BLUE ENCOUNTのベーシストである辻村が来年から活動拠点をアメリカに移す
このニュースが発表された時に「はい、そうですか」なんて飲み込める方なんてそういなかっただろうけど、コロナ禍になってなかったらブルエンは空中分解していたかもしれない
その情報を音楽ナタリーのインタビューで知り、驚いた音楽ファンは多いのではないだろうか(コロナ禍になってなければ横アリワンマンは2020年に開催され、そこで辻村は脱退。コロナ禍に助けられた形となる)

空中分解は辻村はアメリカに移住しつつもバンドには籍を残すというかたちでなんとか回避し、辻村渡米前に行われるのが3年ぶりとなるホールツアー
ホール公演はこれが千秋楽となり、来年の武道館をツアーファイナルとする予定だったが、田辺のコロナ感染に伴い一部公演は12月に開催となっている

会場に入るとステージには幕が
昔やっていたリクエストツアーや2019年のホールツアーでも幕を張っており、その時のことを密かに思い出しつつある

なお今回のツアー、本編中のMCでも出てくるがセトリ公開厳禁となっているため、この手のライブでは通例となっているセトリは掲載しない選択を取る
それでも曲名には言及せざるを得ないのでそこはご了承していただきたい

会場にはメンバーが好んでいると思われる海外のR&Bが流れているが定刻になると、いきなり会場は暗転
幕張メッセや横浜アリーナ、並びに3年前のホールツアーのように壮大なオープニング映像が
恐らくブルエンはホールやアリーナでワンマンする際はこのように大掛かりなオープニングを用意するのだろう

明らかに手拍子を促すような場面になると田辺(Vo. & Gt.)たちは勿体ぶることなくステージへ
派手な映像演出から始まる場合はいつの間にステージにいたりすることもあるけど、そのようなこともしないが、オープニングにして最新曲の「Z.E.R.O.」で田辺はギターを背負わずにハンドマイク
初めて聞いたときに「ブルエンらしいようでブルエンらしくない」と感じたように、ラウドサウンドではあるけれども、疾走感は控えめ
coldrainがやりそうなイメージであり、辻村(Ba.)や江口(Gt,)が重厚感あるアンサンブルを築く中で、高村が刻むのは人力EDMのようなビート
昨年リリースされた「囮囚」も挑戦的な作風だったように、実験的なサウンドが増えてきた
前述通り、来年から辻村は海外に移住するけど海外で得た知識がブルエンに革命をもたらすのだろうか
ちなみに曲名の「Z.E.R.O.」はもちろんコードギアスシリーズの主人公、ルルーシュ・ランペルージ扮するテロリストが元ネタ(歌詞もほぼルルーシュのことだし)

田辺「渋谷、最初から勿体ぶることなく出していけよ!!」

と早々に煽り、ミクスチャーロックのスタンダードを行く「…Feel?」を辻村のゴリッゴリなベースと共に踊らせ、田辺がこの日初めてギターを背負ったのはブルエンの決意表明と言える「ポラリス」
同期を用いつつもシンプルなギターロックだから高村の力強いビートは一層目立つし、昨年のツアーでも見られた

「きっと 君を忘れない」

と共にステージに用意されたミラーボールが輝く演出も健在
この美しい演出が「ワンマン以外でも見れたらいいのに」と思うし、

「精一杯この涙かきわけて
君に全てをあげるから」

には何度聞いても泣きそうになる
コロナ禍になって初のワンマンだった横アリ初日では笑いながら泣いてしまったし

簡単な挨拶と共に冒頭のオープニング映像を田辺が解説するが、今回のツアーではステージ両端に大きなスクリーンが設けられている
ホールワンマンでこうした演出はあまりなく、それだけ気合が入っているということだが、切迫感と緊張感の2つを内包する「Survivor」を聞くのはいつ以来だろうか
言葉数の多い歌詞や江口のギターが緊張感を強ませ、

