タワーレコードがアーティストとタッグを組んで開催するイベントことBowline
今回のキュレーターはSUPER BEAVER

今回のテーマは「現場史上主義」と題され、関西ではBRAHMAN、bacho、NakamuraEmiと知る人ぞ知る面子が集ったが、東京編は

Azami
eastern youth
錯乱前戦
Spike Shoes 
SUPER BEAVER

の5組
eastern youthはASIAN KUNG-FU GENERATIONのルーツになったので、ご存知の方も多いだろうがそれ以外のアーティストは現場に足を運んでなければ聞き覚えのないアーティストばかりが集まっている

・渋谷逆太郎[Opening Act](14:00〜) 
大阪はすぐに本編が始まった(bachoからスタート)のだが、東京編はボーカル渋谷のソロプロジェクトこと渋谷逆太郎からスタート
前々からソロでライブをやっていることは聞いていたが、実際に見るのはこれも初めて

時間になるとOver the dogsの星英二郎と共にギターを背負った渋谷が現れ、

「Bowline2018…現場史上主義!!始まりましたね。オープニングアクト、渋谷逆太郎です。」

と自己紹介して「世紀末は雨に降られて」からスタート

SUPER BEAVERの曲といえば聴き手である「あなた」を強く鼓舞する、そんな熱い曲が多いのだが、ソロプロジェクトは真逆でリスナーに寄り添う感じ
ビーバーの曲よりも更に研ぎ澄まされている

「俺が最初に出てくれば最後まで見てくれる…そういう作戦です」
「良いか悪いかのものさしは人それぞれ。カッコいいと思うバンドだけ集めました。この後ビーバーとしてぶつかっていきたいと思います」


とオープニングアクトを設けた理由、並びに今日の意気込みを語り3曲で終わったが、いずれも名曲
しかし音源(一応昔のビーバーのアルバムの特典として付属していた)になっていないのは驚き

セトリ
世紀末は雨に降られて
悲しみが溶けたときのブルー
baby

・錯乱前戦(14:40〜)
トップバッターは出演者のなかでは若手の分類に入る錯乱前戦
全国流通音源のリリースを12月にヒカエテイル

SEもなくメンバーが登場すると、

「ロンドンブーツを買いに行こう そいつで命を弄ぶのさ」

とインパクトあるフレーズが登場する曲からするが、物凄い衝動的
衝動的というと身体的なパフォーマンスではteto(ライブ中、客席に突入する光景が幾度となく現れる)を思い浮かべるだろうがその衝動とは少し違う初期衝動
音楽を始めたときの喜びを曲で再現するかのようなぶっ飛びぶり

MCはほとんどなく、終始アクセルを踏み続け最高時速を毎時更新するかのような勢いで進んでいくが、こんなにもガレージなロックンロールは一度見たら忘れられるわけがない
加えて音源が近日中にリリースされるとなれば、「聞いてみよう」という気持ちにお客さんを変化させる

そんな彼らの音楽に見とれている間にあっという間にライブが終わったが、SIX LOUNGEに続く新たなロックンロールの旗手と呼ばれる日はそう遠くない
なお勢いが余りすぎたのか、クラッシュシンバルは5回落ちた(笑)

・Azami(15:40〜)
この日出演者では2番目に若いAzami
SUPER BEAVERとは3年前に初めて顔を合わせたという

リハからメンバーが登場し、入念にリハを行った上で2曲行ったあと、本編でボーカルの三浦が

「コースト!!全員で一花咲かせましょう!!」

と叫び、開始の狼煙を上げるが先程までのロックロールとは真逆のラウドサウンド
それにハードコア要素も混ぜるという音楽性のため、モッシュはおろか、ヘドバン、更にはダイバーまで発生する事態

しかしそこに歌謡曲ならではの美しきメロディー、日本語詞を加えることで美しさすら顕現
攻撃でありながらも美しき世界を見せているのだ

「言葉を伝える機会は一瞬しかないから」

と三浦が曲中で訴える姿勢からビーバーと親交が深いことも伺わせるが、このイベント開始前に発表されていた新作のリリースをここでも改めて発表するとそこから新曲「ハバネロ」を披露
こんなにもメタリックであるのに、美しいのは恐ろしく絶妙なバランスである

先立った仲間に告げるという「アオイトリ」を歌うと、

「「すごい降り幅だね」と会ったのが今から5年…いや3年前か」

とビーバーの出会いを回想しながら、このイベントに出させてくれたことをビーバーとタワレコに感謝すると、

「初めましての方も久しぶりの方もいる。伝えたいことは全部伝えました。またライブハウスで遊びましょう」

と話して、最後は「ライラック」で終了

今シーンではcoldrain、SiM、crossfaithらがFACTが突破口を開いたラウドシーンを支えている
だがいずれも英語詞(SiMは時々日本語詞の曲もあるけど)で日本語詞のラウドバンドはほとんどいない(SLANGもいるが、彼らはメロディーが…)

