今年デビュー20周年イヤーを迎え、4月にLINE CUBE SHIBUYA、8月には東京ガーデンシアターでワンマン
11月には大阪城ホールにてくるりやASIAN KUNG-FU GENERATIONとスリーマンとビッグなワンマンを次々に発表しているフジ

4月のLINE CUBEワンマンに関しては、追加公演や生配信を求める声が殺到する事態になっているが、2月下旬に「I LOVE YOU」以来となる新作「PORTRAIT」をリリース
そのリリースを記念して、久々にFC会員限定となるライブが行われることに
会場はまさかの東京キネマ倶楽部となったが

その東京キネマ倶楽部、名前は聞いたことあったものの、ライブを見たことが無く今回初めて訪れたのだが、上野の次、鶯谷駅が最寄り駅
それも駅からすぐ近くというとてつもない立地の良さ

エレベーターでホールに向かうシステムであり、7th Heavenに似ているがこの日の開演時刻は18時
参加できたのは勤務地がたまたま東京キネマ倶楽部の近くだったからであり、早い整理番号だったのに到着がギリギリだから見るのはかなり後ろの方
ミラーボールなんてまず見えない(笑)

その定刻18時を過ぎた頃、BGMは大きくなれどそのまま暗転はせず山内(Vo. & Gt.)は普通にステージへ
「F」リリースに先駆けたFC限定ライブの際は普通に暗転して登場した故、この始まり方には大いに驚いたが、山内がアルバムリリース日にライブ出来ることを喜ぶ反面、

「まだアルバムの曲を覚えたか、覚えてないかの状態でしょ(笑)」

と金澤(Key.)が話すように、「Portrait」はこの日リリースされたばかり
サブスク主流のこの時代、音源が解禁されるのは日付が変わった頃だから、ほとんどの人が曲をまだ定着出来てない状態
かくいう自分もまだ2周しか出来てないシチュエーションでの参加である(記憶を定着させるには、睡眠が不可欠)

なおこの日のドラムは伊藤大地でも、玉田トムでもなく、「フジでドラム叩いたことあった?」なよっち
ずとまよだったり、fhánaやXIIXのライブでサポートしてるのは見たことあるが、フジでサポートは「マジ!?」と面食らった方もいそうである

ライブ後にはハイタッチ会(自分は「ミュージシャンとは程よい距離を保つ」方針なので、ハイタッチ会には不参加)を控えており、スタッフにも事前に終演予定を19時30分と確認していたため、「これはアルバム全曲お披露目ライブになるのかな?」と推測
結論から言えばその通りとなり、「Portrait」お披露目ライブの幕が上がるかのように、「ショウ・タイム」からスタート
流石に1日で曲が整理できるほど、自分は器用な人間ではない
故に聞きながらアルバムの全貌を再確認しているのだが、山内がギターからベースのような低音を鳴らしカントリーになったと思いきや、レッチリばりのファンキーな感じに変化
それにとどまらず金澤の鍵盤がフューチャーされるプログレッシブなパートもあったりと変態節炸裂
あまりに情報過多すぎて、山内達も

「組曲みたいな感じ」

と後に説明するのも分かる
1曲に何曲分のアイデアを詰め込んだのだろう(tricotは3曲たったはず)

続いてアニメの主題歌にもなった「プラネタリア」、金澤の流暢な鍵盤が際立つも山内の歌声はあまり出ていない印象
なおかつ「プラネタリア」は金澤も加藤(Ba.)もコーラスはしないので、援護射撃もない
まだ山内の声にエンジンはかかっていないのが目立つような印象に

どういうわけか、去年秋のツアーではセトリから外れ「なんでこれバスんなかったの?」と今でも思ってる「Particle Dreams」で浮遊感ある金澤の鍵盤リフと共に、グルーヴィな加藤のベースラインで踊らせるが、アウトロになると金澤、山内とそれそれがソロ回しを行い大いに沸くじょうない
一時はこうした長尺セッションの役目は「ブルー」が担っていた
今後、「Particle Dreams」に役目は引き継がれていくのかもしれない

この日はアルバムリリース記念ライブ
故に山内達は制作のバックグラウンドなども明かしてくれるのだが、「ショウ・タイム」については、

「これ組曲みたいじゃん?しかも初披露だから緊張感凄かった(笑)」

と目まぐるしく曲調が変わるので、山内達はかなり緊張していたらしい
ブルースと思ったら急にファンクになるし、プログレっぽくもある
しかもこれが初演奏
「上手くやれるかの不安」がとても大きかったと思われる

