試作品だから。セットしたらその時間は電源も抜くなと言われてるよ。電源抜いて制御できなくなる方が大変だと言われてるから」
「俺知らないぞ」
「金魚のせいだからな」
鷹も鯨も逃げ腰になっていた。そうしているうちにも、虹はなくなり、黒雲が天井を覆いだしていた。
ポツリと一粒の雨が鯨にあたった。

「ごめん、俺帰るわ」と言って鯨は逃げ出していた。
「俺も帰るわ」鷹が天井を見ながら逃げ出していた。
「金魚さんはどうするの。帰るの」姫が私に詰問調で聞いてくる。
「まさか、姫一人残して帰るなんて」苦笑いしながら答えたが、声は震えていた。
「そう、じゃ、部屋の中での雨なんて言うのも楽しいでしょ」と言って姫が大きめの傘を広げていた。

傘を広げて、私が傘の中に入ると同時に、部屋の中に雷鳴がとどろいた。
土砂降りの雨だった。部家の中なのにまさに一寸先も見えないほどの土砂降りだった。
土砂降りの中に大きな傘が開いていて、二人が寄り添っていた。
傘の中で私は姫に聞いてみた。
「こうなる事、知っていたの」
「当然よ。西から天気が崩れてくることは常識。あのときも虹が近づいてきた後雨になったわ。あの機械が本当に部屋の中で雨が降るのか見てみたかったの」
「でも、後片付け大変だよ」
「たいしたことないわよ。部屋を水洗いしたと思えば。それにしても、雨が降ってくるのが分かって逃げ出す男ってたいしたことないわね」

「もしかした、それが知りたくて」
「そうかも」 と言って姫が特上の笑い顔を見せてくれた。

