今でこそ年間50本以上ライブに参加している自分だが、小学校の頃は音楽とほとんど縁のない日々を送っていた
具体的に言えば好きなアーティストが一切居なかったのである
なので小林幸子にZONE、SMAPやV6などアーティストは知っていても、曲は一切知らない
そんな日々を自分は送っていた

ただ小学校、高学年になると状況が大きく変わる
なぜなら昼の放送番組でASIAN KUNG-FU GENERATIONの「リライト」やポルノグラフィテイの「メリッサ」がやたら流れる中、ORANGE RANGEの曲が異常なくらい流れるようになったのだ

その当時はメガヒットを飛ばしまくって、賛否両論になりながらもシーンは彼らを無視できない状態
音楽に詳しくない方だって、彼らの名前を知っていただろうし、シーンはORANGE RANGEの天下状態
「一時のブーム」なんて話す方もいたけど、結果は今なお現役
青春の1ページで終わることなく、今もORANGE RANGEは輝き続けている

そんなORANGE RANGEが、ぴあアリーナでライブを2days敢行
しかもデビュー21周年にちなんで1日21曲、被り無しなので42曲やるという現時点でのORANGE RANGEの総決算的な内容に
これまで何度もフェスで見てきたものの、ワンマンはこれが初

当日は朝こそ雨だったものの、夕方頃には晴天
その関係か湿度が非常に高く、上着を着ていた自分には蒸し暑い中を移動することになってしまったが、ヤバいのは天候だけではなく、会場に入るとぴあアリーナは満員となっているのはアリーナのみ
2階や3階は数えるくらいしかいないという「キャパ設定ミスったよね?」と思えるほどのガラガラっぷり
やっぱりフェスではあれだけ盛況でも、ワンマンに訪れる方は少ないのが現実
ただORANGE RANGEの場合、ライブハウスツアーやホールツアーは取りにくいという話を聞いたことがある
となるとアリーナは挑戦的過ぎたということか

定刻を少し過ぎた辺りでゆっくり暗転
ステージ上空にある球体のようなモニターには過去の作品のジャケットやライブの際の写真が映されるが、ここにいる方には自分のように物心がつく頃には既にORANGE RANGEと出会っていた方も多いだろう(今の10代に置き換えると、KEYTALKやWANIMA辺り)
なので、自分のこれまでの歩みを振り返っているように感じた方もいると思われる

先にサポートドラムのTETSUYUKI(Dr. from ジン)、ライブホリックでは体調不良で出演を見送ったYOH(Ba.)、バンドの中心人物であるNAOTO(Gt.)の3人が登場し、バンド最大の強みであるトリプルボーカルのRYO、HIROKI、YAMATOが登場すると早速「以心電信」からスタート
ライブホリックの際はこれが最後に演奏されて驚いたけど、どの位置で配置されたってこの曲が発信するメッセージは同じ
いつだって我々とORANGE RANGEが繋がっているということ
発声出来なくたって距離は遠くなってないのだ

横浜ベイスターズ時代の石井琢朗が打席に立つ際、この曲のイントロが合図になっていたのは野球ファンに取って懐かしい
NAOTOのギターはライブホリックの時もそうだったけど、非常に大きく、TETSUYUKIは4つ打ちベースのこの曲でフィルインを巧みに刻んでいる
色んな意味で一世を風靡したジンのドラムがまさかORANGE RANGEのドラムを叩ているなんて、最近まで知らなかったけど

琉球の風を本州の横浜に届ける「Ryukyu Wind」でYAMATOのHIROKIの歌声が美しいハーモニーを見せ、NAOTOもスケールの大きいギターを弾いていくが、RYOがこの日に至るまでの道のりを振り返ったあと、HIROKIはこの日来てくれた方に感謝しつつ、

「調子乗って背伸びしてしまった(笑)」

とこの日の集客を自虐するメンタリティの高さは見習いたい所存
そこから切り替えるのも早く、

「今日は久々にコラボを沢山したいと思います。」

とHIROKIが合図して、登場したのは山手学院高等学校の吹奏楽部

HIROKIも触れていたけど、コロナ禍になって学生は次々に年間行事を中止に追い込まれた
コロナ禍になってどの業界もどの年代もダメージを受けているが、大きな被害を被ったのは学生
学生にとって1番の楽しみで修学旅行はほとんど中止になったと話を聞いた(かと言って、安全が保障されない中で修学旅行が開催されるのも…)
全国大会が中止になった部活も多いと聞いたし、目標もなく思い出も作ることなく、学生生活を送るのは非常に辛い

