神奈川県にある石川町駅を最寄り駅とし、横浜スタジアムのすぐ近くにもあることで知られるF.A.D. Yokohama
このライブハウスといえば、「え?この組み合わせをこの会場で?」と音楽リスナーを驚かせる「THE SUN ALSO RISES 」と呼ばれるツーマンシリーズを開催しているが、この日の組み合わせは、CDJ22/23ではGALAXY STAGEに出演し、Zeppクラスでもライブ出来るkoboreと3月からPIZZA OF DEATHを事務所に、ポニーキャニオンからメジャーデビューが決まってるサバシスターという意外な組み合わせ
この組み合わせならソールドアウトするのも必然である

・サバシスター
この日の先攻はサバシスター
キャリアを考慮したら、至極当然の事だろう

定刻から5分過ぎた頃にゆっくり暗転し、ビッケブランカの「Ca Va?」がSEとして流れる中、まず男性サポートベーシストのD君と共に先にるみなす(Gt.)とGK(Dr.)の2人がステージに
遅れてなち(Vo. & Gt.)も登場するが、なちはthe telephonesの石毛輝のように、サングラスを着用して登場
すなわちロックスターに扮している訳だが、ロックスターになるというのは覚悟を決めるということ
年明け早々に発表された「覚悟を決めろ!」に掛けたものだと思われる
まだPVは公開されてないが、去年まではセルフマネジメントだったのが、サバシスターは今年からPIZZA OF DEATHを事務所として、ポニーキャニオンからメジャーへ
そうして覚悟を決めたのだから、曲も勇ましくなる
PVの後のフレーズや曲調もカッコいいので、是非とも音源解禁にも期待していただきたい

ロックスターモードのなちは最初のみで、ギターフレーズが微笑ましい「ナイスなガール」以降は日常をテーマにした曲を連発するも、この日のF.A.Dは人が多すぎて、「背の低い人に人権はあるのか?」というレベル
それも後方にいたため、ドラムセットすらまともに見えない
UVERworldがライブハウスでワンマンする際、一部の客にはお立ち台を提供しているが、この日ほど「踏み台があれば…」と思わずにいられなかった
F.A.Dだけでなく、各地のライブハウスで背の低い方への配慮を真剣に考えていただきたい

一方、先程までロックスターモードだったなちはMCになると、言葉が上手く出ず、MCそのものが始まらない事態
こればかりは得意不得意あるから仕方ないし、最悪UNISON SQUARE GARDENの斎藤みたく、簡単に話すだけでも良いと思うが、その原因は母親とのやり取りを曲にしたであろう「ヘイまま!プリーズコールミー」をやるのが久々だったのもありそう
イベントに招かれても持ち時間はだいたい30分
そうなるとやる曲が限られてしまうし、まだバンバン全国ツアーをやっているわけではない
持ち曲が少ないとはいえ、持ち時間が少ないライブが続くと、久々にやる曲で緊張するのは仕方が無いこと

対照的にGKが刻むビートに、Dくんのゴリゴリしたベースから始まる「スケボー泥棒」は問題無し
なちはギターソロになると、るみなすをお立ち台に招いて弾かせていたが、この時にやっとるみなすの顔を確認できた人も多そう
去年F.A.DにはKEYTALKと四星球のツーマンで訪れたが、その時よりもステージが見にくい気がするのは男性客が多いからだろうか?

そのうえで「リバーサイドナイト」は2022年からライブで演奏されているものの、まだ音源にはなってない曲
サバの日こと、3月8日にリリースされる「覚悟を決めろ!」でようやく音源となるが、

「むき出しのハート」

が個人的に印象に残った
早く手元で聞ける日が来ることが待ち遠しい

サポートベースを務めるDくんはF.A.Dをホームとしているためか、なちから紹介された際、歓声も特に大きかったものの、現在減量企画の真っ最中でダイエットに失敗したら髪をそられるらしい
「同意があるとはいえ、サポートにもそういう企画をさせるのか…」と自分は思ったが、当のDくんは楽屋でおにぎりとファミチキを食べていたらしい
「そこはサラダチキンだろ」とツッコミを入れたのは自分だけだろうか

