今年1月に行われたNHKホールワンマンがとてつもないものだった髭男
そのNHKホール公演で発表されたのがこの日のNHKホール公演であるが、この武道館に至る半年の間にシングル「Pretender」が大ヒット
ロッキンも昨年のHILLSIDE STAGEからPARK STAGEに格上げと勢いが増しに増してるなかでいよいよ初の武道館である

諸事情により開演ギリギリに到着、しかし2階男子トイレが1箇所しかない仕様(女子トイレが増設されていたがそれも混雑していたらしい)にイライラを隠せないなか、客席に入るとまさかの360°方式
黒幕はどこにもなく、髭男の勢いがいかに凄まじいかを物語っている

トイレ問題が長引いたのか定刻よりやや遅れた19:10頃に暗転
SEが流れ出すなかでまずメンバーの藤原(Vo. & Key.)、小笹(Gt.)、楢崎(Ba.,Sax.)、松浦(Dr.)の4人が登場すると、続けてサポートのレフティ(Ba.,Key.)、ヌマショー(Per.)、そして物語フェスにも参加していたFIRE HORNSの2人(あつきととっち)にAndyからなるホーン隊も参加する大所帯編成

メンバーがそれぞれスタンバイを終えると、藤原はオルガンの目の前に座り、虹色の照明に照らされるなかで「115万キロのフィルム」を歌い始めるが、NHKホールの際は退いていたホーン隊も今回は加わっている

そもそもあのツアーは今の9人編成の初陣
レフティは昨年のフェスから居たが、ヌマショーやホーン隊は後半から加わったので連携はまだ万全ではなかった
それが半年の時を経て、ようやく万全に
ホーンが既存曲に新たな息吹きを吹き込むのは新鮮で気持ちいい

間髪挟まず、

「Official髭男dism、日本武道館へようこそ~!!」

と藤原が叫ぶと、早くも「異端なスター」で踊らせるが、髭男の存在は過去においても今においても異端である(特に10年代前半は四つ打ち全盛期だし、後半はエモバンドが強かった印象がある)
でもそんなバンドが360°、観客に囲まれている武道館で演奏している
この瞬間を見出しとして切り抜いても感動できる一面だ
ジャクソン5のようにメンバーが揺れまくっているのも微笑ましい

髭男の代名詞こと「Tell Me Baby」を序盤からやるのはお馴染みではあるが、この日の公演は初参加者が半分を占めている(アンケートを取ったらそんな感じだった)
だからこの選曲には驚いた方も多いかもしれない
アウトロでヒップホップ調のアレンジが加わっていたのを見た限り、藤原はChance The Rapperにまだはまってそうだけど(笑)

軽く藤原が挨拶を行うと、ステージに可愛らしい犬と猫が描かれるなかで「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」の強烈なポップ爆弾を合唱とともに響かせ、あのイントロから

「走れ走れ 花びらを追い抜いて」

がタオル回しと共に武道館を駆け巡る「始まりの朝」というまさかの選曲
ほぼ年中、ツアーをやっているバンドとはいえ「エスカパレード」が中心になると思っていたのでこれは嬉しい誤算(逆に「エスカパレード」の曲はほとんどやってない)

ヌマショーが楽器を鳴らしはじめ、それに松浦が続いたので「バッドフォーミー」をやるのかと思いきや、早くも楢崎がホーンをスタンバイ

「武道館!」を皮切りに「なう!」、「武道館なう!」とコールアンドレスポンスが段々こけてくるが、「ブラザーズ」を始めると、楢崎がメンバーをどんどん誘導し、人間機関車のようにステージを1周する様子は楽しそう
その一方で松浦はただ1人、中央で演奏せざるをえないのだが、ドラムソロになればクールな姿からエモーショナルなプレイ
見せ場はしっかり持っていく

ホーン隊がステージを去る(といってもすぐ戻ってくるのだが)と、藤原が武道館に立てた喜びを語るのだが、小笹は

「自分の部屋に「DEAD AT BUDOKAN」っていう(Hi-STANDARDの)横山さんのDVDを飾っているんだけど、ギター好きだった少年が武道館のステージに立って演奏出来て嬉しいです!!」

