「カオスが極まる」のリリースを記念したあまりにもカオスなライブハウスツアー(追加公演のみ、ホール会場の東京ガーデンシアター)を終えたユニゾンは現在9枚目のフルアルバム「Ninth Peel」のリリースを控えているが、今年の1月からVINTAGE ROCKと共に新たな自主企画を立ち上げた
その企画の名前はVG
1回目は若手を代表してCody・Lee(李)、ベテランからTHE NOVEMBERSとオルタナロックをテーマにしたような組み合わせが 成されたが、2回目となる今回はユニゾンと親交が深いBIGMAMA、「ちょっとアウェイじゃない?」と思ってしまうLucky kilimanjaroととても予想だに出来ない組み合わせに
なお3回目は来月EX THEATER ROPPONGIで開催され、こちらもGRAPEVINEにThis is LASTと「この組み合わせ!?」と驚くような組み合わせに

・Lucky Kilimanjaro
この手のスリーマンイベントは最初から幕を張らないとトップバッターが誰か、一瞬で分かる
主宰のユニゾンがトップで出てくる可能性はほぼ皆無
となると、BIGMAMAかラッキリになるが年功序列的に考えて予想できるように案の定、ラッキリがトップバッター
昨年のロッキンはVaundyの裏というあまりにきついタイムテーブルだったが、それでも踊らせまくったのは記憶に新しい

定刻ほぼちょうどになるとゆっくり暗転
ロッキンは「I'm NOT DEAD」に合わせてボーカルの熊木達がリズムを取るように登場するコミカルな動きが印象に残っていたが、この日は熊木以外の5人が先に登場
最初から「躍りの合図」がSEのように流れ、熊木が合流したタイミングで同期から生演奏へ
サザンオールスターズのようにドラムとパーカッションがいるが、パーカッションが下手にセッティングされている関係でほとんどの人はニコニコしてリズムを刻むパーカッションのラミがどういうバンドか悟る第一印象要因

続く「ひとりの夜を越えて」になるとベースの山浦がシンセベースからエレキベースにシフトし、ドラムの柴田と共にリズムは生々しくなっていくが、ラッキリのメロディーの中心軸は熊木の奥さんこと大瀧が奏でる鍵盤
なので激しくギターが鳴ることはなく、どちらかというとカッティング中心なのだが、ギターの松崎はもはや客席を煽るように踊っている場面の方が目立つ
ギタリストというよりダンサーのような感じ

「今日は色々な思いを抱えてここに来ているはずです。踊りましょう!!」

と熊木がよりダンサブルになるように求め、

「夏の曲を」

と紹介された「エモめの夏」でZepp Hanedaは一瞬で夏
昨年の夏、蘇我の野外でロッキンに参加できた自分は文字通りエモめの夏を堪能することが出来た
その最高の夏を演出したアーティストの1組にラッキリはもちろん含まれているし、きっと今年も呼ばれるだろう
JAPAN JAMのラインナップにラッキリの名前もあるから

その昨年のロッキン、ラッキリのライブ中に多く見かけたのが「週休8日」と書かれた願望を包まずに出されたTシャツ
この日も演奏され、数字をカウントした後に、

「リラックス」

と熊木は飛ばすが、1ヶ月の休暇日数の目安である週休8日よりも更に休みが欲しいと要望するのは自分だけだろうか(今月はややオーバーワーク気味だったため)

ソウル・フラワー・ユニオンがやっていそうなアイリッシュなコーラスを大瀧が行い、

「踊れや!ほいやっさ!」

の掛け声が祭りに参加している気分になる「太陽」、昨年のロッキンの頃は新曲で

「ダンスは自由だ!!」

を熊木が連呼する「ファジーサマー」とラッキリのライブは、常にアクセルを踏み続けている感じ
今日は流石にロッキンよりは時間があるはず
けれども、ブレイクダウンしたらボルテージが低下してしまうと考えているのだろうか
ほぼ休みはなく、「せっかち」と称しても不自然ではないくらい曲を連打
その作戦が項を奏しているのだろう
明らかに手がどんどん上がっているし、

「BPM125 部屋で爆音のミュージック」

が代名詞の「HOUSE」でZepp Hanedaはダンスホールとなり、熊木はまた

「ダンスは自由だ!!」

と叫んだが、憂鬱になりがちな月曜の夜とは思えない風景である

そして最後は昨年の冬に配信された「一筋座す」
天井に設けられたミラーボールが回転する様子は「ダンスに終わりはない」とでも言ってるかのよう
しかも山浦も電子ドラムを叩き、大瀧はサンプラーを活用
ダンスに特化しているバンドとはいえ、リズム以外はほぼエレクトロに徹したアンサンブルは「もはやバンドじゃない(笑)」と良い意味で思った

