ありそうで、なかった。


白と赤。

親と子。


グラスに鼻を近づけた瞬間、

懐かしさが立ち上がる。


夕焼けの河川敷。

風の通るグラウンド。

夏の草の匂い。


遠いはずなのに、

確かに自分の中にある香り。


セピア色の記憶を、

静かに連れてくる。


それはきっと、

人の数だけある。


私にとっては、

小学校の頃、

祖父母の畑を手伝った日の匂い。


湿った土と、

青々しい水気を含んだ草。


色もまた、おもしろい。


少し濃い黄色。

わずかにセピアに寄った色調。


透明なのに、

どこか時間を含んでいる。


口に含むと、

軽やかさの奥に、

静かな骨格。


寄り添うようで、

引かない。


柔らかいのに、

芯がある。


支配ではなく、

共存。


親と子、というより

並んで立っている。


背中を預けるでもなく、

背負うでもない。


ただ、

同じ方向を見ている。


少ししっかりした白が飲みたい。

でも、飲み疲れはしたくない。


そんな夜に、

静かに寄り添う一本。