こちらに越してきて間もない頃、いつもの様にゴンの散歩に出かけた私。
斜め向かいのやたらとデカイ家には、庭に放し飼いしてて、やたらめったら吠えまくるシェパードがおるのは知ってた。
その家の前を通りかかった時、その家のおじぃが、“なんたらかんたら気を付けなされ…”と私たちにボソっと言った。
“ん??なんて?”と思ったけど、おじぃの独り言か?年寄りは独り言が多いからな!ってぐらいで気にしなかった。
…………気にしたらよかった.。
しばらくして赤ちゃん抱いた若いママが、黒い大型犬連れて散歩してるのに出くわした。
そろそろホラーサスペンス始まるわよ~。
私ったら、“あら!微笑ましい。それにしてもあの犬、大喜びやな。あんなに飛び跳ね……。
・・・・・・・。’
‘……い¨っ!’
と気付いた時はすでに遅し!
あのシェパードや!!
おじぃが言うてたのは、“うちの犬が脱走したから、お宅のワンちゃん気を付けなされ”や!
とっさにリードを手繰りよせ、シュルシュルってうちのゴンを魚みたく釣り上げたが、ギリギリのとこで、ゴンのおしりをカップ~って噛み付きやがった!
なんとか私の腕の中にゴンをキャッチしたら、そのシェパード、“そいつをよこせ!この野郎!”とバンバン飛び付き&かぶりつき!
私の髪の毛、後ろから噛んで、ムキーッってひっぱりよる!もう恐怖すぎて、やくざの車につっこんだ日以来の死ぬと思った瞬間。
周りの誰も助けてくれない。ストーカーばりにしつこいシェパード!私たちをもてあそぶかの様な襲撃の仕方。
“くっ…この野郎。じらしやがって…殺すなら一気にしてくれ…”とそのしつこさに諦めかけた時、キキィィィ~と目の前に一台のチャリンコが、私とシェパードの間に入ってきた!
“あなた!大丈夫!何この犬!?”と見知らぬおばちゃん。
“た、助けて下さい…”ヘロヘロの私。
“私が自転車で防いであげるから、今のうちに逃げなさい!さぁ!早く!”
まるで映画のワンシーンの様な台詞。“は、はい~…どなたか存じ上げませんが、ありがとございますぅ…”と小走りで逃げた。
途中振り返ったら、おばちゃん、弱冠シェパードと戦ってた…。ありがとうおばちゃん(T_T)
自宅へ帰って改めて自分を見ると、着てたパーカーの右腕破けてボロボロ。
ひっぱり回された髪の毛は、犬のよだれで束になって固まってる。ゴンのお腹らへんに、浅く歯形も残っとる!フンガーッ!
その足で脱走シェパードの家へ殴り込み!
インターホン越しに対応したおばあちゃん、“うちの子はおもちゃと思ってじゃれついただけね!服は弁償するから領収書持っていらして。あっ。病院行かれるんなら、それでも結構ですから、とにかく領収書を持っていらして。では。ガチャン。”
………な、何を~!?
その悪怯れもない態度はなんじゃい!服なんかユニクロやから、弁償せんでもえぇわい!あやまれ!とにかくあやまれー!!モラル0か!?ただ今0円キャンペーンやってんのか?こら?あぁ!?あ・や・ま・れぇぇぇぇー!
………という心の叫びはさっぱり届きませんでした。
あれ以来、大型犬恐怖症。あの家を通りかかると、今だにキチガイじみて吠えるシェパードに、うちら(セシルとゴン)も負けじと“ガゥガゥガゥ~!”と吠え返す反撃を地味に毎日行うと同時に、散歩で会う犬連れに片っ端から、“あそこのお宅はね…”等といいふらかしている嫌なオバハン、セシルでした。