今年2月から始まり、8週に渡って行われたcinema staffとLIQUIDROOMによる自主企画「BATTLE OF LIQUIDROOM」
その集大成となるのは、恐らく今年初であろうワンマン公演
昨年Zepp Shinjukuをソールドアウトさせたのもあり、LIQUIDROOMは当然ソールドアウトしている

そのLIQUIDROOM、2月に行った際は入場まで相当待たされたので、この日は少しギリギリで会場入り
するとLIQUIDROOMは完全に身動きが取れないレベル
Zepp Shinjukuをソールドさせた勢いはあるとはいえ、こんなに身動き取れないLIQUIDROOMも珍しい
ワンマンは少なくともO-EASTにしないとキツい気もする

開場17時、開演17時45分と謎すぎる時間設定だが、フロアに人が収まるのに時間を要したのか、暗転したのは17時55分頃
いつものSEが流れ、辻(Gt.)達が客席に向けて挨拶すると、

「岐阜からきました、cinema staffです!!」

と三島(Ba.)が早くも自己紹介し、「theme of us」を序盤から行う珍しい流れ

ただステージをよく見ると辻は普通に飲み物(多分缶ビール?)を飲んでおり、飲み終わると最後のサビ前にステージ下手から思い切り走ってジャンプ
元々本能のままに動くタイプであるが、序盤からこんな様子を見せるのは8週連続で繰り広げられてきたこの企画が終わることへの安堵感もありそうな気がする
久野(Dr.)は自分が参加した2週目アンコールで、

「めちゃくちゃキツい(笑)」

と音を上げていたし

そのまま昨年のちょうどこの頃に発表された「フェノメナルマン」で三島と久野による強いリズムを見せつつ、

「僕らは超常現象」

と自分たちが別格であることを飯田(Vo. & Gt.)の透明感あるボーカルで示していくが、

「LIQUIDROOM、優しくしないで!!」

と三島が叫び、曲調が目まぐるしく変わるポストロックの真髄のような「優しくしないで」はもちろん三島が絶叫
これがこの日のセトリがどういうものかを現す基調のようなものになるなんて、思いもしなかったが

飯田が簡単に自己紹介すると共に、

「8週に渡って、色んなバンドと楽しくツーマンさせていただきました!!」

とこの連続企画の感想を話す飯田
8週連続なんて無茶苦茶だけど、飯田にとってはライブの楽しさで相殺出来ていた模様
なおこの日、楽屋に着いたところ、LIQUIDROOMからお酒の差し入れがあったようで、

「8週連続でライブをすればもらえます(笑)」

とのことだが、このような龍城企画に挑むアーティストは今後現れるのだろうか

ゆったりと始まったアンサンブルがオルタナロックに化け故郷を思う「望郷」とここまでは定番曲だらけだが、シネマと言えばありとあらゆる曲をいつでも出来るようにしているのが特徴
久野が手数の多いビートを見せながら、音と音がぶつかり合う「世紀の発見」
飯田がイントロからギターをかき鳴らす「エゴ」と個人的に聞くのは久々であっても、近年ほとんどやってなかったという曲は少ない
どんな曲でも出来るようにする臨戦態勢ぶりは他のバンドも見習って欲しい所存(アルバムのレコ発終わると、やらなくなる曲が多いバンドがあまりに多いため)

飯田と辻はスタッフに水分補給用のドリンク(辻の場合はどう見てもほろ酔いのカシスオレンジ(笑))を補充してもらう中、飯田はこの8週連続LIQUIDROOM公演に全通している参加者もいることを明かす
自分のフォローさんの中にも全通している方がいらっしゃったが、自分の知り合いがフラッド目的で参加した先週のLIQUIDROOMとも自分が参加したハンブレッターズ(ちなみにこの日が大阪城ホール講演。終演後に武道館でワンマンすることが明らかになった)やルサンチマンをゲストに招いた回ともセトリは大きくセトリは異なる
そうしてセトリが変われば、参加者も大いに楽しめる
全通参加者もきっと同じセトリは無いことを確信してチケットを購入したはずだ
2018年にはテーマを設けて、縛りを入れてセットリストを組んだこともあるし、定期的に再現ツアー(「前衛懐古主義」)も行っている
ファン思いのバンドだなあとつくづく思う

