KANA-BOONが「ないものねだり」でシーンに頭角を現してから早5年
同年、「盛者必衰の理、お断り」であっという間にメジャー(前年、KANA-BOONが所属しているキューンミュージックの20周年記念オーディションに優勝していたのもあるが)に進出したのだが、そこから5年も経過するとは…(当時自分は大学生で、KANA-BOONのかの字も知らなかった)

そんなデビュー5周年を記念して、古巣三国ヶ丘FUZZに凱旋したり、メジャー移動後初の対バンツアー、更には怒濤のリリースラッシュとかつてないほど活発に行動
この日のライブは今年10月からは初の47都道府県ツアーの一環であり、中盤に当たる(神奈川は初ワンマン)

既に行われた10月のZepp2daysは動員が悲惨だったと聞いていたため、若干この日も不安がよぎるが神奈川は完売しているため、心配ご無用
ただ、会場は整理番号が遅くなれば遅くなるほどステージはまず見えないBayhallなので、CLUB CITTAに出来なかったのかとも思ってしまう

定刻を少し過ぎた頃、ディープ・パープルの名曲が再生中に止まると、SEが流れてゆっくり暗転
デビュー以来、容姿もファッションもほとんど変化していないメンバーが古賀(Gt.)、小泉(Dr.)、飯田(Ba.)、鮪(Vo. & Gt.)の順で現れると、懐かしの「1.2. step to you」からスタート

序盤は「タイムアウト」、「ディストラクションビートミュージック」これまでのアルバムのオープニングを連打(「オープンワールド」を除く)
フェスでは特効隊長を任された曲達が一同に介するのは周年ツアーならでは
しかし、この3曲の流れはKANA-BOONが成長記録でもある
「僕がCDを出したら」から半年でリリースされた「DOPPEL」、粗削りでありながらも未だ名盤と名高い「TIME」、「Origin」を経てラウドなサウンドになりつつも原点に回帰した「NAMiDA」までの流れをダイジェストで見ているようで早くも熱い
古賀は早くもソロを弾きまくっては、前にガンガン出ている

今日が初の神奈川ワンマンであること、更に映像収録も入っていることから、

「女子は可愛らしく!!男子はかっこよく!!そして普段の3倍以上楽しんでください!!」

と鮪が煽り、そうならざるを得ないよう「ウォーリーヒーロー(かつては定番であったが、今やフェスで演奏される機会は減りつつある」、古賀のドライブ感あるギターリフが目立つ「クラクション」とアッパーな曲を続ける
鮪の声は序盤から快調だ

一辺倒にならないよう、飯田が初めてフィンガー奏法を取り入れた「Taking」てはファンクの流れを含みつつ、踊らせるが間奏のギターソロの前にはメンバー各々のセッション
以前のKANA-BOONは衝動のごとくライブを行い、ユニークなMCで笑わせるスタンスだった
なのでスキルは成熟してなく当時からギターヒーローと呼ばれていた古賀に頼らざるを得ない状態
鮪が素晴らしきメロディーセンスを発揮しても、リズム隊が今より弱かったため、どうしても曲のパターンが片寄っていた
それが今ではこうやって、各々見せ場を見せることが出来る
周年ツアーの醍醐味と言えよう

初期も今もKANA-BOONを大黒柱として支えている「MUSiC」を行うと、

「昨年の夏休みに同居している36のおっさん…おっさんずラブちゃうぞ(笑)。と伊豆に三泊四日で旅行してきたんですよ。それでも休みが残ったので、1人で箱根に行って来ました。温泉つきの宿泊部屋を借りたり、豪華な料理、鮑の回転焼きを食べたりして、ふかふかのベッドに1人で寝ていたんですが、深夜3時に急に目が覚めて、なんか腹が痛くなってきたのですが、鮑が当たってしまいました(笑)それで神奈川に来るのが怖かった(笑)」

