昨年はアリーナツアー、さいたまスーパーアリーナ2daysを成功させ、更に勢いが増していることを証明したEve
今年も新曲を次々と発表しつつ、初音ミクとコラボしたり、PEOPLE 1のDeuとコラボ楽曲を制作したりと、次々に話題を発信し続けているが春に行われていたアジアツアーの追加公演が有明アリーナで2日間開催
なにやら韓国でも追加公演をやるようだが、とりあえずこれをツアーファイナルということにする

有明アリーナに来るのはワルキューレのファイナルツアー以来
MAN WITH A MISSIONのツアーで来た際はあまりの音の悪さに絶句し、ワルキューレの際は自分は3階だからまだしも、最上階にいた方々は音の悪さに唖然としたこの会場
他の会場以上にこの会場は座席が重要となるのだが、今回は2階とこれまでで1番近い場所
流石に音は良いと信じたいが…(ちなみ入口では双眼鏡やカメラの諸事がないか確認有り。去年のぴあアリーナMMでは無かったと思う)

「なんでここで流れているの?」とchef'sの「hamlet」が流れていることに驚いたり、初音ミクとコラボした「Glorious Days」が流れたことで、本編ではやらないことを察すると、定刻の19時にほぼそのまま暗転
LEDにEveの作品と馴染み深い風景が次々に映し出され、赤く染められていくが同時に、

Gt.沼能友樹(Numa)
Ba. masahito nakamura
Key.SUNNY
Dr.堀正輝

といったお馴染みのバンドメンバーも登場
もう1人ステージに上がっていたが、そちらはエンドロールでも明らかにならなかったので恐らく打首獄門同好会のライブにいる風乃海のようなVJと思われる

SEが終わる頃には水髪が特徴のEveもステージに現れるが、早速「廻廻奇譚」が始まると、最初だからだろうか少し声が出てない印象が
前日ライブに参加した方の感想で「喉苦しそう」といった報告もあったので、「やっぱり本調子じゃないのか」と少し不安に思う場面もあったが、喉の調子が悪かったのはここくらいでその後は問題なし
むしろ「呪術廻戦」の結末が迫っている今、

「不格好に見えたかい
これが今の僕なんだ
何者にも成れないだけの屍だ」

がかつての虎杖、

「目の前の全てから 逃げることさえやめた
イメージを繰り返し
想像の先をいけと」

の部分が最近の本編と重なる部分があり、「これは虎杖悠仁の歌なんだな」とより認識させられた
なお音はというと、そこまで悪くはないものの、nakamuraの重低音が効いたベースがあまり機能してない印象
やっぱり有明アリーナは有明アリーナである

堀のドラムに合わせるかのように客席から大きく手拍子が起こる「ファイトソング」といきなり2曲続けて代表曲をやったあとは、今年大量にリリースされた楽曲から先陣を切るようにストレートなギターロックながら途中でブレイクダウンもする「インソムニア」が放たれるが、EveのライブはLEDにPVを映しながら進行するパターンがとても多い
それはEveが監督するドキュメンタリー作品を見ているかのようでもある

エレキギターを背負ったEveが最新の曲から古い曲までやることを宣言し、ギターが2本になったことで一気にロック色も強くなるが、Eveの楽曲において重要な役割を発揮するのはNumaのギター
ギターを歪ませてパワーコードをガンガン鳴らすタイプではないものの、Numaの奏でるギターリフはEveの曲の心臓のようなもの

「会心劇」でシンプルなようでキツイ

「君を愛せないな」

のフレーズを緩和させているのは当たり障りないNumaが鳴らすギターリフが大きいだろうし、歌い手時代のEveが歌ってそうな堀が4つ打ちのビートを刻む「sister」も音圧がそこまで大きくないからより踊らせることに特化したような感じに
メロディアスでキャッチーなEveの音源はNuma無しには成り立たないだろう

一方、イントロで大きく歓声が起こった「あの娘シークレット」は、ミスチルのサポートでもお馴染みなSUNNYが奇妙な鍵盤リフを奏で、可愛らしい映像もLEDに映りつつ、

「ゲームオーバーです」

は大合唱に

こんなにも気持ちいいゲームオーバーの合唱もそうないだろう

しかし、青いレーザーをじっくり描き出すと共に行われたセッションを経てエレクトロチックな「逃避行」を始めようとしたところ、Eveは歌い出しを素で間違えてしまう
声が出ないとかではなく、気がついたら始まっていたという完全なミス
どうやら「逃避行」の前のセッションに魅了されて、入りを間違えてしまったようだが、こうしたハプニングはあまり見ない気がする

