先月のKT Zepp Yokohamaから1ヶ月足らずで再びバクホンのワンマン

他公演のセトリを見ると、今回はセトリを固定して回っているようにも見えるが果たして


この日は初日のKT Zeppと対照的にチケットはソールドアウト

映像収録のカメラも入っていることには、「まだ中盤だよ?」と思いたくもなるが、定刻を少し過ぎたところでゆっくり暗転

このツアーのために栄純が制作した壮大なSEに導かれて、4人が登場し「ユートピア」から始まる流れはKT Zeppと同じ

というか予想していた通り、今回のツアーはどうやらセトリを変えてないようだ

普段ならバクホンはツアーでセトリを少し変える傾向がある

そのため、今回のツアーはコンセプトが定まっている上で回っているのだろう(初日のレポは、このレポの最後を参照してほしい)


だが同じセトリだからといって、ライブの内容は再放送ではない

なぜなら「ユートピア」が始まった際、「明らかに変わった!!」と確信できるほどにアンサンブルは力強くなっていたから

元からバッキバキだった岡峰(Ba.)のベースに加勢するかの如く、栄純(Gt.)のギターが追加攻撃を与え、栄純がギターでガンガン引っ張る「ヒガンバナ」はマツのドラムがかなりパンキッシュに


更に「声」は「こんなたくましい曲だったけ?」と見違える程に、演奏がバージョンアップされているし、スロースターターな傾向がある将司(Vo.)はこの時点で声が出まくり

まだツアーは序盤なんだけど、この時点で相当な経験値を吸収したようだ


そんな進化どころか凶暴化したアンサンブルは、将司が叫ぶ


「バッドエンドなんて興味あるわけねえ」


の攻撃力をより高めるし、「ヒガンバナ」で溢れる歌謡テイストをより心に

過去最高の仕上がりになっているのはGW、春フェスが蘇我やさいたま新都心で開催してるのを無視してまでKT Zeppで初日を見ているからこそ、その変化が肌身で分かってくる


将司の歌声が最初から好調ということはこのライブの成功はほぼ約束されたもの

しかしながらマツは、序盤の挨拶変わりのMCで


「皆さんの心に届くように演奏します」


と油断しないように気を引き締めると、岡峰のベースがじっくり客席を揺らす「戯言」でマツは音源では16分に見えて、実はハイハットとライドシンバルを同時に叩きながらリズムを取る驚きのドラミングが「頭湧いちゃってイッちゃって SHOWTIMEじゃん」と思ってしまうが、イントロから将司が手拍子を煽る「深海魚」では栄純もコーラスするサビで半分は拳を上げて、半分は手拍子をする奇妙な光景が誕生

制作経緯がただでさえ特異(将司が「食事にあわせてその国の音楽を聴く」ということをやっており、トルティーヤに合わせてサルサを聞いていた)なのに、ライブでは特異な瞬間を作ってしまうこの曲が色んな意味で恐ろしい


栄純のギターと岡峰のベースが天国と地獄の境目を築いているように思える「生命線」のシンセベースが場内を風のように過ぎ去り、マツはアウトロで手数を増やしてドラムを叩きまくっているが、岡峰の歌うようなベースが豹変して牙をむく「疾風怒濤」はイントロで「あれ?」と思うくらいリズムがずれた

要はマツのドラムが先走ってしまい、岡峰のベースがついていけない状況になってしまったのだが、サビで自然に立て直し「流石の底力だな…」と感服してしまったが、よく見ると下手からスタッフが慌てて岡峰のマイクスタンドを持ってきており、どうにもチグハグ感が拭えない

アウトロでは凄まじい音のぶつけ合いでなんとかしたものの「「疾風怒濤」の勢いはあるか?」と問われたら回答に困ってしまうだろう


そんなハプニングの影響をほとんど感じさせぬよう、


「みんな楽しんでる?」


と将司は声をかけて、桜が散っていく風景を栄純のギターが呼び起こす「桜色の涙」は、将司もギターを弾くことでよりオルタナに寄ったような力強いバラードに

やっぱりこれを卒業式に起用する学校が現れないのだろうかと常々思うが、この日は特に予告もなくいきなり岡峰のベースから始まった「美しい名前」で将司は更に声が出始める

「まだ出るの!?」と思ってしまうような絶好調ぶりはここ近年の将司の姿からは想像できなかったが、このツアーはひょっとすると将司に何かをもたらしたのかもしれない

そう思うくらいにKT Zeppとは将司があまりに別人だ

バクホンの魅力は将司のパワフルな歌声

高校の友人は、


「あんな歌い方してたら喉壊してもおかしくない」


と危惧した通り、将司は喉を壊したときもあるけど、今こうして再生している

CDJ19/20であまりに声が出てなかった将司を自分は現場で目撃してしまったから、こうやって将司が蘇っているのは泣きたくなるくらいに嬉しい


マツのキメと栄純のギターが岡峰が手掛けた「夢路」をよりエモーショナルに昇華しつつも、栄純はイヤモニにトラブルが起こったようで、マツが話している最中に対処してもらうなど、どうもこの日はハプニングが多い