「負けてたまるか」

に合わせて、この時代と戦う決意を固めさせたあとにはロッキンでも使用された映像をバックにバンドのアティチュードとも言える「DAY×DAY」で江口は鮮やかにライトハンド奏法を決めていく

コロナ禍に実施された配信ライブをそのままに高村が細かくビートを刻む「STAY HOPE」と定番曲を連発しつつ、江口と辻村はステージを動き回ったあとに田辺はアリーナ会場でよくやりがちな「1階!2階!!〜」を実行
自分は今回、2回の後方から見ていたが3階が呼びかけられた際の拍手はまるで大雨
拍手がこんなふうに聞こえる日が来るとは…

その上で、今回のツアーは最近の曲も満遍なく演ることを心掛けているようだが、前述したように、

田辺「今回のツアー、セットリストは全公演変えているんだけど、セトリは公開しないでほしい。」

とセトリの公開を禁止
SNSではメンバーの呼びかけもあって、全くと言っていいほどセトリが掲載されていが、

「SNSみたら「これなら行かなくていいわ」みたいなツイートあったから。
目の前にいるあなたのためだけにやる。だから公開しないでほしい。」

とセトリを見たであろう方が、こうしたツイートをしてしまったのも原因
会場に足を運んでくれた方だけにフォーカスしてライブをすることにしたのだろう
きっとこれは賛否両論あるだろうけど、こういう方々がフェスでよく見かける「〇〇聞けたからもういいや」と移動する方々だろう(KANA-BOONやUNISON SQUARE GARDENは一時期、代表曲を最後までやらないようにしていた)
最初から最後まで見てくれる方により届けるための決断だと思われる

そうして会場に来てくれた方を依怙贔屓するように、久々に「AWESOME」を演奏
ワンマンでもほとんど演奏された記憶がない故、「AWESOME」はレア中のレア
現場に赴いてくれた方が得するナイスな選曲

「新人の頃を思い出すなー」

と田辺が上手く繋ぎ、辻村がスラップを入れまくる中で江口がギターを弾きまくる「ルーキールーキー」は会場であるLINE CUBE SHIBUYAを歌詞に盛り込むこれまた現場に赴かなければ聞けないアレンジ
ロッキンでも演奏されていたが、ここのところ定番になりつつあるのだろうか

そのまま音を切らさず、辻村がコールアンドレスポンスを煽るのは「NEVER ENDING STORY」であるが、先日有明で見たマンウィズが久々に本物のコールアンドレスポンスをしたのに対し、ブルエンはまだ発声は促さずに手拍子で対応
LINE CUBE SHIBUYAに声出しを申請すれば、発声は出来たと思うが、他の会場はやってないのに東京はやるのは公平性にかける
だからこの日はコロナ禍のコールアンドレスポンスで対応したのだろう
コロナ禍に限界を感じるようなツイートはここ最近増えた
それでも今は安全を第一にしたほうが良い
声出しよりもブルエンとの物語が終わらない方が最優先だから

「NEVER ENDING STORY」を終えると再び幕が
昨年のライブハウスツアーみたく、「アコースティックセットに転換するのか?」と思ったがこれはMr.Childrenが以前「365日」をやる際にインターリュードとなる映像を流したように繋ぎの演出だ
その映像は決して明るいものではなく、戦争を彷彿させるような映像
そうした映像からリンクするのはかつてCDJ1819でも映像付きで演奏されたブルエンなりの反戦歌である「虹」
田辺はMCで戦争をイメージさせる発言はあまりしない
けれども決して明るくない「虹」をやったのは、

「咲いて
願いが虹を渡って
「争い」が間違いを知る日まで」

と戦争は絶対肯定してはならないものという信念があるから
加えて「虹」は田辺の祖父の話を元に描かれたもの
戦争が終わらない限り、やり続けるべき

幕を貼った状態は続き、田辺がアコギを手に取ると夏に配信でリリースされた「終火」を奏で始めるが、冒頭でいきなりつまずく大失態(笑)