去り際には4月にリリースされるアルバムとそのツアーファイナルが豊洲PITで行われることを告知
これだけ曲をやりながら30分で終わらせるのはある意味パンクだし、躍りの合図を鳴らす役目を果たしたとも言える

周囲の人が、

「陽キャの音楽だよね」
「ギターの人は、演奏してない時間が多かったね」

と話していたことには反論するどころか、完全同意だけど(笑)

セトリ
踊りの合図
ひとりの夜を抜け
エモめの夏
週休8日
太陽
ファジーサマー
HOUSE
一筋差す

・BIGMAMA
けれどもラッキリは機材が多いからだろうか、この日転換に1番時間を要したのはラッキリとBIGMAMAの間である
始まる前に、

「昔ドラムの人が今[Alexandros]にいる人だって事しか知らない※リアドのこと」
「バイオリン(東出のこと)がいるんだって!!」

という会話が周囲から聞こえて少し凹んだけど

ラッキリのライブを終えた20分後の1950頃にゆっくり暗転し、昔と異なるSEと共に柿沼を始めとする4人が登場
金井もすぐに登場してくるが、始まりが「ダイヤモンドリング」は実に懐かしい
何せ自分が初めてロッキンに参加した2012年はBIGMAMAの全盛期途中
大学の知り合いに勧められてアルバムを聞きまくり、その時に「ダイヤモンドリング」とも出会った
東出が奏でるバイオリンは今でもシーンにおいて貴重(レルエがBIGMAMAに続くと期待した時代もあったが)
だからオリジナリティであり続けているし、先日ユニゾンの新作の企画でTKOと対談したビスたん(Dr.)が刻むビートもよりバンドに馴染んだと思っている
安井(Ba.)のベースの音の小ささが少し気になる場面もあったが

金井がアコギに持ち変え、前に出て演奏する場面が多い東出と共に爽やかな音色を奏でる「春は風のように」も懐かしく、裸の王様を題材にした「The Naked King~」はビスたん加入後の現在のBIGMAMA
攻撃的アンサンブルにバイオリンを共存させるのは国内ではBIGMAMAくらいしかやってないバイオリンエモ
しかもよく見ると、ビスたんは曲調に合わせるように目に表情を映している
スタジオやライブ以外では本来の自分をさらけ出しているようで、恐らく目の表情はスタッフが袖かPA席で操作しているのだろう

「BIGMAMAです!!」

と金井が簡単に自己紹介すると、ステージ前に出た東出はバイオリンソロを
今のBIGMAMAはとにかく曲をやり続けるスタンス
「鉄は熱いうちに打て」じゃないけど、隙間を与えさせずぬように仕掛けていき、東出のバイオリンソロを終えると「賭ケグルイ」の主題歌として起用されたこともある「Strawberry Fileds」の壮大な世界観が会場をピンクに照らし、音と音がぶつかり合うスリリングな場面ではステージを燃やし上げていく

「ご案内しましょう、シンセカイへ」

と金井が語り手のように招待するのは言わずもがな「荒狂曲”シンセカイ”」
この時、客席からは一斉に手が上がったがBIGMAMAとUNISON SQUARE GARDENは昔から深い交友関係にあるバンド
切磋琢磨してシーンを戦い抜いてきた戦友
その関係をファンはよく熟知している
だからBIGMAMAにとってもこのライブはホーム
大きく飛び跳ねる人もいたが、コロナ禍前はダイバーがどんどん客席を舞っていたバンド
そのような行動に出るのも決して不自然ではない

BIGMAMA流のEDM「MUTOPIA」では安井のグルーヴィなベースがビスたんの刻むビート共に客席を踊らせ、回り出す天井のミラーボールが理想郷に到達したように錯覚させるが、金井の力強い歌い出しから始まり、

「その脚で
誰より先を行け 誰より遠くまで
僕らの未来が変わって行く
泥だらけの世界を今よりもっと愛したい
高鳴る鼓動を奏でて」

と競馬と我々の日常をリンクさせたような「Let it beat」をここで行うと、

金井「Lucky Kilimanjaroありがとう。ユニゾンに敬意を込めて」

とユニゾンの「MR.アンディ」をカバーするが、メロウなダンスナンバーだった原曲と一線を画すかのようにパンクなアレンジに
このアレンジはユニゾンのトリビュートアルバムにも収録されたものだが、このアレンジはBIGMAMAが得意とするバイオリンパンクそのもの
初めて「CPX」を聞いたときの衝撃を思い出す
一時はラウド•パンクから遠ざかっていたけど、ビスたんと安井が編み出すグルーヴは東出のバイオリンや柿沼のギターよりも目立っている
BIGMAMAの原点がエモやパンクにあるのは今も変わってないのだろう