と興奮そのままに武道館を立った感想を
髭男はブラックミュージックがベースのバンドではあるが、彼のルーツはパンクロックである
かつてKen Yokoyamaが3度足を踏み入れた場所でライブが出来るなんて夢のようだろう

また髭男の初ライブは7年前の七夕であることも明かされるが、

「この曲がここで出来る日が来るとは…」

と感慨深そうに話しつつ(楢崎に「全部そうだろ」と突っ込まれたけど(笑))、演奏されたのは「コーヒーとシロップ」

髭男はロッキンに2017年から出演しているが、当時、まだほとんど名前は知れ渡ってない(本格的に名前が知られ始めるのはやはり「関ジャム 完全燃SHOW」で取り上げられてから)
この曲に至っては2016年
その頃の曲がアリーナで鳴り響いている
当時からのファンからしたらグッと来るものがある
種が満開の花となって咲き誇るかのような

ホーン隊がステージに戻ってくると、女性に振り回される男性の悲哀を「バッドフォーミー」の軽快なビートに載せて歌うが、ここで強調したいのは髭男のポップは誰も傷つけていないこと
髭男は現代シーンにおける「発明家」として今までにない音楽を作っているが、誰かの心に傷を与えるような曲は作っていない

それは藤原が、

「アリアナ・グランデって元カレのこと歌うじゃないですか。そういうのを僕はポップとは思わないです。」

と話すように人を馬鹿にする曲をポップだと思っていないから
どんな曲であっても人を傷つけることだけは絶対にしない
それが髭男なりのポップの流儀

武道館の天井に届く程の照明を、終盤には客席全体に注ぐように光を集めた「LADY」で美しい世界を体感させると、あつきがステージ中央に呼ばれ藤原とバトルを繰り広げそこから「55」へ
レコーディングでSaxを務めた楢崎がベースを持ち変えなかったのは意外だが、ステージには「55」が映し出され、ダークながらも静かに盛り上がっていく

藤原は楢崎に武道館の構造を武道館恒例の「アリーナ!!1階!!2階!!」をやりつつ教え込ませるが、それに対して

「昔エリック・クラプトンのライブを武道館で見たとき、1階席と2階席を間違えた(笑)」

と話したのは小笹

武道館ではそのような間違えを防ぐために1階と2階の入口は別れているのだが、当日は係員の指示が悪かったのだろうか

髭男のライブに初めて来た方、2回目以上の方、学校帰りの方、仕事帰りの方、休みを取った方とそれぞれアンケートを実施すると、楢崎をはじめ、メンバーが花道まで登場する「Rolling」から再開
 
昨年のツアーから演奏されているも未だ音源になっていない新曲「明け方のGet Away」はブラックミュージックをベースにしつつも一体感が強い曲
藤原だけでなく楢崎、松浦もボーカルを行ったのは驚いたが、音源ではどうなるのだろうか(BIGMAMAの「Sweet Dreams」やフジファブリックの「電光石火」は音源では修正されていた記憶がある)

NHKホールと同じく勇ましいイントロから始まり間奏では突如ハードロックのようなアレンジ(ステージには小笹の指使いも映し出される)となった「FIRE GROUND」ではやはり火柱が上がるが、

「背負い込んだ感情は HI-HEAT UP HI-HEAT UP 掴み取るのだ理想像を」

がそれを更に熱くさせるので武道館は熱気ブンブン
この曲で合唱が起こるとは思いもしなかったが

そして満を持して演奏された「Pretender」
イントロから歓声も凄かったが、UKロックを意識させながらもJ-POPらしさも残したロックオペラは現時点で今年最大の衝撃