不安定な天気の下、野外でライブをしているような感じであるが、マツはバクホンが4人それぞれが楽曲を制作することに言及した


同年代に近いASIAN KUNG-FU GENERATIONもメンバー全員が作曲できるが、バクホンのように全員が曲を作りまくるわけではない

しかも様々な組み合わせで制作するのは今でこそ、緑黄色社会が積極的に行っているがバクホンが出てきた当初は珍しかったのだろう

だからこそこれはバクホンの強みだし、その強みが「アントロギア」を導いたわけだが、


「この場所で鳴らされる音楽をみんなに共有してほしかった…!!」


とマツが熱弁するほど、このアルバムに込めた思いは相当なものなのだろう

実際、このアルバムは間違いなく傑作だし


その上でマツ以外の3人によるトークポイントでは、栄純の感想が素直で分かりやすいことを岡峰が褒めつつ、


岡峰「一時期はPUFFYの曲が頭に流れまくっていて…」

将司「「やわなハートがしびれる〜」の方(「愛のしるし」、Spitzのマサムネが作詞作曲して、Spitzもまれにセルフカバーする)?」

岡峰「違う。「カニ 食べ 行こう〜(「渚にまつわるエトセトラ」)の方」


と最近、朝に曲が流れまくっており、更にはThe虎舞竜の「ロード」の歌詞まで引用し始めるが、岡峰によれば昨年のこの時期がまさにストリングスツアーを行っていたこと(正確にはこのライブの翌日に当たる6/11にやっていた)をやり、さらにその後にマニアックヘブンのツアー、岡峰は言及していなかったものの、ストリングスツアーの前に「カルペ・ディエム」の振替ツアーがあったこともあり、


岡峰「俺たち、割とライブ出来てるじゃん」


と話すのはその通り

まだライブしにくかった時期だったにもかかわらず、バクホンはライブをやりまくっている


マツ「光舟も話していたけど、ライブの景色が反映されている曲もあります。歌に導かれる限り、続けたいと思います。」


と話したあとに連発したのは「空、星、海の夜」、「瑠璃色のキャンバス」と心に響かせるバラード

リリースからもう20年近く経過しているが、こうして将司の生命力が籠もった歌声が戻っている中でこの曲を聞けるのは嬉しいし、将司の胸の内を吐露した「瑠璃色のキャンバス」も今では昔と異なる印象を抱く


それは栄純と岡峰、マツが鳴らすアンサンブルが壮大というのもあるけど、


「このまま生くのさ 強く望むなら 歌が導くだろう」


の通り、歌に導かれるようにエモーショナルに歌う将司の姿がたくましいし、その歌に導かれたからこうしてライブハウスにいる

魂が重ね合わせる僕らの場所に


この組み合わせ、KT Zeppの時より今の方がしっくり聞いている気がするのは、将司の歌声がKT Zeppよりも調子が良いのが影響しているだろう

調子が悪いと響く歌詞も響かなくなる時もあるし


その直後、


「人によっては「危ないよ!!」っていう静止を振り切って来た方もいる。自己判断の時代だね。」


と将司が告げたように、このライブには親しい方々の静止を振り切って会場に足を運んだ方も少なからずいると思う

自分もコロナ禍になった当初、2020年11月のフジファブリックとindigo la Endは勘当覚悟で足を運んでいた

勘当されることはなかったけれども、今でもライブ会場に足を運ぶことを禁止している会社はあると聞くとし、学生さんは特に足を運びにくいだろう


だから将司が話すようにライブ会場に足を運ぶかは自己判断の時代

集客すればするほどリスクも高まるから


それでも足を運んでくれた方に、


「このライブを未来に繋げられるようにしましょう!!」


と将司が呼び掛けて、同期のコーラスとストリングスが際立つ中、岡峰のベースが重く響く「ウロボロス」でコロナ禍に立ち向かうアティチュードを鮮明にしつつ、「コバルトブルー」では将司と栄純が活発に動き、岡峰は冷静だけど終盤ではベースを上に掲げながら弾くパフォーマンスはいつものことだけど、そのようなパフォーマンスを行うのは、


「だけど俺達泣く為だけに 産まれた訳じゃなかったはずさ ただひたすらに生きた証を刻むよ」


のように我々は泣くために生まれた訳ではない

四星球が「クラーク博士と僕」


「知らぬ間に始まった人生が知らぬ間に終わっていく」


と歌っているように、勝手に始まって勝手に人生は終わるだけだが、悲劇を前提に生きるなんて嫌だし、生きるからにはその証を残したい

だからこうしてバクホンは悲観することなくライブに望んで生きる証を残そうとする


「ほら 夜が明ける」


ことを信じているから


真っ赤な照明の元で演奏される「太陽の光」ではマツがシンバルをガンガン叩き、栄純もパワーコードをサビで弾きまくった後、現代の「孤独を繋いで」や「戦う君よ」と言える「希望を鳴らせ」では逆に岡峰のベースが足元を支えるように牽引するが、


