自分もすっかり存在を忘れていたが、活動停止前にGalileo GalileiはTsunagari Daisuki Clubという自主企画を開催
前回は恋する円盤とTHE NOVEMBERSとツーマンしていたが、今回ツーマンするのはなんとBBHF
川谷絵音が定期的にindigo la Endとゲスの極み乙女でツーマンするように、尾崎兄弟もとうとう自身のバンド同士でツーマンするようになった

昨年秋のツアーの東京公演は豊洲PITで行っていたがゆえに、EX THEATERは当然ながらソールドアウト
完売しても比較的余裕が出来る後方のスペースにもパンパンに人が集まっており、ここまでEX THEATERに人が入っているのを見たのは経験が無い

開演前に大阪のラジオ局として知られるFM802の大貫による前説が場内で流れる
大貫はガリレオがメジャーデビューする前から存在を知っていたようで、ラジオのコーナーで尾崎に話を聞く時間も設けられていたらしい

それからガリレオはシーンに衝撃を与える「PORTAL」をリリース
その際、専用のスタジオとしてわんわんスタジオを作ったのは有名な話だが、そのスタジオは4階建て
各々の部屋はあったものの、階段に靴下が散らばっていたりと音楽特化のスタジオだったらしい
例のスタジオについて、ここまで具体的な話を聞いたのはこれが初めてな気がするが、今回のツーマンについて、大貫は

「ガリレオとBBHFでツーマンしたら良いんじゃない?」

と提案したものの、現実になるとは思いもしなかったらしい

・BBHF
そんな前説を終えると、定刻にプロレス風のナレーションが始まり、動物のような説明がされた後、

「北の最終兵器!!」

と「その説明、少し危なくないか?(笑)」な過剰紹介がなされたBBHF
昔配信ライブで見たことはあるものの、オフラインで見るのは実は初めてだ

といっても、元々Galileo Galileiの活動を一時的に終了させたのち、サポートメンバーだったDAIKI(Gt.)が正式メンバーとなって始まったのがBBHF
そこからベースが抜けたため、サポートとしてNewspeakのyohey、並びにホーンやフルート、鍵盤とありとあらゆるマルチプレイヤーのような立ち位置として大久保(ex.
森は生きている)が参加している

ナレーションが終わると同時に、

「BBHFです」

とザキ兄(Vo. & Gt.)が自己紹介すると、「これを冒頭に持ってきたことに何らかの意図があるのでは?」と推測しかけてしまう「ウクライナ」から始まり、yoheyのゴリッゴリなベースが中心となって先導するが、ザキ兄と共にこの日ほぼぶっ通し出演となる尾崎和樹(Dr.)のビートはガリレオ以上に力強い
というか、こんなに強くドラミング出来るドラマーだったのか

ガリレオの活動を一時的に終わらせて、新たにBBHFを始めたものの、ガリレオが昨年復活
絵音がindigo la Endとゲスの極み乙女で音楽性で違うのはメンバー編成からも分かるものの、ガリレオとBBHFはどこがどう違うのか判断材料は分かりづらい
ただ個人的な見解で話すのであれば、ガリレオはギターロックかつ大衆にも受け入れられやすいのに対し、BBHFはよりディープにインディーロックやドリームポップをやっているのが違いだろう
あまりに独自路線を行き過ぎているように歌詞が見えて、音楽をやめないことを悟らせる「やめちゃる」でドリーミーなギターが火を吹いていることからも分かるように

「BBHFです。自分が生み出したGalileo Galileiをあしらめにきました」

とさらっととんでもない事を話すザキ兄(笑)
「自分のバンド同士でバトるように仕向けたのあなたでしょ(笑)」と静かに心で思っていたが、「メガフォン」になるとザキ兄はハンドマイクにシフト
それも情緒を込めて歌ってるのが印象的だ
ハイトーンや強烈なシャウトを決めるわけではないけど、伸びのあるザキ兄のボーカルはやっぱり上手い

そのうえで「君はさせてくる」では、大久保が鍵盤にシフト
これぞエレクトロインディーというべきメロウな曲調で踊らせていくが、ザキ兄が再びギターを背負った「死神」はダークなテイストもメタルな感じもない
しかし和樹によるパワフルなビートは死神の存在を確かに感じさせる
インディーテイストであっても死神の存在は確かにある

DAIKIの得意とするドリーミーなギターが存分に発揮される「僕らの生活」でドリーミーなアンサンブルを展開すると、

「ここでMCするはずだったのに、早めにMCしてしまった(笑)」

と告白するザキ兄

先ほどのMCは予定に無かったものだとここで明らかになりつつ、

「Galileo GalileiとBBHFが同じステージに立つ。こんな機会は滅多にないと思います」

と話したのは、その通りだろう

今ステージにいるのはほぼGalileo Galileiのメンバー
ガリレオのライブではDAIKIと大久保はサポートに回る
でもベースはyoheyが担当することが増え、yoheyはNewspeakの活動もある
こう称して良いかは分からないけど、尾崎ファミリーがステージで一同に介するのはそう見られるものではないのだ

