タイトル︰「ムソウ
アーティスト︰KALMA
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今回紹介するKALMA、思えばコロナ禍になる直前に開催されていたJAPAN'S NEXTの時に初めて見たアーティストです

当時のKALMAは-KARMA-名義
全員が成人してないという驚異的なポテンシャルの持ち主で、コロナ禍直後にメジャーデビュー
しかもコロナ禍でキャパ半文の制限が設けられたのがプラスに作用し、メジャーデビュー1年でZeppにとてつもない経験をすることになりました汗

とはいえコロナ禍で見れるライブは限られ、サーキットフェスも激減
なのでKALMAと再会したのは2022年のTalking ROCK! Fes.
それまでライブを見れない時間が続いてました(音源は聞いてました)

ですがKALMAの評価は、2023年に突然急上昇します
それは多くの出演者が出演当日にキャンセルを余儀なくされた2023年のJAPAN JAM最終日
KALMAは持ち時間をふんだんに利用して、ハルカミライのように初期衝動をバリッバリに出したライブを突然行ったのです
それは夏のロッキンでも変わらず
理由は解析できませんが、突然無双をするかの如く、ライブは抜群のように良くなりました
そのライブの勢いがパッケージとなったのが今回紹介する「ムソウ」という作品

冒頭の「ABCDガール」はキャッチーなメロに獰猛なリズムが乗るパンチが強い1曲になってますし、

「妄想が暴走
ABCDガール」

なんて破壊力抜群
しかも続く「モーニングラブ」も依然リズム隊が強力
スリーピースに見えない迫力あるアンサンブルを見せてくれますが、世界観は「ABCDガール」と真逆
この2曲だけでも、KALMAがただならぬバンドであることを理解出来るのではないでしょうか?

またボーカルの畑山は、SNS映えする曲ばかりが流行る今のシーンを相当嫌悪しており、「デート!」は歌うようなベースが牽引して、ギターがキャッチーながらも畠山にしか出来ないラブソングで他のアーティストとの差別化を明瞭に
フレーズ見れば面白いくらいにそれが伝わると思いますし、甘く溶けるメロや「愛す」を「アイス」とかけた夏のラブソング「アイス」、未練が残るようなリリックを仕組んだだけでなく、キメの多いビートにグッドメロディを載せることで忘れさせないようにする「アローン」とこれらの曲はSNSを意識したら出来るような曲ではないでしょう

もしかしたらKALMAのルーツは、10年代前半以前にあるのかもしれません
だとすれば、昨今のシーンにアンチな態度を取るのも納得です

そのうえで触れていない残り3曲は非ラブソング
中でも「夢見るコトダマ」は「姪のメイ」という作品の主題歌になっており、リズムがパンクなのにメロディアスになっているのはタイアップを意識したのだと思いますが、歌詞は畑山が現時点の自分を振り返るようなもの

「そうして集まった大声が今は小さくても
10年後 20年後には届けたくて
はじめたあの日から
もう随分経つけどいいんだ
だってさ 僕はあの日より 今が好きだよ」

と現在を肯定し、

「きっとくる終わりの日まで
光り続けんだ 光り続けんだ」、
「僕らにはいつか絶対
叶えたい夢があんだ
無意味なんてない 勘違いも旅のはじまり
きっといつかばっかだっていいさ
ずっとずっと叫ぶよ!
いつかの日を夢見る僕は光」

と終わりが来るその日まで輝き続けること、自分たちのやっていることは無意味じゃないと宣言するものに
もしかしたらこの内容、タイアップにすり合わせたのかもしれませんが、現在の畑山の宣誓とも捉えていいかもしれません

また「意味のないラブソング」は畑山たちの身の回りに人の死が多く、「誰かが亡くなる出来事に直面した際、何もできなくなった際にあってほしい曲」を想定して作った曲とのことで届かない想いを綴ったもの
だから死生観強めだし、

「もういない君へ 唄を書いた
もういない僕は 苦しくなった
会いたくてそっと 目を閉じたんだ
もういない君へ 意味のないラブソング」

と中身も非常に重いものです
だからドラムも主張はそこまでせず、ベースも歌うような感じ、並びにギターも寄りそうな音を出しているわけです
決して失恋の歌ではないです

そして最後の曲はタイトルトラックにもなっている「ムソウ」
手数の多いビートにバッキバキなベース、加えて疾走感あるギター…
今のKALMAが最強だと自信を持って宣言する、そんな1曲です

中には、

「今が一番最高だって
去年もたしか言っていたような」

のようにツッコミをいれ、嘲笑うものもいるかもしれません

でも誰がなんて言おうが、ステージでは敵無し
無敵になるのがロックバンド

「だけどそれでいいんだって
夢を想い鳴らすプレリュード
ステージ降りた鏡には
空っぽ電池切れの戦士
無双していた夢想家達は
無想になって笑った」

の通り、終わった頃には無になっていても良いのです

「終わりのないムソウ
物語は止まらないムソウ
死ぬまで 無双 夢想 無想」

のように、物語は続いていくのですから

この作品を持ってKALMAは完全に目覚めた
そう言えるでしょう
新世代のスリーピースKALMA、覚醒の瞬間です

ここから獅子奮迅の勢いで一気に駆け抜ける
自分はそんな予感がしてならないです
まさにムソウの始まりを告げる、そんな傑作でした