「絶望の果て歌が生まれ来る 「前を向け」と音が鳴り響く」


は、「空、星、海の夜」を彷彿とさせるフレーズ

昔と比較したらバクホンは明るくなったけど、音楽性は全く変わってない

KYO-MEIをテーマに常に命と向き合っているから

だから音楽を通じて道を切り開かんとする


「俺はまだ生きてる 終わらない希望を鳴らせ」


と使命を全うするかのように


こうしてエネルギッシュなパフォーマンスを将司達は見せているものの、


「2年前にライブができなくなったとき、「脱け殻状態」になってライブにいかに支えられていたか分かりました。」


と話すように、ライブの予定が吹っ飛んだ2年前、将司は抜け殻になっていたようだ

しかも当時のバクホンは将司がポリープ摘出でバンドの始動が遅れていたこともあり、コロナ禍に突入する直前もほとんどライブを出来なかった

脱力感は他のミュージシャン以上にあっただろう


そこから将司は、


「「アントロギア」は「花を集める」という意味なんだけど、花は摘んだら散ってしまう。」


と「アントロギア」の意味を説明して、花は摘まれたら散ってしまう脆いものであることを触れるが、

 

「けど人間はそうじゃない。誰かの悲しみを力に、誰かの苦しみをエネルギーに出来る。俺たちは誰かを押す音楽をやっていきたいと思います」


と花と人との違いを明確に話して、マツが16分を刻む最後のサビが解放感を伝えながら、


「君に何を伝えよう 生きる喜びそれ以外に 長い夜が明けたその時は きっと会いにゆく」


と生きる喜びが籠もった「JOY」で本編は終了


すぐにアンコールで戻ってくると、マツはやたら「最高」を連発するので語彙力が心配になるが、ここで告知として9月24日に日比谷野外音楽堂、10月1日に大阪城野外音楽堂で野外ワンマンを行うことを発表

野音ワンマンはこれで4回目たが、東京と大阪で開催するのはこれが初

それにしてもバクホンまで野音開催

フラワーカンパニーズの最新インタビュー記事で野音が改修工事の関係で当面使えない(再開は2027年頃?)らしく、駆け込み野音が増えつつあるが、バクホンも駆け込んできた

今年何回野音に自分は足を運ぶのだろうか

米津の東京体育館申込みがこれで初日しか出来なくなったが、頼むから豪雨は回避して欲しい所存(前回の野音は豪雨を立見で見たため、心が電車の中で折れていた)


軽快なメロディーと共に踊ってしまいたくなる「ハッピーエンディングストーリー」で将司もギターを弾いたあとは、サビで照明が乱反射する「光の結晶」

KT Zeppのレポでも書いたと思うが、ここ数年この曲と「空、星、海の夜」はほとんどやってなかった

まだ聞けてない曲はたくさんあるし、久々に聞きたい曲も多い(「カオスダイバー」や「カウントダウン」など)

そうした曲は野音で聞けるかもしれないけど、太陽の真下でこの曲を久々に聞いて見たくもなる

初めてバクホンを見たロッキンで最初に演奏されたのがこれだから


そして最後はアイリッシュなサウンド共に「存在証明を打ち鳴らせ」と力強く鼓舞する「グローリア」

セトリは決して変わってないけど、ツアー中盤でアンサンブルは完全に仕上がった

ファイナルの頃はどうなっているのか気になるし、終盤戦を見れる方が非常に羨ましくなった


将司がライブがなくなった2年前を抜け殻と称していたが、あの頃は本当に辛かった

娯楽をほとんど封じられて、アサイラムがなかったから


自分のような音楽好きはライブを活力にして生きている

「大轟音のトラウマ」を「超爆音」に打ち砕いてもらったから

だからライブが長期間見れないとなると、もうそれは閉ざされた世界と変わりないのである


それ故、こうやって規制がある中でも爆音の鳴る場所があるのはとても幸せだ

ライブで必ず持ち帰るものはあるから


8月にはロッキンに出演するし、9月には野音もある

歌に導かれる限り、僕らの場所でまた会いましょう

終わらない希望を鳴らし続けるために


セトリ

ユートピア

ヒガンバナ

戯言

深海魚

生命線

疾風怒濤

桜色の涙

美しい名前

夢路

空、星、海の夜

瑠璃色のキャンバス

ウロボロス

コバルトブルー

太陽の花

希望を鳴らせ

JOY

(Encore)

ハッピーエンディングストーリー

光の結晶

グローリア


※初日のレポはこちら↓