そうした尾崎ファミリーの1人、大久保は「花のように」でフルートに楽器を変え、「大久保の才能凄すぎる…」と思わずにいられないが、自分は数日前に見たeillが歌う「花のように」は聖歌のようだった
対してこちらはエモーショナル
バンドの曲は何度もセッションをして、色んなアイデアを吸収した後1つの歌になる
そうしたバックグラウンドが垣間見えるから心も持っていかれそうになる

大久保がすかさずホーンにスイッチし、東京都の中でも特に都会な街、六本木の夜を彩るにはあまり相応しすぎる「真夜中のダンス」、DAIKIによる泣きメロギターが炸裂する「涙の階段」とじっくりと聞きこむような曲が連発される中、個人的にライブ映えしていると思ったのは「疲れてく」
BBHFとファンの繋がりをテーマに描かれているが、いつまでもバンドとファンの関係は強く結ばれるものではない
何かの拍子で離れていくこともある
コロナ禍もそうだし、音楽性の変化、言動によって聞かれなくなる事は多々ある
SNS社会の今は特にそうだし、ガリレオで類似ケースを体感しているからこそ(一時ガリレオはサポートを入れず、3人で強引にライブしていた事もある。和樹がギターを弾くなんて今では考えられない)
バンドとファンの関係性を円満に保つのは簡単じゃない
だから疲れてくのだ
我々も無自覚に疲れている

BBHFはこの数日前に新曲「戦場のマリア」をリリースしたものの、この日はやらず
新曲が聞けないのは少し残念だが、その代わり新たに発表されたのは札阪東のワンマンツアー
東京はLIQUIDROOMとのことだが、まもなくアルバムのリリースも控えているらしい
ガリレオとBBHF、両者を掛け持ちしているファンはどれくらいいるか分からない
でもガリレオ目的が大半なのは間違いない
このライブを契機にBBHFをもっと知りたいと思った方も多いはずだ

そしてBBHFの最後の曲は、ザキ兄なりの死生観が描かれた「work」
いつ冥土へ導いてれる迎えが来るかは分からない
されど、自分はまだ死にたくないしザキ兄の作る音楽をもっと聞きたい
だから迎えの船はまだ来ないでいい

セトリ
ウクライナ
やめちゃる
メガフォン
君はさせてくれる
死神
僕らの生活
花のように
真夜中のダンス
涙の階段
疲れてく
work

BBHFのライブを終えると、ステージは見えないものの、青い照明が照らしている
なおかつ客電もつかないので、「トイレ行きづらないだろうなあ」と思いつつも、これはセットチェンジするからせざるを得ない処置だろう
攻めて客席は照らして欲しかったが

・Galileo Galilei
そうしてセットチェンジやサウンドチェックを終えると、客席からは拍手と歓声が
ここからはGalileo Galileiのターンで歓声も一際大きい(ちなみに冒頭の挨拶は、「4人の鯨、哲学者」)

BGMが止まると、打ち込みのトラックが流れ始めるがそれは岩井が脱退した後にリリースされた「Baby, It's Cold Out」に収録されていた「リジー」
ザキ兄が鍵盤を弾き、岩井(Gt. & Key.)も時折鍵盤を担当したりするが、音源のイメージを壊すようなシューゲイザー寄りのギターロックに大変貌
音源ではエレクトロポップだっただけに、この変貌が誰が予測しただろう
「明日へ」もライブでは大きくアレンジされていたが、今の編成だとどんなアレンジが成されているのだろう

ハンドマイクに持ち替えたザキ兄は自己紹介したのち、メンバー紹介を始めるがザキ兄や大久保と共に連投している和樹はビートに全く疲れが見られない
その体力に驚きつつ、岡崎(Ba.)がゴリッゴリにベースを鳴らすのは「あそぼ」
大久保も引き続きサポートし、強力にバックアップしているが、BBHFと比較してガリレオはやっぱりキャッチーだ
「ALARM」の頃からインディーロックとギターロックを上手く調和していたのもあるし、何度もアニメタイアップを経験してきたのも活きて、親しみやすい音楽になっている
その姿勢は特に「あそぼ」に出ており、BBHFはこんな陽性な曲は無かった

定番「バナナフィッシュの浜辺と黒い虹」は、今回もAimerのボーカルが同期で流れているが、今やAimerはアリーナでワンマン出来るアーティストとなった
この両者が交わる可能性は低いと思うけど、Aimer無しでも成立するくらいザキ兄の声はよく伸びている
尾崎兄弟は音楽センスだけでなく、体力も抜群である

