恐らくこの事態は誰も予想しなかったのではないだろうか
5月にEX THEATER ROPPONGIワンマンをソールドアウトさせ、順風満帆に見えたCody・Lee(李)
ところが夏になると高橋と共にツインボーカルを担っていたリノがまさかの脱退を発表
このLIQUIDROOM公演は、新体制後初のワンマン
以前の曲はどのように披露されるのだろうか

ライブを見るのは過去最大キャパとなっていたEX THEATER ROPPONGI
その数カ月後にリノが脱退、しかも公演日にはThe Birthdayのチバユウスケがなくなる悲しいお知らせもあったが、いざLIQUIDROOMに入ると、ステージはずっと真夜中でもいいのに。のライブに見に来たのか
アナログテレビが大量にステージに並んでいる
新章突入とでも言うべきか
あまりに異様なセット模様

リノは脱退したものの、O-EASTも余裕でソールドアウトさせていただけに、LIQUIDROOMは完売御礼のパンパン
チバユウスケへのリスペクトとして、The Birthdayの曲もBGMで起用されたりするなか、ほぼ定刻に暗転するとステージ後方にスクリーンが出現
渋谷を始め、都会の喧騒を思わせる映像が流れ初見が3割来ていることもあり原(Dr.)、ニシマ(Ba.)の後、一際お洒落な格好して登場する力毅(Gt.)には「カワイイ〜」の声が
Teleのサポートを行うくらい、轟音ギターを鳴らす凄腕ギタリストだということを初見は恐らく知らなそう

前回は一部の曲でしか参加しなかった中野郁弥(Key.)は今回最初から
リノパートを担う東風あんな(Gt. & Cho.)も参加し、サポートが2名加わる形式となったが、Twitterを見たらやっぱりフジファブリックへの愛が強い高橋(Vo. & Gt.)は少しおっさんっぽくなった印象
いつまでも若々しく見える山内達はある意味凄い

リノが離脱した影響で、本格的にサポートするようになった中野が中央に陣取り、東風は下手後ろ
その関係でニシマ達は少し左にずれたようだが、「LOVE SONG」でオルタナルーツ一直線な轟音を鳴らすのは、新体制になってからも全然変わらない
これは「どうするんだろう?」と思っていたリノのパートを同期に任せず、新たにサポートで東風を呼んだのが大きい
Cody・Lee(李)は大半の曲をツインボーカル前提で制作している
それがCodyの特徴だったのに、リノが脱退したので同期にするのはイメージを大きく変えてしまう
だから新たに女性メンバーをサポートに招いたのは正解
雰囲気を変えないのは大切なポイントだから

並びに中野の常時参加
Codyのバックボーンにいるフジは鍵盤で金澤ダイスケがいるのに、鍵盤の音を入れながら鍵盤を同期にするのはあまりに勿体無い
六本木で初めて中野が加わった際、「全曲関わらせた方が良いと」思ったように、中野が加わったことで「LOVE SONG」の世界観はより広がった

「この歌は君以外の人には届かなくて良いの」

だとしても、世界はモノクロからカラフルに色鮮やかへ変化している

中野が全面的に参加したことで同期だった鍵盤は生へ変わり、曲調がヒップホップに近かった「愛してます!」は鍵盤が強調されるように
同時にそれまで中心だったニシマのベースはシンセベースを用いたようなワウが効いたベースラインに
シンセベースを多用するベーシストといえばストレイテナーやNothing's Carved In Stoneなどで活躍するひなっち
ひなっちのベースに触発でもされたのだろうか

元ネタであろうUNICORNの「大迷惑」を連想させするギターリフを皮切りとし、原がパンクバンドのように細かくビートを刻む「W.A.N.」も中野が参加したことで、ますますUNICORNっぽい感じに

この日は火曜日とまだ平日の折返しでもないが、

「逃げ出したいならそれでOK」

に誘われて、LIQUIDROOMに集まった方々はリノが離脱した後もCodyを追いかけると宣誓してくれているかのよう
今回の東名版ツアーが発表された際、

「もう1回だけチャンスをくれ」

とTwitterで呼びかけている
実際一般発売初日、すぐソールドしなかったのはリノ離脱の影響を感じずにいられなかった
でもその後、東名版全ての会場は無事にソールドした
Codyの音楽は求められている
これは大きな希望だ

