UNISON SQUARE GARDENが20周年イヤーで怒涛のスケジュールを送っている中でも3月にツーマンライブ、Elven Backを行い2024年の活動を始めたXIIX
それから2ヶ月を経て、今度は短期間で東名阪を回るショートツアーを開催
しかもタイトルは「Border=Border 〜2&5〜」
明らかに昨年の「2 & 5」の続きを連想させるツアーである

チケットはソールドアウトしてないため、後方はスペースに余裕があるものの、EX シアターやZepp Shinjukuでやったら間違いなくソールドアウトするであろう動員
キャパシティ的にはここが最適なのだろう
開演前、ステージに目立つような装飾はなく非常にシンプルなセットである

ほぼ定刻にゆっくり暗転
今回のサポートは山本健太(Key.)にお馴染みとなったクメジュンヤ(Gt.)、今回はドラムに岡本啓介(Dr. from黒猫チェルシー)という布陣
次いで斎藤(Vo. & Gt.)と須藤(Ba.)が登場し前半シンセベース、後半エレキベースと須藤が起用に分ける「月の蝶」からスタート

ステージは真っ赤に染まり、熱狂に染まっているようにも見えるが、

「足りない足りない足りない足りない」

のクセ強フレーズが飛び出すように、こんな序盤でステージ側も客席サイドも満足するわけがない
ここから熱狂に陥ることを示唆でもしているかのような赤き照明

続いてデビューアルバム「White White」から「ilaksa」を現在の編成になって初めて聞くが、以前はDJもいた変則的な編成だったのがDJに変わってクメが参加したオーソドックスな編成に
加えてドラムが黒猫チェルシーの岡本ということでハードロックだった「ilaksa」のアンサンブルはより強度なものに
こうしたパンキッシュなビートは岡本の得意分野であるが、忘れてはならないのはこのライブが今年3本目
斎藤がユニゾンのアニバーサリーイヤーだし、須藤も山本も色んなアーティストのサポートで引っ張りだこ
岡本やクメも色んなアーティストをサポートしているからなかなかライブが組めないのに、進化の度合いは半端ではない
たった2ヶ月の間に進化し過ぎである

andropとのツーマンではandropも演奏したことで1日に2回演奏されたことが記憶に新しい「No More」でキャッチーなメロを奏でる中踊らせると、「シトラス」では斎藤がハンドマイクにシフト
ユニゾンではまず出来ない風景
サポートにクメがいるから出来るんだうけど、須藤も台に上がって客席に銃を向けるかのようにベースを構えるなどこちらもXIIXだから見れる風景
XIIXでしか見れない斎藤や須藤

すぐに斎藤はギターを背負い直すが、すかさずギターソロもはじめ客席から歓声
斎藤は先月、フジファブリックの山内総一郎と合同ライブをしていたらしい
それ以外のイベントでも山内と共演し、山内へのリスペクトを告げまくっていたようだが、こうやってギターソロをやる斎藤は山内と重なるものがある
惹かれ合うのも分かる気がするが、そのギターソロを終えると、より重圧な「XXXXX」に移り更に濃厚なアンサンブルへ
配信ライブでは聞いたことがあったとはいえ、当時ギターは斎藤のみ
クメのギターが加わることで音圧は当たり前ながら強くなるとはいえ、去年の六本木や3月に見た恵比寿よりもアンサンブルは噛み合いまくっている
「半年の間に何があった?」と度肝を抜かれるレベル

更にアッパーな「Answer5」で岡本がビートを刻みまくったり、斎藤がエッジの効いたギターソロを決めるが、演奏後にステージに残っていたクメ達には、

「お帰りください(笑)」

と強制退場させる斎藤(笑)
その直後、

斎藤「やっと2人になれたね(笑)」
須藤「怖(笑)」
斎藤「夢の中では2人で演奏しているのに!!」

という漫才のようなやり取りを始めるのは更に笑えてきたが(笑)(BLなんて言ってはならない)

今回のツアーは5人編成と2人編成に別れており、ここは2人編成となるが久々に聞いた気がする「Endless Summer」はギターとベースになったことで風景をイメージしやすいような曲に
リリースされた頃はただでさえライブがしにくい状況下であったが、今だと夏の終わりを想像できるような1曲に
夏の終わり際にこのアレンジで聞いたら井上陽水の「少年時代」と同じくらい愛される曲になる気がする

曲名とは裏腹に「このアレンジの方が良いのでは?」と思うほどしっくりこる「タイニーダンサー」、音が絞られたことでセンチメンタルな子守唄となった「おもちゃの街」とアコースティックに近い形態で曲を続けていくと、

「久々にあれやろうか」

と斎藤の提案で、須藤の指示の元、客席からリズムをその場で録音し、それをループさせてドラム代わりにし、そのまま「LIFE IS MUSIC!!!!!!」をやってしまう
KANA-BOONの鮪も客席に手拍子してもらって、「ないものねだり」を歌ったことがあったが、こちらは録音したリズムをループさせ、そのまま演奏してしまうのだからなお恐ろしい
楽器経験者ならこれがどれだけ難しいか分かるだろうが、斎藤と須藤、この2人のコンビはとんでもないコンビである

しかもそのまま間髪入れずに、斎藤はギターをかき鳴らし「アカシ」をアコースティック編成で演奏
2人編成でも、

「たった一つの小さな約束が
ほんの些細な思い出たちが
いつまで経ってもこの胸を焦がし続ける灯火になる」

が強く印象に残るとはいえ、アコースティックでやれそうなイメージが無い「アカシ」をアコースティック、それも2人でいとも容易く鳴らす
恐らくXIIXは斎藤と須藤が先にアコースティックでイメージを重ね、そこから膨らませているのだと思うが、裏を返せばこの2人で演奏されている時が生まれたての状態
いわば原点に帰っているようなものだろう
そうなると一昨年行われた2人編成のツアーは貴重なものだった
行くべきだったと今更ながら公開している

