タイトル︰「Beautiful Dreamer
アーティスト︰fhána
「Beautiful Dreamer」〔DVD付限定盤〕

去年デビュー10周年を迎えるものの、初期メンバーだったギターのwagaが脱退

レコード会社はLantisから日本コロムビアへ移動
事務所も独立したりと、周年イヤーにもかかわらず動きが激しかったfhána

10月にはLINE CUBE SHIBUYAこと渋谷公会堂、年が明けた2024年1月には初となるアジアツアー開催と怒涛の動きが続いたわけですが、昨年fhánaはメジャー初のEPとして「Beautiful Dreamer」をリリース
昔「ソナタとインターリュード」という「天体のメソッド」関連の作品をリリースしていましたが、どうやらあれはイメージアルバムの模様(…というか覚えている人いる?)

しかも制作スケジュールはほとんどがLINE CUBEのあと
既に完成していた「永遠という光」「Last Pages」に加えて急ピッチでレコーディングが行われるタイトなスケジュールになったそうですが、このタイトルになった理由は各所のインタビューを見ると

「次なる将来のビジョン」
「新しい「夢」をみんなで共有して旅を続けよう」

がコンセプトになったようですね
加えて世界の混沌が続いていることから、fhánaの楽曲で多くの作詞を行う林英樹が

「夢やファンタジーの中にこそ本当のことがあるのでは?」

と話したのも要因
だからこの「Beautiful Dreamer」というタイトルになったようです
次に向けて動き出したというか

そんなこのEPは「夢」から始まるのですが実はこれ、昨年京都と東京で行われたツアーの出囃子が元ネタ
最初はtowanaによるポエトリーリーディングで、

「それは魔法の劇場
ときに世界を構成する想像力
抗う術のない無垢な観客となる」

なんて印象的な言葉を読み上げ、

「もし世界が夢の中にそのままいられないなら
せめて歌い続けよう
どうか祈りを
僕らの進む先に美しい夢を」

と告げた瞬間にギターが入りロックに切り替わるのですが、あれが曲の伏線だなんて気付いた人はほとんどいないはず
ツアーの出囃子を覚えている人もそういないでしょうし、「あれを曲にするとは…」と皆さん思ったのではないしょうか?
ポエトリーリーディングからロックに気づくのはライブや物語が始まるかのようですし、

「歩くよ 強く
一人」

もなんだか勇気づけられる
そんな感じです

続く「永遠という光」は「ONE.」という恋愛アドベンチャーゲームのために書き下ろされた楽曲で一部媒体では、「美少女ゲームのオープニングに相応しい」なんて称されてましたが、僕は全くその辺り分からないです(笑)
やろうとして、放置されているゲームはあるけど(「金色ラブリッチェ」とか)
かつて、「僕らはみんな河合荘」の主題歌にもなっていた「いつかの、いくつかのきみとのせかい」が曲のイメージになっているそうで、ストリングが入ったりホーンが入ったりとゲームのオープニングらしい作り

ベースがゴリッゴリだったり、手数が多かったりと単なるポップソングに終わらないのが「永遠という光」

「いつでもそこにあるはずだと
信じていた景色
昨日に似た今日という日
また繰り返していく
そんな揺るぎのない暮らしが
続く気がしてた」

はコロナ禍の影も少しちらついてしまいそうですが、年明けに大地震が起こったりバブルの前兆、新しい戦前の到来の今、余計にこの歌詞は刺さってしまいます
例のアレどころかあの党が解答すれば多少はマシになると思うんですけどね
インボイスでシーンにダメージも与えてますし

そのうえで表題曲の「Beautiful Dreamer」、個人的にはfhána流のパンクロックと思っているのですが、これfhána史上最速のBPMのようでなんとBPM234(笑)
これまでの最速は「コメット・ルシファー〜(BPM219)」だったのですが、それを遥かに更新(笑)

しかもビートもタイトでエモーショナルなギターもあったりと、演奏事態も難度がありそうですが、


「もし夢見る力を失って
僕ら希望忘れてしまっても
同じ夢同じ空見ては
繋がってると思えるんだ
僕らの中にある悲しみが
どこか共鳴するうちは
ほら言葉いらない 見よう
あふれる夢を」

というフレーズも登場

表題曲になるのも納得するのではないでしょうか
ちなみにfhánaの中心人物、佐藤純一は去年特に聞いたアーティストで坂本龍一の次に聞いていたのはELLEGARDENだったようで…
ほんと、細美武士って色んなミュージシャンに影響与えてますね(笑)
細美さんのバンドのうち、どれかとfhánaがツーマンしないかな(笑)

一方「Turing」はこのEPで唯一Kevinが作曲担当
ワルツのリズムを用いた三拍子のポップソングなんですけど、歌詞はAIへの皮肉が見え隠れするという実は毒づいたような一曲に
曲名もコンピューターの父、アラン・チューリングから取っているとのことですから

「いつでもコントロールされていて
何度でも反復されている
無意識に選び取っていた 今
ともに生きる誰かのこと 明日も」

が特に印象に残りましたが、自分もどんな感じで移動するとか、何をするとか、自然にコントロールされる範疇に入ってしまっているのかもしれません
ちなみにブログにAIはまだ関与してませんよ(笑)
いつかはチャットGPTに相談とか、したりする可能性もありますけど

また「光舞う冬の日」は、インディーズ時代の音源「New World Line」に収録されていた楽曲
ライブではお馴染みの曲ですがtowanaボーカルver.として、現在のバンドメンバーによって再録されました
だからかドラムの手数が増えたり、ベースラインの低音がより効いているような気もするんですが、

「それは光舞う冬の日に
生まれたある奇跡
突然に世界が
歌い出すよう」

のように、これこそがfhána最初のデモ
ここからfhánaが始まったのです
fhánaの夢の原点を収録するには、今回が絶好のタイミングになったとも言えますし、

「溢れるその光
回るトリコを解く
僕たちは世界に
芽を吹かせたのさ」

の如く、世界に芽を咲かせてきました
でもここではまだ終わりません
それはみなさんもご存知の通りでしょう

そして最後の「Last Pages」
これも「ONE.」のために書き下ろされた楽曲で物語の結末を彩るようなロックバラード
佐藤が公式ブログでも解説していたようにオルタナティブなギターが目立ち、ファンタジックな鍵盤メロディも象徴的ではありますが、

「まぶしい光が孤独を解かした
涙が溢れては傷を包むよ
次は君の番だ
どんな時でも希望は残っている
それぞれの道が束ねられて今
ページをめくる
その光が孤独を解かすよ
僕ら一つだけど一人じゃない
それぞれの道がまた枝分かれて
新しいページ 開く時だ」

と物語を締めくくるにも、このEPを終えるにも最適な1曲ではないんでしょうか
「Cipher.」に匹敵するような名ロックバラードが生まれた
自分はそう思っています

本来「永遠という光」、「Last Pages」が収録されたこのEPは日本コロムビア移動第1弾音源になる予定でした
それが「逃走中」のアニメタイアップの話が入った関係で「Runway World」が先にリリース
こちらのリリースが後になったようですが、その結果fhánaの次なるビジョンを紡ぐEPになったのではないでしょうか?

コロナ禍以降、フェスのラインナップが急激に若返って、なかなかワンマンやアニメ関係以外のイベントで見れる機会が生まれなくなってますが、どうにかしてfhánaがfhánaを知らない人の目にも届くような機会が生まれないかなあって思いました