と神奈川にまつわるエピソードで笑わせる
なお飯田によれば、過去にも貝系の食べ物で当たったことがあるらしく、ハマグリをストローで吸っていたところ当たったとのこと

その上で今回のツアーは久々な曲をやりつつも、新しい一面も見せていると話し、演奏したのは「アスター」
これまでのKANA-BOONになかった曲と話している通り、この曲で用いられているのはR&B
ファンクはあったものの、よりグルーヴで踊らせようとしているのは新たな側面である
その上でKANA-BOONの武器である美メロが融合
KANA-BOONは今なお、進化を続けている

ここまではアップチューンが多かったため赤く照らされるシーンが多かったが、「結晶星」からは一転聞かせるモード
中でも鮪の過去の失恋がPVの元になったとされる「涙」では、こちらの琴線に触れかけるほどの泣きメロの洪水

「いつか君も忘れるのかな」

なんてフレーズが曲中に出てくるが、こんな宝石色のメロディーを聞かされたら、忘れられるわけがない

更に冬ということでこの時期にピッタリな「スノーグローブ」も

「一足早い雪の曲を」

と鮪が告げて始めたが、もうこの時期になったのかと思わざるをいられない(ちなみにこの曲を初披露したのは4年前のCDJ。そこから既に4年経過したことになる)

鮪曰く「ほとんど受けない」と称する古賀のMCコーナーでは神奈川にまつわるクイズ(崎陽軒に実在するものは①焼売パフェ、②焼売ケーキ、③焼売プリンのうちどれか)を出題
そのクイズの正解は②であったが、古賀は危うく正解者に焼売ケーキを奢らされかけた(笑)

獰猛なロックを鳴らす「Fighter」からは後半
音を切らさずに突入した「ワールド」では鮪がイントロで大ジャンプを見せれば、「盛者必衰の理、お断り」では早口言葉のパートでワイパー
最高時速まで到達させる「フルドライブ」ではまさかのダイバーが発生する事態に(ただ、KANA-BOONのライブではダイブが禁止されているので好ましい行為ではない)
急発進したジェットコースターの如く、しっかり捕まらなければ振り落とされてしまうほどの加速ぶりだ

「今回のツアーでは久々にやる曲も多いんだけど、それをやると当時の記憶を思い出したりもします。皆が思い入れある曲があるように、僕たちにもそういう曲があって、まあほとんど失恋ソングなんだけど(笑)そのなかでも特に思い入れがある6年前に発表した曲をやります。」

と今回のツアーで久々にやる曲が多いことに触れつつ、そのなかでもかなり久々に演奏されたのが「羽虫と自販機(自分自身も存在していたことをすっかり忘れていた)」

このアルバムが出た頃、自分はそこまでKANA-BOONに興味を示してなく、さらりと聞き流した程度だった
しかし、今こうして聞いてみるとオブラートに隠すこともないストレートな失恋ソング出会ったことに気付く
2013から2014年にかけて、KANA-BOONは大きく躍進していたが、しっかり歌詞を受け止めていたか?という問いに答えられる方は多くはない(その頃、シーンは今以上に四つ打ちが重視され、歌詞はそこまで着眼されていなかった)
今こそ、彼らの作品を再評価するタイミングなのではないだろうか

失恋ソングでありつつ、メロディーが少しずつ変わっていくギミックが盛り込まれた「彷徨う日々とファンファーレ」を経て、

「大事にしたいもの 持って大人になるんだ」

と歌う「シルエット」で自身もそうやって大人になったんだなということを実感(リリースされたのが大学3年の頃なので、その頃はまだ子供)させられると、次の曲が最後であることを伝え、「終わらないで」と駄々をこねる曲に反応しつつ、

「これまで全国ツアーとかいいながら、回ってない地方もあって、僕らもその1つだったんですがこうして今回、今まで回っていない地方も回る47都道府県ツアーが出来て本当に良かったです。客席を見ていると、今日はどういう状況なのか。楽しんでいるのか、泣いているのかわかります。手紙もらったり、ツイッターに返信来たりするけど、僕たちは直接会える訳じゃない。こいつ(古賀)とは、駅前でしょっちゅう会うけど(笑)。だからツアーが大切になりつつあります。」