また、るみなすはkoboreのギター安藤とは仲がいいものの、佐藤たちとは目を合わせることも出来ないとのこと
なので、

るみなす「今日の目標は安藤以外とも目を合わせられるようにすること」

がこの日の目標とのこと
簡単に見えても、初対面の方と目を合わせる行為はわりと難しい
もしかしたらるみなすは、人見知りかも…

このMCはこの後出演するkoboreのライブにも影響を与えることになるが、「生活」はサバシスターの楽曲の中でも数少ないバラード
じっくりとアンサンブルを練り上げて、なちの声が心に響くのは生活あるあるを曲にしているからだろう
日常をネタにするバンドは数多く入れど、こうして日常をバラードに還元できるのはとても強い
テンポアップしたまま終わると思いきや、元のBPMに戻ることも含めて

並びに「マイベストラブ!」はGKのビートを合図にするかのように、次々とビートが切り替わる
シンプルにギターロックをやっているだけではなく、変拍子の曲をキャッチーに難なく聞かせられる点がサバシスターの強みだと自分は思っている
そうしたどんな曲でもキャッチーに届けられる強みを活かしたいから、ピザオブデスがマネージメントを担うことにしたのではないだろうか

なちの口より3/8に「覚悟を決めろ!」をリリースすること、全国ツアーでこのF.A.D Yokohamaに来ることも告知するが、どうやらこのF.A.Dには「覚悟を決めろ!」のセルフライナーノーツが書かれたチラシがあるらしい
まだどこも「覚悟を決めろ!」のリリースに伴うインタビューはやってない
それだけに「先にしれる機会」と考えたか、サバシスター終了後にはチラシ争奪戦に
タワヨコなどにはないのだろうか

そのうえで昨年、驚異的な勢いで広まった「ジャージ」は、GKのキメ多めのビートが目立ちつつ

「今夜はロックンロール」

で大合唱

ジャージを盗まれたことをこんなアッパーに昇華出来るのはきっとなちくらい
今やジャージといえば「Re:ゼロから始める異世界生活」のナツキ・スバルや「ぼっち・ざ・ろっく!」のぼっちちゃんこと後藤ひとり、そしてこのサバシスター
ジャージを盗まれてなければ、結成から5年も経たずにメジャーに在籍するミラクルは起こってない

そして、なちとるみなすが背中合わせで演奏したり

「手に届くものばかりじゃ、世の中
腐って消えてしまうよ」

という独自の感性が出る「タイムセール〜」を経て、最後は

「サバシスターのテーマソング」

と話すとおり、さらなる快進撃を誘うような「サバシスター's THEME」で終了

自分は3月に行われるサバの日の先行を申し込むも落選
ツアーファイナルはCLUB QUATTROだけれども、それすらもう取りにくくなっていると思われる
近いうちにZeppでライブで出来そうな勢いだ
このキャパでサバシスターを見れることはもう早々ないのではないか?

なお先程のるみなすの発言は、koboreのライブにも影響を及ぼす
伝説ライブになるトリガーとして

セトリ
覚悟を決めろ!
ナイスなガール
ヘイまま!プリーズコールミー
スケボー泥棒!
リバーサイドナイト
生活
マイベストラブ!
ジャージ
タイムセール逃してくれ
サバシスター's THEME

・kobore
サバシスターのライブを終えると、当然ではあるが転換が行われる
そのタイミングで人が更に増えたのだろうか
自分は入口付近に追いやられ、もはや移動は困難な状況
去年のKEYTALK × 四星球のツーマンよりも人は多い気がする

そんな状況なので、自分は移動することもなくこのライブレポ用のメモの断片を書いていたのだが、突如

「フロムライブハウス、府中からやって参りました!kobore始めます!!」

と佐藤(Vo. & Gt.)が挨拶を始め、状況整理が出来ないまま、「爆音の鳴る場所で」が始まる奇襲攻撃

自分の身長では後方からステージを見渡すのは不可能
なので転換の際から佐藤達はステージにいたんだろうけど、こんな始まり方は予想だにしないし、いきなり始まっても大合唱となる場内
koboreの楽曲には「ローカルから革命を」という曲が存在するが、もうこれは既に革命が起こっているも同然

