昨年は結成25周年イヤー故、春から夏にかけて最初で最後の中野サンプラザワンマンを含むワンマンを行い、10月に行われた日本武道館ワンマンはソールドアウト
その武道館ワンマンはとても素晴らしく、2028年には武道館2daysを行うことは約束したが、そんな2028年に向けて、並びに2024年ストレイテナーの始まりを告げるのはZeppを中心としたライブハウスツアー

初日は何度かワンマンをやっているKT Zepp Yokohama
2021年の秋にやった際はチケットソールドはしなかったものの、今回はソールドアウト
あの武道館からまるで勢いを取り戻したかのようだ

開演前、場内に流れるのはテナーがこれまで参加したトリビュートアルバムの参加楽曲
9mmに奥田民生、テレフォンズと懐かしい楽曲が相次いでいる

定刻を少し過ぎた頃にゆっくり暗転し、「STNR Rock and Roll」がSEでなる中でホリエを含めた4人はゆっくり姿を現すが、金髪で後ろ髪を止めたようなヘアスタイルのシンペイ(Dr.)、1月だからか防寒対策を行ったような容姿のひなっち(Ba.)とリズム隊はオーソドックスな衣装
対してギターの2人、OJ(Gt.)はここ最近は色んなものや人物を連想するようになったジャージ(サバシスターの「ジャージ」、サブカルチャーならぼざろのぼっちちゃんに、リゼロのナツキスバル)を着用
ホリエ(Gt.)に至っては、ワイシャツにネクタイ着用とまるでUNISON SQUARE GARDENのさいとうこうすけ
斎藤もステージに並んで立ったら、まるでペアルック

このように視覚的インパクトがものの見事に対照的となっているのだが、武道館と同じように音は最小限にとどめ、最初のサビに入るまでホリエが弾き語りのように歌う「ネクサス」から始めようとするも、

「歌詞が出てこない…」

と早々に歌詞を飛ばしてしまうホリエ(笑)

ホリエのマイクスタンドには、昨今ボーカリストがカンペ変わりに使用するようなタブレットを設置していない(思えばタブレットを最初にセッティングしたのは、盟友ASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチだった気がする)
なので早速曲が止まってしまうし、なんならホリエは3年前にもKT ZEPPで歌詞を飛ばしている(アンコールの「シンクロ」で飛ばした(笑))
その時はなんとか歌詞を思い出すも、今回に至っては思い出せず、シンペイ達も思い出せない
挙げ句の果てには客席からの応援に、

「歌詞を教えてほしいんだよ(笑)」

と嘆く程だったが、無事に観客に歌詞を教えてもらったこともあってか、ホリエは歌詞を思い出し、再びイントロからやり直すが、

「僕らはたまたま同じ船に
乗り合わせただけの赤の他人
明日はすべてが嘘になっても
今日が本当なら大切にしたいよ今を」

も含まれる「ネクサス」で始めるのは、日本武道館からこのツアーが地続きしているようにも
普段と比較すると、例のごとく回転するひなっちのベースが小さいようにもかんじたが、その分OJのギターから奏でられる繊細な音色と轟音ギターが炸裂していたのはそういう音作りにする仕様だったのだろうか

シンペイが一定のリズムをパワフルに刻み、ひなっちがゴリッゴリなベースもワウがかかった浮遊感あるシンセベースも鳴らす「BIRTHDAY」は今年が閏年だからこその選曲にも見えるが、自分は来月初旬にバースデーが控えている
それに伴い、遂に三十路へ突入するのだが、この「BIRTHDAY」は2月に誕生日を迎える全ての人わ祝福しているようにも
その意思は多分ないとは思うが、ホリエ達から来月の誕生日をお祝いされたような気分でもある

ホリエがイントロのフレーズを思い切り鳴らす「A SONG RUNS〜」とスリーピース時代の懐かしいオルタナロックを続けつつ、シンペイがドラムセットの上に立ち、スティックを天井に高く突き上げるようにして始めるのは、いつ何時も祝福の嵐をまきおこした「Melodic Storm」

昨年末、ホリエは喉が不調になるもRADIO CRAZYに強行出演
案の定そんなに声は出てなかったようだが、 

「みんなの声が聞きたいから」

と組み込まれたのが、この「Melodic Storm」でそれはとてもとてもエモい場面だった模様
思えばこの日、ホリエはいつものように

「歌って!!」

と合唱は委ねず、客席からもそこまで合唱は起こってなかった
これは自分がいた2階席周辺があまりに静かだった事もありそうだが、「年末に助けてもらった分、自分の声を聞いて欲しい」という思いも強かったのかもしれない
助けてもらった恩を返すためにも

