タイトル:「VECTOR
アーティスト:BLUE ENCOUNT

「自分達のやりたいように作った」

各所のインタビューで田邊がそう話しているブルエンの新作
どうやら昨年の「THE END」はかなり世間体を気にしてしまったらしく、その反動が今作に出たようです

新曲11曲という強気の構成
「THE END」がかなりシングル多かったのでこれには驚きましたが、どうやら合宿中に尋常じゃないペースで曲が生まれたとのこと(笑)
そこから厳選されたとポジティブに解釈しましょう

前述の田邊のコメント通り確かに今作の幅は広い
「ブルエンらしさってなんだ?」って自分が考えてみたところ、浮かんだのは「「MEMENTO」や「VS」のようなミクスチャー」、「エモいメッセージでしょ」の二択
ですが、その範疇に収まってない曲は確かに多い

「...FEEL?」はエモーショナルな部分もありはしますが、ジャンル的に考慮するとパワーポップより
タイトルが意味深な「coffee, sugar, instant love」はUKポップでブルエンらしさは皆無です
タイトルが出た時にバンアパっぽいな…と思ってましたが予感は的中

タイプ的には「MEMENTO」に近いですが、終始ラップ調で辻村のスラップベースが軸となったサビが印象強い「ハンプティダンプティ」、ブルエンの中でも上位に入る重圧な音が炸裂する「resistance」も今までになかった曲
こうして見ると挑戦的な曲が多いですね

逆にブルエンらしいのは既発の「灯せ」や「Waaaake!!!!」
江口がエッジとエモいギターを両立させた「コンパス」、ゴリッゴリのベースが牽引する「RUN」は従来のブルエンの発展形とも言える曲も
その中でも「「77」」なんかは前作の「スクールクラップ」の路線をもろに引き継いでますが、個人的にはこっちの方が聞けます

一方で聞かせる曲も充実
世間的にはブルエンは聞かせる曲がこのアルバムにも収録されている「さよなら」や「はじまり」だけのイメージ※あえてブルエンを聞き込んでない方からの視線を想定して書いています
このアルバムに収録された「虹」や「グッバイ。」はそのイメージを払拭出来ると自信を持って言える名曲
「虹」ではなかなか見られない田邊のハイトーンボイスと美しいギター、ミドルバラードの「グッバイ。」で聞ける琴線に触れるメロディーは必見です

ただこのアルバム、やりたい放題やった裏で田邊の心境がとてつもなく出てる印象もあります

「「今がいい」とか思わない 「今でいい」とか思いたくもない」※「Waaaake!!!」より

「ずっと信じられた夢たちは 用もない憤慨で粉々に砕けそうになっていた」※「RUN」より

この2曲には聞いていてハッとなるフレーズが特に多い
そして最後の「こたえ」

「僕が出したこの声は すべての人に届かない」

このフレーズは衝撃でしょう
ミュージシャンが現実を告げてしまっていますからね
それでも目の前にいるあなたが笑ってくれば…
やりたいことをやりきって、田邊が出した結論がこれなのでしょう
大人数に好まれなくてもいい、1人でも笑ってくればと

THE ORAL CIGARETTESや04 Limited Sazabysが伸びているなか、置いていかれているブルエンは悔しい想いをしているでしょう
実際、このアルバムもそこまでセールスは伸びてない
でも名盤であることには変わりないのです

ならばこれからも1枚、1枚傑作を作ることが大事
そうすれば再評価されるときも来ます
だから今はツアーに専念して欲しい
そして次のアルバムで悔しさを爆発させろ‼

評価:★★★★★