だからこそ、ORANGE RANGEが学生のために一役買ったのだろうが、

「ここで思い出を作ってもらいましょう!!」

と話す以前に、こんな大舞台で演奏していること、ORANGE RANGEと共演していることがもう凄い思い出である

そんな吹奏楽のメンバーとともに「イカSUMMER」で夏を先取りし、場内はよりお祭り騒ぎとなっていくが、ライブホリックで参加できなかったYOHのベースもこの日はもちろんある
あるとないでは、ORANGE RANGEのサウンドは全くの別物
重低音あるYOHのベースの重要性が分かった瞬間である

大勢の人の前で演奏することに緊張したのか、演奏後に部員が1名残ってしまうハプニングが起こったけれども、吹奏楽部と共演した余韻が残る中で今度は横浜市立金沢高等学校より“Zippers”が登場
ステージには、大量の女性ダンサーだらけとなり、舞台は一点華やかとなるが、

「この中で1番派手に踊れたのが…おしゃれ番長!!」

と煽った「おしゃれ番長」はZippersによるエネルギッシュなダンスが目立ちつつも、HIROKIによる

「バナナ!!」

で拳が上がるのが非常にシュール
Mステではカツマタと共演したり、テレビでパフォーマンスする際にはNAOTOがミシンを用いたり、発明家に扮したりと演出もシュールだったけど、ハードロックテイストが強いのに、NAOTOがギターではなく、パーカッションを叩くのが1番の謎
普通は逆なのにそうしないのが、ORANGE RANGEと言うべきか
ちなみにZippersは途中から自分の席の後ろにいた(笑)

序盤のコラボを終えた後には、派手なレーザーが会場を埋め尽くし、会場内をORANGE RANGEの迷宮にする「ラビリンス」と近年の楽曲を演奏
だからといって近年の曲を連発するわけではなく、NAOTOが鳴らすギターリフが10年以上に時を呼び戻すような「ミチシルベ」、ドラマ主題歌としてメッセージ性が強い「瞳の先に」と連発したのはバラード

RYOも触れていたように、ORANGE RANGEは様々な表情を持っている
メンバーは言及してなかったけど、来年でメジャーデビュー20周年
その間にたくさんの楽曲が世に放たれた訳だが、それは様々なジャンルの曲を発表したことでもある

加えてORANGE RANGEが社会現象を起こしていた頃に音楽を聞いていた学生の多くは、楽曲の内部構造がよく分からぬままに曲を聞いていた
自分もその1人だし、ましてやフェスでしか見てないのだから、これまで聞けなかった曲も耳にしているけど、「瞳の先に」もバラードではあるが、スカのようなカッティングをNAOTOが行っており、王道的バラードにしなかったことを今知る
多彩なアプローチをしていたから為せる技だ
だからこそ、賛否両論を招いてしまったとも言えるけど(この頃はオマージュという言葉がほとんどなかったのもある、巷で話題のあのシンガーは完全にパクリだが)

HIROKIがアコギを背負い始めたので次に何をやるか、悟った方は多いだろうけど、RYOによれば2日で被ることなく42曲を演奏するのは初めてとのこと
しかもこの日は、リハーサルに3時間も要したとのこと
コラボなどもあるとはいえ、こんなにリハーサルで時間を取るケースはあまりないだろうし、YAMATOもHIROKIも本番前は相当緊張したようだ

このタイミングで3組目のコラボ相手であるGreat Bear Strings -ORANGE-も合流するが、

「カーニバルといえば、祭りだけどただ盛り上がるだけでなく、去っていた人たちのことを思いながら演奏したいと思います」

とRYOは「SAYONARA」に繋ぐように話す
堀北真希が主演を務めた「鉄板少女アカネ」の主題歌だったので、テレビでもよく演奏はされていたが、突然ハードロック調に変化するHIROKIがメインボーカルを務める2番はテレビではほとんど見かけなかった
こうやって急に転調するのは、彼らのルーツでもある山嵐(Dragon AshやRIZEと共に日本のミクスチャーロックを開拓したバンド、ラップメタルが非常に濃くサビで一気にラウドになる曲が多い)の影響もあるけど、

「ありがとうを君へ ありがとうを君へ 静かにそっと支えてくれたね」

のサビから分かるようにこの曲はいわゆる失恋ソングとはちょっと違う
喪失を超えて先に進むのがこの曲のテーマ
これは今思えばあのエンディングへの伏線だった
長年、ORANGE RANGEを支えてくれたあのドラマーへの