「俺たちストレイテナーって言います!!」

といつもの挨拶はここで行うが、近年のテナーに見られがちな緩いMCはここでは無し
まあ序盤から脱線されても困るので、これは良い判断だと思うが、「これぞオルタナ!」な音と音のぶつかり合いになる「プレアデス」とロックに振り切ったセルフタイトルの曲が久々に演奏されたりと、10年前のテナーを見ている感じ
ポップに徐々にすり寄っていく前の

逆に近年のテナーはどんどん歌謡曲に向かっていき、ホリエがアコギに持ち替える「Graffiti」はいつ聞いても「「Parody」A面か、両A面にすべきだった」と思っているが、音源ではポップでもライブではロック
今なおパワー全開なドラムを叩くシンペイのビートがテナーの楽曲をロックに昇華させつつ、

「誰かのために ぼくらは生きる
きみがきみでいなきゃ ぼくもいないんだ
何処かでいつか また会えるなら
輝く目を見れば 迷いはないと解るよ
受け入れよう」

はコロナ禍到来でより、重みを持つようになった
コロナ禍になるか、ならないかで「Graffiti」の立ち位置は相当変わったのではないだろうか?

ホリエがエレキギターに戻ると、ひなっちの迫力大な太いベースを皮切りに「DAY TO DAY」
Talking Rock!の編集長である吉川が、

「イントロを抜けると機内サービスが始まる」

とあまりな笑撃的な例えをしたことは今も忘れらないし、ダイナミックなイントロは新時代の扉が開いたかのようにも聞こえるが、

「走り去った日々は
何を残してくれたんだろう?
いつか知るだろう
歌われることのない
想いを音にして鳴らすんだよ
聴こえるだろう?
始まりの合図が」

の直後、ホリエは

「始まっているよ!!」

と気持ちをあらわにしていたが、それは武道館2daysを開催することを目標に掲げた2028年に向けての日々が始まったということを意味するのだろうか

その感情の高ぶりを静かに抑えるように、ホリエが鍵盤を弾き、客席の至るところから手拍子が起こる「Braver」はピアノエモの象徴
「切ないけどエモーショナル」の代表は「Braver」のような曲を言うだろうし、MCではクールなOJが回転するようにギターを弾くのは今や名物
OJのアクティブな動きが見れる数少ない場面だから

恒例である緩いMCパートはホリエが「KT!!」と品川庄司の庄司智春が「ミキティー!!」と叫ぶところから始めるも、ホリエは初っ端に歌詞を飛ばしたところをひなっちやシンペイから職務質問

「あなたが作った曲ですよね?」

とシンペイは身も蓋もない質問までしてしまうが、口ずさんでいる様子がたびたび見かけられるひなっちは歌っているのではなく、

「ホリエくんの口を真似しているだけ(笑)」

とのこと

その際に真似した曲が最後の曲の伏線となるが、MCの長期化を阻止する役割も担っているOJは、「ネクサス」の際、ギターを弾くことによってホリエに歌詞を思い出させようとしたとのこと
ちなみにホリエは、

「歌詞が勝手に出てくる」

なんて自身を紹介していたが、その後歌詞を度々間違えそうになっていたので若干怪しいが(笑)

ホリエがリスペクトしているのか、やたらブルーノ・マーズを連呼し、

「ブルーノ・マーズよりもストレイテナーのライブを選んだみんなの方がセンス良い!!」

と会場に集ったあなたを肯定し、「ネクサス」の現代版とも言うべき「246」で過去から現在へと時間旅行させると、イントロでひなっちがバッキバキのベースを鳴らす「宇宙の夜 二人の朝」と今度は近年の曲を連発
「COLD DISC」をリリースしたあとはどんどんポップに向かい、「Applause」に至ってはAORに沿った作品になっていただけに「宇宙の夜〜」を初めて聞いた時のインパクトと来たら
それも曲中にギターから鍵盤にスムーズにシフト
それを滑らかに出来るのはホリエくらいだろうし、2022年のロッキンで夜の野外をバックに「宇宙の夜〜」を聞けたのは最高の経験だったといえる

一転、シンペイが性急にビートを刻む「瞬きをしない猫」ではひなっちやOJが前に出て煽りまくるが、ここでまさか「POSTMODERN」を聞けるとは…
スタジオで演奏している風景をそのままPVにしたこのロックンロールは全然パストになってないし、今聞いてもフレッシュやロックンロール
ひなっちのゴリッゴリなベースが会場を詰め尽くした後、OJがガンガンギターを弾いていくわけだが、イントロでテンションが上がった「Parody」は今になっても「これをA面にすべきだったよ!!」と声を大にして伝えたい
ひなっちがベースとは思えないほど爆音を出しつつ、OJが轟音と美しさを、ホリエはプログレルーツを匂わせる鍵盤を弾いたりと、オルタナ→プログレ→オルタナ→プログレの流れを体現できるバンドなんてそういない
一応「Applause」には収録されているとは言え、やっぱり自分としてはこれほど認知されるべき曲はないと思わずにいられない