そして最後は昨年LINE CUBE SHIBUYAワンマンでお披露目された3曲の新曲の1つ「虎視眈々と」
これが原点回帰したかのように柿沼のギターが鳴り響くエモな新曲だった
演奏を終えるとビスたんが、

「ありがとうございました!!」

と前に出てきて、そのビスたんの背中を叩いた金井が客席に綺麗にお辞儀したのが印象的

最初に出てきた会話から「今の若い方ってBIGMAMA知らないのか…」とロッキンではセカンドステージに出演し続け、「レイクの番人」と称された時代も知っている自分は時の流れを痛感した
でも客席の盛り上がりを見ていると、まだまだ多くの人の心にBIGMAMAが残っていることは分かった
イベントの主催がユニゾンならば、BIGMAMAもホームグラウンドのようなものだけれども、ロックラシックはまだまだ死んじゃいない

セトリ
ダイヤモンドリング
春は風のように
The Naked King〜美しき我が人生を〜
Strawberry Fileds
荒狂曲”シンセカイ”
MUTOPIA
Let it beat
MR.アンディ(UNISON SQUARE GARDENのカバー)
虎視眈々と※新曲

・UNISON SQUARE GARDEN
そんなBIGMAMAのライブを終えて10分も経たないうちに場内は暗転し響き渡るイズミカワソラの「絵の具」
この転換の速さ、他のイベント主催者も見習っていただきたいが、あっという間に最後のユニゾンの出番に

先にTKO(Dr.)が登場して、変な歩き方をしながらも気合いを入れるように踏み込む田淵(Ba.)、律儀に客席へお辞儀をする斎藤(Vo. & Gt.)
この辺りはルーティンなので変わることは恐らく無いだろうが、突然TKOが雄叫びを上げてドラムソロを開始
いきなりドラムを叩きまくる奇襲攻撃を見せ、そのまま「BUSTER DICE MISERY」に流れるが間奏のドラムソロ、音源よりも手数を増やしまくっている
ユニゾンは過去と今でTKOのドラミングは大きく違う
その境目となったのは「Dr.lzzy」の頃だったと思うけど、ドラマーとして覚醒した後の音源で更にビートを刻むのはあまりに超人的だし、この日は学校帰りの方もややいた
そうした方々にTKOのドラミングは憧れそのものだろう

間髪入れずに始めた「Kid, I like quartet」では田淵がゴリッゴリのベースをなぞりながらステージを旋回
準備運動が終わったことの示唆でもあるが、この日のライブは発声が禁止となっている
それは「Ninth Peel」のツアーをもって発声を解禁する予定になっているのが関係しそうだが、先日見たシネマとのツーマン、誰1人として合唱するものはいなかった
cinema staffの辻が発声許可を出しても 

それにユニゾンが参加するライブで特に印象に残るのはファンのマナーの良さ
ユニゾンのライブはガイドラインが他のアーティストのライブより厳しいというのもあるが、客層的に荒れやすい渋谷でライブをした際もマナーの悪い方はあまり居なかった(この日、ラッキリの頃にマスクを着用せずに参加している非常識な客はいたが)
ユニゾンは自分たちのファンがとてもマナーが良いことを誇っていいと思う

この「Kid, I like quartet」の終盤、TKOの頭にヘッドフォンが着用され早くも「カオスが極まる」が演奏される辺り、この日は序盤がカオスゾーンだったとようだが、TKOのドラムは「Phantom Joke」と同じく難度が高くて複製困難なヤバすぎるドラムを時に身を乗り出しながら叩き、時によく分からない変な舞を行う田淵
そんなヤバすぎるリズム隊のグルーヴの上で平然とギターも歌唱もする斎藤
「まだ極まってないだろ」以前に、この3人は最初からカオス
既に極まっているのだ

「UNISON SQUARE GARDENです!!」

と斎藤が挨拶したあと、

「VINTAGE ROCKっていうカッコいいイベンター会社があるんですけど、そこの頭文字の「V」と何故かUNISON SQUARE GARDENの「G」を取って、「VG」というイベントを立ち上げました!!「対バン最高だろ?」を目指すイベントです!!」

とイベントの趣旨を説明するが、昨年はフェスどころかツアーも斎藤はMCをしてない
今年になって少し方針が変わったのだろうか?

