昨年リリースされた大名盤「THE KIDS」の初動は約7.5万枚
この時点から「アリーナでやるべき」という声は出ていた

しかし慎重に歩みを進めたかったのだろうか、以降も野音、ZEPPツアー、東名阪ホール公演とビッグセールスを記録しているにも関わらず、キャパは慎重に拡大
そしてミニアルバム「THE ASHTRAY」をリリースするタイミングでようやく横アリ2daysを発表
神奈川出身のバンドだけに遂にこの瞬間が訪れた

グッズ、入場待機列がいずれも長蛇の列となっており、自分が会場に到着した時点では「これ定刻スタートできるの?」と懐疑的な状況
ステージは微かに機材が見えている程度で開演前では全貌ははっきりしていない

自分の予想通り開演は大きく遅れて、定刻から15分を過ぎた頃
BGMが大きくなっていくなかで、突如暗転しいつものSEが流れ出すがステージの全貌が明らかになったのは、SEが終わる頃

「横浜、おはよう!!」

と開口一番YONCEが叫び、始めたのは「A.G.I.T」
ここ、横浜アリーナは武道館と並んでアーティストが憧れる舞台
それが神奈川出身のアーティストであるなら尚更
だがここで「A.G.I.T」を持ってきたのは横アリをこの2日間だけは「自分たちの秘密基地にしてしまおう」、そんな思惑を感じる
TAIKINGのギターは横アリをどんどん秘密基地に侵食していった

早くも定番の「YMM」で踊らせつつ、ステージ中央に用意された花道をYONCEは使用するが、アリーナライブでよくあるボーカルがステージを高速で移動する…というのもではなく、ゆっくりステージを歩いていくというもの
アリーナワンマン、特にそれが初めてであればあるほどアーティストは興奮し、ステージを駆け抜ける
しかしYONCEはそのようにはせず、冷静に歩く
この姿には驚かされた

そんな冷静な姿は次の「Alright」でも見られ、

「戦争は儲かるか? 平和はゴミか?」

と包み隠さず歌う

ここのところ、メディアは日産自動車や万博ネタを多く取り上げているが、問題視されている水道法はほぼスルー
重要な話題は隠して、強行で裁決するいわば戦前の雰囲気に回帰しつつあるのだ
この曲はその事に言及しているわけではない
しかしながら、「ONE DAY IN AVENUE」で、

「まだやるのかい?モンキービジネス」
「関心ないようなふりしている」

と社会情勢を疑問視するような歌詞が、実はSuchmosには多い
それはリスペクトするa flood of circleの佐々木がかつて話していた「歌は刺青」に強い共感を抱いており、自分の考えに背くことは出来ないという考えで歌詞を書いているから
Suchmosの真骨頂は歌詞にこそある

「アマチュアもプロも変わんないね」

という「DUMBO」の歌詞はセールス、ライブ動員に置いても成功を収め、横アリ2daysを完売したSuchmosだから言えること
これを売れてないアマチュアのミュージシャンが歌ったら、間違いなく炎上するだろうが、Suchmosが言ってしまえばもう反論できない

「息を吸って…入って…」

と突然、深呼吸を始めたYONCEに流石にメンバーもツッコミを入れるが、

「可愛い女の子は見つかったかな?」

と告げて「Get Lady」を始めたのは意外

確かにSuchmosはミクスチャー的音楽スタイルを取っているため、レゲエ要素を感じられる曲も多い
だからこそ、「THE BAY」に収録されているこの曲を持ってきたのは意外だった
レゲエなら「THE ASHTRAY」に収録されている「FRUITS」もあるだけに

情景がゆっくり変化していくアリーナらしい演出が施された「Fallin'」、モニターが赤く染まり「Burn」で邪魔するものを焼き付くさんとすると、あのイントロが流れ出しいよいよ「STAY TUNE」
しかし今回の「STAY TUNE」は従来の「STAY TUNE」と比較すると少しBPMが遅い
これは「THE ASHTRAY」がグルーヴを意識したアルバムであることが影響しているのかもしれない
けれども「STAY TUNE」はあの疾走感があったからこそ成功したのであって、その疾走感を無くすアレンジには疑問符がつく
故に終盤の爆音セッションもやや爆発力に欠けていた

「今日1万5000人いるんだって。パンパンだよ!!凄いよね!!」

と今日のチケットが完売したことをYONCEは喜びつつ、

「隣にいる人は知らない人かもしれないし、恋人かもしれないし、嫌いな人かもしれない(笑)。でも音楽が好きなことには変わりないから。」

と持論を展開
一方で、

「最近は物が捨てられる世の中になってしまって…。命に値段なんてない…そんな新曲を歌います」

と話して演奏したのは新曲の「In The Zoo」

春のホールツアーでも冒頭でいきなり新曲を演奏していたが、そちらとは異なりこちらはフジロックでも演奏されていたもの
DJことKCEEもギターを弾く異例のトリプルギター編成となっているのだが、それ以上に曲が重い