そんななか、彼らのようにメロディアスかつハードコアで日本語詞を響かせるバンドが出てくれば間違いなくシーンは面白くなる
1月に出る音源は必聴

・Spike Shoes(16:40〜)
ここまでの出演者は結成してから5年以内とフレッシュな面子であったが、ここからは結成から20年以上を誇るベテランが続く
その初陣を飾るのは仙台を拠点に活動するSpike Shoes

レゲエ調のSEが鳴り響くなかで、まずは楽器隊がアンサンブルを鳴らし会場を暖めると、満を持してボーカルヨネダが登場
最初に鍵盤を演奏し、落ち着いた雰囲気を匂わせるのだが一転シャウトをすると、これに呼応するようにダイバーも出現(スタッフも慌てて対応しにいった)
そのため、またもラウドバンド?と思った

しかし、

「ビーバーの渋谷君が「Spike Shoesじゃないと駄目なんです!!」と言ってくれて、出ることを決めました。ダブ、ハードコア、レゲエといった音楽性ですが楽しんでください」

とヨネダが話した通り、彼らの音楽性はSiMが行っているレゲエやダブ
ただ、SiMのようにレゲエと他の音楽性を混ぜるというわけではなく、基本はレゲエやダブに専念するスタンス
先程がラウド、メタル寄りなAzamiだったということで上手いぐらいに緩急がついている(ハードコアサイドの曲になると、一部が一気に活性化していたけど)

そんな音楽性なのでゆったりと身体を揺らしつつ、時に獰猛な曲を鳴らしていくと、

「自分を好きって言ってくれるバンド、普段やれてないバンドとライブできるなんてやっぱりバンド最高!!」

とヨネダが歓喜の絶叫
その上で最後は「Awake」で締めたが、SiMを好きそうな方は彼らの音楽とは相性が良いだろうし、来年のDEAD POP FESTiVALには絶対呼ぶべき

・eastern youth(17:40〜)
そしてこの日、最年長は紛れもなく彼ら
今年結成30年目を迎えたeastern youth
ASIAN KUNG-FU GENERATIONのルーツにもなったバンドなので、聞き覚えがある方は多いだろう

前ベーシストが脱退した関係で加入した村岡がバンドの平均年齢を少し下げつつ、フレッシュな風を呼び起こしているが、入念なリハを終えいざステージに登場すると、「ソンゲントジユウ」から早くも吉野の咆哮
もう吉野は50
ミュージシャンとして見るとかなりの高齢だ
それにも関わらずこの歌声
並びにキャリア30年を誇るこのグルーヴ
これを見てしまったら「化物か!?」と思わず唸ってしまう

そんな年齢を感じさせない吉野が名曲「夜明けのうた」を大胆すぎるストロークと共に演奏するのを見ると、もうそこからは圧倒されるだけ
時にグッと来る名フレーズやメロディーを鳴らしても「圧倒」以外に言葉が見当たらない
これがレジェンドか…
全盛期を知らないので多くは語れないが、結成30年目なのにこんな轟音を鳴らしている
これをACIDMANや10-FEETが将来出来るのだろうか
そんな考えが浮かんでしまうほどの衝撃だ

「我々eastern youthです。ご清聴ありがとうございました。」

と吉野が一言告げると、最後は誰もが拳を上げる名曲「夏の日の午後」
ビーバーを除くと今日の出演者で一番カッコ良かった

セトリ
ソンゲントジユウ
夜明けのうた
街の底
青すぎる空
時計台の鐘
夏の日の午後

・SUPER BEAVER(18:40〜)
そしてシンガリを務めるのはキュレーターのSUPER BEAVER
ドラムの藤原は先程まで関係者席でライブを見ていたのが目撃されている

