前日、SUPER BEAVERが武道館にて歴史に名を刻む素晴らしいライブを行ったが、その余韻が長く続かないのは、この日の忘れのライブが原因

かつて柴田は、ベストアルバム発売時にインタビューで

「梅津くんがいなくなって、1人になっても忘れらんねえよ続けます。」

と話していた

しかしその言葉に言霊が宿ってしまったのだろうか、今年に入って梅津の脱退が発表
2人体制の忘れらんねえよはこの日を持って最後
並びに10周年記念ライブである

梅津ラストライブという事でチケットは完売、更にスーツを装って参加している方も若干数確認できるなか、定刻5分前にAT-FILEDのP青木が登場
今日のワンマンのタイトルになっている「梅ックス」を「梅酒」と言ってしまうポンコツぶりは相変わらずだが、諸注意を述べつつ、今日のライブがニコニコ動画で配信されることを伝えた上で、

「今日は泣かないで楽しみましょう‼」

と話し、悲壮感を一掃させようとする

しかしその10分後、[Alexandros]の「渡り鳥」が流れ始め、柴田が客席後方から現れると、

「今日で梅津くんとはお別れだ!思いっきり笑え‼思いっきり楽しめ‼思いっきり泣け‼」

とせっかくまとめたP青木の功績を台無しにするスタイル

いつものようにお客さんに運ばれて、柴田がステージに到着してからサポートのタナカヒロキ(LEGO BIG MORL)、マシータと共に梅津が現れるが、最後だからスーツを着用し、びっしり決めている
梅津以外は普段着なので、若干浮いてたりもするが

いつものコールアンドレスポンスは「梅津‼」、「メンバー」と某アイドルグループを意識させるものだが、「ゾンビブルース」から始まると「終わり」、「最後」という歌詞が否応なしに今日で柴田と梅津の忘れが終わってしまうことを改めて認識してしまう
過去にphatmans after schoolからホンマアツシが脱退したライブ、Galileo Galileiの活動終了(こちらはBird Bear Hare and Fishというバンド名になってちょうどこのライブの翌日に復活)ライブで泣いてしまっただけに、この日も泣いてしまうのでは?と感傷的に 
近くにいた女性は早くも泣いていたが

以前ほどは演奏されなくなった「僕らチェンジザワールド」、梅津が好きだという「あんたなんだ」と初期の曲を連発する辺り、柴田と梅津が一緒になって、セトリを構成したのではと思わさせる部分も垣間見えるが、「泣かせはしねえぞ‼」と言わんばかり、爆音でハードなギターを鳴らすタナカヒロキの存在が本当に頼もしい

そんな頼もしさは柴田にもあり、梅津とタナカヒロキをメンバーと言って弄ったり、

柴田「山下‼」
マシータ「なんで俺だけ、メンバー付いとらんねん‼」
柴田「バーチャル出演だから(笑)」

と愉快なコントを繰り広げたりと、全く悲しさは感じない
それでも柴田は

「感情がごちゃごちゃになってる」

と吐露したように、まだ吹っ切れたとは言えない状態

それでも「この街には君がいない」でショートパンクを決めたり、

「梅津くんと初めて作った曲」

こと「ドストエフスキーを読んだと嘘をついた」では歌詞に合わせて「赤い夕焼け」を照明で再現、梅津に向けて歌かったのように錯覚してしまう「美しいよ」と心情的にさせることがないのが今日の忘れ
抱くのは悲しみよりエモさ
これが他のバンドのメンバー離脱後ライブとの最大の差異

柴田が本番前は違う衣装を来ていたこと、自身の服装が浮いていることを梅津が嘆きながら、「中年かまってちゃん」、「体内ラブ 〜大腸と小腸の恋〜」といった曲ではグルーヴに身を任せて踊らせるが、梅津とマシータが生み出すグルーヴも今回限り
曲が進むにつれ、寂しさが込み上げそうになるのも事実

しかし「スマートなんかなりたくない」、「バレーコードは握れない」の

「自分を殺して迎合してたまるか」
「僕は僕の歌を歌う」

から読み取れる執念
梅津が離脱したあとも忘れは変わらないという意思表示である
この意思表示は終盤になるにつれて、更に強くなる

ステージにマイクスタンドが新たにセッティングされると、スペシャルゲストとしておとぎ話から有馬和樹と牛尾健太が登場
しかし自ら「化物」と名乗る有馬を境に、化物と非化物の境界線が誕生
マシータも非化物だと主張すべく、ステージ上手に出て来たのには柴田の梅津も突っ込んでいたが(笑)