「命に値段なんてないから 音楽よ救って」

と歌うYONCEの姿は悲しみそのもの
ここまでの雰囲気は一瞬で消え、悲しみ一色となってしまった
祝福空間を瞬く間に消す
それほど、この曲のエネルギーは強大

そんな負の空気を払拭したのはSuchmosが最も大切にしているであろう「Pacific」
この日もやはり2倍の長さであったが、こちらも「STAY TUNE」同様アレンジ
序盤は音数少なかったものの、後半から音が一気に増え、モニターもやがて夕暮れへ
悲しみを海が持っていってくれたのだろうか
それほどアンサンブルに特化した構成に

イントロで歓声が上がり、コラボ商品も販売されていた「FUNNY GOLD」先程までの悲しみはどこへやら、美しくロマンチックな夜に仕立て上げれば「MINT」で全てを解放
「IN THE ZOO」から「MINT」までの流れはこの公演に置けるハイライト
2日目は間違いなく収録が入るだろうが、その際このセクションは必ず映像化して欲しい
このセクションは何一つ欠かすことは出来ないから

ここで改めてファンに感謝すると、

「俺たち以外のバンドの曲も聞いてください。」

と話した
かつてASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチは自身のラジオで他のアーティストの曲も聞くことを勧めていた
YONCEもその考えが強いのだろう
そりゃあ、DJがいるバンドなんてDragon Ashから影響を受けてないわけがないし、対バンツアーではThe Birthdayまでも呼んでいる
だから色んな音楽を聞いて欲しいのだろう

その上で、自分の仲間を呼んでいることにも触れ、

「腐らずにやればなんとかなる。それを今から証明してやるよ。」

と自信をもって話し、「YOU'VE GOT THE WORLD」では倍以上に渡るセッションを展開
続けて、Suchmosなりのロックチューン、「SNOOZE」を轟音で
そこからEDM風のインターリュードを経て、上半期の5曲に選出した「808」では相も変わらずトリッキーな編成
あの衝撃を忘れることはないだろう

ライブ鉄板の「GAGA」で尺を伸ばしまくって、YONCEが客席に突入、TAIKINGも花道に飛び出してギターソロを浴びせる熱量を見せれば、

「ラストナンバーは…心臓の曲!!」

と今年のSuchmosを象徴する「VOLT-AGE」

「ノルことが出来ない」なんて批判もあったが、音楽は何もテンポの早さだけが全てではない
かつてTRICERATOPSの「GOING TO THE MOON」が大ヒットしたように、テンポが早かろうが遅かろうが、心はしっかり踊っている
ウェイウェイするだけが音楽だけではないのだ
そしてこの曲には、

「血を流さぬように」

と平和へのメッセージも込められている
悲劇で命が奪われることがない社会に1分、1秒でも近づいて欲しい
心のボルテージを挙げつつ、そう考えていた

ここからは写真撮影、並びに映像撮影(違反かと思いきや、「video showing ok」との立て札が出たので○らしい)が許可され、スマホを片手に撮影する方が続出
そんななかでメンバーが再登場すると、YONCEがお知らせとして来年9月8日(日)に横浜スタジアムでワンマン、並びに来年春にアルバムをリリースする予定であると発表

「50人の小さな箱から大きな会場まで、俺たちはやるけど、まずはハマスタを侵略することに決めました!!」

とYONCEは宣言
なおアルバムは春に発売するとは断言できないものの、すげえ曲が出来ているとのこと

「明日もあるので、今日はここで」

とラストに選んだのは

「誰のためでもなく 自分のために生きよう」

とそっとエールを送る「Life Easy」
長いTAIHEIによるイントロが印象的だった

ライブ時間は2時間半程度
時間の流れも他のアーティストと比べると遅い(先日見たBRADIOは「もうこんなに時間経ったの?」と思うほどあっという間だった
だが、だれた箇所は1つもない
最初から最後まで濃厚な味噌ラーメンを汁ままで飲み干すようにライブが濃厚だったのだ

まだまだ物足りない点はある
アリーナワンマンが初だったというのもあるが、アリーナがメインでありながらライブハウスやホールでもライブを行うUVERworldとの差は大きい
UVERworldはライブハウスだろうが、ホールだろうが、アリーナだろうがどこでも戦える
Suchmosは今の段階ではアリーナで戦える基礎体力を得ているとは贔屓目で見ても言えない
グルーヴ、アンサンブルをより高めるのは今後の課題となるだろう
まだまだ武者修行は必要である

そしてYONCEが「腐らずにやればなんとかなる」と話したことは夢追い人には大きな希望になる 
この日、来ていた沢山の仲間からすれば、 

「Suchmosが出来たなら俺たちも!!」

となるだろう 
仲間の成功は、大きな影響をもたらす
その上で、シーンに変革を起こす
そして

「血を流さぬように 歌おうぜメロディ 自由のメロディー 手に取るのはギター 最新型のセオリー We never take any arms」

のように音楽は自由であり、時に戦う武器となる
音楽の持つ可能性は無限大なのだ
だから誰がなんと言おうが、YONCEが言ったように「音楽の力を信じている」

セトリ
A.G.I.T
YMM
Alright
DUMBO
Get Lady
Fallin' 
Burn
STAY TUNE
In The Zoo※新曲
Pacific
FUNNY GOLD
MINT
YOU'VE GOT THE WORLD
SNOOZE
808
GAGA
VOLT-AGE
(Encore)
Life Easy         

Next Live is ... フジファブリック @マイナビBLITZ赤坂(2018.12.5.)

※屋内の写真は撮影許可が出た後に撮影したものです