新曲「出町柳パラレルユニバース」がアニメ「四畳半タイムマシンブルース」主題歌として起用されること、ツアー後半戦に久々の横浜アリーナワンマンが発表されていたりと次の動きを早くも見せているアジカン


「サーフ ブンガク カマクラ」の続編アルバム制作も決まっているが、前半のファイナルとなるのは17年ぶりとなる野音ワンマン

倍率の高さに諦めていたものの、チケットリセールに当選してまさかの参加できることに


今回のツアーでは、最も希少性の高い会場でのワンマンということでチケットはソールドアウト

国際フォーラムと異なり、メンバーを囲っていたフレームはオブジェと化しているのが大きな違いだが、7月の野音は先日見たindigo la Endもそうだったけど非常に空が明るい中での開催

なのでオープニングのSEがなった際、ステージの照明でライブの開演に気づいた方がこの日も多い印象である


この日もサポートメンバーは国際フォーラムの際と同じく、sumikaのサポートもこなすMop of HeadのGeorge(Key.)とAtsuko(Cho.)が参加する6人編成

「Do Arriba」から始まるのも国際フォーラムの時とほとんど変わらない(なのでこの記事、最後の方に添付する国際フォーラム公演のレポも参考にしていただきたい)が、潔(Dr.)のドラムはフォーラムの時よりも音がはっきり聞こえるのに対し、喜多(Gt. & Vo.)のギターはフォーラムの時より少し聞こえにくい(最初、アンプを見る場面が多かったので音作りに苦戦していたのかもしれない)


フォーラムで見た際は、近年で1番爆音を鳴らしていると感じたが、ホールと異なり屋外は音が反射しない

なので音響の良い野音であっても、ホールと印象が異なるは必然

それでもゴッチ(Vo. & Gt.)の歌声は最初から安定している


潔が刻むビートに少しずつ音が乗り次第に「センスレス」に移行する流れもフォーラムと同じだが、最初からメンバーがフレームに囲われることなくむき出しになっている状態なので、喜多は序盤から下手にリラックスしながら演奏

逆に上手にいる山田(Ba. & Vo.)はそこまで動くことなく、太いベースでバンドアンサンブルを支えているが、国際フォーラムでライブを見た時よりも世の中はあの時よりも更に混沌とした

第7波の到来に元首相の暗殺…

日本国内の闇が一気に溢れ出しそうになっているそんなときにこそ、頼りにしたいのが音楽であって、一気にギアを上げた直後の


「世界中を悲しみが覆って 君に手招きしたって 僕はずっと 想いをそっと此処で歌うから 君は消さないでいてよ」


はより力を増し、


「闇に灯を」


の願いも以前よりずっと大きい

こんなにも暗い時代、音楽が光を灯してくれることをより願うかのように


喜多のギターが世界を旅するように「トラベログ」が駆け抜けつつ、


「嗚呼 此処に在ること 此処で見ること そのすべては誰のもの 塞ぎ込むより まだ見たこともないような景色があるよ」


と歌詞を考慮して、「センスレス」と「トラベログ」が続いたことを伺わせつつ、このツアーを終えたら次はいつ聞ける出来るか予想できない「ローリングストーン」はやっぱりゴッチが忠告する


「あんな大人になっちゃいけないよ」


が印象に残ってしまうが、会場にいた方々は「あんな大人」と聞いて誰を浮かべただろう


未だに戦争をやめない某大統領か

某首相を殺害した人物か

口だけ達者の職場の上司か


人によって千差万別だろうけど、国葬されようとしている某首相も「あんな大人」の1人であることを忘れてはいけない

ゴッチが追悼した際、案の定炎上させられた(過去に「サーカス」で痛烈に皮肉っている)が、あれだけ嘘をついて国民を苦しめた元凶

反面教師にすべき人間リストが存在するなら、必ずランクインする人間であるから


冒頭、


「海外の友人が「セミの鳴き声がうるせぇ。どうにかならないの?バグズウォーだよ。」と言ってたけど、セミからすればこっちのほうが騒音だよね(笑)」


と自虐するゴッチ(笑)


久々の野外ワンマン(おそらく横浜スタジアムで行われたワンマン以来?)であることにゴッチが言及しつつ、売店があることに触れ、野外であるがゆえにツアーのセットの配置が異なっていることに触れながら、


「いつもはあのキューブに中にいるけど、その中だと安心感がある。建さん(喜多)は自由になっているけど(笑)」


と喜多も弄っていく(笑)

確かに喜多は下手に行く場面が多かったけど(笑)


普段通り自由に楽しむことを促し、国際フォーラムで見たときよりもキャッチーさと激しさの密度が高まっている「You To You」で喜多のボーカルもフューチャーしつつ、アンサンブルがようやく整えのったのがこの辺り

