若手の登竜門として知られるO-crestは昨年でオープンして20周年
20周年を記念したイベントが多々開催されているが、その中で自分が目を奪われたのGOOD ON THE REELにCIVILIAN、The Cheseraseraのスリーマンイベント
自分の青春と深く関わってきたバンド達である

平日でありながら開演は18:30
スリーマンとなると、持ち時間次第では22時過ぎに終わる可能性もあるため、この日と翌日は休んで会場入り
O-crestに来るのはアルカラのツアー以来(いくつになっても5階か6階まで階段を自力で登らなければならないのはキツイ)だが、この日の出順はなんとなく予想できる
あの出来事があったから

・The Cheserasera
会場入りすると、ステージにセッティングされていたのはギター・ベース・ドラムからなるスリーピースセット
この時点でGOOD ON THE REELの出番は無いが、同時に2連続でライブする可能性も低い(と最初は思ったが、公演終了後にGOTRのサポートはこの日元々別の方が担当する予定だった模様。ちなみに昔、CDJのGALAXY STAGEでMONOEYES→ASPARAGUSの並びがあったが、あれは一瀬が超人すぎる。忍からは「MONOEYESの方ですか?」と弄られていたし(笑))
故にトップバッターはThe Cheserasera
コロナ禍になって以降、出演者の中では最もライブを見ているバンドである

お馴染みのSEが場内に流れると、何故か宍戸(Vo. & Gt.)はギターを見せびらかすように現れるが、西田(Ba.)と目線を合わせるように確認を取り、SEが終わると同時に始めたのは昨年リリースされた「Replay」に収録されていた「君がギターを弾かないなんて」

ケセラセラはライブをする度、ワンマン以外は積極的にセトリをツイートする事が多い
それは少しでもセトリを変化させ、初見には「こういう曲をやりました」と伝え、ファンには「ゲストで招かれているライブにも行きたいなー」と思わせる意図があるのだろう

ただこの日、宍戸が辞めていくバンドマンに向けて書いた「君がギターを〜」は、これまで聞いてきたライブと意味合いが異なった
1月に訃報が報じられ、シーンに悲しみをもたらしたGOTRの伊丸岡亮太を連想させるものだからだ
伊丸岡はこの世にもういない
だから伊丸岡のギターを聞けない悲しみが代弁されたかのようで、

「Come back my hero why not」

の部分は悲しくなってくる
そのGOTRを美代はサポートしているか、普段より力強くビートしたのは伊丸岡への思いもあったからだろうか

心の癒やしになるようなグッドメロディーを奏でながら伸びのある歌声を「賛美歌」で宍戸が届けると、

「新曲やります!!」

と宣言したので、「もう新曲出来たの?」と思ったが、これは「最新アルバムの曲やります!」といった意味合い
実際には活動停止明けからライブでよくやっている「GUS TOKYO」だが、西田と美代によるグルーヴが強力に牽引する上で、咆哮するかのように歌う宍戸は表情も気迫が凄い
途中、前の方にも出てきたがオーラが凄すぎて、自分が前にいたら後ろに下がってしまいそう
簡単には近づけない雰囲気を醸し出している

けれども宍戸は接しがたい人間ではない
Bentham主催のサーキットイベントは最初から客席にいたらしいし、宍戸の人の良さは歌詞を見ればすぐに分かりやすい
それゆえ、

「色んな人が楽しめるセトリにしました」

とセットリストも誰も置いていかないものを心がけているが、ケセラセラ屈指の名曲「幻」はワンマンのように合宿を煽ることはしないものの、

「息が止まるまで続けよう
僕はあなたの味方」

はこの日、特にあのバンド目当ての参加者には強く刺さっただろう
昨年sumikaが黒田を失っても立ち止まらなかったように、バンドはとまるべきではない
継続することが誰かを救う事になるから

そこから昨年2回参加したワンマンでは聞けなかった「うたかたの日々」、美代が作詞作曲した「枯れた白い花束」と続くが、これらはいずれも喪失を強く浮かばせるもの
「伊丸岡の事を意識してにセトリを組んだのでは?」と勝手ながら思ってしまう
並びに美代はこの2曲でかなり手数の多いビートを刻んでいたが、「枯れた〜」は美代の要望でセトリに組まれたかもしれない
3人の中で美代はGOTRと結びつきが一番強いから

CIVILIANやGOTRとは仲がいいものの、そこまでライブは一緒にやらないことを宍戸が明かしたケセラセラは先日新規ツアーを始めたばかり
それも、

「数日前からツアー初めて、新潟から東京戻ってきたばかりなんだけど、活動停止していた時期があった関係で、行けてなかった場所に自分から連絡してライブさせてもらってます。」

