タイトル∶「海底より愛をこめて
アーティスト∶cinema staff
海底より愛をこめて※初回限定盤(CD+DVD)

 

途中、ベストアルバムのリリースはあったものの何気にフルアルバムのリリースは「熱源」以来となるcinema staff
その間にレコード会社がWikipediaを見るとインディーズになり、この作品はTHIS TIME INCからリリース

…なんですが、どうやら販売元はこれまで通りポニーキャニオン
つまり事務所はポニーキャニオン(しっかりポニーキャニオンにcinema staffの名前はありました)で、レコード会社が独立したようです
誰か詳しく解説してくれ

この作品には進撃の巨人主題歌だった「Name
of Love」やベストアルバムに収録された「新世界」や「斜陽」は未収録
「3.28」以降の楽曲がメインとなってます
要は2020年から2021年に至るまでのcinema staffのドキュメントみたいなものです

というのはオープニングの「海底」
インタビューで三島は「歌詞をそのまま音にした」と話しているのですが、

「最低を繰り返して それでも尚 生きたいんだ」

のフレーズはコロナ禍初期、ライブハウスが風評被害に合っていた頃を思い出すのです

不要不急の場所と迫害されていた頃
ライブをしなければ生きてはいけない
そうした頃を想起させるこの曲が最後にできたようですが、この現実提起がバンド、いやシーンの現状なんでしょう
ネガティブに見る人がいようが、もがき続きたいと

リード曲候補でありバッキバキなベースが制圧するオルタナ全開な「I melted into the Void」、先行シングルにして美メロとエモの共存という素晴らしき名曲「白夜」とジャンルレスに歩み続け、

「罪のない身体のまま 旅に出ようぜ」

とコロナ禍を意識してしまいがちながら、ギターやドラムに注目したい「若者たち」、オセロを比喩に用いた「リバーシ」とバリエーション豊かながらも掴みにくい曲があまりないのが、シネマの良さ
時にポストハードコアのような曲もありましたが、聞きにくい曲はシネマにはありません
それは今も昔も変わりません

ただ中盤の歌詞は暗い
先行シングルでダンサブルな「TOKYO DISCORDER」の

「ありふれたハッピーエンド たどり着けそうにない」

や、ハードコア風味な「動脈」では、

「最低な未来予想図」

と吐ききってしまっている

「動脈」はコロナ禍を意識したという言葉はありませんが、この時期はネガティブにどうしてもなってしまいがち
書いたベクトルは違くとも、やはりコロナ禍をイメージさせてしまうのです
その最上級が「極夜」
コロナ禍が導いてしまった曲と言うべきでしょうか

こう見ると中盤は「雨の日のヒストリア」を除くと暗いテーマだらけ
LINE CUBE SHIBUYAで先行披露された「storyflow」もポジティブなフレーズはあれど、実はかなり重い曲(全曲解説を見ていただければ分かります)
それをストリングスで和らげられていると評してもおかしくないかもしれない

そんな中で光を灯すのが、「3.28」
昭和女子大学人見記念講堂ワンマンが延期となり、急遽レコーディングされたのは記憶に新しいですが、

「夜を抜けたら 僕らの勝ちだ」

とちょっとでも兆しを見せて、最後の「はじまりの場所」で

「これ以上求めなくていい ここからはじめよう」
「夜明けは待たなくてもいい 世界をはじめよう」

とカントリー風の曲調で歌われるのは救いです

現在シネマはツアーの真っ最中
ただ、野音の頃と比較するとやっぱり勢いは落ち着いてしまってる感じ
それでもシネマは最新作が最高傑作
その考えで活動を続けています

アルバムを聞いた時点では正直イマイチ
ただ、ツアーで聞いたら大きく評価が変わるかもしれません

以前と比較すると取り上げる媒体は減りました
昔は常連だったロッキンにも出演していません

でも1度はこの作品に目を通して欲しい
僕はそう思いました