今日の10代にとってのアジカン代表曲「エンパシー」は、野音が高層ビルに囲まれた会場であるので、


「夢の残骸よ」


が特に響いてしまうが、フォーラムで見たときよりも鍵盤の音数が増えているのは本数をこなしていくに連れてGeorgeが生み出したアレンジだろう

聞けば聞くほど、アレンジが変化しているだけに「エンパシー」は更に変化が起こりそうな予感がする


潔がトラップビートのようにハイハットを刻み、atsukoがhomecomingsの畳野彩加のパートを担う「UCLA」は既にこのツアーに参加された方にはお馴染みのアレンジ

でもあの事件があったからか、


「呼び声が君に届くように 出会うべき人と出会うように 君はまだ雨宿り 耳だけは澄まして時を待つ」


がより印象に残るようになってしまった


コロナ禍で「人と会うこと」が容易ではなくなっただけでなく、貧困層が増えてしまい、命が簡単に奪われてしまう現実までテレビで多くの方が奪われた

もし出会うべき人に出会えていたら…

呼び声が君に届いていたら…

運命はきっと変化していただろうし、結末を変えられたのではないだろうか?

2020年から突入してしまった混沌の時代

雨が抜け、会うべき人に出会えることを心から願う


そんな混沌とした時代でも歩みを止めないよう、アジカンが自身にも言い聞かせるような「ダイアローグ」は、サイケデリックなアンサンブルがステージから放たれ、アリーナや屋外でこの曲が演奏されるのが相応しいことを証明してくれるが、


「星もないなら」


の通り、この時点でも陽は落ちない


数日前に見たインディゴのワンマンで日が落ちたのは19時

簡単に陽は沈まないと分かっていたものの、逆に「ダイアローグ」が夜の屋外、それも深夜に演奏されたらどんな印象を抱くのか気になってしまった

夜の屋外が合いそうな曲のなので、来年のロッキンオンのフェスではトリにして欲しい所存


「ローリングストーン」共々、このツアーが終わったら次にいつ演奏されるか、皆目検討が付かない「スローダウン」で潔がタイトにビートを刻んだところで、野音ワンマンが「Re:Re:」ツアー以来であることが山田の口から判明するが、


ゴッチ「その時の俺、機嫌悪くてライブを終えると、その時のいいことと悪いことをずっと書いていた(笑)。PCの奥底に埋まっているから消さないと(笑)」


と「ソルファ」を制作したあとの嫌な雰囲気が抜けてなかったのだろう(「ソルファ」の再録アルバムをリリースする際のインタビューで、ロッキンオンは山崎洋一郎がリリース時のインタビュー記事を持ち込んできたが、その時からソロ作品のリリースを匂わせていた)

その際の雰囲気が民主主義が一点、独裁主義となる「ファンクラブ」に繫がっていたと思われるが、


喜多「俺もノートに取っていた」


とのことで喜多もやっていたらしく、ゴッチからは、


「富豪の住居の奥から扉が出てくるみたいに見つけられるぞ(笑)」


と早めに処分するように宣告されていた(笑)


なお前回の野音のことは覚えておらず、最初の野音(ワンマンは今回が2回目、恐らくワンマンの前にイベントで野音に立ったものと思われる)の際はスタッフが総入れ替えとなったタイミング、ゴッチが音楽人として生きていくことを自覚するきっかけになったライブとのこと

アジカンにとって、野音は重要な転換点となっていたのだろう


「皆に石を投げあってほしくない。幸せをシェアする方法をこのライブを通じて持ち帰って欲しい」


とゴッチが「Do Arriba」の歌詞を引用しつつ願うと、


「巨匠、山田先生の新作!!」


とアジカンのヒット曲を多く手掛ける山田が制作したカラフルでエレクトロな「雨音」の世界に包まれる野音

自分は「未だ見ぬ明日に」に収録されている「深呼吸」が特に気に入っていたこともあり、「プラネットフォークス」の中では「雨音」が1番のお気に入り

「深呼吸」と共演する日が来ることも願ったりしている


その巨匠、山田先生がシンセベースにスイッチして、今なおテレビCMでお馴染み「触れたい 確かめたい」はこのライブ風景をそのままCMで流して欲しいほど相応しいロケーション

しかし何より印象的だったのは、客席中央付近に居た方がこの曲で思い切り跳ねていたこと

この曲をきっかけにアジカンを聞き始めたのだろうか?