と宍戸達が自ら連絡を取り、6月まで続く長いツアーが形成されたのだが、

「この年(35歳)になると、「お客さん少なかったらどうしよう」と考えてしまうこともある。この前、新しいお客さんいたけど、良い伝え方も新しいSNSの運用法も分からない。だったらひたすら良さを伝えていくしかない。」

と宍戸はもうすぐ35で、リズム隊の2人は来年で40になる
宍戸は以前ワンマンでケセラセラを「俺の人生」と話していたが、バンドを続けるためには動員も大切
少なければ経済的にもキツいし、何よりメンタルに来る(実際昨年12月の下北沢シャングリラワンマンはガラガラで宍戸はショックを受けていた)

かといってここから効率よく自分たちの良さを発信出来るかと言われると、回答しがたい
それにSNSで曲の良さを発信するのも簡単ではないこと
近道はないのである
だから泥臭いと思われようが、ライブをひたすらやり続けるしかない
今やフェスに引っ張りだこの四星球なんて、まさにそうしてライブをしていったのだから

そんなケセラセラは実は今年で結成15周年
にも関わらず、宍戸は一切その事実を言及しないが、

「青春を歌った曲」

と宍戸が告げた「Youth」を初めて聞いたのはこのCrestだった
今はなくなってしまったDISK GARAGE主催のサーキットイベントでようやく見れた際、ケセラセラは「Youth」をやっていたのである
渋谷の街並みやCrestの周辺の環境も少し変わった
でもケセラセラの今に嘘偽りなんてない

そのうえで照明が月と太陽のように対照的に輝く「月と太陽の日々」で宍戸も西田も前に出まくり、美代のパンキッシュなビートで拳を掲げさせる「最後の恋」と来て、最後は「やっぱり来れないとなあ」となる「I Hate Love Song」
宍戸は感情をいたるところで混ぜ、

「ふざけんなよ」

も強調したあと、美代によってアウトロは一気にテンポアップ
45分で10曲やるのはさすがのテンポの良さだった

ケセラセラは6月まで月に4-6本ライブが決まっているが、ツアーに出演するアーティストのほとんどが若手
15年もやっていたらベテランの領域となり、知ってもらうのも困難
だから若手アーティストをゲストに招き、自分たちのことも知ってもらおうとしているのだろう
ライブを見れば見るほど「この良さ届け!!」と思わずにいられないのは、長年ケセラセラを聞いてきたからである

来月は今やNothing's Carved In Stoneのフロントマンである村松拓がかねてから所属しているABSTRACT MASHに、the quiet room
5月にはあのa flood of circleとのツーマンが控えている
今年も多くケセラセラのライブを見たい
あなたの言葉で生きているからよろしくお願いします
日進月歩

セトリ
君がギターを弾かないなんて
賛美歌
GUS TOKYO
うたかたの日々
枯れた白い花束
Youth
月と太陽の日々
最後の恋
I Hate Love Song

・CIVILIAN
サウンドチェックの時点からドラムの有田のとてつもない手数が聞こえたり、純市の重心低めのベースが放たれると、ケセラセラが作った親しみやすい雰囲気は一瞬で飲まれる
それはCIVILIANがありのままに現実を投影されるバンドだからだが、Lyu:Lyu の頃も含めてがっつりライブを見るのは初めてかもしれない

先日配信された「Never Open〜」のライブアルバム「WHO LEFT THE DOOR〜」にも収録されていた不気味なSEが流れると、先に有田と純市がステージへ
コヤマヒデカズも遅れて登場するが、コヤマがギターを背負う前からリズム隊の2人はリズムを刻み、コヤマが準備出来たところで現代社会を痛烈に風刺した「人類教ノスゝメ」から始まると、相変わらずの轟音
親しみやすさなんてほとんどない毒々しいまでの爆音である
触れたら一瞬で棘が刺さってしまいそうなアンサンブル、それがCIVILIAN

コヤマによる早口言葉と共にエッジの効いたギターが炸裂する「ぜんぶあんたのせい」は、拳が上がるも曲の終わり際に歓声が起こることはない
なにせCIVILIANの歌詞は自分が聞いているミュージシャンの中でも過激な分類に入る
「よくこんなフレーズ浮かぶな…」と驚くほど
スリーマンであるため、参加者は曲を頭に入れてはいるだろうけど、歌詞を見て激震が走った方も多いハズ