いつものSEでメンバーが登場し、渋谷が前説を始めるのかと思いきや、「それでも世界が目を覚ますのなら」の一節を歌い始め、

「Bowline2018、シンガリを務めるのはSUPER BEAVER」

と告げてからスタート

このイベントはビーバーとタワレコのタッグによって成り立っている(だから出演者もビーバー側が決定できる)
それだけに、

「ユメカラサメタクナイ」

が特に響いてくるが、

「Bowline2018、今日が始まりの日だ!!」

とすぐに書き消し、「証明」では

「意思と意思のぶつかり合いだろ?」

と手拍子を煽る

いつもの挨拶を手短に渋谷が済ませると、

「今の時代、必要以上に情報が流れている。それがカッコいいかカッコ悪いか。それが良いか、悪いか。自分の目で見極めろ!!」

と渋谷なりの考察をあなたに突き付け、ビーバーの生き方そのものである「正攻法」をアピール
すっかり定番となった「閃光」は、

「大切なものがそばにある、そんな特別な時間も」

と冒頭の「あっという間に〜」へ見事な接着ぶりである

「準備運動は終わりましたか?」

と渋谷がここまで合唱、手拍子を求めてきた観客に尋ねると、それに答えるように「青い春」では合唱、手拍子が一層大きく
コースト名物の巨大ミラーボールがあるため、「東京流星群」の輝きも格別

「錯乱前戦、ネットで見つけてきました(笑)。カッコいいと思ったからライブに足を運んでダサかったら帰るつもりでした(笑)。でもカッコ良かったからCD買って帰りました!!ちなみに20歳だそうです!!
Azami!!ボーカルの(三浦)詩音とたまたまイベントの打ち上げで出会って、「俺もバンドしているから見てくださいよ!!」と頼まれたから見に行ったら、カッコ良かった!!6歳年下なんだよね?友達です。
Spike Shoes!!俺の青春を共に過ごしたバンドでかつて客席で見たバンド。いつかイベントに呼びたいと思ってたら、G-FREAK FACTORYやHAWAIIAN6と回ったツアーの打ち上げに来たんだけど怖かった!!そのあとECHOES(HAWAIIAN6が主催するイベント)で酒の力を借りながら、「一杯飲みたいんですけど」と隣に座って仲良くなりました!!
eastern youth!!何故か話したことがない(笑)でも俺達の出番の前でカッコいい演奏をしてくれた!!」

と今日の出演者とのエピソードを交えつつ、感謝すると、

「人生に無駄ことはないって言うけど実際にはあるから。それをいかに返していけるか。友達も仲間もいないなか、未来が漠然としなかった俺達を救った曲を精一杯歌います」

とこれまでで一番グッと来るMCから「シアワセ」

現在ビーバーはFCツアーを敢行しており、そこで過去の曲をやっている可能性がある(アンケートを取っていた場合だが)
それでもビーバーを支えていたのはこれと「日常サイクル」の2つ
これらがあるからビーバーは継続してこれた
「シアワセ」が再録されたきっかけはcoldrainのリクエストだが、もしかすると「日常サイクル」も再録されるときが来るかもしれない

そしてラストは手拍子がこれまでで1番じゃないかというほど揃っていた「秘密」で終了

すぐにアンコールで再登場すると、

「普通は他の人の特別の元で成り立っているんだなあということを改めて実感しました」

と「美しい日」をやる直前に渋谷が

我々がこうしてライブに来れるのも他の方が支えてくれたり、仕事に出てくれたりしているから
決して当たり前ではないのだ
だから常日頃、感謝することを決して忘れてはならない

「人に生かされて 人と生きている」

のだから

セトリ
それでも世界が目を覚ますのなら
証明
正攻法
閃光
青い春
東京流星群
シアワセ
秘密
(Encore)
美しい日

今回のBowlineの出演者は今までで1番コアだった 
ビーバー以外の出演者で存じているのはeastern youthのみ
それ以外は名前も知らないし、サブスクで音源が配布されているわけでもない 
そういう意味では未知なる領域への探求をしている感覚と表現しても過言ではない(先日YouTubeのサブスクが解禁されたが、流石にインディーズアーティストをオフラインに落とす方は稀だろう)

でも良いか悪いか、ジャッジするにはこうして足を運んでみなければ分からない
思えばSIX LOUNGEもLUCCIもココロオークションも現場に行ったからこそ、良いバンドだと気付くことが出来た(SIX LOUNGEのツアーがLUCCI、ココロオークションのツアーと重なっていた)
現場至上主義なら、NUBOやソウル・フラワー・ユニオンも呼んで欲しかったけど


これまでにDragon Ash、クリープハイプ、BLUE ENCOUNTと様々なアーティストがキュレーターを務めたBowlineに足を運んできたが、タワレコがこういうフェスを企画してくれれば、シーンはますます面白くなる
参加者は新規開拓を出来るし、出演者同士でも新しい交流が生まれたりする

次に参加するのはいつになるかは不明だが、LiSAやTHE ORAL CIGARETTESにキュレーターを任せるのはどうだろうか?

Next Live is ... BRADIO @NHKホール(2018.11.22.)