横に揺れるタイプの曲なので、こうしたリアクションを取る方は斬新に映る


逆に「ラストダンスは悲しみを乗せて」は潔のビートに乗せて踊らずにはいられないし、虹色に染められたステージを見ると尚更

アジカンのキャリアでも特にポップな「マジックディスク」に収録された楽曲というのもあり、


「悲しみよ 此処に集まれ 君だけに罪はないみたい 踊るしかないや 夜明けまで ここで燃やすほかはない トゥナイト」


のように、野音に来た観客の悲しみを吸収して浄化

山田のベースラインによって、ゴッチの


「「アイ・ラブ・ユー」「アイ・ラブ・ユー」〜」


はよりダンサブルに聞こえて来るが、喜多のリフを筆頭に全てが不穏な「Gimme Hope」はそんなハッピーな雰囲気を一瞬で破壊


「プラネットフォークス」に収録された新曲の多くはシリアスなフレーズが多いものの、メロディーで和らげているものが多い

けれどもこの「Gimme Hope」はそうはいかず、


「戦後だけど戦前の近く 長いヤツらに巻かれて集う」


に今の日本は、より近くなった

長い物には巻かれたものばかりが日本を牛耳っていること

皮肉にも某首相の死で鮮明になったから


けどこの曲は暗いままで終わるのではない

光が差し込むかのように、照明も徐々に明るくなる

今ならまだ間に合う

「一度決まったら終わり」ではない

抵抗することには、必ず意味がある

成し遂げなかったとしても、抵抗には価値があるし未来に希望は伝わるから


闇が光に変わる瞬間を見せつけたあと、野音に鳴り響くのは「ソラニン」のイントロ

イントロで会場から手拍子が起こっていたが同時に外はすっかり暗くなり、赤い照明が実に似合う時間になっていた

それはライブが終盤に近づいていることを合図

喜多が鳴らす泣きメロが終盤へ導くように響いたあと、会場に打ち込みのビートが流れる「新世紀のラブソング」でGeorgeは恵みの雨を表現するような鍵盤を奏でていたが、


「愛と正義を武器に僕ら奪い合って」


をゴッチは特に強調していた


お互いの正義がぶつかり合って、共に許容出来ないことで争いが始まる

それは日常生活においても同じである

そうした惨劇の図を一時はほぼ毎日のように見せられていたが、決してこれは対岸の火事ではなく、いつ巻き込まれてもおかしくないこと


「息を吸って 生命を食べて 排泄するだけの猿じゃないと言えるかい?」


に対しては、いつも自身を持って「イエス」と回答できる自分でありたい

「イエス」と回答できないときは権力側に丸め込まれてしまったと大差なく、救いようがないイエスマンになってしまったということでもある


国際フォーラム公演で演奏されていた「サイレン」に変わって演奏されたのは「無限グライダー」

ここ数年コロナ禍になる前からもやりまくっていたけど、青で染められたステージは青空のようだし、スネアとタムを交互に叩く潔のドラムで助走を付けて、喜多のギターが羽ばたいた後の世界を想像させるこの曲をこう何度も聞けるなんて昔は思えなかった

フェスやワンマンにいっても初期の曲で演奏されるのはほぼ「アンダースタンド」だったから

「空」を連想させるので、野音にはぴったり

なおこの曲がこの日のセットリストで最も古参だったりする


するとステージには照明が4つの魂を生み出す

その魂が上昇してやがて1つの塊を形成するバンドをイメージさせるような演出を見て、自分は感服したが、進研ゼミのCMソングとしてお茶の間にも大量OAされた「マーチングバンド」も潔のビートに牽引されるように、少しずつスピードを上げていき、ギアを上げる合図となっている「荒野を歩け」からは一層爆音化

山田がゴリッゴリなベースラインを弾く中で、1番手拍子が起こっているから今のアジカンといえばやはりこの曲なのだろう

何度聞いても喜多のギターは素晴らしいし


NUMBER GIRLやeastern youthの影響が強かった初期のアジカンをフラッシュバックさせる「Standard」では、ゴッチが力強く歌い上げる中で、喜多はステージ中央後方に乗り込み、途中口ずさむように演奏する気持ちよさを見せると、既に20時近くということも最後の曲


「こんな時代(コロナ禍)になるなんて、思いもしなかったけど、死なないように生きていきましょう。そうすればまた「メガネ~!!」って叫べる日が来る。俺は全力で拒否するけど(笑)」


と自虐ネタを取り入れつつ、また発声できる日が来ることをゴッチは告げると、


「後世にこんな素晴らしい場所があることを伝えていきましょう。もし辛くなったらまたライブ会場に来てください。今日はありがとうございました。」


と日常のモヤモヤを発散できるライブ会場の素晴らしさを後世に伝えて行こうと結束し、最後は「解放区」だが、ホール会場ではないのでゴッチ達がキューブから解放される演出はできない