CodyがLIQUIDROOMでワンマンするのは昨年3月、すなわちメジャーデビューを発表した時以来
その際はバンドをほとんど知らず、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのパシフィコ横浜公演に参加しに来た知り合いが翌日見に行くバンドといった印象だったが、

高橋「懐かしいよね?」

と投げかけても

ニシマ「俺、力毅と立ち位置かわったから(笑)」
原「俺、少し左(上手)にズレたから(笑)」

と素直じゃないニシマ達(笑)
ただ昨年のLIQUIDROOMはまだキャパ制限がキツかった頃

ニシマ「あの時はコロナの規制もあったから、今回の方が多い」

と話したように、相当根強いファンか付いたようだ
新体制だし、動員がやや落ちてしまうと思われた中でこの船出はとても大きい

そんな新しい船出に大きな貢献をもたらしたのは、今年の春アニメでダークホース的立ち位置になった「江戸前エルフ」の主題歌になった「おどる ひかり」だろう
六本木のようにミラーボールが回転することはないし、リズムも担っていたリノのセミアコも無くなったのでアンサンブルに少なからず変化はある
しかし鍵盤が生となり、力毅が繊細なメロを奏でたりと、Galileo Galileiの「青い栞」に近い立ち位置になった
曲が始まる前に再び出現したスクリーンには扉が閉ざされている場面があったし、

「もう君に会えない」

のように、リノが再びCodyのステージに上がる可能性は低い
でも生活は続く
窓が閉まったままだったのは、再び生活を始める
その準備をしているかのようだ

中野の鍵盤が次の曲への架け橋のようにインターリュードの役割を果たし、「I'm sweet on you〜」は高橋と東風による美しいハーモニーを聞かせてくれるが、鍵盤が同期でなくなったことでホールやアリーナでも届くようなアンサンブルになった
やはり同期が生に変化するのはとても大きい

するとここでリリースされたばかりの新曲「涙を隠して〜」
FCに入会するどころか、毎年開催される自主企画に積極的に参加するほどSpitzを愛している自分からすれば、「これ「三日月ロックその3」だよな?」と確信できるレベルで似ている
というよりオマージュな気もしなくない
ニシマが重心低めにベースラインをなぞったり、原が手数の多いビートを刻むところなんかまさに
でも、

「Even if we're far apart」

のフレーズを筆頭に手拍子するパートは「三日月〜」にはないもの
高橋なりのSpitzへのリスペクトということだろうか

高橋から委託されてMCをするニシマによって、

「新体制になってからも来てくれてありがとう!!」

と高橋が客席に伝えたことを満点回答で伝えると、この日はライブスタッフにVJが参加
Cody史上初、VJが参加するライブということでイントロで悲鳴が起こった「我爱你」からはVJを積極活用
打首獄門同好会のライブのように、アニメーションを活用するわけではないが、テレビやスクリーンに高橋達の姿がモノクロで映ることでより臨場感が
鍵盤も生になったことでチャイナ感アップ
中国でも通用しそうなやはり名曲だし、高橋が背面弾きするのもすっかりお約束に

ゴリッゴリなベースをニシマがイントロで鳴らし、間奏では力毅がお立ち台に上がって、荒ぶるようにギターを弾きまくる「悶々」はいつ聞いても、LUNKHEADの「シンドローム」が脳裏に浮かび上がるが、「WKWK」は変態ロックの代名詞、フジを彷彿とさせるように変態リフラッシュ
フジに影響を受けたバンドは増えたけど、Cody程フジお得意の変態ロックを継承しているバンドはいないだろう
誰がなんと言っても、Codyはポストフジの最有力アーティストである

そのフジと言えばあまりに緩すぎて、ここ数年どんどんMCが伸びてきてしまっているが、Codyは

力毅→ずっと健康
ニシマ→運動部ばりに食べまくる
中野→友人の家でトイレを使わない
東風→普段重い靴を履いているから、山登りも大丈夫
原→おじいちゃんが八代亜紀の自宅設計に携わる
高橋→9年付き合っている彼女に名前呼びを許可された