しかしザキ兄からすると、

「さっきのバンドは殺気立ってましたね(笑)」

と同一人物ではないことを強調し、あくまで他人のように振る舞いつつ、

「俺たちは優しいよ(笑)」

と殺伐感はないことをアピール

「Tsunagari Daisuki ClubはGalileo Galileiが主催するイベント。BBHFは対戦者。だから殺気立っているのか(笑)」

とイベントの趣旨を説明しつつ、ステージにある「繋がりボール」は尾崎兄弟で一生懸命考えたものらしい
TDCの略字は東京ドームシティホールを連想させるし、繋がりボールはポケモンのモンスターボールにしか見えないが(笑)

去年リリースされたアルバム「Bee and The Whales」からは、再びステージに立つ決意を歌詞にしつつ、カラフルな照明と共に心を踊らせる「ノーキャスト」、インディーロックに歌謡テイストが合わさることで大衆にも響きやすい作りとなっている「ピーターへ愛を込めて」が続く
やっぱりガリレオはインディーロックをバックボーンに持ちながら、ギターロックに昇華して接しやすいようなロックに変えている
シーンを見渡すると、インディーロックの影響を受けているアーティストはあまり多くない
Vaundyみたいに洋楽の影響を受けているミュージシャンもそんな多くない
だからガリレオの存在は今なお濃く感じる

そんな中、

「ここからは懐かしい曲をやっていきます」

と「シングル曲やるの?」と期待させるザキ兄

けれども実際はというと、スリーピース時代のガリレオの方向性が定まった「ALARMS」からドリーム・ポップな「フラニーの沼で」、強固なアンサンブルがぶつかり合う「処女と黄金の旅(間違いでなければ、これが初披露だったらしい)」と確かに懐かしいがコアな曲を連発
このレア曲ラッシュにくるりと面影を重ねた方もいるだろうが、ザキ兄はくるりの影響をもろに受けている
だから今後、くるりのようなセットリストを作っても別に不思議ではないだろう
活動終了前なんて、最初からアルバム「Sea and The Darkness」の再現を予告してツアーを回ったし

そんな中、まさかの選曲は「SIREN」
懐かしいどころか10年ぶり
自分もライブで一切聞いたことが無かった曲である
ぶっちゃけ、初期の「パレード」や「雨のちガリレオ」の曲はシングルを除くと「管制塔」や「ハローグッバイ」くらいしかやらないと思っていた
それだけに「SIREN」をやるのは青天の霹靂そのものである
あの時代には戻れないけど、若々しさと荒々しさを表現することは出来る
今後もかつての曲を聞くことは出来そうな予感がしている

とはいえ周囲を見ると、反応の差があまりに大きく、興奮度合いが大いに乖離していたが、最後の「星を落とす」はそうはならない
ガリレオのライブでこれだけは昔から欠かさず演奏されてきたから
オルタナ・シューゲイザーサウンドは人によっては耳に強烈なノイズを残してしまうけど、この「星を落とす」は別
流れ星を落とすような轟音サウンドが美しく煌めいて本編は終了した

アンコールで戻って来ると、ステージにはガリレオだけでなくBBHFのメンバーも勢揃い
凄まじい大所帯編成となったが、ここでガリレオも全国ツアーの開催を発表
それもこちらは主要都市も回るツアーとなっており、アルバムのレコ発ツアーになるらしい
そのアルバムについてザキ兄は昨年の豊洲で、

「来年アルバムを2枚同時でリリースします」

と話しており、とてつもないツアーになりそうな予感だ
むしろこのツアーだけで収まるのか
UNISON SQUARE GARDENみたく、ツアーを分割する可能性もあるのではないだろうか

そのうえでBBHFの「黄金」をセッションするが、7人の編成で「黄金」を聞けるのは今後そうないだろう
貴重な瞬間を目の当たりに出来たと言っても過言ではない

なおこのツーマン、ザキ兄はもうやらないことも本編で示唆したが、

「また何らかの形で出来たら」

と今回限りではないことを宣言
そのうえで、

「バンドを通して人となりを知るのが好き。閃光ライオットで岩井君と知り合ったし(この時のエピソードは有名)、バンドをやってなければDAIKIと知り合うこともなかった」

と話した

 自分もガリレオに出会わなければインディーロックを聞くことは無かっただろう 
Passion PitやVampire Weekendなんて特に
自分がインディーロックを聞く契機になったのは間違いなくガリレオの影響だ
POP TECなんかもそう
バンドは人生を狂わせることもあるけどで、決してギャンブルのように悪い方に狂わせることはないはず

そして最後はTHE BEATLESの「Hey Jude」を日本語訳してカバー
ガリレオはもちろん、BBHFとの繋がりも強くした一夜、すばらしき音楽と涙の落ちる音がもたらされた

セトリ
リジー
あそぼ
バナナフィッシュの浜辺と黒い虹 
ノーキャスト
ピーターへ愛を込めて
フラニーの沼
処女と黄金の旅
SIREN
星を落とす
(Encore)
Galileo Galilei × BBHF
黄金(BBHFの楽曲コラボ)
Hey Jude(THE BEATLESのカバー)