江口「ここミスっちゃ駄目でしょ(笑)」
田辺「スポットライトあてられているから恥ずかしい(笑)」

と普段よりもミスを責められてしまうのは、「終火」は演出を特に駆使していたから
気合を込めなければならない場所でミスった羞恥心を隠すことは困難
それでもなんとかやりきったけど、名古屋では演奏途中でアラームがなるハプニングが発生したらしい
折角歌詞と映像がシンクロしているんだから、武道館で聞けるのであればミスがない状態でききたい

幕が上がると田辺は即興で歌い始めるが、この即興歌唱から繋がったのは2019年のホールツアー以来となる「City」
幕張メッセで見た時のように、高村が鍵盤を弾くことはないんだろうけど、これまで最も感情的になったのは暗黒時代の日々を思い出していたのだろうか
でも今のブルエンは、紛れもなく

「あなたにとっての「街」」

になったし、東京に居場所も出来た
「City」のエモさはこれからどんどん増していく

「終火」をやった直後にはメンバーそれぞれに恥ずかしいエピソードを各地で話してもらっているようだが、この日はヨーイドンで転倒するようなミスをした田辺が担当することに

「今年も沢山の曲をレコーディングさせてもらって。俺はベースもドラムもかっこいいギターも弾けないからこの御三方(江口と辻村、高村)には感謝しているんだけど、先日ELLEGARDENのライブを見させてもらったのよ(KT Zepp公演か?)。熊本で見た時以来に。そしたら楽屋に呼ばれたんだけど、細美さんに「ありがとうございます」と土下座されて、「いや、辞めてください!!」と土下座する4人に言いました(観客爆笑)。」

と先日から始まったELLEGARDENのツアーに招待してもらったものの、憧れの細美武士に土下座されるのは田辺じゃなくても面食らってしまう
なぜレジェンドに土下座される側なんだと

ELLEGARDENといえば先日、アルバムリリースが発表されるし、冬フェス参加も決まったりと「これ現実だよな?」と転がりだしたことにまだ冷静になれないがELLEGARDENのトリビュートが配信限定でリリースされることになり、

「エルレのトリビュート、参加させてもらったけど俺たちは細美さんの指名なのよ。「The Autum Song」、この曲に愛をすべて注ぎました。」

とブルエンももちろん参加
KANA-BOONが憧れのASIAN KUNG-FU GENERATIONのトリビュートに参加した際、鮪は感動していたと思うけど、ブルエンの田辺もトリビュート企画に呼ばれるのは光栄なんて言葉では現せない
一生の思い出である

「俺は昔、「続けたら夢は叶うよ」って言い続けたけど、最近は言わなかった。」

と田辺が話すのは、ブルエンのファン層が以前より高くなったことが影響しているだろう
ロッキンもCDJもメインステージが当たり前になったとはいえ、最初の単独ワンマンに参加した方の多くはほとんどが社会人となった
残酷な社会を嫌というほど見るようになってしまったから、簡単に「夢は叶う」なんて言えないのだ

でも、

「けど今日は言わせて!続けたら良いことあるって!」

と夢を抱き続けてほしいのだろう
夢の実現者となった田辺はあなたにエールを送るように告げ、「もっと光を」は少し歌い方を変えながらも一字一句、田辺は届ける
合唱できないのはやっぱり寂しいけど、スクリーンは真っ白
それはブルエンそのものがあなたの「光」ということ

「俺らが!! 君を照らすから」

の如く、どんなときでもブルエンはあなたを照らす

お馴染みのリリックビデオや辻村や江口によるソロ回しのあとに高村が叫ぶのがシュール(ではあるけれども、ドラミングでも当然魅せている)な「#YOLO」、「VS」では田辺がハンドマイクに持ち変えたことで事実上三位一体のアンサンブルに
田辺はというと、お立ち台に登った辻村に迫ったり、江口の側に座って歌ったりハンドマイクになったことでアクティビティに動くが、実は記憶に残るのは体を傾けるように江口
むちゃくちゃな姿勢で演奏できるのは体が柔らかい証拠

