「客席突入は駄目」、「殴るのも駄目」、「ハイタッチすら駄目」という大きな制約のなか、2月の武道館公演を成功させたBRAHMAN
それから僅か1ヶ月で武道館ワンマン直前にリリースされた「梵唄 -bonbai-」のレコ発ツアーがスタート
既にツアーは最終ブロックに入っており、今日のZEPP Tokyo2日目は、追加公演がなければツアーファイナルとなる予定だった公演である

普段のZEPPと異なり、30代以上の方が目立つのがBRAHMANのライブの特徴
ステージにはモニターがうっすら見えるが、開演ギリギリまで会場がガラガラだったのは準備運動をしていたのか、それとも精神統一に時間がかかったのか

TOSHI-LOWが尊敬する谷中敦属する東京スカパラダイスオーケストラの曲がやたらとBGMで流れるなか、定刻を20分近く押した19:20頃に「お母さんお願い」をバックに美しい自然が一瞬にして燃え果てるオープニング映像が流れ、その隙にKOHKI(Gt.)、MAKOTO(Ba.)、RONZI(Dr.)の3人が現れると、ゆっくりサウンドチェックを行った上で「真善美」のイントロが出現
武道館ではこの曲が最後に演奏されたが、ツアーでは逆
というよりはツアー事態が恐らく武道館の続編なのだ
歌が始まる直前にTOSHI-LOWが登場
この曲の最重要リリック、

「さあ 幕が開くとは 終わりが来ることだ 一度きりの意味を お前が問う番だ」

を歌い上げると、一気に会場の雰囲気は締まり、和のビートと共に

「付和雷同」

のコーラスが巻き起こる「雷同(モニターはここで一時撤収)」を経て、

「Tour 梵匿、37本目、本編ファイナル。やることは1つ。BRAHMAN始めます‼」

とTOSHI-LOWが開会宣言を行えば、最後の歌詞から曲をリンクさせた「賽の河原」、「BASIS」のコンボで一気にダイバーが発生
武道館でも大暴れしていたMAKOTOは序盤から後先を考えているのかと言いたくなるほどのフル回転ぶり

武道館では演奏されなかったメロコア調の「EVERMORE FOREVER MORE」はこのツアーで初お披露目
だが、ダイバーは全く飛んでいないのは驚き
この曲が馴染むにはまだ時間が必要ということなのか
その直後が鉄板であり、満場一致の手拍子が発生する「BEYOND THE MOUNTAIN」だから尚更

バンドを始めた頃の初期衝動を思い出させる「其限」からは福島を想起させる歌詞が身に染みる「今夜」、「空谷の跫音」といった辺りは聞かせる部分が去年のツアー、武道館と比較するとTOSHI-LOWは明らかにボーカルが上手くなっている
アルバム「梵唄 -bonbai-」はアルバムの内容に賛否が起こって至ったが、個人的見解で見れば見事な傑作だ
なぜ否の意見があるか、それはハードなBRAHMANで居続けて欲しいという保守的な思考があったから

TOSHI-LOWはここ数年、細美武士をはじめ多くの方と交流を持つようになって変わった
その結果が刺々しさを脱ぎ、優しさを随所から感じる「梵唄 -bonbai-」の誕生
そして伝えたいという想いを強くしたのである
だからこそ、ここまで歌唱力が上がったのではないだろうか

直後の「AFTER-SENSATION(テンポが幾度となく変わるので、楽器隊は何度も何度も集まってBPMを確認していた)」にもそれは如実に現れ、

「生まれ変わる 永遠のあの日あの時 問いかけるよ 遠くへ遠くへ向かっていくんだ」

には思わず涙が出てしまう

2年前にリリースされたにも関わらず1度も演奏されず、今回歌詞が大幅に変更されたことでようやくライブで披露された「天馬空を行く」、短いようで最も重厚な90秒「守破離」を続けると、「怒濤の彼方」ではRONZIのツインペダルを筆頭にスカパラ抜きでも迫力ある演奏を体現
だが、MAKOTOが途中でテンションが上がりすぎたのか、ベースを弾かずにハンドマイクで歌唱する事態に(笑)
スタッフが慌てて調整に来たが、上手く行かずマイクが飛んで行く様子はあまりにもシュール

社会への怒りをこれでもかとぶつける「不倶戴天」では武道館でもあった、KOHKIのギターをフューチャーする場面もあったが、この曲はやはり最後に怒りに怒りまくったのに「赦す」ことに尽きる
TOSHI-LOW自身もこの言葉が出てきたことには驚いていたようだが、この言葉が出て来たことにもTOSHI-LOWが変化していたことを大きく物語っているのではないだろうか