するとここでまだ音源になってない「ハンドレッド・グラビティ」へ
コロナ禍初期のライブが出来ない期間、XIIXは何曲かのデモをYou Tubeに公開した
公開した楽曲のほとんどは音源になったものの、「ハンドレッド〜」は以前音源化されず
なので2人編成の際にしか聞けない、知る人ぞ知る曲になっていた
それは2人が納得するアレンジに到達してなかったのが大きいかもしれないが、途中から山本達合流するとアップチューンよりのアレンジに変化
いよいよ完成の時は近いのかもしれない

5人編成に戻ると久々に「Halloween Knight」を行い、ラスサビ前にはステージにに用意されていたミラーボールが回転したりもするが、かつてはサビでガンガン聞こえていたスクラッチ音は無し
つまりミクスチャーロックのような感じから正攻法のギターロックに変化を遂げた
もうDJはサポートに入れないのだろうか?
至るところでスクラッチが入るアレンジが好きだったからもう1回、いや何度でも見たいのである
この5人に加えてDJも含めた6人編成も良いと思うのだが

「Halloween Knight」と同じくYou Tubeにデモが上げられた後、先に音源化された「あれ」は須藤が随所でスラップを入れる一方、間奏になるとクメも含めた3人がお立ち台になってソロ回し
クメのギターソロも斎藤のギターソロも圧巻だし、冷静にベースラインをなぞる須藤にも鳥肌
これが年内初ワンマン
「凄い」なんて言葉では到底収まりきらない

そんな中、山本の奏でる鍵盤があまりに気持ち良い「うらら」で斎藤はハンドマイクにスイッチ
去年の六本木みたく、銀テープが発射されることは流石に無いけどステージは虹色
爽やかかつファンキーなのだからそうなるのも至極当然だが、気がつくと斎藤は岡本のドラムセットに移動し、勝手にスティックを取り出してシンバルを好き勝手に叩く(笑)
しかも岡本は笑いながら、斎藤が叩くシンバルと別のシンバルを叩ていた
色んな意味で柔軟な対応力

更に「スプレー」が始まる前には、

「それ、もう少し聞かせて(笑)」

と山本が弾いた導入の鍵盤を聞きたいがために長引かせる行動へ(笑)
この日も、

「斎藤さん 気をつけてあんた立場が」

の部分は須藤が担当していたが、斎藤のラップはみるみるうちに上手くなっている
もしかしたら指導を受けているのかもしれないが、ラップがうまくなっていくとユニゾンの曲でもラップが増えるかもしれない
ユニゾンにも好影響

そして最後は会場を出たあとも、余韻に浸らせるようなアンサンブルをエモーショナルに鳴らす「Vivid Noise」
本編だけ見てもとてつもない進化
それは参加者の誰か見ても明らかだった

しかしアンコールで戻ってくると、より参加者を驚かせる出来事が起こる
それは実に3年半ぶりに「Saturdays」を行ったから
先程までの進化を見せつけた

「名画のような 夜は去って」

いくように

XIIXの客層はユニゾンよりも大人しい
どちらかと言えば聞くに徹する層
indigo la Endのライブの客層に近いだろうが、恐らく驚きを声に出さないようにしていたのだろう
まさかここで「Saturdays」をやるなんて思いもしなかったから

それから斎藤と須藤はあまりにライブの本数が少ないことを嘆き出すが、同時に斎藤が話したのは、

「これからは「自分は自分 人は人」をテーマに活動したいと思っています。」

というXIIXの今後のテーマ

どういうことかというと、

「冷たいように見えるかもしれないけど、よそに行くときに心を変えてまで接する必要はないと思うんです。心を変えずに一同に集う今日のような状態が理想。これがBorder=Border。今日の形はずっと残ります!!」

と話したとおり、他人と接したりする際に心の形を変える必要はないということ
日常生活で他人と会う際、普段の自分と異なる姿を演じる方も多いだろう
でもそれは自分に負荷をかけることと同等の行為
気を配りすぎ必要はないのだ

言い換えるならばわざわざ心を変える必要はない
つまり形を変えずに一同に集った瞬間が理想ということだ

そしてその新しいテーマに連なるように生まれた新曲「Border=Border」は、同期を用いながら、

「身体は電化製品、心はヴィンテージ」

ととインパクト抜群のフレーズが印象に残りつつ、「なんだこれ!?」と度肝を抜かれるXIIXにしか出来ないロック
次なるXIIXの予兆を見せて本編は終了
90分前後という驚くべき速さでライブは終了した

このレポは東名阪ツアーが終了してから掲載されているが、5人では時にえげつないアンサンブルを、2人編成では「これを2人でやるの!?」と驚きが尽きなかった

手拍子をその場で録音してループさせたり、「ハンドレッド〜」の完成形を匂わせたりと進化が止まらない
あまりにも凄い、痛烈に刻まれる90分だった

なんばHatch公演終了後には、秋に全国ツアーが開催されることが発表
東京はLINE CUBE SHIBUYA、ホール公演となるが更に化け物じみた進化が起こるのか
名画のような夜を見たから尚更楽しみ


セトリ

---5人編成---
月と蝶
ilaksa
No More
シトラス
XXXXX
Answer5
---2人編成---
Endless Summer
タイニーダンサー
おもちゃの街
LIFE IS MUSIC!!!!!!
アカシ

ハンドレッド・グラビティ/途中から5人編成へ

---5人編成---
Halloween Knight
あれ
うらら
スプレー
Vivid Noise
(Encore)
Saturdays

Border=Border※新曲