その直後、PEOPLE 1のDeuと共作した「フラットウッズのモンスターみたいに」、「ラブソング」とコラボ曲が続くが、nakamuraがバッキバキなベースで引っ張る「フラットウッズ〜」は分かりやすいThe MirrazやARCTIC MONKEYSのオマージュ
ロッキンオンのインタビューでは名前すら出してないものの、往年の音楽リスナーならすぐに気づいたはず
不穏な鳴き声もミイラズやアクモンを連想させるものだが、両者その影響を受けているのだろうか(受けているなら、ミイラズとツーマンをお願いします)

続く「ラブソング」はキタニタツヤのロゴがLEDに映し出されたが、細かいカッティングリフはNumaの得意技を完全に理解しているし、ボカロを思わせるような16分ビートやゴリッゴリなベースもドラムがXIIXや米津玄師のサポートをする堀、シンセベースを使わなくても重心低めのベースを奏でるnakamuraの組み合わせを活かしてのことだろう
この時はキタニがEveに楽曲提供したが、Eveがキタニに楽曲提供したらどうなるのだろう

転換を終えると、先程のミスについてEveは

「こういうのもライブですね(笑)」

と開き直っているのだが、Eveも含めてバンドメンバーも着席して行うアコースティックセット、最初に行ったのは意外な「トーキョーゲットー」
どうやらアコースティックver.は「おとぎ」の特典で収録されていたようで、これに沿ったアレンジ
元々がアッパーだったのを語り次ぐようなスタイルに変えたので、歌詞ににじみ出ている孤独や焦燥がより出た感じに
これは素晴らしいアレンジだと思う

また「闇夜」はピアノアレンジされたver.となっており、音は更に絞られていた
自分は作品は見たことはないけど、「闇夜」がタイアップになった「どろろ」のストーリーはおおまか理解している
なのでそっくりそのまま再現していると思ったが、近くにいた方が涙が止まっていなかったのは、

「ああいつだって 愚かさに苛まれているの
でもさ辛くなって 終わらない夜ならば
きっと疑わぬ貴方 呪われた世界を 愛せるから」

と行動制限が多かった時期を思い出してしまったからだろうか

EveはCDの特典にアコースティック音源をつけることもあり、「ナンセンス文学」や「会心撃」も存在する
そのうちこの2曲がアコースティックで聞ける日も来るかもしれない

アコースティックを終えると、今度はオーケストラがバックに
個人的にEveの音楽はミスチルの影響を感じ?のでこれは大いにありだと思うし、前半はオーケストラが中心になっていた「心海」でオーケストラとバンドが一体になる瞬間は心のなかで「おお!!」となっていた
もともと壮大だったのだが、さらにスケールアップしたのだから

「新曲やります。このライブが決まった時からやると決めていた曲」

とEveが話したのは、アニメ「小市民シリーズ」の主題歌になっている「スイートメモリー」

どこを取っても青春特有の甘酸っぱさを感じる1曲はストリングを受けて、より甘酸っぱくなった
例えるならプリンがパフェに変化したかんじ
以前CMで起用されていた「白銀」も含め、Eveのポップソングはストリングスが似合いそうなものが多いし、「オーケストラいるならこれはやらないと!!」と思った「群青讃歌」はやはり化けた
目標に向かって助走をつけるファクターとして
「スイートメモリー」が「「群青讃歌」っぽいな」と思う部分があったので、この2曲を続けたのは大正解
この2曲が連なる構成を見れるのは次いつになるのだろう

そのうえでオーケストラとの共演で1番相性抜群だったのは「花嵐」
映像+オーケストラというバタフライエフェクトが「花嵐」を冒険譚として覆いに昇華したのだ
Eveのライブは映像によって世界観への没入を高めるが、オーケストラはこれをよりブーストさせる
最初から最後までオーケストラ帯同もありだと思った

オーケストラが去ると再び場面転換が行われ、Numa達が「fanfare」を演奏していくが、LEDにこれまでのEveの活動と馴染み深いものが映し出されるので決して目を離すことは出来ない
手拍子をしつつEveの登場を待ちわびていると、「文化」の流れを再現するように、「ナンセンス文学」に繋がり、堀やNakamuraが築くグルーヴは明らかに強くなっている
「ここから一気に駆け抜けていくぞ!!」と言わんばかりに

顔を映さないようにしているものの、Eveたちを映す場面は明らかに増えて、

「ラッタッタ」

の合唱を場内から起こし、「ドラマツルギー」では

「東京そんなものなの?もっと来てよ!!」

とEveが煽りまくるが、Eveのワンマンに参加したのがちょうど1年前

「優しさに温度も感じられない
差し伸べた手に疑いしかない」

ような状態でEveのワンマンに参加していたので、「ドラマツルギー」は特に思い入れがある
格差や分断が進めば、このような心理状態に陥ってしまう方は増えてしまう
複雑な思いを抱えないで、ライブに参加できる方が増えるのは自分の願いでもある