変わりに都会の中心にある野音ということで「高層ビル」、「タワーマンション」といったフレーズがより印象に残る中で


「笑い出せ 走り出せ 踊り出せ 解放!」


と解放していった


アンコールでは国際フォーラムと同じく4人で戻るが、最近ゴッチがソロ名義で参加した「±D」を紹介し、


「これを作ったので一時期借金が3桁になったけど、最近2桁になった(笑)」


とやっぱり自虐トークを始めて、


「こんなに借金背負うの奨学金以来だわ(笑)」


と話して、日本の奨学金制度の酷さを思い出してしまったが、


「昔建さんね、給料が入ったらすぐに同僚や後輩に奢ってしまうのよ。だから俺達には数百円しか残らなくて、母親が給料を管理していた(笑)」


と喜多の杜撰なお金の使い方をバラして巻き添えにしていき、


「こんな人でも野音に立てています(笑)」


とゴッチがフォローしても、褒め言葉には聞こえない(笑)

恐らく当時は家計簿を立ててなかったのだろう


「横浜のスタジオで作った曲を」


とゴッチが呟いたのは、イントロから大いに盛り上がった「君という花」


パシフィコ横浜で見たときは後方の客が発声禁止にも関わらず、「らっせーらっせー」を騒いでいたので不快でしかなかったが、この日は流石になかった(それでも発してしまう人はいたけど)

けれども、音は本編よりも大きくなっていた

4人の際は音をより大きくしているのだろうか


更に国際フォーラムでも披露されていた新曲「柳小路パラレルユニバース」はここでも演奏

「サーフ ブンガク カマクラ」続編の先行シングルでもあるので、初期のアジカン(最近だとナードマグネットがやっているパワーポップ)を聞いているような感じがする

「プラネットフォークス」は比較的自由なアルバムだったが、「サーフ ブンガク カマクラ」の続編はパワーポップをメインにしたアルバムに戻りそうだ


サポートのGeorgeとAtikoがステージに戻ると、国際フォーラムでは演奏されてなかった「再見」を演奏

どうやら「C'mon」と「再見」は会場によって入れ替わっていたらしい

個人的にはアルバムのレコ発の際、収録楽曲は可能な限り全てやって欲しいので、「C'mon」も「再見」も1回のワンマンで聞けるようにしていただきたい所存だが、今日ばかりは「再見」で良かった


「やっと会えたよ」


の通り、17年ぶりに野音でワンマンが出来たんだから


「今回のツアー、野音だけ早々に売り切れて少し複雑だったのよ。ソールドアウトすることは嬉しいよ。けどこのキューブの意味も知って欲しくて。」


と野音だけが早々にソールドアウトしたことに、ゴッチは複雑そうだった

なぜなら前述の通り、「解放区」では文字通りメンバーもキューブから解放される演出がある

さらに言えば国際フォーラムで見た際、この日も最後だった「Be Alright」ではステージが全て解放される演出もあった

だからゴッチは本当はホールにも来て欲しいんだと思う

野音だけではなく他の会場にも

でもゴッチは、


「もし機会があったら、また会場に来てください。ありがとうございました。」


と曲前にお辞儀をして、ハンドマイクになった「Be Alright」を心地よさそうに歌っていた

自分たちもここに集ってくれた方も安心させるかのように


最後にゴッチはギターを背負って、ノイズを生み出すとサポートも含む6人でステージを後に

野音の音切りはだいたい20時30分

かなりギリギリまでライブをしていた


多くの方が期待していたであろう客演はこの日なし

映像収録の話も出てなかったから、横浜アリーナ公演まで参加はお預けだろう

横アリ公演の参加は現在、厳しい状況だけれども


ホールで先に見た方にこの日の公演はホールとは大きく異なる演出で斬新に見え、野音がこのツアー初参加だった方にはホール公演がどのような感じだったか、大いに気になったと思う

どんなに混沌とした時代になってもアジカンは側にいてくれるだろうし、混沌とした時代が空けたら「ゴッチ〜!!」と叫びたい


だからこれからもBe Alright

そして君がいないとさ!!


セトリ

Do Arriba

センスレス

トラベログ

ローリングストーン

You To You

エンパシー

UCLA

ダイアローグ

スローダウン

雨音

触れたい 確かめたい

ラストダンスは悲しみを乗せて

Gimme Hope

ソラニン

新世紀のラブソング

無限グライダー

マーチングバンド

荒野を歩け

Standard

解放区

(Encore)

君という花

柳小路パラレルユニバース※新曲

再見

All Right





※国際フォーラムのレポはこちら↓