壮大な映像がモニターに流れて、イントロから高揚せざるを得ない「※〜アスタリスク〜(今思うとDragon Ashの影響をかなり感じる)」でYOHのベースが重低音を鳴らす中、

「光り続けよう あの星のように」

の名フレーズが響き渡ると長い暗転から雰囲気を大きく変えるのは、「リアル•バーチャル•混沌」
CDJで演奏された際には場内が混沌していたが、この日は派手なレーザーも放出するのでEDMに近いこの曲の不穏さは更に増加
まさかここで聞けるなんて思いしなかったけど

途中で、HIROKIがステージを去るとサポートドラマーであるTETSUYUKIがドラムソロを演奏
NAOTOやYOHではなく、TETSUYUKIのソロがフューチャーされるのは、「バンドを支えてくれてありがとう」というメンバーからの感謝が込められていた
自分はそう予想しているが、HIROKIがステージ後方に戻ってきて、よりダークな「ウトゥルサヌ」が演奏されたところで、ライブホリックで演奏後、場内を大混乱に陥らせた「HEALTH」はここで演奏

予想はしていたが、HIROKI達の動きに合わせて会場中がエクササイズするのはなかなか凄い光景
途中、恥ずかしがっている方もいるのかRYOは煽っていたけど、夏フェスで同じ日に打首獄門同好会の「筋肉マイフレンド」が演奏されたら、疲労困憊待ったなし(笑)
ワンマンでこんな景色が生まれてしまうことが異例だけど(笑)

「HEALTH」で踊ってくれない方がいて不安になったことを話しつつ、RYOが「リアル〜」から始まる3曲の反応を喜んだが、

「ORANGE RANGEは部活みたいな感じで始まったバンドで公園で練習をしてたりしたんですが、まさか21年も続くなんて思いもしませんでした」

と部活のように始まったこのバンドが21年も続くことを想定しなかったことをRYOの口からも直接伝えられるが、

「沖縄が明日で返還されてから50年。50年前はこんな光景信じられなかったんですよ。この景色が見えるのは、先代の方のおかげです。」

とこの翌日である5/15に沖縄が返還されてから50年になることを告げた

このライブが沖縄返還の日に合わせて行われたかは分からない
でもORANGE RANGEは今でも沖縄を拠点に活動している
昔、紅白歌合戦に沖縄から中継で出演したこともあった
ORANGE RANGEと沖縄は決して離すことが出来ない
だからこの事実にも触れるのだ

「そんなORANGE RANGEがNHK沖縄からテーマソングを依頼されまして、最初は恐れ多い気持ちにになりましたよ。もしかしたら「こんな馬鹿みたいなことやっているバンド(そんなことは100%ない)がやっているのか!」とか「こんな素晴らしいバンドがやっているのか!!」と思ってくれているかもしれない。先代の方が笑いながら見てくれていることを願います」

とRYOが話した後は、「OKNW. ep」から「Melody」と「フイリソシンカ」を演奏

YAMATOは三線を奏でて沖縄の景色を想像させるように「Melody」の世界観に浸らせるが、この日最も沖縄っぽく感じたのは、ゲストである琉球舞団 昇龍祭太鼓と共に「フイリソシンカ」を行った時
民謡音楽といえばソウル・フラワー・ユニオンの真骨頂だけど、本番の人々による踊りには流石に勝てない(エイサーだとは思うけど自信はない)
こうした踊りがここで出来るのも平和であるのが1番の要因
いつかは現地で見たい所存だ

「感慨深い」という言葉を使ったYAMATOをHIROKIが弄りまくると、発声できないことを逆手に取って無音はしゃぎを何度もやらせるHIROKI
その様子はやっぱりシュールだけど、HIROKIはツボに入ったのか何度もやらせる(笑)
フェスでやったら非常にユニークな光景が生まれる予感がしたのは自分だけだろうか?

