なぜタクシー乗務員になったのか? | servantleadership

servantleadership

IT技術系マネジャー → タクドラ。
ブラックな環境に嫌気がさし、自由なタクドラへ。
全社組織改革活動リーダーを経験したので組織マネジメントには興味があります。英治出版の「ティール組織」はバイブルです。

IT外資系企業をリストラ後、都内で5年間、

タクシー乗務員をしていました。

 

タクシー乗務員になろうとした理由は、

やはり収入です。

 

一番やりたくない仕事でしたが、

収入を考えると、これしかありませんでした。

 

特に東京23区は高収入が得やすく、

トップクラスと言われる人達は年収700万以上でした。

私も入社半年後から、手取り50万近く稼げました。

 

ただ、都内でタクシー乗務員を続けるには、

数々のハードルを越えなければならず、

それをパスする適性のある者だけが

残るような厳しさがありました。

 

一つ目は、交通違反です。

都内はどこにでも白バイがいます。

交通量が多く、道路標識も複雑で、

一度道を間違えると軌道修正が大変です。

普段からミスを超法規的対応でごまかして

いる人はすぐ点数がなくなります。

研修期間中に駐車禁止や信号無視で

免停になる人もいました。

 

二つ目は、交通事故です。

右車線走行時に左歩道からお客様が手を挙げて

即反応して左折するようなタイプの人は

すぐ辞めざるをえなくなります。

 

三つ目は、お客様とのトラブルやクレームです。

少しでも揉めると時間を取られます。

1時間当たりの売上5000円を目指して

分刻みで行動している歩合制で

トラブルは致命的です。

 

運転技術、地理への知識、だけでなく、

交渉力、対応力、といったコミュニケーション力

も問われます。

 

1日50人、1カ月で600人、1年で7000人ぐらい

のお客様を乗せています。

私の場合、半年に1回はヤバい人に当たり、

その都度、その場の機転や忍耐で何とか切り抜けました。

(3500分の1の確率は優秀な方かもしれません)

 

 

タクシー乗務員の良いところ

 

その1:毎日が冒険

毎日、良くも悪くもいろいろなことが起きます。

大学学長や会社社長の本音も聞けます。

 

心温まる出会いも、後でへとへとになるほど

緊張する針の筵のような、恐ろしい時間もあります。

 

どんなに辛く、最悪でも、

ほんの1時間程度の辛抱なので、

1年過ぎれば、いい思い出に変わります。

 

その2:毎日が小旅行

四季折々の景色や風の匂いを嗅ぎながら、

いろんなところに行けます。

 

特にロングで地方から帰還するとき、

移動中は自由な時間です。

 

その3:会話が楽しい

ごくまれに、話し好きなお客様と会話が弾み、

移動時間が楽しくて仕方ないときがあります。

この瞬間こそ、タクシーやってて良かった、

と思うときです。

 

その4:組織の不快な人間関係がない

基本的に個人商店なので、

他人と直接的に競り合うことがありません。

 

所属する会社も、商工会みたいな感じなので、

先輩後輩とかの付き合いがありません。

 

 

タクシー乗務員の悪いところ

 

これは私だけの問題ですが・・・

 

実は私はエンパスです。

共感力が高すぎるのです。

 

会話してもしなくても、

相手の感情が自分に沁み込むように

伝わります。

 

例えば、オークションサイトで、

他人と競り合っていたときです。

 

時間ギリギリで入札して競り合っているとき、

相手の敵対的感情が飛び込んできて

心臓がキリキリ痛みます。

 

この特性は、

仕事で相手と交渉するときや、

会議で参加者全員の折り合いをつけるときは

すごく有効な特性です。

 

個人、もしくは不特定多数の感情の集合体の

変動を感じながら、不協和音が一番小さくなる

ポイントを探せば良かったからです。

 

でも、タクシーの場合は、相手との距離が近く密室です。

電波が強すぎるのです。

波長が合わない人と一緒だと、本当に針の筵です。

息が出来ないような居心地の悪さです。

 

フラフラで精神が破壊されそうな気持に

なるときがごくたまにあります。

 

でも、タクシー乗務員になって3年目ぐらいから、

自分のアンテナの感度を下げることが出来るように

なりました。

 

まだ完全には出来ないのですが、

今まで、無意識に、自分の心の触手を伸ばし、

相手の心を探っていたようなところがありました。

その触手を伸ばすのを辞めるような感覚です。

 

 

 

一度はタクシー乗務員をやってみるべき

 

もうタクシー乗務員に戻ることはありませんが、

一度は経験する価値はあると思います。

 

新卒で経験するのではなく、

会社務めを数年経験し、

資格勉強とか目標を定めて、

期間限定でお金を貯める目的で

やってみることをお勧めします。