タイトル︰「いまも忘れらんねえよ
アーティスト︰忘れらんねえよ
いまも忘れらんねえよ。(通常盤)(2枚組)

 

忘れらんねえよ、実に約4年ぶりのアルバム

その間にコロナ禍になって、柴田がやりたがっていた赤坂BLITZ公演は無観客配信(その模様はこちら↓)
中野サンプラザワンマンも足を運びにくかった人が多かったでしょうが、とりあえずライブや新曲リリースはしていました

そうして15周年イヤーに突入し、アニバーサリーイヤーの集大成を飾るようにリリースされたのがこのアルバム
しかしこのアルバムの収録曲、実は全て配信でリリースされた曲です
要はこれほぼベストです
何やってるんだ(笑)
トリビュートが本編みたいになってるじゃん(笑)※トリビュートにこのレビューでは触れません汗

なのでこのアルバムレビューも2021〜2023にかけての忘れの活動総集編みたいになってしまいますが、その間にリリースされた曲はどれも名曲でした
時折歌詞内容に「これ人選ぶぞ…」な曲はあっても、柴田のメロディーセンスは天性のもの
柴田に「もっと楽曲提供依頼あって良いのでは?」と思うほどです

そんなコロナ禍以降の忘れの楽曲は、「歌詞書けなすぎて、朝」とどこかで聞いたことあるような曲名から始まりましたが、コミックソングに見えるタイトルでも中身は大真面目(メロディーやリズムは当たり前のように素晴らしい)
柴田自身の経験もいれつつ、

「つまんない僕の話でも 君はすぐに笑うから
まぶしいな まぶしいな 輝くのこの世界が
うつむいた時の横顔が綺麗だから
好きなんだ 好きなんだ 君のこと
好きなんだ 好きなんだ 君のこと」

とマイノリティ目線のラブソングになっています

ハンブレッターズ程、名は知れてないかもしれませんが、柴田もスクールカースト下位にいた人間
マイノリティの言葉を代弁するのが忘れの特徴です

世間でよく言われる「これだから最近の若者は…」に対してグランジ調子で反論する「これだから〜」、ベースがうねりまくるようなファストパンクな「夢に出てくんな」、ゴリッゴリなベースだけでなく最後のギターソロもよく、忘れを肯定するリスナー並びに「だっせー〜」に続く忘れ流マイノリティのラブソング「アイラブ言う(リリース時のアー写は柴田がゴミ袋に入っており、あまりに強烈)」とここまでは、2022年までにリリースされた楽曲たち


「聞いたことある!!」な曲もあるのではないでしょうか?(「これだから〜」はアコムのCMソングで今なおオンエア中)

しかしこれ以降の楽曲は全て2023年にリリースされたもの
それも連続リリースの一環でリリースされたものです(笑)
以前、あるバンドが連続リリースを敢行しようとしたものの、途中でメンバーが離脱した計画が頓挫することはありましたが、柴田はやり切っているという(笑)

柴田は以前、

「曲に注目してもらうためなら何でもやる」

と東京CALLING出演中に発言したことはありますが、それでもこんな無茶な計画を実行し、完走するなんてあまりに凄すぎる…
有言実行の鏡でしょう

しかもこの2023年にリリースされた曲たち、これまでと違ったアプローチで制作された曲があり、「知ってら」には鍵盤の音が
忘れのサポートの中でもかなりの頻度で参加する安田が弾いたものだと思われますが、ドラマ主題歌とはいえ、

「今夜輝いてるこの街で湧き上がる歓声も
みんな集まったこの店に溢れる笑顔も
今つないだ手のひらから伝わる温もりも
こんな何もない僕を愛してくれたあなたの」
「いつも照れ隠しをするとき下を向く仕草も
どっか寂しげな色をたたえている瞳も
何度聞いたってまた聞きたくなる笑い声も
僕の幸せを形作るあなたのすべてが
いつか いつか いつか 消えてしまうんだ」

と歌われているのは諸行無常の世界
どんなものでもやがては消えてしまう…
あまりに切ない忘れらんねえよが描かれているのです

また「いいから」は、柴田の日頃の鬱憤が爆発するように歌詞が過激
スラップベースも多く入りながらエレクトロでキャッチーに聞けるのは、Official髭男dismのサポートをはじめ、色んなところで名前を見かけるようになったレフティが編曲に参加しているからでしょう
まさか忘れにも関わるなんて、思いもしませんでしたが…

実を言うと最近の忘れのライブ、鍵盤が同期される場面がやや増えつつあります
ひょっとしたら、そこにもレフティが携わっている可能性があります
レフティはどこまで色んなアーティストと関わるのでしょう(笑)