その直後に田辺はLINE CUBE SHIBUYAをLINE CUBE CINEMAと呼ぶ失態を犯してしまうが、

「いつまでも声が出せなくても構わない!!」

と田辺はコロナ禍に屈する気はないことをアピール
2度も田辺はコロナに疾患してしまっているので、後遺症がとても心配だけどこうしてライブできていることが田辺のメンタルにきっといい影響を及ぼしているはず
もしかしたら武道館公演だけ発声解禁されるかもしれないけど、コロナ禍はブルエンを発声なしでも戦えるバンドに成長させた
もうどんな状況になってもおかしくない曖昧だらけの世界でもブルエンは戦い続けるはず

そうして高村の丁寧な4つ打ちビートをはじめ、R&B調の「バッドパラドックス」で踊らせたあと、

「チケットが裁けなかった頃から東京のライブハウスで歌っていたこの曲をここで出来るなんて、何が起こるか分かんないな!!」

と田辺が告げたのは「VOICE」
もう10年近く歌われている初期の代表曲
インディーズ時代の曲が演奏される機会は昔と比べたらめっきり減ったがこれだけは格別

「答えはいつでも君の声にあった 転んでしまっても手を取り笑ってくれたね」

はまるで過去を振り返っているようである

初めてZeppでワンマンを見たときから弱かった頃の田辺をずっと見てきた
バンドマンとは思えないくらい弱くて、その都度その都度あなたに支えられたのが田辺であり、ブルエンである
その関係はバンドとあなたというよりは近くにいる親しき友にも例えることができる
だから

「その声を聴かせてよ その声を守るから」

のように守ってくれるはず
いや守って欲しい

そして本編最後は、「Z.E.R.O.」のカップリングとしてようやくパッケージとなった「青」
ロッキンの最後みたいに歌詞をスクリーンに表示して欲しかったけど「青」のフレーズは、音楽リスナーじゃなくとも必読
それくらい歌詞が良すぎるのだ(江口のギターもかっこいい)
武道館では正真正銘な最後になりそうな予感がするこのアンセム、

「離れたって
はぐれないように
ずっとここで待ってる
だから
青に染まれ
青を宿せ
あなたらしく
青に挑め」

を再会の合図に、それぞれの奮闘を誓って本編は終了

すぐにアンコールで戻ってくると、どうやらこの日は21時までに音を切らなければならない決まりだったようで(この会場のワンマン開演時間が早かったりするのはこれが原因、武道館みたく21時までに音を切らなければならないケースが多いのだろう)1曲だけ

そのラストは高村がこれぞパンクなツービートを刻む「だいじょうぶ」
あなたを全力で肯定すると、写真撮影や武道館の告知もして急いでライブを終了させた
田辺は時間を1時間勘違いしていたけど(笑)

ロッキンの時もそうだったけど、辻村はこの日も今後について言及しなかった
ツアーファイナルの武道館では言及するんだろうけど、武道館以降のブルエンはどのようにライブをするのだろう

メジャー前にも辻村はバンドを離脱しかけたことがあるし、2018年の12月頃には田辺が原因でバンドは空中分解寸前に
そして音楽ナタリーのインタビュー(今回ばかりは最後にリンクを記載するので、ブルエンファンは絶対読んだほうがいい)で発覚した3度目の空中分解寸前
常に綱渡りしているような感じだ

けれどもこれだけの壁を乗り越えたということは、当然得たものもあるしバンドは強くなっている
そうしてたどり着いたのが夢の実現者
夢の実現者なら何処へでも行ける
だからブルエンも変わらず青に挑め



※前回見たブルエンのワンマン↓


※ファン必読の音楽ナタリーインタビューはこちら↓