と1人1人が自身の長所を話す自己紹介を行い、グダることはない
こうした時間配分の良さはフジも見習っていただきたい

原とニシマが少し不安がっていたメンバー紹介を終えたあと、

「ここからダークゾーン」

と解説するが、中野の鍵盤から始まりやがてノイジーなオルタナに変貌する「hoest」は確かにダーク、すなわち重すぎる曲だ
ここで言う「ダーク」とは世界観の重さ
重たい雰囲気の曲をやるゾーンだったというわけだ

そんな中でタイトル不明の新曲も演奏されるが、

「馬鹿とネズミの繁華街」
「洗脳」

などあまりにバイオレンスな言葉が多く、曲調も非常にノイジー
一瞬「アマチュア時代の曲?」かと思ったが、どうやらコロナ禍初期に高橋が自宅で制作したとのこと
コロナ禍のイライラが曲にでもなったのだろうか

そんなダークな雰囲気を和ませるように「異星人と熱帯夜」で夏にワープ
インディー、アイリッシュテイストが元々強いオリエンタルな曲では中野の鍵盤が入って、より異国にいるような雰囲気が高まった
具体的に言えば、静かに音楽を鳴らす民族集団がいるジャングルに迷い込んだ感じ

更に雰囲気を和ませるのは夜、華やかな街が特に似合う「在夜市再見」
雰囲気的には六本木の方が似合うようなきがするが、ダブゾンビが吹くサックスパートは中野の鍵盤によって再現され、アーバンでAORな感じは恵比寿でもよく映える
ダブソンビが参加した曲はストレイテナーの「From Noon Till Dawn」のようにそう簡単に完全版は聞けない
どうにかして、ダブソンビと共演する機会が生まれないだろうか

「一言話していい?」

と高橋が他のメンバーに念の為許可を取りに行くと、話し始めると

「最近同じ世代のバンドが武道館ワンマンとかするようになっていて、前回は六本木でやったけど、今回はLIQUIDROOM。MVも昔ほどそんなに見られてないし、置いて行かれているように感じる」

とバンドの現状を切実に話した

高橋が告げた同世代のバンドとは恐らくクジラ夜の街やTele
クジラは次のワンマンでZeppを控えているし、Teleは武道館ワンマンが入手困難
Codyも上手くいっている方だが、それでもやや差はついている
気にしてしまいがちだろう

「けど、これがあれば大丈夫。そう思っている曲です。」

と高橋にとって、お守りのような存在になっているのは高橋の学生時代がを曲にして浄化させた「1096」
スクリーンにはPVも流され、歌詞が次々に書き足されていく演出もなされていたが、青さが蘇るように轟音となり、

「授業をサボって聴いてたバンド どれだけ救われただろう
決して綺麗とは言えない 全てが青い季節だった」

のように高橋は音楽に救われてきた
綺麗な思い出ではなくても、高橋の中では大切なお守りである 


のように、高橋は青春時代に今も支えてもらっている
だから前に進むことが出来る

「今日はありがとうございました」

と高橋が告げ、雨が降るイントロから終盤に鳴り響くのは「drizzle」
幾度聞いても、

「フェイクファーワンダーランド」
「国道スロープ」

ときのこ帝国へのリスペクトに満ちた歌詞が印象に残るし、彼らのことを思い出してしまうが、

「LIQUIDROOM!!」と

高橋が叫ぶと、力毅は帽子を脱いで荒ぶるようにギターを弾きまくっていた
4人の中で力毅は1番動く
その様子は当日現場にいた人程、共感できるだろうけど、帽子を脱いでまでギターを弾きまくっていたのはここだけ
ここが力毅のプレイで最も印象的な場面だった

そして、

「生活を続けよう!」

と高橋が叫んだラストソングはリノへの感謝も込めた「さよuなら」
リノはこれからソロシンガーとして道を歩む
Codyとまた交わるときが来るとしても、ずっとあとの未来だ
我々とCodyに出来るのは、生活を続けることと振り返らずに行くこと
スクリーンに映されていた窓が空いた時、新生活が始まったことをより実感させられた