更には「音楽と人」とあの音楽雑誌がタイトルになった曲まで
なんでもライターの樋口さんとの会話がこの曲を生んだようで、その辺りは「音楽と人」を読んでいただければ分かると思いますが、テーマは、「色んな音楽を通じて人と人が繋がっているということ」
しかも忘れらんねえよでこんなヒップホップよりブラックミュージックによった曲って、そんなないはず
柴田の引き出しがどんどん増えてきている気がします

それ以外はラストを除くと、忘れが得意とするギターロック多め
柴田の私情が入った曲も多々あり、ビートパンクによった「俺に優しく」なんて曲もありますが、実際は

「お互いどうやら完ぺきではないから 手を取り合って行こう」
「がんばれって言ってくれよ 寂しいから
がんばれって言わせてくれ 泣き止んでほしい
俺たちが力合わせりゃなんだって越えれんだ
よろしく頼むぜ 共にやさしく」

と「お互いに頑張ろうぜ!」な誓いを立てる熱き1曲ですし、「お前の話は聞いていない」は昨今言われがちな「ギターソロいらない論争」への柴田なりの回答

「いやがらせのうた」なんて、「遂にそういう方向にカジを取ったの?」と誤解されてしまいそうですが、歌詞にそんな異常性はないです、安心を
むしろ刺さってしまうような良メロで存在を呼び起こそうとするものです
ヘイト丸出しの曲を作らなかったり、ちゃんとその辺りはよく考えています
自暴自棄な90秒しかないファストパンク、「2時間なんもしなかった」は反面教師にするべきお手本ですけど(笑)

終盤は、

「裏切ったら殺して 殺して 殺して 殺して 殺していいよ
俺の人生あげる だからかわりに君の人生をくれ」

とあまりに危険な殺し文句がありつつも、ギターにベース、ドラムの全てが素晴らしく、

「ねえもう世界よ 終わって 終わって 終わって 終わって 終わっていいよ
ハッピーエンドのままで 君がいるままで
いや終われない この先もずっと
俺の全てを 俺のこの愛を
見つめててほしい 見届けてほしい」

とハッピーエンドを願う「プロポーズ」

夏フェスに呼ばれないことが元ネタとはいえ、

「諦めれないから泣いてんだろ
諦めなよもう やめてしまうことを」
「消えない傷跡 戻らないあのひと
それがなんだよ 大丈夫だろ 俺ら強いから」

と、そこから「こんな感動的な曲が生み出せるの!?」な「悲しみよ歌になれ」とエモーショナルな曲の連発

「君の音」なんてリズム隊もさることながら、カッティングもかっこよく、ロック好きの好きなところが全て詰まってますが、

「君のこと 君のこと 君のこと 聞かせてよ
僕のこと 僕のこと 僕のこと 信じてよ 君の音」
「君の音 君の音 君の音 歌ってよ
僕の音 僕の音 僕の音も 歌うから
泣き顔も 暗闇も 裏切りも 見させてよ
僕はもう 僕はもう 二度ともう 逃げないよ 君の音」

と「決して逃げないから、君の全てを見せてくれよ」な1曲に
今後の忘れの活動でこれは、相当大事な曲になる…
そんな予感がします

しかし問題はラスト
タイトルは「犬人間」
そう、「犬にしてくれ(トリビュートでは、NakamuraEmiがチルサウンドっぽいアレンジでカバー)」のアンサー的立ち位置にいる曲です

もう歌詞の内容が絶句ですし、忘れにしか出来ない反則カード

「朝起きたら愛犬と合体してた
これで俺は正真正銘の犬人間
朝も夜も鳴き続けるのさ 振り向かれるまで
あの娘のマンションに侵入すんだ
大丈夫さ俺は犬人間さ
ただひとつ問題があるとすれば 下半身は人間」

これを柴田以外がやったらドン引きでしょう汗
なんっちゅう反則行為をやってるんでしょうか

でもトラップビートや鍵盤を用いたトラックは切ないし、

「朝起きたら愛犬と分離してた
これじゃ俺はただの中年さ
朝も夜も泣き続けるのさ なにもないから
あの娘のマンションを見上げてるんだ
ハチ公のように立ち尽くしてんだ
ただひとつ問題があるとすれば 俺、中年男性」

にはなんか泣けます
「中年男性」なんて、グサッと刺さった人多いんでは?
でもさ、なんでこれがラスト!?

昔みたいにロッキンに呼ばれないし、掲載雑誌は「音楽と人」くらい
知る人ぞ知る存在になりつつありますが、忘れのおかげで生き残れてる人間って結構いると思います
特に「週刊青春」は、マイノリティ目線の曲が多く収録されてましたからね
マイノリティにとっては、光なんですよ

可能な限り、忘れらんねえよをいつまでも続けて欲しいですし、柴田隆浩の才能が更に覚醒しつつあると思える名盤でした