そんなにぎやかなやり取りから歌われたのは「俺たちの日々」

「戦うもんだろ」
「勝ち取るもんだろ」

といった歌詞は売れない時代を共にした彼らだからこそ響く
お互いライブバンドなので、ツレ伝に呼べなかったことを柴田は悔やんでいたが、笑い会える日々はきっと来る

有馬と牛尾が去っても、マイクスタンドはそのまま
ということはもう1組、ゲストがいるということ
そんな次なるゲストは何故か柴田に外タレと呼ばれ、本名まで晒されたロマンチック☆安田
安田のギターをべた褒めし、安田がエレキ、タナカヒロキがアコギをレコーディングの際、務めた「美しい人」を演奏するが、トリプルギターを生で目撃する機会はなかなかない
しかも安田はドラマチックアラスカとサポートを経て、鍵盤もギターも弾けるマルチプレイヤーとなった
忘れのサポートはここのところタナカヒロキが努めているため、共演機会は多くないだろうが、またツアーサポートで入ってくれるのであれば、「バンドやろうぜ」を彼の鍵盤と共に聞きたい

安田が去ったあと、続けて演奏されたのは「そんなに大きな声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか」
柴田の才能が覚醒したのは個人的にはベスト盤以降だと考えているが、その前に素敵なメロディーで溢れているのがこの曲
加えてこの曲にあるのは柴田の音楽への愛情
「俺よ届け」以降にフォーカスされやすいが、この際ベストアルバム以前の作品も再評価されないだろうか

すると柴田と梅津の学生時代の話になり、梅津が魚団というバンドを行っていた際に印象に残っていた曲がレコーディングされていたことが明らかになるのだが、

「確か「ペーパープランクラッシュ」って曲だった」

と梅津が説明した曲がアレンジされたのが「紙がない」(笑)
しかも柴田が曲に入る前、「ウ○コ的世界観」と何度も口にするのでそっちに持っていかれい集中できない状況(笑)
しかしながらこの曲、どこかニルバーナを彷彿とさせるフレーズが多々あり
余程当時の梅津はニルバーナが好きだったのだろう

そのトイレ繋がりか、ウ○コのことしか歌ってない「俺の中のドラゴン」を叩きつけると、

「ウ○コの曲で盛り上がったぞ‼音楽って最高だ‼」

と柴田が叫び、「バンドやろうぜ」からはタナカヒロキが猛スピードでステージを駆ける「北極星」、柴田と梅津が背中合わせで演奏する「Cから始まるABC」と名曲を連発

そんななか、

「ここで初めてチャットモンチーを見たんだよなあ。」

と柴田が呟くとまさかの「ハナノユメ」
チャットモンチー最後のライブとなるこな・そんフェスには忘れは呼ばれてない
だがトリビュートには参加させてもらい、こうして演奏することでチャットモンチーへの感謝を伝えた
チャットはまもなく沈むが忘れはチャットの名曲をこうして受け継いだ
チャットの魂は消えることなく語り継がれていく

その一方で20曲を越えてくると、「サンキューアイラブユー世界」で梅津のベースが鳴らないトラブルが起こったり、ミラーボールが回る感動的な演出が行われているにも関わらず柴田が「花火」で歌詞を飛ばしてしまうというらしくないミスも

美メロと四つ打ちが絶妙に絡み合う「愛の無能」で踊らせた後は、残りの曲数が少なくなってきたことを惜しみつつも、

「次は楽しい時間だ‼」

と「ばかばっか」で柴田が客席に突入
いつものようにビールを手に、ステージ中央付近で立ち上がれば、

「自分のためにやってるんじゃない‼みんなのためにやっているんだ‼みんなの夢をこのビールに込めろ‼飲み干して、俺が叶えてやるから‼」

と叫び、イッキ飲み
梅津にも夢を聞いていたが、こうやって忘れはいつしか頼もしい存在に変わっていった
「売れたい‼売れたい‼」と本能をむき出しにした姿から

歌詞にきゃりーぱみゅぱみゅが出てくる「寝てらんねえよ」、歌詞とは裏腹に柴田のメロディーセンスが光る「犬にしてくれ」と3rd期の名曲を続けると、いよいよラストスパート
本来ならこの辺りでどうしても涙腺が崩壊しかける前兆が見え始めるのだが、柴田はハピハピ状態であることを強調したり、引っ越しばかりの新居で「犬にしてくれ」を大音量で歌ったら、苦情が殺到したなど平常運転

「楽しむことだけを考えます。」

と涙を見せないことを誓うように「いいひとどまり」で、「歌い続ける」ことを約束すれば、「この高鳴りは何と呼ぶ」では、

「明日には名曲が ZEPPに生まれるんだ」

と歌い、歓声
下北沢で生まれた名曲が遂にZEPPへたどり着いた

青春を駆け抜けるのように「ばかもののすべて」で疾走すると、最後はまさに柴田の今の心境そのものな「明日とかどうでもいい」
特効が2度も炸裂する派手な演出で本編は終了

アンコールを待機しているなか、あまりにも下手くそな「天国地獄」が流れ始めるが、これかつての忘れのSE
元々梅津へのサプライズとして用意したものではあるが、感慨深さは皆無
タナカヒロキに至っては反応に困っている
そんな状況で、