「最後まで楽しんでください!!」

と客席に斎藤は呼びかけるが、この日も「Simple Simple Anecdote」が行われるとは…
「「Ninth Pearl」が出る前に前作の曲を出来るだけやろう」という方向性かもしれないが、2連続でこのロカビリーをやるのは何か理由がありそうな気がする
やっぱり彼の件が関係しているのだろうか

斎藤が刻むカッティングリフを中心に進行し、

「先生!!」

に合わせて、客席から勢いよく手が上がる「デイライ協奏楽団」はグルーヴがミニマムなので田淵とTKOの動きも大人しめ
かと思いきや、終盤TKOは丁寧にビートを刻んだことで気持ちが高ぶったのか、やたらハイテンションで高く
表情を見るだけで陽気にドラミングしてるのは明白

歌いたくなるような田淵のベースラインと気持ちよさそうに16分を刻むTKOのリズムに斎藤がキャッチーなメロを載せる「夏影テールライト」を行ったことで、Zeep Hanedaはこの日2度目の夏到来
「「春が来てぼくら」はやらないのかい」なんてツイートを終演後に見かけ、「確かに」と頷く部分もあった
でも昨年のCDJ でも「夏影テールライト」はやった
先日のcinema staffとのツーマンとセトリを大きく変えてもやる理由、それは「夏影テールライト」をプッシュしたいということだろう アルバムを出せばまた曲は増え、やらない曲が増えてしまうかもしれない
ユニゾンはリリースペースが早いから尚更
春以降、ユニゾンは「Ninth Pearl」の曲をどんどんやるだろう
良いタイミングでユニゾンのライブを見れていると思う

「幻に消えたなら ジョークってことにしといて。」

と「Phantom Joke」への前振りは今や無意味と化しているけど

その予想通り、「Phantom Joke」に行く様子は微塵もなく、幻どころか不穏に動く田淵の存在がインプレットされ、ベースラインもこちらを踊らせるためのものだから一層記憶に残ってしまう「世界はファンシー」でこちらはピースしたり、斎藤によるファンタスティックなギターを浴びせられたりと全く休む時間を与えてくれないユニゾン
直後の「天国と地獄」はその状況を表現するのに相応しい言葉だが案の定、田淵は足を上げまくってステージを動き回ったりととんでもない運動量

「運動神経、そんなに良くない」

と昔インタビューで話していたけど、運動神経が良くない人がこんなアグレッシブなパフォーマンス出来る訳が無い
演奏面だけでなく田淵の運動量もカオス

そのまま速度を落とすことなく、最後は「ライドオンタイム」に着地
怒涛のキラーチューン連打に会場は熱く、けれどもメンバーはまだまだライブ出来そうな活力を残し、お立ち台に座って演奏していた田淵は恒例行事の如くスタッフにベースをぶん投げた

本編が終わったあとは普段のワンマンのように客電が付き、BGMが流れる状態でアンコールを待つがすぐに戻ってくると、斎藤はこの日のライブを絶賛しながら、

「Lucky Kilimanjaroとは初めて対バンしたんですけど、僕移動中Lucky Kilimanjaroの曲聞くこと多いんですよ。集中力を高めるためというか。今日はその場で準備することができました!!」

とラッキリ好きを猛アピールするも、

「BIGMAMAは…話すことないな(笑)」

とあまりに厳しすぎる斎藤(笑)
しかしこれは冗談で、斎藤は金井から黒ズボンを購入したらしく、

「久々に対バンできて良かったです。僕が世界で2番目に好きなバンドなので!!」

とBIGMAMAのことを今でも大切にしていることを明かし、大きな拍手が起こった
もちろん1番目はユニゾン

そしてアンコールは本編でやってなかった「シュガーソングとビターステップ」で、最後までパーティは続く
当然のことながら田淵はスタッフにベースをぶん投げた

最初に書いた通り、この企画は来月も行わるが、この日のテーマは「踊る」だったと思っている
来月はどうなるだろうか
これからも世界を驚かせ続けよう

セトリ
BUSTER DICE MISERY
Kid, I like quartet
カオスが極まる
Simple Simple Anecdote
デイライ協奏楽団
夏影テールライト
世界はファンシー
天国と地獄
ライドオンタイム
(encore)
シュガーソングとビターステップ




※前回見たユニゾンのライブレポ↓


※前回BIGMAMAが見た際のライブレポが掲載されている記事

※前回Lucky Kilimanjaroを見た際のライブレポが掲載されている記事