とツアーに対する鮪の考えを表明し、

「学校で髪の毛フサフサした数学教師がウザく感じたり、会社の上司がガミガミ言ってきたりして、嫌になったりすることありますよね?そんな時こそ、僕たちの音楽を聞いてください。聞いている間、嫌なことを忘れさせてみせます。既になっている方もいるかもしれない。それでも僕たちはあなたに寄り添えるような音楽でいたいと思います。あと僕たちは曲を作るとき、シャンパンを使って派手にやるのではなくせんべいをかじりながら制作しているのですが、その時に皆さんの顔を思い出しています。なので今日のライブも忘れません。ありがとうございました!!KANA-BOONでした!!」

と常に寄り添えるような音楽を作ることを約束し、最後の「夜の窓辺から」では、

「皆さんの願いが集うことでこの曲は完成します」

と鮪が促し、合唱を起こすことでバンドと観客の願いがこもった曲へ

そもそもこの曲の歌詞は集中豪雨の被害を受けて、歌詞が今の形に変更された
でもこれだけではバンドの願いだけである
だからこうして合唱を促すのは素晴らしいこと
それによってこの曲のエネルギーは大きくなる

「それでも闇に飲み込まれるなら 光になろう」

と誓った通り、悲しみや闇に希望を注ぐ光へとツアーを通して成長するはずだ

少し間を開けて、アンコールで登場すると新作「ネリネ」が来週リリースされること
「アスター」同様、「ネリネ」も花言葉を掛けており、箱入り娘という意味があること
加えて5曲が120曲分に相当するほどクオリティーが高いことが鮪から説明される

その上で新曲の「ネリネ」を発売に先駆けて披露するが、これがユニーク
今日ではsumikaが取り入れたミュージカル音楽をKANA-BOONなりの方程式で導入しているのだ
古賀がコーラスを行うのも斬新ではあるが、これは「アスター」以上に受け入れられるのではないかと自分は信じている
早くも来年度の推薦曲では上位に入賞するのではないかと感じるほど

鮪が必要以上に客席を煽り、メンバーまでも巻き込んだ「ないものねだり」でお客さんの腹も心を満たすと、最後は今のKANA-BOONにとってラストはこれしかない「バトンロード」
神奈川での再会を約束して、バトンを観客に渡していった

KANA-BOONには鮪が触れた通り失恋ソングが多く、

「忘れてしまうんだ(1.2. step to you)」
「いつか忘れてしまう(MUSiC)」
「いつか君も忘れるのかな(涙)」

のように歌詞には「忘れる」、「忘れてしまう」というフレーズが多い 
でもKANA-BOONのことを忘れることは絶対にない 
KANA-BOONがいなければヤバいTシャツ屋さん、WANIMA、04 Limited Sazabysといった後発バンドがここまで取り上げられることがなかったし、なによりアイドル側に傾いていたシーンを引き戻してくれた
鮪が終盤「今日のライブのことを覚えていてくれたら」と話したが、絶対に忘れるわけがない 
彼らは「偽物」ではなく、「本物」だ

そして去年のツアー後のレポートでも書いたが、僕は今のKANA-BOONが好きだ 
「Origin」以降の路線変更は賛否両論だが、保守路線に走るよりはメロディアスかつ新しい方向性を示してくれる今の方がワクワクしてしまう 
「Origin」以降、Foo Fightersを意識するようになりサウンドはラウド化
「NAMiDA」では失恋ソングとメロディーアスに回帰
そして「アスター」ではコンセプトを打ち出しつつも、R&Bを導入するなどKANA-BOONは進化を繰り返している
新曲の「ネリネ」もそうだった
まだまだKANA-BOONは新しい表情を見せてくれる
そんなKANA-BOONを忘れることなんて出来ないよ

セトリ
1.2. step to you
タイムアウト
ディストラクションビートミュージック
ウォーリーヒーロー
クラクション
Taking
MUSiC
アスター
結晶星
スノーグローブ
Fighter
ワールド
盛者必衰の理、お断り
フルドライブ
羽虫と自販機
彷徨う日々とファンファーレ
シルエット
夜の窓辺から
(Encore)
ネリネ※新曲
ないものねだり
バトンロード

Next Live is ... UVERworld @横浜アリーナ(2018.12.20.)