それはもう かなしみ姫の歌が聞こえなくなった頃のおはなし
影を探していた少年は かなしみ姫のかわりに歌うのです
誰かに届くように 夜空に向かい歌うのです
その歌声は 遠く離れた国のカナシミ姫のもとへも 届きました
カナシミ姫は知りました かなしみ姫の最後を知りました
もう叶わぬ約束を 叶えられなかった約束を
カナシミ姫は ひとり心を痛めるのです
まだ届けたかった歌もあったことでしょう
いつか逢えるその日を信じて
ただ その日を信じて
少年は歌うのです かなしみ姫のかわりに歌うのです
カナシミ姫の心に届くように
願いをこめて
想いをこめて
心 をこめて
いつの日か 叶わなかった約束を 叶えるために
世界の果てが 見わたせる丘で良ければ
少年は 逢いに行くことでしょう
この空が消えてしまうその前に
歌声が消えてしまうその前に
カナシミ姫は あの時のように 懐かしい道を辿りながら
広がる空に思いを馳せながら
少年のもとへ
少年は かなしみ姫の たったひとつ残された銀の涙を届けに
朝もやの中 旅立つのです
白い部屋の時間が 動き出しました
もう 魔法の時間はありません
ただ ゆっくりと時を刻み出すだけ
カナシミ姫のもとへ
陽の光に包まれた少年は ついに自分の影を見つける事ができました
あんなに探していたのに こんなにも近くにあったなんて
少年は光とともに その姿は音もなく 消えてしまうのでした
それでも カナシミ姫には たしかに
今でも 歌声が聞こえるのです
今はもう 心の奥にだけ
大切に
それはまだ あの歌声が聞こえていた頃のおはなし
刻とともに 朽ちていく病を患ってしまった かなしみ姫
少しでも 時間を止めなければ 命の灯は消えてしまいます
病んだ翼を 休めるため 星空のよく見える塔の
誰もいない白い部屋で ひとりきり
とても静かで ひとりきり
その静寂は時間さえも 止めてしまうのです
かなしみ姫にできるのは 願う事
静かな部屋で 歌うのです
かなしみ姫の綺麗な歌声は 遠く離れた国の
カナシミ姫のもとへも 届きました
逢った事もない二人だけれど
二人の気持ちは この空の向こうで繋がるのです
カナシミ姫も 夜空に向かい歌声を届けてくれました
いつか叶える約束とともに
二人の歌は 季節を越えて どこまでも どこまでも
まるで こんな日がずっと続くかのような
優しい祈りのようなものでした
日に日に弱りゆく かなしみ姫を憂い
カナシミ姫は 塔へ向かうのですが
その扉は 堅く閉ざされ中へ入れません
それでもカナシミ姫は 歌い続けてくれました
かなしみ姫も 命が尽きるまで歌うと誓うのです
悲しい歌を 歌うのです
哀しい歌を 歌うのです
刻とともに 朽ちていく病を患ってしまった かなしみ姫
少しでも 時間を止めなければ 命の灯は消えてしまいます
病んだ翼を 休めるため 星空のよく見える塔の
誰もいない白い部屋で ひとりきり
とても静かで ひとりきり
その静寂は時間さえも 止めてしまうのです
かなしみ姫にできるのは 願う事
静かな部屋で 歌うのです
かなしみ姫の綺麗な歌声は 遠く離れた国の
カナシミ姫のもとへも 届きました
逢った事もない二人だけれど
二人の気持ちは この空の向こうで繋がるのです
カナシミ姫も 夜空に向かい歌声を届けてくれました
いつか叶える約束とともに
二人の歌は 季節を越えて どこまでも どこまでも
まるで こんな日がずっと続くかのような
優しい祈りのようなものでした
日に日に弱りゆく かなしみ姫を憂い
カナシミ姫は 塔へ向かうのですが
その扉は 堅く閉ざされ中へ入れません
それでもカナシミ姫は 歌い続けてくれました
かなしみ姫も 命が尽きるまで歌うと誓うのです
悲しい歌を 歌うのです
哀しい歌を 歌うのです
それは とても綺麗な歌声でした
星空のよく見える塔の 誰もいない部屋の窓からは かなしみ姫がひとり
夜空に向けて その歌を届けるのです
かなしみ姫の背中には きっとこの夜空を自由に飛べたであろう翼も枯れ果て
白い素足も 樹木のように床に深く根が張っていました
かなしみ姫はもう 手が届かない事も知っていたのかもしれません
それでも毎晩 かなしみ姫は歌うことをやめませんでした
なぜなら歌う事で「私はここにいますよ」と伝えたかったから
誰かに知っていてほしかったのです
そんなある日の夜
綺麗な歌声に誘われて 少年は塔にやってきました
なぜか その少年には影がありません
影がないので 昼間は人前に出ないのです
夜の世界なら 少年は気兼ねなく なくしものを探せるのです
影がないので少年は 塔に入る事も簡単でした
かなしみ姫の歌を 近くで聞いてみよう
少年は影を探しがてら 塔の上へ 上へ
どれだけの時間が過ぎたであろう
少年はいつしか かなしみ姫の歌を覚えてしまうほど
白い部屋の中は まるで長い間 時間が止まっていたかのよう
その部屋の片隅には もう動かなくなった かなしみ姫
さらさらと 月夜が差し込む光のその中で
どこまでも透明になってしまった かなしみ姫の
もう何も映ることのない瞳のその奥が
まるで 泣いているようで
「もう二度と 聞く事のできないあの歌を かわりに僕が歌おう」
かなしみ姫のような綺麗な歌声ではないけれど
きっと誰かに届くはず
少年には影がないので どんなに長い年月が経とうとも
いつまでも いつまでも 歌っていられるのです
朝日が彼を照らすまでは
星空のよく見える塔の 誰もいない部屋の窓からは かなしみ姫がひとり
夜空に向けて その歌を届けるのです
かなしみ姫の背中には きっとこの夜空を自由に飛べたであろう翼も枯れ果て
白い素足も 樹木のように床に深く根が張っていました
かなしみ姫はもう 手が届かない事も知っていたのかもしれません
それでも毎晩 かなしみ姫は歌うことをやめませんでした
なぜなら歌う事で「私はここにいますよ」と伝えたかったから
誰かに知っていてほしかったのです
そんなある日の夜
綺麗な歌声に誘われて 少年は塔にやってきました
なぜか その少年には影がありません
影がないので 昼間は人前に出ないのです
夜の世界なら 少年は気兼ねなく なくしものを探せるのです
影がないので少年は 塔に入る事も簡単でした
かなしみ姫の歌を 近くで聞いてみよう
少年は影を探しがてら 塔の上へ 上へ
どれだけの時間が過ぎたであろう
少年はいつしか かなしみ姫の歌を覚えてしまうほど
白い部屋の中は まるで長い間 時間が止まっていたかのよう
その部屋の片隅には もう動かなくなった かなしみ姫
さらさらと 月夜が差し込む光のその中で
どこまでも透明になってしまった かなしみ姫の
もう何も映ることのない瞳のその奥が
まるで 泣いているようで
「もう二度と 聞く事のできないあの歌を かわりに僕が歌おう」
かなしみ姫のような綺麗な歌声ではないけれど
きっと誰かに届くはず
少年には影がないので どんなに長い年月が経とうとも
いつまでも いつまでも 歌っていられるのです
朝日が彼を照らすまでは