純市によるベースラインで身体は揺らされど、いつかは消えてしまう無常観が繊細なメロディーと共に奏でられる「さよなら以外」、打ち込みのビートが刻まれながらも人間の裏側をオブラートに包まず丁寧に歌う「せめて綺麗に」と昨年TOKYO CALLINGで見た際同様、セットリストはほぼ「Never Open〜」の楽曲
去年リリースされたアルバムの中でも軍を抜いて尖っており、裏を返せれば大衆になかなか好まれるような作品でもない
なので去年からCIVILIANへの評価は急速に誤りつつあるが、同期のコーラスが入る「僕だけの真相」はムードをがらりと変え、「覚えていようと思ったよ」は目の前にいる1人1人の参加者を肯定

決して歌詞は明るくない
でもキャッチーなメロディーセンスは昔から変わっていない
「文学少年の憂鬱」も「メシア」も歌詞は思いが、メロディーで聞き入ってしまう曲だった
それこそがコヤマの得意技だが、それを強力にバックアップするのが有田の手数多めなビートに、純市の重心低いベースライン
だからCIVILIANのアンサンブルは超爆音
1回で存在を刻ませるほど

ここまでMCは一切しなかったが、最後の曲の前

「今日の出演者で1番お世話になっているのは自分。20年同じことを続けるのは簡単じゃない。これからもよろしく!!」

とコヤマはCrestへの感謝を述べた
Lyu:Lyuの頃からお世話になっているということだけど、コヤマもこの重すぎる世界観をずっと維持している
それもまた凄いこと
こんなにも現実をありのままに書くのは相当胸が苦しくなる作業だけど、コヤマもあまりに凄い

そして、最後は起伏のジェットコースターのようにサビでコヤマの表情が急変する「déclassé」
自身の使命を改めて認識するように、叫ぶように歌い、

「止めを刺せ!
刺せ!
刺せ!」

なんて叫ぶ姿はもう圧巻
圧倒的すぎて最初から最後まで歓声は一切起こらなかった
手拍子しか出来ないほど痛烈なインパクトを浴びせられたとも言うべきか

日本人は都合の悪い現実を避けたがり、虚構された現実を信じようとする傾向がある
故にCIVILIANの音楽は聞いたら最後、途中で停止して逃げ足したくなる現実直面音楽である

だからなんとかしてCIVILIANの音楽が広まらないかと願わずにいられない
CIVILIANの音楽は目を覚ませる特効薬になりうるのだから
CIVILIANの音楽が評価されない世界なんて、まちがいなく間違ってるとちゃんと言葉にしておかなきゃな

 セトリ
人類教ノスゝメ
ぜんぶあんたのせい
さよなら以外
せめて綺麗に
僕だけの真相
覚えていようと思ったよ
déclassé

・GOOD ON THE REEL
このスリーマンが発表されたのは1/17
ならびに伊丸岡の訃報が告げられたのは1/20
そうした経緯もあって、トリ以外はGOOD ON THE REEL以外は考えられなかった
ライブハウスで見るのは2016年のDiverCity以来

去年のムロフェス、ならびに同年の活動もサポートしていたので、美代がこの日2回目の登板をするものと思っていたが、アップテンポなSEが流れてくると流石に短時間で連投は厳しいのか、この日は木挽裕次(from WALTZMORE)がサポートに
the quiet roomの元メンバーでもある

indigo la Endのティスとも関係が深い宇佐美(Ba.)や岡崎(Gt.)も登場したあと、色んな意味でネタにされる千野(Vo.)が登場するが、GOTRがこうしたイベントに出演する際は昨年のムロフェスのようなセトリになってしまいがちだが、意表を突くように最新音源の「新呼吸」から「HOPE」で始める
千野の歌声はケセラセラの宍戸とも、CIVILIANのコヤマとも違ってとても優しい
崩れ落ちそうではあるけど、後ろからそっと支えてくれそうな優しい声だけど、

「あきらめきれない」

が何度もリピートされるのは、ドラムも抜け3人となった今でも浮上することを諦めてないから
起こってしまった悲劇を乗り越えて、3人は進もうとしているのだ
ここでバンドを止めてしまったら、伊丸岡も悲しむ

基本的にサポートギターがリズムギターを弾き、リードギターは岡崎が担当するのがGOTRのスタイル
イントロから宇佐美がゴリッゴリのベースを鳴らし、岡崎がエモーショナルなメロを奏でる「サーチライト」では千野達が全員前に出て千野はお馴染み、手を伸ばすようなスタイルを見せるが、

「その手を伸ばした」

に合わせて客席からもたくさんの手が伸びる
まさか今になって「ペトリが呼んでいる」の曲を聞けるなんて思わなかったが

サポートギターの機材がトラブった関係でコヤマがギターを貸す出来事が密かに起こっていたのだが、実はGOTRはこれが年内初ライブ
しかもスリーマンも久久
ケセラセラは年明けにワンマンツアーをやっていたし、CIVILIANはBillboardでライブしていた
でもGOTRはライブ情報が入ってなかった
サポートとのスケジュール調整が上手くいかなかったのだろうか?