ほぼ間を開けぬまま始まる「FULLTEN」の頃には、サバシスターの際にほぼ皆無だったダイバーも次々に出現
「そりゃ近年のkoboreならそうなるよね」な状況
初期のメロディアスなギターロックを鳴らしていた頃が嘘みたいに思えてくるが、どんな曲もパンクに変え、高くセッティングされたスプラッシュシンバルが特に目立つ伊藤の姿もほぼ見れず、田中(Ba.)も安藤(Gt.)も垣間見える程度
「本当にこれキャパ600?」と疑問を抱く人の多さである

「友達は大切に〜!!」

と佐藤が促すのもごもっともなフレーズが羅列された友情讃歌な「ダイヤモンド」、

「どこまで行けるかな〜?」

と佐藤が煽る「リバイブレーション」とkoboreの楽曲は音源で聞くと、ストレートなギターロックに見えるがライブのkoboreは完全なパンクバンド
シューゲイザー並に轟音を鳴らすし、田中のベースはバッキバキで伊藤のドラムは強度が桁違い
だからダイバーも怒涛の勢いで起こるし、シンガロングも起こる
音源とライブの差があまりに違いすぎるのがkobore
真髄はライブを見ないと、判断出来ないのである

このようにパンクロックを猛獣突進の如く、次々に連射しているが、陸上をするかのように助走をつけるのような前奏から、猛スピードで駆け抜ける「OITEIKU」で、

「売れそうなバンドは何バンドいる?」

のところで

「聞くかよバーカ〜」

とシーンを挑発したあと、佐藤はまさかの客席ダイブ
アー写からは想像できないくらい、刺青を腕に刻んでいるパンク育ちな人間だからアクションを起こすのも納得ではあるけど、2回目の「爆音が〜」始まったのは初期衝動だろう
急に客電がついたから、照明も慌てたのだと思われる
むしろ自分が「koboreもSIX LOUNGEやKALMA、ハルカミライタイプだったのか」と驚いているが

衝動むきだしの言葉や行動に苦情は受け付けないことを佐藤は堂々宣言するも、話しの中心はサバシスターのるみなすと交流がある安藤
佐藤達は安藤がるみなすと仲が良いことを知らず、それもかなり親密な仲とのこと
そのため安藤は徹底的に弄られたが、もしかしたら将来2人は〇〇になってしまうのでは?

その一方で、

「もうすぐ1月が終わる。別れの季節が近づいているぞ!」

と佐藤は旅立ちの季節こと、3月が近づいていることを悟らせ、

「今日が最後で2度と会えない人がいるかもしれない。ネクタイ付けている人、店開いている人に中途半端な姿は見せられない!!」

と自分に言い聞かせるように気合を入れていき、

「続けているものは絶対手放すな!!」

と叫び、安藤のエモーショナルなギターや伊藤のパワフルなビートが背中を押す「ボーイズアンドガールズ」へ
同名楽曲だとASIAN KUNG-FU GENERATIONも浮かぶがあちらはそっと背中を押すのに対し、こちらは全方向から力を押すもの

特に、

「思い出してた
見せない涙があって
思い出していた
見せない努力があって
思い出していた
見せない孤独があって
思い出していた
見えてくれる光」

の部分なんて持たざるものが持ってるものに食いつこうと必死に励む結晶のフィードバック
開場前、F.A.Dの前には20代や30代が多くいた
若い参加者ほど「ボーイズアンドガールズ」は刺さると思う

伊藤の16分ビートや口ずさみたくなる田中のベースラインに合わせて、会場中が飛び跳ねまくる「スーパーソニック」で声が枯れても歌い続けることを誓ったあと、佐藤が口にしたのは、

「ライブハウスに来る理由を聞かれたら、なんて答える?俺は何も考えなくてもいいから。ムカツクこと一杯あるよ。でもライブハウスにいる間は何も考えなくて良い。だからライブハウスに来る」

というライブハウスに来る理由
自分の場合は単純に好きなアーティストを見たいというのが1番だけど、確かに何も考えなくていい時間は多い
我に返るような瞬間もあるけど、ネガティブな要素は少ない
ライブハウスはアサイラムのような場所だ
一時的でも逃げられる、音楽リスナーを守るための