「カーニバルなんだし激しい曲で踊りませんか?」

とHIROKIが煽ったのを皮切りに、

「強気で行こう 僕らの時代 攻守交代 リハなんて終わり そろそろ本番行っちゃうぜ」

と宣言する「チラチラリズム」からはアンサンブルがより爆音へ

ハードロックと和のテイストを混ぜた「祭男爵(ダブルミリオンを達成した「musiQ」の収録曲」)では、このライブのために制作された法被(HIROKI曰く「これでみなとみらいには行けない(笑))を身に着けたHIROKI達がステージをかけ回れば、長らくやっていなかったらしい「Special Summer Sale❨一時はフェスでも定番だった)」では「バナナピア!」に合わせて場内飛びまくり
アッパーな曲をここまで抑えていたので、アクセルを踏むように盛り上がっていく

場内を最も盛り上げたのはPVが3パターン作られた「お願い!セニョリータ」
途中でYAMATOは歌詞に「横浜」も加えていたけど、

「蜃気楼なのか? セニョリータ」

には何故かグッと来る、理由は分からないが
ただこの曲を夏の野外で爆音で聞きたい理由は説明不要だろう
ORANGE RANGEは夏バンド
夏の野外がよく似合うから

そして「Enjoy!」ではタオルを回すだけではなく、身体ごと回転させてしまうやりたい放題っぷり
この熱狂はまさしくカーニバルであるが、21曲と演奏する曲が決まっているので早くも残り2曲
終わりが近づいているということだが、

「声出せない状況が辛い人もいる。その人に向けても届けたいと思います」

と最後にRYOは告げた
このライブをRYOは、

「前に進むためのライブ」

と話していた

それはこのライブは記念碑的なものではなく、次へ繋ぐためのものということ
日常に戻るためのものとも取れれば、更に多くこ人に届けるとも取れる
ORANGE RANGEからすればこれは通過点なのだろう

HIROKIが三線を奏で、

「一歩 一歩 ただ前へ 一歩 一歩 歩幅合わせ」

が力強い「キズナ(琉球舞団 昇龍祭太鼓に出てきてほしかったけど…)」がますます終演を近づけるかのように、我々の背中を鼓舞していくと、最後に演奏されたのはGreat Bear Strings -ORANGE-と共に演奏された「yumekaze」
この終わり方は大団円ではなく、

「新しい世界が待っている」 

のようにTo be continued
まだ続くということだ

これでちょうど21曲
アンコールの有無は不明だったものの、客電が灯らないことや手拍子が続いてたのもあって、客席に残り続けるとメンバーが再登場

特に挨拶もなく演奏を始めたのは、本編以上の音圧の中で、

「Welcome to the new world!!」

が襲来する「Between」

「yumekaze」が呼び寄せたのか
この状況を皮肉ったのか
少なくとも分かったのは、アンコールがあるということだ
この2曲が不変かどうかは定かではないが、ホームスチールを仕掛けられたかのような奇襲攻撃である

そして最後は、

「一度耳にしたら離れない!!」

のように、初めて聞いたときから今でも離れることはない「キリキリマイ」でYAMATOが絶叫して終了

一切喋らなかったけど、翌日演奏されるであろう「ロコモーション」のように、なんかいい感じにはなっていた

YOHとNAOTOが残したノイズが場内から消えると、会場にはこの日を迎えるまでのドキュメントが流れる
この日のセットリストをアンコールも含めて公開したのは、アンコールすら変える可能性があるってことだろう

けれども着目すべきは最後に映されたORANGE RANGEの元サポートドラマー、桜井正宏のネームタグだった
ORANGE RANGEのサポートと言えば、彼のイメージが強いだろうけど、彼は今年の3月に亡くなった
「SAYONARA」は桜井に向けた曲だったのだろう
長年、ORANGE RANGEを支えてくれた人物だったから
これを最後に映したのは桜井への敬意だと思われる

ORANGE RANGEは止まらずに歩んできたバンド
だからひたすら前を向く
メンバーがコロナに感染してしまっても、今年はライブを強行していたことから分かるように

帰り際に新しいツアーを発表したのがその証
どんな試練が待ち受けようが、突き進む
それがORANGE RANGEなのだろう
だから僕は行くよ

セトリ
以心電信
Rrukyu wind
HIROKI
イカSUMMER w/ 山手学院高等学校 吹奏楽部
おしゃれ番長 w/ 横浜市立金沢高等学校 “Zippers”
ラビリンス
ミチシルベ
瞳の先に
SAYONARA w/ Great Bear Strings -ORANGE-
※〜アスタリスク〜
リアル•バーチャル•混沌
ウトゥルサヌ
HEALTH
Melody
フイリソシンカ w/ 琉球舞団 昇龍祭太鼓
チラチラリズム
祭男爵
スペシャルサーマーセール
お願い!セニョリータ
Enjoy
キズナ
yumekaze w/ Great Bear Strings -ORANGE-
(Encore)
BETWEEN
キリキリマイ