そうしてどんな時代の楽曲も出来るバンドだから近年リリース、オルタナロックのお手本のように音圧がぶ厚い「陸の孤島」から、イントロで辻がカッティングを始めただけで大歓声が起こる「シンメトリズム」、自分も思わず声を上げてしまったパンキッシュ「第12感」と懐かしい曲もきっちりこなす
そのうえで「どうやら」までやってしまう幅の広さ
この日の公演タイトルは「MASTER OF  LIQUIDROOM」
8週連続でLIQUIDROOM公演をしているシネマに相応しいタイトルだが、こうして色んな時代の曲もやっているので、「MASTER OF cinema staff」なんて副題もつけていいかもしれない

この反応の良さに、

「色んな曲で歓声起こってくれているのは嬉しい!!」

と飯田は大喜びだが、

「けどここからは歓声上がらないかも(笑)」

と「決めつけ駄目でしょ(笑)」な自虐もする飯田
実際、ここからはお馴染みの曲が多く演奏されていくのだが、ここで招かれるのはすっかりお馴染みとなった佐藤航
佐藤が招かれたということは、演奏される曲も自ずと想像がつき、

「大切な曲を2曲やります」

と話した時点で大多数の人は「Storyflow」と「Name of Love」と勘付いただろう

「Storyflow」は映像つきで聞く機会が多く、映像無しで聞くのはかなり久々
歌詞が飯田の実体験ゆえ、映像ありで聞きたいけど、そこは飯田の透明な歌声がカバー
透明だからどんな曲にも適応でき、風景も描き出す
もっと評価されるべきボーカリストだろう
何かシネマが注目される機会があればいいのだが

並びに「Name of Love」
佐藤が鍵盤を担当してくれるお陰で、飯田はボーカルに専念しているが、バラードと思えないくらい久野はドラミングしているし、それは三島や辻もだ単なるピアノバラードで終わらず、感情が高ぶっていくかのように、ピアノエモへ
自分は「進撃の巨人」を見てないから、どんな場面で使用されたかは分からない
けれども「Name of Love」は最初聞いたときと今や別物になったのははっきり分かる
コロナ禍でも歩みを止めなかった効果が、ここに一気に還元されている

特に言葉を交わすことなく、佐藤は客席に向けてお辞儀
それに答えるように客席からは拍手が起こり、佐藤はステージを去るが、飯田達は演奏を止めることなく、激しさと美しさがくっきりと曲内でコントラストされる「I SAY NO」へ
一見ドライに見えるかもしれない
だがシネマと佐藤は曲内で思いを交差した
交わった佐藤の力を得てより前へ
停滞することに「NO」を突きつけているようにも見える

そのうえで、

「LIQUIDROOM!まだまだ行けますか!?」

と煽ったのは、久野のシンバルに合わせてサビで拳を上げる「シャドウ」

「触れたあなたのために」

演奏してくれていることを会場にいる参加者は確実に理解している
シネマを取り巻く状況が好転していることも
野音から明らかに状況が変わり、Zepp Shinjukuをソールド
更に身動きが取りにくい程パンパンなLIQUIDROOM
この「シャドウ」はLiSAの武道館を見たことがきっかけで生まれた曲だ
LiSAはどんどん広い世界に歩んでいるけど、シネマもここからどんどん広いに羽ばたけるのでは?と自分は信じている
今ならZEPP DiverCityや野音もソールドさせることが出来るかもしれない
また自分は奇跡を目の当たりにすることがなのだろうか