なおアルバムリリース日にライブをするのは、山内や金澤は「TEENAGER」のリリース日以来と話していたが、生配信も含めると、「I LOVE YOU」の時もやっていたはず(幾田りらとコラボした「たりないすくない」をやっていた)

加藤によってこのキネマ倶楽部が元々キャバレーの会場だったことや、キネマ倶楽部名物の踊り場から登場すると見せかけて普通に出てきたことに山内が言及して笑わせた後、

「普段左手はベースだから使わないのに、しんちゃん(加藤)が弾かない部分があるから使いまくってる(笑)」

と金澤が事前に説明した「KARAKURI」は、これまたフジの十八番である変態節が炸裂する曲
しかし一見、ベースが弾いているように見えるイントロは金澤の鍵盤から導かれているもの
しかもよっちが刻むドラムの手数は多すぎるし、「これ難度高すぎでしょ!!」と楽器経験者はすぐに気づいたのではないだろうか
それにとどまらず、途中「蒼い鳥」を彷彿させる鍵盤を金澤が弾いたり、山内も「STAR」を連想させるギターを鳴らすなど、変態ロックのグレードはより高まってしまった印象である
なお音源で山内が担当していたラップは加藤が担当
元々レコーディングでも加藤がラップしていたようだが、結局山内のラップが採用されたらしい
金澤は「天空の城ラピュタ」のムスカよろしく、「腕が!腕が!!」なんて大袈裟に反動をアピールしていたけど(笑)

ここまでは変態ロックやアップナンバーを連発していたものの、山内がガットギターに持ち替えた「月見草」は加藤が重心低めのベースを鳴らし、金澤は鍵盤ハーモニカに持ち替えたりと漂うは歌謡・フォークテイスト
ここで初めてメロウな曲を投じられたが、山内は途中口笛をするパートがあるようで、

「口トロンボーン」

と新しい用語を生みだしてしまう山内(笑)
本来はトロンボーンを入れる予定だったのが山内の口笛がよく、口トロンボーンが採用されたとのことだが、

「口トロンボーンの上達をお楽しみください(笑)」

なんて言えるのは山内くらいだろう
Spitzの「みなと」のようにレア曲になる可能性もあるが

そのうえで自分が「Portrait」の中で特に気に入っているのは「音楽」
直近でSUPER BEAVERが同名のアルバム「音楽」をリリースしたので、少し紛らわしい気もするけど、

「去年体調崩したときあったじゃん(7月頃に山内はコロナに感染してい)る?その時にこの歌詞が出来た」

と話すように、体調を崩したときに浮かんだ山内の本心がこの「音楽」にずらりと並べられている
山内の内心は「ECHO」や「手紙」で幾度も語られているけど、それは志村正彦に向けたもの
こちらは奥田民生やサザンオールスターズの名前を出している(きちんと両者には使用許可を取ったとのこと)ので、更に内心に近いだろう
なお今の歌詞になる前、

「最初は切なりの歌詞を書こうと思ったけど、ダイちゃん(金澤)のアレンジが良くて、「これは切ない歌詞合わないな…」ってなった」

とのことで歌詞を変えたらしいが、「口トロンボーン」に続き、「切なり」なる謎ワードを誕生させてしまう山内(笑)
山内の天然ぶりはどんなに年を経ても変わりそうにない

このようにアルバムのリリース記念ライブなので、掘下げられるのは新録楽曲が中心となるが、「君を見つけてしまったから」がアルバムに収録されてないため、

「最も古い曲」

になったのは、NHKみんなのうたにも使用されていた「音の庭」
童謡や歌謡曲を中心にしつつも、カントリーやジャズの様相を取り入れて一筋縄ではないポップに
そのような曲を子供向けの番組に提供するのがフジらしいとも言えるが、金澤の鍵盤を中心とした間奏パートは「トム・ヨーク」なる仮タイトルが付いていたらしい
「その話するならリリースしたタイミングじゃね?」と思ったりもするが

山内が金澤や加藤に向けてアドリブをやらせようとするハラスメントを行い、逆に「「君を〜」が収録されずになんでこっちが収録された?」な「瞳のランデヴー」はフレデリック不在のため、去年の夏と9月に行われたショートツアーに続き、金澤がフレデリックパートを担当
何度聞いても自分の中では「フレデリックの曲をフジが演奏している感じ」
反面、ギターリフと鍵盤リフが抗戦するように弾きあう部分はユニークで面白いが、実質金澤がメインとなる2番になると、金澤は自身のポジションを飛び出してステージ前方に(笑)
まあ金澤の事だからただでは終わらないと思ったが、こういう予想だにしない行動を見る度、フジの歴史の中で色んな意味でトラウマを植え付けた金澤の生誕祭のことが脳裏によぎる
そういえばその生誕祭が行われたのは、15周年イヤーの翌年、コロナ禍投入直前だった2020年のことだった
まさか来年、あの悪夢が蘇ってしまうのだろうか
むしろ今なお開催できてない加藤の生誕祭をやっていただきたい