ホリエが鍵盤からギターに戻ると、昨年の武道館で初披露され、先日音源が満を持して解禁された新曲の「インビジブル」が前置きもなく、さらっと演奏されたが、この時自分の周囲では参加者の1人急に倒れてしまったらしい
そのためその1人への安否が気になってしまい、「インビジブル」にはなかなか集中出来ない状況になってしまったが、その相手にこちらが触れることは出来ない
ただその参加者には最後、笑って欲しいんだと願うばかり
悲しい思いでZeppを後にして欲しくないから

そのうえで「Applause」リリース時から、「これは重要な曲になるだろう」という確信を持っていた「No Cut」が続き、

「ありもしないようなこと
でもそれは現実で
紛れもなく 訪れた奇跡で」

のように、こうして2000人近くの人が会いに来てくれるのは奇跡だし、

「会いに来てくれてありがとう!!」

とホリエが歌詞を変えて叫んだ瞬間に大きく湧いた場内
かつては尖っていた時期もあり、MCをほとんどせずにライブをしていた時期もあった
それがOJの加入前後から少しずつ変わっていき、2019の幕張メッセイベントホールワンマンにて新曲としてアンコールで演奏されていたOJが泣きのメロを奏でる「スパイラル」で

「でも きみがいない世界には
いきたくない」
「僕のうたを聴いてくれ」

と伝えるようになった
それだけホリエが素直になっていったということでもある

その幕張メッセイベントホールワンマンでは、秦基博がゲストで参加し「アカリ」の完全版を聞くことが出来たのだが、CDJ22/23に出演した際、ホリエは

「あと数時間で ”今年”が終わる」

と歌詞を変えていた

幻となったCDJ20/21のセトリはテナーサイドしか知り得ない情報だけど、多分年越し前に演奏するとしたらこの「灯り」
CDJ22/23では年越しを04 Limited Sazabys、ジェニーハイなどが担い、年越しは出来なかった
サブステージでも構わない
いつかテナーに年越しするリベンジを与えて欲しい所存

ホリエによってSilver Lining Tourは元々今年まで続くツアーだった事が明かされ、昨年のツアーで名古屋や福岡といった主要都市が外されていた事が今年のツアーへの伏線だった事をホリエが明言
この事実をシンペイも初めて知ったようだが、KTが「無双シリーズ」や「信長の野望」シリーズで知られる「コーエーテクモ」の略称であるが故、トークテーマは「信長の野望」
ひなっちは伊達軍で、OJは島津軍で全国制覇したらしく、相当やり込んでいたことが分かるが、

ひなっち「ホリエくんは伊達君」みたい
ホリエ「いや、ブルーノ・マーズ(笑)」
OJ「俺が言おうとしたのに!!」

とまたも「ブルーノ・マーズ」を口にするホリエ(笑)
そこにシンペイも乗ってくるもんだから、会話の流れにまたブルーノ・マーズが絡んでくるが、武道館であまりにも良かったMCは、「ロックスターらしいことを言え!!」と促されたらしく、

ホリエ「今日こんなんだから、武道館みたいなこと言えない(笑)」
シンペイ「KTって言っている人がそんなことない(笑)」

というホリエの正直な告白にシンペイが容赦無いツッコミを浴びせることで、再び「KT〜!!」と絶叫するホリエ(笑)
それくらいホリエはこの日上機嫌だったが、

「こんなんだけど、あなたが居てくれたからここまで来れました。あなたこそが希望」

とツアータイトルでもあり、テナーと縁が深い「Silver」をタイトルに入れた「Silver Lining」は終盤へのスパート
途中で眩しい照明でホリエ達の姿が見えにくくなるような場面もあったけど、それでも音は止まらない
これこそが、