そうして佐藤のMCで共感させた後に鳴り響く「ヨルノカタスミニ」は先程までの激しさと打って変わり、優しさで客席を包む
自分が初めてkoboreと出会ったのは「アフレル」
収録曲だった「君にとって」に一目惚れしたが、何よりメロディーの良さ
それがkoboreの1番の武器だった
その武器は今も不変だし、パンクロックをやる上でメロディーは特に重要
初期とイメージは変わったが、メロディーの良さは変わっていない

その「ヨルノカタスミニ」前後にリリースされた「幸せ」で安藤の鳴らす美しいギターとともに哲学的に幸せを歌ったあと、koboreのライブで必ず聞きたいのはやはり「テレキャスター」
ここには、

「僕にとっての音楽はさ
偉くなったり有名になったり
することじゃなくてさ
僕にとっての音楽でさ
あなた1人を
笑わせることができたなら
それでいいんだよ」

と佐藤にとっての音楽が綴られている
有名にならなくてもいいから、目の前のあなたを笑わせる
そのためにkoboreで爆音を鳴らすのである
少しでも音楽であなたの笑顔を見たいから

最新アルバム「Hug」のオープニングにして、

「探していたものは
ここにはきっと無いと思うけど
また探そうと思えるような
そんな光を僕にくれるんだ」

とこの夜が希望を与える特別な夜に変わることを歌ったファストパンクな「TONIGHT」でダイバーを続出させたあと、

「50分一本勝負なのでアンコールはありません!このノイズが幸せなノイズになりますように!!」

とこのライブにアンコールはなく、次の曲が正真正銘最後になることを佐藤が告げ、

「次に会うとき、自信を持って会えるかどうかはお前らの行動次第!!」

と宣言し、シューゲイザーでも聞いてるかのようにノイズや爆音が飛び交う「この夜を抱きしめて」は、途中で音が止まると一向に演奏が再開されず、

田中「この時間、きついよね…」

と愚痴ってしまうが、いざ意を決し、

「ステージを降りると
死ぬのが怖くなる
またみんなに会いたいから」

のはkoboreだけでなく、バンドマン、いやミュージシャン全員の本音
これが最後のライブになるかもしれないし、みんなの支えがあって、ミュージシャンは生きていけるのだから
そのうえで、

「寂しい気持ちがあってよかった
この気持ちが君と僕をつなげた
いつでもいいここで待ってる\

と打ち明けたあと、安藤のギターソロを佐藤は

「るみなす!るみなす!!」

と弄りまくり(笑)
サバシスターとkoboreが同日出演する日はもうこう弄られる定めなのだろう
安藤自身も天井にぶら下がってギターソロを弾く奇行に走っていたが(笑)

そうして、

「生きるのが不安になった夜はあるかい?
不思議だよね 僕も同じさ」

と最後のバースに入っていくが、

「泥臭えライヴに
救われたことはあるかい?」

はあるといえる
色んな夜を経験したお陰で今でも自分は生きているのだから

そして

「こんな夜を何度でも抱きしめてこうぜ
熱は冷めない夢をみていたい」
「みんなと歌える夜があってよかった
寂しくなるな、もうすぐ終わる
また歌おうここで待ってる」

とこの夜を大切にすること、ライブハウスでの再会を最後に歌うとすっぱと佐藤達は去っていった

途中佐藤は、

「あまり知られずに良いライブが出来る。それが伝説のライブになると思う」

と話していた

このライブは、F.A.D YokohamaのライブスケジュールやYouTubeチャンネルなどを見てないとたどり着けない
チケット販売開始直後にソールドしなかったのが不思議なほどだ

でもこのライブにたどり着けた方々は、後の伝説ライブを見れたと誇って良い
サバシスターもkoboreも見れて幸せな夜だった
爆音の鳴る場所はやっぱり最高!!

セトリ
爆音の鳴る場所で
FULLTEN
ダイヤモンド
リバイブレーション
OITEIKU
爆音の鳴る場所で
ボーイズアンドガールズ
スーパーソニック
ヨルノカタスミニ
幸せ
テレキャスター
TONIGHT
この夜を抱きしめて