深く、冷たい深海に

沈んでいくような

甘口のワイン。


少し冷やし目で

飲んだからかもしれないが、

テクスチャーに

はっきりと質量を感じる。


軽くない。

でも、重くもない。


ゆるっとした

緩さを伴った質量。


口中に侵入してくると同時に、

指先のような

丸みを帯びた質感で

甘さをしっかりと

伝えてくる。


舌の上を

洗うかのように、

ゆったりと広がる

桃のような甘味。


そこには

わずかな青さも含まれていて、

ただ甘いだけではない、

調和を感じる甘さ。


味わっていると、

一緒に

深海へ沈み込んでいくような

感覚に陥る。


このワインと

向き合うほど、

周りの声が

遠ざかっていく。


そして

味わい尽くした瞬間。

——海底に着いた、その瞬間。


そこを蹴るように、

また自分に戻ってくる。


水面に出て

空気を吸い込んだときのように、

「おいしい……」と

思わず

絞り出してしまう。


飲み終えたあと、

グラスが

少し重く感じた。


飲むことで、

マインドフルネスを

しているような

時間だった。