「警醒」からはいよいよTOSHI-LOWが客席に突入するが、この日はダイバーが物凄い勢いでTOSHI-LOWに攻撃
TOSHI-LOWの姿が全く見当たらない事態になってしまう(笑)
この状況は曲終了後も続いていたため、若干ざわついていたが、「警醒」の最中に降りてきたモニターに福島第一原発で働く人たちの姿が映し出され、それをTOSHI-LOWが読み上げることで「鼎の問」へ

これは捏造でもフェイクニュースでもない正真正銘のドキュメント
原発事故が発生しなければここに移っている方たちはこんなことをしなくても良かったはず
それにも関わらず、原発は止まらない
どころか推進しようとする電力会社
そして争点を隠してまで進めようとする団体
この方達の働きを無駄にしてはならないし、原発はおぞましいもの
その認識は決して忘れてはならない

客席に突入した状態でTOSHI-LOWが、

「全国各地をツアーで巡ってきたら、海があるんだよ。川があるんだよ。それらは全てあそこに繋がっているんだよ。」

とツアーの記憶を辿りながら「ナミノウタゲ」を歌うがその最中でTOSHI-LOWのマイクが機材トラブルを起こしてしまい、声が全く聞こえない事態に
その状態でMCに突入しようとするもやはり復調することなく、

「初めてMC用のマイクを握った(笑)」

と語ってから奥さんのりょうがドラマ(「崖っぷちホテル!」)に出演しているため、息子を保育園に送ってから会場入り、入学式に出席してから会場と強行スケジュールだったことを明かした上で、

「やらなくていいと思うじゃん?でもいつか、子供も巣立つから…。それにメンバーと行くのも楽しい。メンバーやスタッフとみんなでバスに乗って行くのもいいけどさ、今回自分に課題を出して。それは全ライブ会場で違う、その土地にあったMCを行うこと。だからそこに向う最中、色々調べていると、新しい発見があって。で駅に到着すると、「あ、ここはこうなったのか。」ってなる。でも、地元の人は「俺たちの町には何もないんです。」っていう。俺達が2周回って来てしまったのか。」

と今回、自らに課題を出してツアーを回ってきたことを明かし、

「39本。全て同じセットリスト。1曲違ったりもするけど。2days開催も初めてなのよ。その上で、何をすればいいか。それは昔の自分が書いていた。なのに気がつかなかったんだよ。20年間。」

と今回のコンセプトを明かした上で、歌い上げるのは「満月の夕」
そのなかでも象徴的なのは、

「言葉にいったい 何の意味がある」

の部分

確かに文字というのも人によっては感心が持てなければ、ただ素通りしてしまうものだ
だが、それをこうしてTOSHI-LOWをはじめ、ボーカリストが命を吹き込むことで、言葉は傷付いた方を救出したり、鼓舞するものになる
TOSHI-LOWはようやくそれに気が付いたのだ
20年かかったと話したが、それは全く遅いことではない
今回のツアーはこれで終了、KOHKIが最後に丁寧にお辞儀しているのが印象的だった

ライブを終えるとこれが本編ファイナルということで、これまでの公演のハイライトが
そこにはSLANGのKOの姿も、盟友細美武士の姿もあった
3月のツアー初日からこの日のZEPP Tokyoまで振り返った後、スクリーンには、

「To be continued...」

と東北編へ続くことを匂わせていたが、何故か終わる気配を感じずそのまま待機
するとKOHKIが再登場し、あの曲のイントロを鳴らし始める
それに合わせてメンバーも再登場

その曲とは「真善美」
かつてBRAHMANはTOKYO DOME CITY HALLでワンマンをやった際、演出が上手くいかなかったため「The Only Way」をやり直した過去がある
どういったいきさつでこの曲をやることになったかは定かではない
「ナミノウタゲ」が上手くいかなかったお詫びかもしれないし、元々組まれていたのかもしれない
それでも、

「さあ 幕が開くとは 終わりが来ることだ 一度きりの意味を お前が問う番だあああああ」

とTOSHI-LOWが叫んでマイクを落とすインパクトは絶大
次はお前の番だと言っているかのようで

セトリ
真善美
雷同
賽の河原
BASIS
EVERMORE FOREVER MORE
BEYOND THE MOUNTAIN
其限
今夜
空谷の跫音
AFTER-SENSATION
天馬空を行く
守破離
怒涛の彼方
不倶戴天
警醒
鼎の問
ナミノウタゲ
満月の夕
(Encore)
真善美

Next Live is ... LiSA @ 日本武道館(2018.6.15.)