「ハニー 大丈夫さ」

どんなシチュエーションになっても、ホリエ達は音を鳴らすことを止めないという証である

北海道程ではないが、大きく冷え込み布団の中からも出にくくなったであろう我々の心や身体に光をあたえる轟音の「冬の太陽」、シンペイが客席に向けて投げキッスを行い、ひなっちがスラップベースを弾きまくりながらOJが海の雰囲気を漂わせるように美しいメロを奏でる「シーグラス」と定番曲を並べた後は「TRAIN」
武道館では演奏されなかった事もあってか、1階席にいた客は跳ねまくり
2階出も飛びまくる人が普通にいたが、よく見るとホリエもOJも跳ねまくり
ステージも相当高揚していたと思われるが、その原因は昨年末のRADIO CRAZY
ホリエは喉が本調子ではなかったらしく、そのことを悔いていたようだが、

「年末は声出せずに迷惑をかけましたが、完全復活しました!!」

と話すように、ホリエは普通に声が出ていた

「まだ本調子ではないって!!」

と嘆く声もSNSでは見かけたが、これはまだ出ている方だろう
自分の好きなバンドのボーカルなんて、2021以降スロースターターで声が出るまで1時間は要しているし

「あの時は歌えなかった歌も今なら歌える!!」

と、ホリエが声が戻った喜びを噛み締めつつ、サンプラーのスイッチを押したのはテナーを代表する曲の1つになった「彩雲」
確かにこれはハイトーンをよく多用する曲だし、声が出ない状態でやるのは困難
ホリエの美しく伸びがある声が戻ってきたのはとても幸せ

そして本編ラストは「12月でもないのにやるの?」と少し驚きもあった「TENDER」
普段なら最後の曲の前、ホリエは

「ラスト!!」

と叫ぶ

それが無かったので少し不思議に思っていたが、

「失われた美しいものを
取り戻しに行くよ」

と再生しつつある今のシーンを踏まえて「TENDER」をホリエは最後にしたのだろう
昔のように、ひなっちもコーラスを重ねることはなかったが、演奏を終えるとシンペイは自身のドラムセットを乗り越えるように飛び出し、ホリエ達と合流し4人で挨拶
見慣れた光景をもって本編は終了

アンコールで戻ってくると、

ホリエ「7時だからもう1本ライブ見れるね(笑)」

の通り本編が終わったのは19時前
見ようと思えばもう1本ライブに行ける、かなり優しい時間設定となっており、ひなっちに至っては

「バーでライブしようよ(笑)」

と言い出す事態だが、今回のツアーは各公演ごとにリクエスト第1位になった曲を必ず演奏するシステムがあり、

「こんな前振りしてやるのはほとんど無いよ(笑)不意打ちで来るものだから(笑)今のうちに位置確認したほうがいいよ(笑)」

とホリエが話した、不意打ちでやることが多い曲とはOJがブルースハープに持ち替え、スリーピース+ブルースハープの編成でやることがお馴染みになっている「Yes, Sir」

「ダイブは禁止だからね」

とコロナ禍前と同じくテナーはダイブを禁止しているので、ダイブが起こることはないが、狂ったように踊りまくった方は多いはずだ
それくらい「Yes, Sir」を求めていた方が多いから

そしてラストはシンペイの16分ビートを筆頭にとどめをさしに行く「KILLER TUNE〜」だが、これこそがひなっちが序盤物真似していたホリエの歌い方
あれは完全に予告していたのである
流石に爆笑が起こることはないけど、せっかくOJのギターが更に主張しまくるモノに進化したのに、「ひなっちがホリエの歌い方を真似した曲」のイメージにならないか、不安になってしまった

昨年大好評で終わった武道館ワンマンとも、「Applause」や「Crank In」の時とも違う
今回のテナーは10年代前半のテナーが呼び起こされているかのようだった

武道館ワンマンで、

「これだけの曲数をこなすのはこれが最後かも」

と体力的な限界も始まりつつあることを仄めかしていたが、テナーのカッコよさはやっぱり変わらない
衰え知らずのカッコよさ

正直な話、コロナ禍ではなくお金にも余裕があるなら今回のツアーは全通したい
参加者からのリクエストで演奏が確約され、次いつ聞けるか分からない曲があまりに多いから

でも3月の東京公演ではあの真空こと、「GUNSHIPRIDER」を遂に拝める
それだけでワクワクは止まらないし、ホリエはきっと大丈夫さ

Can you hear our emotional guitar voice?

セトリ
ネクサス
BIRTHDAY
A SONG RUNS THROUGH WORLD
Melodic Storm
プレアデス
Graffiti
DAY TO DAY
Braver
246
宇宙の夜 二人の朝
瞬きをしない猫
POSTMODERN
Parody
インビジブル
No Cut
スパイラル
彩り
Silver Lining
冬の太陽
シーグラス
TRAIN
彩雲
TENDRE
(ENCORE)
Yes, Sir
KILLER TUNE[Natural Born Killer Tune Mix]




※前回見た日本武道館公演のレポ↓