「君の運命の人は僕じゃない」

もインパクトあるフレーズだが、それをコーラスなしで歌えてしまう藤原の声量は恐ろしいなんてレベルじゃない
ボーカル専任ではなく演奏しながらだから尚更だ

そのまま

「Let me show 神様も ハマるほどの 大嘘を」

とこの世の不条理を歌った「ノーダウト」をドラマ主題歌繋がりか、立て続けに演奏して合唱を起こすと、早くも最後の1曲
それは今月の末にリリースされる「宿命」
夢に向かって戦う甲子園球児に向けた応援歌は逞しく勇ましい
楢崎が鍵盤を演奏する新たな1面に驚かさされたがそれは髭男がまた新しい何かを「発明」しようとしている予兆である
そんな新しい予兆に期待させながらライブは終演した

アンコールでメンバーが着替えて再登場すると、NHKホール同様、垂れ幕を使って告知を試みるがまさかの出てこない事態(笑)
そのため、垂れ幕が一度ステージまで下りてスタッフが再調整する事態となってしまうのだが、

「別の話をしない…?」

と提案する楢崎(後に「コンフィデンスマン」とも言ったが松浦に突っ込まれる)をスルーして、藤原は海外から来た方がいるか訪ねると、「カナダ」「スイス」の名前が

「髭男、カナダまでライブに行けるかな…?」

と藤原は呟いていたが、海外でライブが出来たら凄すぎる

垂れ幕の準備が整うと、今度こそ発表が行われその発表とは10月にアルバムをリリースすること
更に大規模なホールツアーを行うことであった
しかもこのアルバム、髭男にとってメジャー初のアルバムである(「エスカパレード」はインディーズレーベルからのリリース)
これだけ強力な楽曲が備わっているとなると、1日でも早く聞きたい
昨年の「エスカパレード」は傑作だっただけに
なお前回、処理に苦慮した垂れ幕だが今回は藤原が「ダウン!!」と言うと落下(笑)
扱いが雑すぎる気がするけど…

サポートメンバーを呼び戻しつつメンバー紹介を行うと、「Pretender」のカップリングとして収録されたロックナンバー「Amazing」を披露するが、後半藤原がステージ前方に行くとなんとバンドのロゴからドラムセットが出現

「武道館のために練習したの?」

と思う方もいらっしゃるかもしれないが、元々藤原はドラム経験者
なので叩きながらも自然にボーカルを出来ていたが、松浦のドラムセットがいかに独特かもわかる(普通ならライドシンバルを設置する部分にチャイナシンバルをセッティングしているため)

そして、

「7年前の七夕に初めてライブをやって今日に至るまで色々あったけど、バンドが楽しいから続けることが出来たし、メジャーデビューも出来ました。その7年間の間に色んな人が髭男と出会ってくれて、今日友人や家族に連れられて髭男を初めて見たという方もいると思います。その人達は今日からです。これからもずっとそばで支えたいと思ってますのでこれからもよろしくお願いします!!」

と藤原が話し、最後は「Stand By You」
この曲といえば途中で倍速になる手拍子が特徴だが、その手拍子を誰もがこなし、合唱が武道館に広がる風景は髭男がまだまだ広いステージへ行けることを予感させる
そんな明るい未来を示して、ライブは終了

1月のNHKホールがたたでさえ凄かったのでそれを超えられるか、気になっていたが越えるどころか数段上に行ってしまった
最新シングル「Pretender」と「Amazing」がずば抜けているのもそうだが既存曲も、サポートメンバーの協力のもと、更なる進化
髭男の楽曲は常に変化を止めず、新しいポップの基準となるのだ

正直、今ライブが一番楽しみなのは髭男である
MCもほどほどにここまで質の高いエンターテイメントを見せられるのは髭男くらいだろう

「15年、いや20年この規模で見れますからね」

と藤原は話していた通り、長く活動を続け、ロマンスの定めに従ってまた出会わせて欲しい

セトリ
115万キロのフィルム
異端なスター
Tell Me Baby
犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!
始まりの朝
ブラザーズ
コーヒーとシロップ
バッドフォーミー
Lady
55
Rolling
明け方のGet Away
FIRE GROUND
Pretender
ノーダウト
宿命
(Encore)
Amazing
Stand By You

Next Live is ... JAPAN'S NEXT @ TSUTAYA O-EAST他(2019.7.13.)※分割掲載予定