飯田はLIQUIDROOMの狭い空間や照明が好きで、今回の8週連続でライブ出来る企画がとても嬉しかった模様
ただLIQUIDROOMに毎週来るようになった結果、

飯田「ヘッドフォン忘れたけど、まあ見つかるだろうと思っていた(笑)」
久野「途中から忘れ物チェックしなくなった(笑)」

とLIQUIDROOMを自宅のように思い始めてしまった模様
慣れはあまりに怖い

そうしてLIQUIDROOMに毎週通うようになっても、鳴らされる音は毎週変わる
それはその時の状態で反響が変化したり、1音にかける力具合が異なるから当然のことであるが、

「俺たち毎週自分たちのアンプ持ち込んでライブするのよ。プロだから!!」

と当たり前のことを連呼し始めるので、笑いが起こる場内
なおリハで演奏が合わなかったりするのは、ほぼお酒のせいらしいが(笑)(久野はクリックを聞きながらドラミングするので、誰の演奏が走ったり、遅かったりするかはすぐに分かる)

8週企画に初めて来場された方を考慮するように、辻がオープニングアクトを決めていたことを説明し、弁当係も担当しつつ、久野によって辻だけ専用弁当が用意される職権乱用がなされていたことが暴露されたあと、

「今回のツーマンは近年仲良くなったバンドや以前から深い関係だったバンドが多くて。NOVEMBERSとかフラッドとかね。昔の話はしないけど、例えばNOVEMBERSのライブをみると、「あの頃の俺たちはこんなだったなってなる。」

と今回のツーマンを振り返る飯田
馴れ合いはしないけど、ライブを見れば当時の記憶がフラッシュバックする
ライブそのものがタイムマシンの役割を果たしていたということだが、

「最近気づいたことがあって。音を鳴らすのが楽しくて、音楽しているけど、生命を削りながら音を鳴らしているなあとも思います」

のように、飯田達は音楽を楽しみながら、生命を削るようにライブをしている
これはシネマに限った話ではないだろう
バンドに限らず、ミュージシャンは音楽に全てを注ぐ
遊びにも見えるかもしれないけど、全身全霊で音を鳴らしている
それは生命の音
言い換えるならば、「その日にしか聞けない音楽」

ライブ会場に足を運ぶ人は、

「そんなにライブに行ってどうするの?」

なんて声を浴びせられた事があるだろう
セトリが同じなら尚更
しかしながら空気間も言葉も演奏も全て同じではない
録音したものを再生している訳ではない
その日にしか見て聞いて感じられないものを求めて、ライブ会場に足を運ぶのである

そんな飯田の言葉に感銘を受けつつ、始まる終盤
そこで投じられたのはかつて「遊戯王」シリーズのオープニングにもなっていた「切り札」
シネマと言えば、「進撃の巨人」のイメージが強いだろうが、Mrs.Green Appleらと共に「遊戯王」のタイアップを担っていた時期がある
そこまで話題にはならなかったが、曲調も歌詞も、遊戯王の世界観と完全にリンクしている
絶対再評価されるべき1曲なのだ
今シネマはポニーキャニオンを離れ、This Timeで活動している
最近のポニーキャニオンは次々に大物(go!go!vanillasやSiM、HEY-SMITH)が移動してきて、「何が起こったんだ…」状態
またメジャーレーベルでシネマが活動する日は来るのだろうか
メジャーに復帰する日が来たら、きっと凄い事を起こせるはず

更に飯田が煽りまくって、「great escape」とアニメタイアップ曲が続くが、この日も辻はここで客席に突入
しかも辻はギターを弾いてなく、参加者が触れて鳴らしているシュールな光景が起こっていた(と思われる。)
今後「great escape」では名物となるのだろうか?
なおかつ、普通に間奏部分のフレットが分かる方が凄い

このアニメタイアップ攻勢の中、ふと我に返らせるのは「海底」
流石にライブ会場が糾弾されることはもうなくなったけど、ライブ会場が目の敵にされたことはこの「海底」が何度も呼び起こす
忘れられたとしても

個人的に気になるのは、某バンドのライブ会場に麻疹に感染してしまった方が会場にいたこと
今のところそこまで騒ぎになってないが、感染者が徐々に増えているし、クラスターが生じたらまた標的にされそうな予感がしてならない(そうなると「最低を繰り返して」のシチュエーションになってしまう)
杞憂に終われば良いのだが…