しかしこの行動が山内の心に対抗心を抱かせたのだろうか
事前に振り付けを何度も確認した「ミラクルレボリューション〜」で山内がハンドマイクになると、2サビでキネマ倶楽部名物である踊り場に突入(笑)
加藤は気にせずコーラスし、よっちも淡々とビートを刻む一方で金澤は「やりやがった…」な表情をしてコーラスをやってなかった
しかも山内は間奏でゆっくり階段を降りるので、まるで昭和のスターも同然誰がなんと言おうと、この日のハイライトはこの場面一択
その代償として、マイクのコードが大きく絡まったが(笑)

そんなFC限定ライブはあっという間に残り1曲
ワンマンはワンマンでも、このライブはあくまで「Portrait」のリリースに伴うもの
予定時間が90分だから致し方ない 

ならびに残った曲は「Portrait」のみ
やる曲までネタバレされている状況だが、

「「I LOVE YOU」はフジファブリックからみんなに感謝を伝えたアルバム。「Portrait」はフジファブリックのこれまでを集めたアルバム。」

と簡単に「Portrait」を説明したうえで、

山内「僕たちにとってフジは青春。ライブも音源リリース出来るのも青春でありみんながいるから出来たこと。だからみんなに感謝を伝えたかった。」

と話したのはフジが「青春」であること

ライブが出来ること
音源がリリース出来ること
これらが出来るのはほんの一握り
武道館や大阪城ホール公演を出来たのも普通なら出来ない偉業である

でも山内達はフジが今もこうして活動できることが1番嬉しいのだろう
ドラムが抜けたり、志村正彦を失ったりとフジの歩んできた道のりは他のバンド以上に波乱万丈
ボーカルが山内に変わって、「STAR」や「Voyager」をリリースした頃、賛否両論だったのを今も覚えているし、「LIFE」がリリースされるまで評価が安定するのは相当な時間を要した

山内がボーカルに転向して数年、喉を飛ばすこともあったし、志村と比較され続けるのも避けられない運命
そんな状況をファンはずっと支えた
ファンなくして、フジはここまで続いてないし、青春を続けることも出来てないはず(同時にもし山内にボーカルが変わってなければ、ヒトリエやsumikaが活動を続けられてないかもしれない)

だから「Portrait」はフジと我々の関係を歌うような曲
あなたといられることの幸せ
自分のためだったのが、誰かのためになっていること
そしてあなたがいたから山内達は何者かになれたということだ
フジと我々の関係はこれからも続く
続くからこそ、改めて感謝を伝えて「Portrait」のリリース記念ライブは終了

ハイタッチ会に参加しないので、自分は会場をここで後に
普段からマイペースだった山内がFC限定ライブだったことで更にマイペースに
でもアルバムの世界観を掘り下げてくるから貴重な90分になった

気になるのはこの「Portrait」のレコ発ツアーがあるかどうか
現在LINE CUBE SHIBUYAに東京ガーデンシアターのワンマン、大阪城ホールでのアジカンやくるりとのスリーマンは決まってるし、ライブナタリーの企画でアイナ・ジ・エンドとのツーマンも決まってる
だが「Portrait」のレコ発ツアーはまだやるか分からない
5月か、8月以降にツアー日程が組まれるのだろうか
アルバムを出したからには、やっぱりツアーをやってほしい

そしてLINE CUBEこと、渋谷公会堂
現状自分はまだチケットを確保できてない
今のところ追加公演も生配信の予定もなさそうだが、ハイタッチ会でのファンとの交流で少しでも良い知らせが聞ければ良いのだが…
日本武道館ワンマンも大阪城ホールワンマンも参加した
11月の大阪城ホールスリーマンは厳しいし、「Portrait」も良かった
フジお祝いのワンマンはやっぱり参加したい
何がなんでもチケットを見つけて見せよう
悲しい思いは それでなりいいから

セトリ
ショウ・タイム
プラネタリア
Particle Dreams
KARAKURI
月見草
音楽
音の庭
瞳のランデヴー
ミラクルレボリューションNo.9
Portrait