キメを合図に突き抜けていく「アウトサイダー」ではNumaが不穏なリフを奏でつつ、

「今この身をもって 重石をとって
君にだけにしかできない事はなんだ」

と問いかけながらも、

「思い出したくない1日は
ここに吐いていってしまえよ」

の如く感情も解き放つ

「ここにいないでくれよ」

と見捨てているわけではない
もっと大きく羽ばたいて欲しいから
ライブとは日頃の枠組みから外れる場所でもある
Eveはその役目をしっかり受け入れている

MCはほとんど入れず、どんどん曲をやっていくのでライブはあっという間に最後、堀が刻むダンスビートに乗ってnakamuraのベースがうねりまくる「ラストダンス」へ
Eveは「ラスト!!」と明言したわけではないが、

「最終列車を待つわ
あなたの帰りはないけど
ここに居るべきではないこと」

でずっとここにとどまってはならないと示している
全員に帰れる場所があるから
ただこれは拒絶ではない

「遠くからみたら あなた幸せそうねでも
痛くて 痛くて 全部知ってるから」

の通り、あなたを理解出来たということでもあり、

「いつかまた こうやって
踊ってやってくれないか」

と再会を約束する
これ以上ない終わり方だろう
非の打ち所がないラストで本編を終えてもまだ20:30前後
時間が経つのはあまりに早すぎた

そのアンコールが始まるのもあっという間で、コロコロコミックとタイアップした「巻物語」を行うが、SUNNYの鍵盤が曲における陽の部分を担うことで、「夜は仄か」よりも陽性なダンスナンバーが出来たし、途中で巻き戻っていくギミックがとても面白い
「巻物語」だから、巻き戻る
タイトルを聞いたときには西尾維新の新作?と思ったが(笑)

そのうえでここで「僕のヒーローアカデミア」の主題歌だった「ぼくらの」を持ってくるが、Eveが「ヒーロー再生の歌」とインタビューで称していたように、

「それがヒーロー」

の合唱が起こるたびにヒロアカのデクのことを思い出していた
深い思い入れがあるわけではない
初期からジャンプ本誌で読んでいたけど、自分は昔から「銀魂」、今なら「あかね噺」や「ウィッチウォッチ」など現実をテーマにした作品やコメディを好むから
でもヒロアカが完結した今、「ぼくらの」はヒロアカを総括するような曲となり、これまでを思い出していた
だから泣いていた
デクの活躍に自分も心を打たれていたから

そんな中、ここまでMCをほぼしなかったEveが口を開くと、

「今回新しい曲から昔の曲までやったけど、良い部分もあれば駄目だなと思う部分もありました。でも今更変えることはできません。そういった部分も愛していけたらなあと思いました」

と今からこれまでを振り返るライブになったから、長所も短所もEveは対面した
でもEveは来年で30
ここから自分の短所を直すのは簡単じゃない
だから自分の駄目な部分も愛そうとしている
自分のアイデンティティであるから

「僕は他のアーティストと比べるとライブはかなり少ないけど、ライブは懐かしさだったり、新鮮さを感じられる空間だと思っています。自分のペースを崩すことなく、またみんなに会えたら」

とEveなりのライブ観を話したあと、アコギを背負ったEveは「君に世界」で客席にスマホライトを使用するように促し、

「君に世界は青く見えたかい
君に世界は赤く見えたかい
君の世界に色はあったかい
君の世界に僕は在ったかい」

と合唱を起こす

世界に居場所は出来たかとこちらに尋ねるかのように
もちろん青くも赤くも見えた

そして、

「逃避行」でやってしまった(出だしを間違えた)お詫びに!!」

と最後は「お気に召すまま」で踊らせまくり
Numaが仕上げと言わんばかりにギターソロを行うと、2時間もせずに本編を終了
エンドロールが流れると、来年の8月にKアリーナ横浜でワンマンを2days開催することを発表
流石に時間が空きすぎるので、その間にツアーをやりそうな予感がする

このライブには「文化」というタイトルが付けられていた
これはEve4枚目のアルバムと同じタイトルだが、「文化」をフューチャーしたライブではない
アコースティック編成やオーケストラも交えることで、Eveの今とこれまでを見直す
Eveという文化を見つめ直すようなライブだった
次のフェイズに移行するため、必要なライブである

今年の11月、「廻人」以来となる「Under Blue」がリリースされる
時期が時期だけにこれまで以上に注目されるアルバムとなるだろうが、更に外に開いていくのだろうか
不完全な自分も愛していこうぜ

セトリ(※はアコースティック、※※はオーケストラ帯同)
廻廻奇譚
ファイトソング
インソムニア/聞き直し
会心撃
Sister
あの娘シークレット
逃避行
フラットウッズのモンスターみたいに
ラブソング
トーキョーゲットー※
闇夜※
心海※※
スイートメモリー※※
群青讃歌※※
花嵐※※
fanfare
ナンセンス文学
ドラマツルギー
アウトサイダー
ラストダンス
(Encore)
巻物語
ぼくらの
君に世界

お気に召すまま



※昨年見たワンマンのレポ