そして最後は実に7分にも及ぶ大型シューゲイザーの「僕たち」
この日1番の轟音を解き放ち、辻に至っては狂いに狂ってステージに横たわってギターを引きまくる始末
声が出ないし、言えない
茫然自失状態にさせたあと、演奏終了と共に大歓声を起こさせ、辻がノイズを切ったところで本編は終了

アンコールで戻ってくると、ドコムスこと久野による開封の儀が行われるが、そこに辻も登場(笑)
2人で開封の儀を行うことになり、照明が真っ二つに割れたことで大いに笑いが起こったが、特に言及しなかった三島はともかく、飯田達3人はもう8週連続企画は懲り懲りな様子
マンスリー企画なら良いかもしれないらしいが、

飯田「下北沢SHELTER4daysとかどうだろ?」
久野「そういうこといっちゃ駄目(笑)」

とまた無謀な企画が計画されそうな気満々
それ以前にチケットが取れる気しないのだが

なおcinema staff主催、岐阜で開催されるOOPARTSはチケットが過去1番に売れており、翌日に2日通し券はソールドアウト
ラインナップにキタニタツヤがいることも多少影響している気がするが、どんどん追い風が吹いてる
1度は参加してみたいものである(今年は100%無理)

他方、三島はというと、

「今から4年前に「3.28.」って曲作って、「対バンとかスケジュール、どうするんだろう…」って思いましたが、普通にやれましたね」

とこの4年を総括
コロナ禍の影響でツーマンがしづらくなったりすることが懸念されたが、その中でも自主企画をやったりするアーティストは多かった
別にやれないわけではなかったのだ
コロナは消えないから、怖いことに変わりないけど

「みんなが応援してくれたおかげで今が1番カッコいいです!!」

と叫び、辻が苦笑いする中、

「最後にみんなと歌いたい曲があります。」

とやはりこの日のアンコールは「3.28」だった
公演からあと4日で3月28日、やらない手は無かったから

優しいあの娘どころか、分かり会えるよう社会はコロナ禍で一気に遠くに行ってしまった
分断の溝は深まりそうだけど、

「夜を抜けたら
僕らの勝ちだ
恋が始まる
海を見に行こう」

が合唱できるようになったのはやっぱり1つの夜明けである
合唱できるようになってから1年
去り際に、三島はメンバー紹介してから

「俺たちがMASTER OF LIQUIDROOM!cinema staffでした!!」

と叫び、飯田達が去る中、客先に突入したり、飯田のピックを投げたりとやりたい放題(笑)
もう一度ステージに上がると、客先にお辞儀してステージを去った

Wアンコールを求める声もあったが、再度戻ってきた辻は、

「これ以上やったら蛇足。またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました!!」

とWアンコールを行わないことを宣言
遂にBATTLE OF LIQUIDROOMは終わりを迎えた

昨年のZepp Shinjukuで「BATTLE OF LIQUIDROOM」を発表した際、「クレイジーにも程がある」と自分は思った
その予感通り、飯田達は大いに疲弊したが、パンパンに入ったLIQUIDROOMは有終の美を飾る最高の舞台となった
8週やりきったシネマは名実ともにMASTER OF LIQUIDROOMである

三島はアンコールにて、新作の制作を宣言した
ミニアルバムかフルアルバムかは分からない
けど今のシネマなら「海底より愛をこめて」を超える傑作を簡単に編み出せそう

次の動きはOOPARTSの後だろう
MASTER OF cinema staffな一夜を終え、OOPARTSの先にはどんなシネマを見れるのだろうか
この未来は君のものさ!

セトリ
theme of us
フェノメナルマン
優しくしないで
望郷
世紀の発見
エゴ
陸の孤島
シンメトリズム
第12感
どうやら
Storyflow w/ 佐藤航
Name of Love w/ 佐藤航
I SAY NO
シャドウ
切り札
great escape
海底
僕たち
(Encore)
3.28