4つ打ちと共にあふれるメロディーが儚い「2月のセプテンバー」はちょうどこの時期が相応しいタイミング
良い季節に聞かせていただいているが、

「帰って来ると 思ってるんだよ
根拠なんて無く 思ってるんだよ」

の意味はきっと大きく変わっただろう
sumikaの時もそうだった
バンドを脱退したとはいえ、伊丸岡と千野達は繋がりが続いていた
去年から音楽シーンは悲しい別れが多すぎる
明るいニュースで溢れてほしいのに

触れたらすぐに弾けてしまうシャボン玉を「生きていく証」に変え、力強いアンサンブルと歌声が交錯する「シャボン玉」を終えると、

「スリーマンっていい感じだよね?ワンマンやツーマンと違った良さがある」

とスリーマンの良さを語る宇佐美
持ち時間は少なくなってしまうが、多くのアーティストに接することが出来る
故にそれはありだと思うが、

「CIVILIANとは昔から親交深いけど、ケセラセラとはそんなにやってなくて。美代くんにはサポートやってもらって、宍戸さんとも会ったら話はするくらいの仲なんですが、今日バチバチにやりたいと思います

と千野が話すように、GOTRとCIVILIANは昔から親交があるらしい
逆にケセラセラとライブするのは久々らしいが、ケセラセラが自分たちの企画でGOTRを呼ぶことはないのだろうか

「小田急線」、「水族館」と生活感あるワードを持ちつつ繊密なメロから躍動し、結局我々は孤独と再認識させる「ポラリス」を終えると、

「Crest20周年おめでとうございます。ライブハウスが減りつつある中、Crestは生き残ってくれた。Crestにはたくさんのカッコいいアーティストが出演していて、あなたの人生を変えるアーティストがいるかもしれません。またCrestに来てください。Crestがある限りライブし続けます」

と話す宇佐美

千野から「店員さんみたい」と言われたが、GOTRはムロフェスの常連
アルカラと共にいなくてはならない存在だ
ということはCrestの代表も同然
Crestの一員のようなものだ

そのうえで、

「予測した未来はあるけど、確定した未来はない。だから歩いてください。俺達を色んな場所に連れて行ってください。そしてあなた方の生活を彩れば」

とどんな時でも歩みを止めないように、千野は促したが最後に演奏された「ハッピーエンド」

「世界はガタガタ崩れてくけど 私はまだ死なないわ」
「私達はいつでも ハッピーエンドを待ってるの
愛する人を失くしても 夢は幻と気づいても
終わることなんて出来ないの だっていつだって
ハッピーエンドを待ってるの」
「どうなるかはわからないけど 私はまだ歩いてみるわ
だってそうでもしなきゃほら ハッピーエンドは来ないでしょ?」

と今までと違って千野の、GOTR全体の意思表示のようになっていた
だから泣かずにいられなかった
GOTRは絶対ハッピーエンドを迎えなければなないと思ったから
多分イントロが鳴った瞬間、伊丸岡を浮かべた人は多い
GOTRのライブを見てなくても、伊丸岡の存在は認識されているから
参加者はもちろん旅立った伊丸岡にむけるかのように歌われたラストソングだった

アンコールで戻ってくると宇佐美が4月に東阪でワンマンすること、物販にてこの日のセトリが掲載されたQRコードを配布している事を話し、
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さっき言おうとして、忘れてました(笑)」

と今更すぎるあけおめを行う千野(笑)
流石にこの時期、おめするバンドは他にいないだろう

そしてラストは、

「それでも…生きてゆくから!」

と事前に千野が歌唱した「素晴らしき今日の始まり」
「ハッピーエンド」や「素晴らしき今日の始まり」はライブの定番
でも伊丸岡の死によって意味合いは大きく変わった

「伝えたいコトがあります
届けたいモノがあります
叶えたいユメがあります
守りたいイノチがあります
消えないキズがあります
咲かないハナがあります
言えないコトバがあります
守れなかったイノチがあります
それでも生きていくから…
それでも愛するから…」

と何がなんでも生きて、愛していくことを約束する曲になったから

あの訃報の後の初ライブ、千野達は歩み続けようとしている
かつての仲間の死を簡単には受け入れられない
けどやっぱり進んでいくしかない
生きられなかったもののためにも
sumikaもそうだったけど、絶対にバッドエンドで終わってほしくない
ハッピーエンドを待ってるの

セトリ
HOPE
サーチライト
2月のセプテンバー
シャボン玉
さよならポラリス
ハッピーエンド
(Encore)
素晴らしき今日の始まり