アンコールでは原による物販紹介が行われ、今回のアシスタントは名古屋に次いでニシマ
2回目だからニシマは嫌そうな顔を隠しきれずにいたが、VJも活用した物販は半分コラ画像祭りで、ニシマが勝手にでんぱ組のメンバー、力毅もダンスグループのメンバーにされたりと、原やスタッフの悪ふざけが大いに目立つことに(笑)

しかも

「こんなグッズがあったら」

コーナーまで設けられ、メンバーのイラストがデザインされたトイレットペーパー、原の黒歴史本など無法地帯は続く(笑)
なお当日開催された、過去のYシャツ人気投票の1位は今年通販限定で販売された台湾Tシャツ
入手出来なかった方も多かったらしく、良い結果になったと思う

「名古屋や大阪で見ていた人の目が死んでいた(笑)」

と物販紹介をやり終えたあとの高橋が吐露し、大阪ではゴリラホールとバナナホールがピリピリしていること、名古屋にはほぼ何も無かった事など高橋はツアーの振り返り

力毅は、

「もっと各地を回れば良かった…」

と新体制初のツアーがあまりにあっという間に終わってしまったことを悔やんでいたが、そんなCodyが来年3月にキネマ倶楽部にて芸人とアーティストの双方を呼び込むイベントの第2段開催を発表
シーンの中で特にカオスなこのイベント
今回は誰が出演するのだろう

「また会いに来てくれると、ミュージシャンとして冥利に尽きます」

とSUPER BEAVERの渋谷隆太のようなことを高橋が告げ、

「就職活動 満員電車 君を苦しめる全てを消し去って
生きてるってこと それでもう十分さ」

と参加者を肯定する恒例「初恋・愛情・好き・ラヴ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!」を性急に行ったあと、最後の「When I was City Boy」は、

「新体制になったから、みんな着いて来てくれるか不安だった。でもこうして集まってくれた!音楽を続けさせてくれてありがとう!!」

と初期衝動と共に感謝をありのままに
ニシマに至ってはベースを客に触らせまくっていた

記念撮影も終えたあと、客席に礼を告げてステージを後に
ステージのスクリーンにはバンドのロゴが浮かび上がっていた

リノの離脱、これはあまりに大きいし新体制となると不安を抱えずにいるのが普通だ
でもいざ蓋を開けると、穴を埋めるように東風をコーラスとして新たに迎え、六本木公演で一部の曲のみ参加した中野の常時参加 
同期だった鍵盤は生に変わり、Cody・Lee(李)は喪失を乗り越えて、大きく進化していた
あまりにも逞しい変化である

昨年リリースされた「心拍数とラヴレター、それと優しさ」はあまりに良すぎて、ソールドアウト公演だったにも関わらず、なんとかチケットを譲ってもらって参加
それからフジファブリックのあとを継ぐバンドは間違いなくCody・Lee(李)と確信している
志村正彦がシーンの歴史を塗り替える名曲を次々に編み出し、山内が彼の思いを受け継いで今や教科書に「若者のすべて」が掲載されるようになったように、Cody・Lee(李)もシーンに変革をもたらす
それに、

「今度はZeppのようなライブハウスでフジファブリックと共にライブをします!!その時は皆さん聞いてくださいね!!」

と昨年のLOVE MUSIC FESTIVALで宣言したからには、いつまでもCody・Lee(李)を愛すると決めているんだ

クジラ夜の街やTeleなど同世代バンドに置いて行かれていることを高橋が気にするのは分かる
どんどん勢いのあるバンドが出て来ている今のシーン(個人的にはシンガーズハイに注目している)、他のアーティストを気にせずにいられない
でもいつか武道館に立つ日は来る 
Zeppにだって、LINE CUBE SHIBUYAにも
だからこそ生活を続けなくちゃ

セトリ
LOVE SONG
愛してます!
W.A.N.
おどる ひかり
I'm sweet on you(BABY I LOVE YOU)
涙を隠して(Boys Don't Cry)
我爱你
悶々
W.K.W.K
honest
新曲
異星人と熱帯夜
在夜市再見
1096
drizzle
さよuなら
(Encore)
初恋・愛情・好き・ラヴ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!
When I was City Boy


※前回見たワンマンのレポ↓