「あんたらにもエールを送りたいから」

と「世界であんたは一番綺麗だ」を行うが、

「下北沢queでバンドを始めて、俺たちのことをズタボロにいう奴等もいたけど、今こうしてでかいステージに立っているから‼」

からの「バンドワゴン」はエモい
柴田曰く、この曲は出来た瞬間に歌詞が浮かんで1分で書き上げられたとのこと

「僕らの音楽は汚されても死なない」

のように忘れの音楽はこうして今も転がっている
それがこの10年の功績

そしてあと数曲というところで、それぞれからメッセージが
まずタナカヒロキは、梅津が機材オタクであることから機材車で音楽の話で盛り上がったことを中心に話しつつ、

「こんな凶悪なベースを弾く方は他にはいません(LEGO BIG MORLにも居ないよなと柴田が加わる。)この経験を今後の音楽人生に活かしていきたいと思います。」

と率直に感謝を
その上で梅津は、

「こうしてここまで来れたのはヒロキくんとマシータさんが支えてくれたからです。忘れらんねえよを始める前、小さなライブハウスで他のバンドをやっていたけど、このバンドを始めてロッキンオンジャパンやBAY CAMPといった大型フェスに出演するようになるとは思いもしなかったし、貴重な経験をさせてもらいました。後、音楽関係者の方って本当に音楽が大好きなんだって。今までありがとうございました。」

と簡潔ながらこれまでの経緯を話して、お礼を伝えた

だがまだマシータがコメントしておらず、「話しにくい…。」と言いながらも、本番前に地元の喫茶店に行ったり、一緒に飲みにいった話を行いつつ、

「新宿ロフトのイベントで知り合って、へルマン(Hermann H.&The Pacemakers)としても対バンしたんだけど、初の赤坂BLITZワンマンの前にドラムがいなくなって、「どうするんだ?」と思っていたけど、「あ、俺か?」ってなって(笑)。1週間で27曲仕上げることになったんだけど、当日来た方には申し訳ないことをしました。」

と今更ながら赤坂BLITZのライブが上手くいかなかったことを謝罪

そして柴田はというと、

「未だに実感がわかないんだよな、梅津くんが辞めるって。昔からの付き合いだけどバンドとはこうあるべきっていうのを教えてくれたりしてね。だからバンドについては梅津くんから教わったんだよ。一回ガチのケンカ(恐らく「あの娘のメルアド予想する」のレコーディング後、ロッキンオンにて一部言及されていた)もしたりしてね、思い出のつぼ八で(笑)。だから梅津くんが辞めるって言った時、これは生半可なものじゃないと思った。梅津くんがどういう人間か知っているから。梅津くん、ありがとう」

と、バンドのいろはは梅津くんから学んだと述べ、感謝を述べた

そして無数のライトと共にメンバー全員が肩を組んだ「忘れらんねえよ」を終えて、最後は「まだ知らない世界」

「ベイビー まだ知らない世界を教えてよ」

のようにまだまだ柴田は転がり続ける
タナカヒロキ、マシータと順に音をなくしてステージから去り、梅津と柴田は最後にハグ
そして梅津のベースの音が消えたとき、ライブは終わった

この後記念撮影が行われていたが、既に時間が22:30だったということもあり、急いで退散
どうやらその後に次のライブがいつか、発表されていたようだが、どんな布陣で臨むのか

ラストの「まだ知らない世界」でメンバーが1人ずつステージを去って行くエンディングを見ているとき、あらためて梅津が離脱する現実を突きつけられた
メンバーの離脱が悲しくならないことなんてない
もうあの音が聞けないのだから

しかしながら周囲で泣いている人はほとんどいなかった
最初泣いていた方も

それはネガティブな感情が消滅していたということ
忘れは悲しみを楽しみに全て変換したのだ
最後まで楽しくハッピーに
センチメンタルな感情を吹っ飛ばし、最後まで楽しかった今日のライブは忘れらんねえよ
梅津さん、お疲れ様でした

セトリ
ゾンビブルース
僕らチェンジザワールド
あんたなんだ
この街には君がいない
ドストエフスキーを読んだと嘘をついた
美しいよ
中年かまってちゃん
体内ラブ 〜大腸と小腸の恋〜
スマートなんかなりたくない
バレーコードは握れない
俺たちの日々 w/有馬和樹、牛尾健太
美しい人 w/ロマンチック☆安田
そんなに大きい声で泣いてなんだか僕も悲しいじゃないか
紙がない
俺の中のドラゴン
バンドやろうぜ
北極星
CからはじまるABC
ハナノユメ
サンキューアイラブユー世界
花火
新・俺よ届け
愛の無能
ばかばっか
寝てらんねえよ
犬にしてくれ
いいひとどまり
この高鳴りを何と呼ぶ
ばかもののすべて
明日とかどうでもい
(Encore)
世界であんたは1番綺麗だ
バンドワゴン
忘れらんえねえよ
まだ知らない世界

Next Live is ... VIVA LA ROCK @ さいたまスーパーアリーナ(2018.5.3.)